生徒会の仕事というのは部費の分配とかもあるらしく、今まで更識と布仏先輩の二人でやっていたようだ。布仏も一応はメンバーの一人なんだろうが、どうしてアレは仕事をサボっているのだろうか?
(ある意味、空気がキツいな)
今は更識と二人きりという、ある意味では苦行を味わっている。
いや、別に部屋が一緒なんだからそこまで気を遣うことはないはずなんだが、どうしてか余計に緊張していた。
「そういえば桂木君の機体ってどんなものなの?」
「あれ? 聞いてないのか?」
息詰まった空気を換えるためか、更識は俺に話しかけた。しかしその反応は意外だったので素で返したが……生徒会長なんだし、知っていると思ったんだがな。
「ええ。轡木さんが「どうしても知りたいなら桂木君本人に聞きなさい」って言われて」
「いや、それでも先輩とか布仏とかに聞けるだろ」
「それがどうやら口止めされているみたいなの」
それは意外だった。先輩は口が堅いだろうけど更識には報告しているものだと。
「まぁ、説明してもいいけどさ―――はっきり言ってチート機体だな。最近じゃSRsのバトルシステムも発達して「脳内操作システム」っていうのが三年前のアップデートで使えるようになってさ。それ以降、小型の武装が搭載された機体が出るわ出るわ」
それに出すつもりで考えたのが今渡しているクロガネだったりする。
「小型の武装って?」
「ファ○ネルとかガンバ○ルとか」
「前者はわかったけど、最後のは何かしら?」
動画検索でそれを見せると納得してくれたようだ。
「まぁ、轡木さんの研究所だったら問題ないかもしれないわね。ただ、あなた自身にBT適正があるかどうかなんだけど……」
BT適性とはどうやらその小型武装を操るための適性値らしい。測った記憶がないのであることを願うのみだ。
「ちなみにセシリアちゃんのBT適性がAで二年生のサラちゃんを上回っているからセシリアちゃんがブルー・ティアーズを持っているのよ」
「……ということはあの女にもそういう武装があるわけね」
だとしたら俺にはデスティ○ーガン○ムぐらいの性能を持つISが必要なんですが。
「まぁ、完成してからのお楽しみってところかしら」
「そうだな」
そう答えながら、俺はある箱の鍵を開けてその箱を上下逆にする。言うまでもなく中に入っている手紙が入っていた。
『織斑君をわが部に入れてください…剣道部より』
『ぜひ織斑君をテニス部に!!』
本人が知らないところの申請なのは容易に想像できる。そういう意味では少しばかりだが同情してしまった。
(……なんというか、自分に関係ないところで自分が関係している話がでるのって同情するよな)
とここでふと、数日前のことを思い出した。
■■■
最近俺は更識に生身の方でお世話になっている。もちろん二人で組み手をしているだけでエロい状況なんて一切ない。
「私は生徒会の仕事があるから先に戻っておいて」
ということで更衣室の前で別れた俺はそのまま部屋に行く。最近ではやっぱり狭いからか男子指定の更衣室で着替えている女もいるので、そういう奴らのためにもシャワーは浴びずに退散しているのだ。……どう考えても向こうが悪いのだが、布仏に更衣室の事情を聞いてからできるだけ長居しないようにしている。
(そもそも、男子二人だけなのにあの空間を独占なのは……正直悪い気がする)
改めて思うのだが、もう少し男子指定の更衣室に工夫をするべきだろう。二人しかいないのにあれだけの空間は心苦しい…といってもやっぱり男女が同じ空間に長時間一緒にいるのは問題なんだろう。
だからカーテンを設置するなり、ドアを増設するなりと工夫すればいいと、今度の仕事の時に更識にプランを提出してみようか。
そんなことを考えていれば寮の前に着き、いつも通り中に入る。
ほとんどの生徒が食堂に行っているからか、あまり人がいなかった。
(……なんだか急にジュースを飲みたくなってきたな)
たまには炭酸飲料を飲んでも罰が当たらないだろうと思って自販機の方向に向かうと、見たことがある背格好をした長身女が男と話していた。いつもの織斑・篠ノ之コンビだ。
「ら、来月の、学年別個人トーナメントだが……」
無粋だと思って気付かれないように距離を取って聞く。ちなみに自販機はもう隣にあるが、聞いておいても損はないと思ったからだ。
ちなみに「学年別個人トーナメント」とは、篠ノ之が言っていた通り来月に行われる学年別のISの個人トーナメントだ。どうやら専用機持ちもトーナメントに組み込むらしいが、トーナメントは別にするべきだろう。……まぁ、例年専用機持ちは一人か多くて三人だと聞いているから別個に組もうにも人が足らないのだろう。更識曰く、「今年の一年生が異常」なんだそうだ。……確かに、俺はともかく織斑、オルコット、凰、そして四組の代表だもんな。案外更識簪が持っていたりして。
「わ、私が優勝したら―――」
ああ、これはあれか。
わざわざ自滅しに行くと言うのか、この女は。
「つ、付き合ってもらう!」
この瞬間、篠ノ之の玉砕フラグが建築されたのは言うまでもない。
自販機の方に移動しようとすると、視線の先に「良い事聞いた」という顔をしている相川と谷本が何かを離していた。
(何か嫌な予感がするな)
気にせず自販機のところに入ると、「ファンタズマ」を選んで買う。
そして戻ると、バッタリと篠ノ之と遭遇した。
「お、お前は……!」
「あ、玉砕女」
「まだフラれてないわ!!」
いきなり叫ぶ篠ノ之。いや、織斑に関してはもうフラれたようなものだろ。
そのまま通り過ぎた俺はそこから織斑と遭遇しないように気をつけながら自分の部屋に帰った。
■■■
とここで話がそれるが、考えてみれば布仏の友達が四組の代表で、更識簪が四組だったはずだということを思い出した。
(ということは更識簪が専用機持ちなんだろうか?)
そこまで考えるとスマホが震えだした。
作業を中断してスマホを持って部屋を出る。通話開始ボタンを押すと、向こうから布仏の声が聞こえてきた。
『あ、かっつん。専用機が完成したよ~』
そう言われて俺はガッツポーズする。
「わかった。更識に許可を取ってからそっちに行く。一度部屋に取りに行くものがあるから遅くなることを轡木さんに伝えておいてくれ」
『わかった~。それと、一つお願いがあるんだけど~』
「何だ?」
布仏って食事関係以外はあまり頼み事をしないタイプだし、まだお礼もしていないから大抵のことは聞くつもりだ。
『あのね、これからかっつんのこと、「ゆうやん」って読んでいいかな?』
…確かに「かっつん」は噛みそうだもんな。
「別にいいけど」
『じゃ、じゃあ、私のことも名前で―――』
「それは却下。じゃあ、またな」
向こうの返事も待たずに電話を切ると、ドアが開く。案の定と言うべきか更識がニヤニヤしていた。
「良いじゃない。名前で呼んであげれば」
「………それは無理だな」
「本音ちゃんのことが嫌いなのかしら?」
そう尋ねられ、俺は首を振る。
「そうだとしたらどれだけ楽だったんだろうな」
「だったら―――」
「でもそれだけは困るんだよ。不確定な未来を歩めないんだから、慎重になるべきだ」
すぐ近くにいたということは既に知っているんだろう。そう判断した俺は荷物を取りに一度部屋に戻っていった。
■■■
―――楯無side
「不確定の未来、か」
確かに桂木君の未来は不確定だ。自分が操れるであろうISを受け取ったからと言っても、絶対に生き残れるという保証はない。桂木君に専用機を用意したのは轡木さんの独断で、IS学園全体の意思ではない。私は賛成しているが、教員のほとんどは桂木君が専用機を持つことに対して反対しているのは知っていた。
(桂木君の事情を考えてみれば、それも仕方がないことなのかもしれないわね)
桂木君には後ろ盾がない。いや、成り得る人材は一人いるけど、気まぐれなのか、それとも厄介ごとが嫌いなのか拒否していた。
その真意は私にはわからないけど、ならない以上生徒会長としてやることは唯一つ。なんとしても、彼は守らなくてはならない。
そう決意を新たにしていると、最近虚ちゃんが改造したらしい私のスマホから着信音が鳴り響く。
「もしもし」
『会長。至急、来てもらいたいのですが』
「……もしかして、それって桂木君関係?」
予想通り、虚ちゃんは頷いたみたい。
『はい。テストは第三アリーナで行います。彼にはばれない様にお願いします』
「わかったわ」
そう返事して電話を終わらせ、提出するべき書類を持って生徒会室を後にした。