IS~歪んだ思考を持つ男~   作:reizen

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#18 それぞれの感想

 凰鈴音は中国代表候補生で二組のクラス代表でもある。

 そんな彼女が転校生として二組に転校してきた時のことだった。

 

「アタシは凰鈴音よ。よろしくね」

 

 同居人のティナ・ハミルトンはアメリカの代表候補生で、同時に二組のクラス代表だった。ただしそれは自分でも思っているが奇跡に近い。

 専用機持ちの代表候補生は数少ないが、そうでない代表候補生がIS学園に入学するのはそう珍しくないことだ。それは目的が人の数ほどあれど、やはり多いのは今世界で行ってみたい旅行先が日本だから、IS学園に入学すると同時にその目的が達成できる。

 そしてティナのクラスに代表候補生は奇跡的にか数人しかおらず、クラス代表選出方法は入試での成績が優秀だった者ということでティナになった。

 当然だが反対意見も多く出た。「クラス代表は実力で選出するべきだ」などと言った意見もあったが、二組の担任は「その実力で一番評価が高かった者を選出しましたが何か?」と答えた時には誰も答えられなかった。当然だが、いきなりの選出で緊張していて、国は違えど同じ代表候補生とも仲良くなろうと思ったが誰もティナとは話さなかった。幸いなのは、そうじゃない一般生徒と仲良くできたことだろう。

 そんな二組に分かれた二組だが、四月の終わりに現れた転校生によって空気が一変した。

 

「中国代表候補生の凰鈴音よ。みんな、よろしくね!」

 

 元気で活発な生徒は一瞬でクラスの人気者になった。クラス代表になった時も専用機を持っていたのもあって全員が納得したのも彼女の裏表がない態度もあってだろう。

 だがそんな彼女が一夏に接して色々あり、「妹」「優しく」などといった単語を書いた紙を持って帰ってきた時はさすがのティナも驚いた。

 後からわかったが一夏と鈴音が喧嘩して悠夜のところに通っていたのはティナも知っていた。だが女の子の絵が描かれたパッケージとゲームを持って帰ってきたのはただ事ではないと思っていたし、行く時と帰る時のリボンの位置が少しズレていたのも気付いていた。

 それまで何かしらのアクシデントがあってそうなったのだと思っていたが、「そう何度もアクシデントに見舞われるのだろうか?」「先生に相談した方がいいのではないのか」と考えている時にあの夜になった。

 いつもは遅くても消目安時間の一時間前には必ず帰ってくる鈴音だが、その日だけは遅かった。

 気になって外を何度も確認するが、まだ帰ってこない。

 鈴音が低身長なこともあってか妹のように感じていたティナは心配になり、十五分前になったところでドアがノックされた時には何事かと思って出ると、そこには涙を流して寝ている鈴音と、それをおぶった悠夜の姿があった。

 入室の許可を得て入った悠夜だが、すぐに退出する。とりあえず鍵を閉めて戻ったティナだが、その時鈴音の寝言が聞こえてきた。

 

「…一夏の馬鹿……どうして……………ない……」

 

 そして寝返りを打って何度も泣き、一夏のことを呟く鈴音。そして寝返りを打った彼女のちょうど股のところに少し濡れている携帯電話があった。

 実はドリンクの近くに置いていたため濡れたのだが、ティナは大きな勘違いをしてしまった。

 さらにその後、たまたま鈴音とティナの部屋から出てくる悠夜が目撃され、何があったのかを聞かれたティナは大きな勘違いをしたまま意見を交換し合い、それが広まりに広まり、いつの間にか「織斑一夏は凰鈴音を桂木悠夜に寝取られた」という、見事なまでの空想三角関係が完成したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

―――鈴音side

 

 アタシがこの学校に来るまでずっと一夏のことを考えていた。

 それもそのはず、五年生の時にからかっていたのを助けられてい以降、ずっと好きだったし告白もした。

 でもその告白は届かず、一夏はつい最近まで忘れていたみたいだったけど。

 

 アタシにとって桂木悠夜という存在は特別…といえば特別なんだと思う。ただ少し「恋」とは違うんだろう。

 ううん。「恋」はしていた。けれどあの日の会話でそれは崩れ去っていたんだ。

 

 

 一夏に「貧乳」と言われたアタシはわがままを言ってストレス発散用に造られた小さなカラオケ店に入った。そういうのを期待したというわけじゃない。愚痴を言いたかったけど聞かれたくなかった。彼を連れて行ったのは、彼だったら気にせず打ち明けられると思ったのもある。

 でも考えてみればアタシに見返りを求めていたんだろう。協力すれば何かがもらえるとかでなく、キスとか、もしくはそれ以上のことを。一夏が少し違うのはなんとなくわかっていたし、あたし達の友人の五反田(ごたんだ)(だん)御手洗(みたらい)数馬(かずま)もエロい話をしていたから、たぶん彼もそれを求めていたんじゃないかなって思っていた。あのゲームは「義妹と接する為の参考として」って言ってたけど、その続編も持っているって言ってたし、一夏の「大きい胸の人が好き」と違って彼は「小さい胸の人が好き」なんだと。だからアタシにそれを求めていたのは不思議でもなんでもないんだって―――あの日までは。

 

 一夏と離れて―――つまり彼と一緒にいるようになって数日。専用機として打鉄を貸し出されている彼とは特訓する仲になっていた。その時アタシは彼の部屋で聞いた。

 

「ねぇ、どうしてアタシにあんなにも良くしてくれたの?」

「良くって?」

「ゲームとか貸してくれたり、アドバイスしてくれたり。まさかと思うけど、アタシのことが……その…好き……とか」

 

 我ながらなんて恥ずかしいことをしたのかと思う。

 でもそのことは聞いておきたかったし、その前にふと耳にした噂で「織斑一夏が凰鈴音を桂木悠夜に寝取られた」なんて噂もあったものだからアタシは何か焦ったんだろう。

 だけど彼は、勉強していた手を止めてアタシにこう言った。

 

「それはないよ。だって凰のことは「妹」ってぐらいにしか思ってないし」

 

 一瞬、その言葉で涙が出そうになった。

 だけどその後に出てきた言葉が、なによりも響いて涙が止まった。

 

「それに俺はさ、織斑と違って世界大会で優勝するぐらいの実力者が後ろ盾になっているってわけじゃない。だから、いつでも恋愛できるってわけじゃないんだよ」

「………じゃあ、今すればいいじゃない!」

 

 思わずそう言ってしまった。さっきの言葉がとても悲しくアタシに響いたからだ。

 

「今して、それでもっと生きれば―――」

「それはちょっとできないな」

 

 本当に悲しそうに彼は言った。

 

「だってそんなことをすれば劣情を催してしまうし、そうしてしまったら当然―――相手も巻き込まれる」

 

 この時、彼の周りには結界みたいなものが張られた気がした。

 その時にアタシはただ「ふーん」と返しただけだけど、本当は悔しいと思ってたんだ。また手が届かないことが。

 

 

「あなたとは一度話たいと思っていましたの」

 

 昼休み。アタシはメールでいきなり一組のイギリス代表候補生に呼び出されていた。確か名前は「セシリア・オルコット」だったはずだ。

 

「それって代表候補生の一人として―――それとも、一夏を狙う一人として?」

「後者ですわ」

 

 なるほど。確かこいつも狙ってんだっけ? でもそれはアタシにとっては()()()()()だけど。

 

「悪いけどパスよ」

「……なるほど。ではあの噂は本当だったのですね」

「ああ、寝取られたって噂?」

「ええ」

 

 本当も何も、その行為もそうした覚えもお互いに全くないと確認している。

 だからアタシは笑ってしまって、その行為が彼女には不愉快だったようだ。

 

「何がおかしいんですの?」

「いや、まだそんな噂を信じている専用機持ちがいるとは思わなかったからさ」

 

 挑発する物言いで言ったが、どうやら彼女には通じなかったみたい。

 

「それはよかったですわ。ただでさえ競争率が高いんですもの。一人減ったところで大したことはないとも言えますが、一夏さんに近いあなたが早々にリタイアしてくれるなら有利になったともいえますもの」

「ふーん」

 

 彼は―――桂木悠夜が周りを見るとき、どこか見下している感じがしたけれどようやく理解した。みんな、現状を理解していないと思っているんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……またか」

 

 夜。俺の所に来る差出人不明の封筒が大量に来たので開封していると、これはまた大量のカッターナイフの刃が同封されていた。

 それを二重にしている袋の中に入れ、中に入っている手紙を読み上げる。

 

「「今すぐ自分がISを動かせないことを公表し、世界に謝罪しろ」……はぁ」

 

 読んですぐに後悔する。馬鹿だ、こいつら。

 

「ええと次は「今すぐ学校を辞めて、世界のために実験動物になれ」……神聖な~とか言うつもりかよ」

 

 しかしカッターは入っていなかったので親切仕様だ。

 

「そして次は「ISは女のものだ。お前のような薄汚い男が持っていいものじゃない」……まったく、やれやれだな」

 

 これを投稿したやつは今も普通に生活しているのだろう。男の成分が半分入っているんだから半分死ねよ。

 あとは適当にカッターがあるかどうかを確認して、あったらすべて袋に入れる。

 

 ―――カチャッ

 

 洗面所と風呂場に続くドアが開き、そこから…またバスローブというどう考えても誘っているだろう服で更識が出てきた。

 

「あら、それは―――なるほど、人事部に申し立てをする必要があるわね」

 

 大量の手紙とカッターが入っている袋で理解したのか、更識は厳しい表情をした。

 

(別にそんなことで一々怒らなくてもいいだろうに)

 

 そもそも送ってきたのは人事部じゃなくて普通の一般人とかで、人事部は仕事をサボっただけだ。おそらくこのほかにも何通もその手の手紙が着ていたのだろう。たぶん俺でも音をあげてギブアップする。

 

(というか俺には仕事云々よりも更識の服装が気になって仕方がない)

 

 もう何日も抜いてないから性欲が暴走してしまいそうだ。だからと言ってそれを更識に言うつもりはないが。

 手紙には興味をなくし、俺はみんなが食べれそうなお菓子を通販で取り寄せることにした。差し入れを持っていってもバチは当たらないと思う。

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