―――悠夜side
突然の更識の妹の出現。そして発覚する俺のライバル。
だけどそいつは同じ境遇だったという、いかにも展開あるある。
(………)
あるあるなんだけど、何でか彼女が求めているのは俺が考えたこととは違う気がした。
―――カシュッ
空気が抜けた音がしたかと思うと、先程の研究員たちがゾロゾロと姿を現した。
そして俺を見つけて一瞬気まずそうな雰囲気を出したが一転し、俺と更識(妹)を見て男たちは舌打ちした。そして女たちは―――さっきとは一転してキャーキャー騒ぎだす。
(シリアス的な雰囲気は何処に……?)
一瞬でキャッハウフフ的な展開となり、それぞれが俺たちの今後を話し始める。「簪×悠」とか「悠×簪」とか聞こえた気がした。
「ここは定石通り嫌がる更識ちゃんをメガネだと地味に見えて実はイケメンドS王子の桂木君が調教するのよ!」
「何を言っているのよ! どう考えても今のは姉の彼氏を強気なアタックで落とそうとする妹そのものでしょうが!!」
一瞬で二つの派閥に分かれる女たち。いや、本当にさっきまでのシリアスな雰囲気はどこへ消えた。
「というかそもそも女たちは俺の発言に対して疑問どころか殺意をわかせていないんですか!?」
思わず言ってしまったが、予想通りというかなんというか女性研究員ズはとんでもないことを言った。
「え? だって実際そんなことをしている女性を見たことあるから、男たちがそう思うのは仕方がないと思うわよ」
「まぁ、その度に私たちが邪魔してるけどさ」
「あ、そういえばそんなことをしている人いたよ~。邪魔したら「女としての誇りはないの?」って聞いてくるから「ISを作ったことがないんですね。ISの部品って結構重いからどうしても男手が必要なんですよ~。それに基本的に作業しているのって男ですし、第三世代機まで開発できたのは男があってこそですよ」って返しちゃった」
さっきまでの自分が恥ずかしくなった瞬間だった。思わずその場で頭を抱えてしまう。少なくともこの場にいる人たちは俺が知っているような人種じゃないのは確かだ。
そう思っていると、また空気が抜けたような音がした。
「……こっち、来て」
「え?」
急に引っ張られて後ろから「キャー!!」と悲鳴に似た歓声が聞こえたが、彼女に引っ張られ男子用に割り振られている更衣室の中に入る。
「って、流石にダメだろ?!」
「………?」
どうしてそこで首をかしげる? わけがわからずどう対応しようかと思っていると、更識妹はそのまま俺を奥の方に連れて行った。
それで一瞬さっきの女性陣の一人が言っていた言葉を思い出す。
―――姉の彼氏を強気なアタックで落とそうとする妹そのもの
お、落ち着け俺! いくらなんでもなんでもそれはないだろ。相手は美少女でそういうのが経験あるのなら俺とではなく別の奴としている―――正直言うと悔しいけどな!!
「と、というか更識さん? どうして俺だけをここに……?」
「………責任を取ってほしい」
「せ、責任……?」
そう言われて俺は記憶を遡る。俺は彼女とはさっき説明したところでしか会っておらず、深い関係にもなっていない。それなのに責任を取れと言うことは、
「待ってくれ更識。俺はお前の姉とは確かに暮らしているが誓ってお前が思っているようなことはしていない!!」
「………暮らし…てる?」
「……あれ?」
反応がおかしい。確かこの子は布仏と同室だったから知っているはずと思ったんだが。
(……もしかして、気分を悪くした?)
姉妹関係がどれだけ悪くなろうが、いきなり「あなたの義理の兄になる男」みたいなのを紹介されたら驚くのも無理はないだろう。もっと違うことを言えばよかったと後悔している。
「………あなたは、あの人のことが好き?」
「あの人って、姉の方か?」
更識は頷き、俺は冷静に考える。
いきなり誓約書を書かせた割には冷静だったし、結構普通に接してくるし、同じ部屋になったら意外にウマが合ってるし。
「好きか嫌いかで言うと、好きだな」
友人としてだろう。それに戦っていると妹みたいにゾクゾクさせてくれたし。
そんなことを思っていると何かを考えている更識妹。「厳選」がどうのこうの言っているのだが、どうやら人選を間違えたとか思っているのだろうか?
「二人きりで話がしたい。連絡先を教えてもらっていい?」
「………まぁ、いいけど」
お互いに連絡先を交換する。まさかたまたま同じゲームを予約して買っただけの関係から、連絡を交換する関係に発展するとは思わなかった。
■■■
悠夜と簪がそんな会話をしている中、後から出てきた虚と楯無、そして本音はその場で固まっていた。
いや、正しくは虚と本音が様子がおかしい楯無を観察していたのだが。
「……簪ちゃんが桂木君をお持ち帰り? もしかしてそんな仲で今も更衣室であんなことやこんなことでもやってるの?」
ちなみに研究員は十蔵が解散を促し、また十蔵自身も帰っているのでその場には三人だけだった。十蔵もさっきの光景を目撃しているが「後は若い人たちの問題だと思いますので」と言葉を残している。
「お姉ちゃん、もしかしてこれって~?」
「………おそらくは、簪様が桂木君を男子更衣室に連れて行ったことで変な妄想をしているのでしょうね」
虚は小さい頃から簪を知っていて、「kan-zan」の正体が簪だと言うことも知っている。そしてこれは楯無には報告していないことだが、かつて簪が「yua」こと悠夜に決勝で負けていることも知っていた。損傷率が80%になった瞬間に悠夜の機体の動きが変わり、それまで簪が圧していたはずなのに一瞬で返り討ちにしていたのだ。IS戦に例えるならば
(今までそんな経験があったわけでもない。ましてや簪様がすれ違い様に一目惚れをしておっかけをしていたわけでもない。だとしたら、桂木君とお嬢様の戦いを見て「yua」とわかったとか?)
色々考えている中、その思考は自分の主によって中断させられる。
「私も……私も混ざる!!」
「黙りなさい」
自分の主だというのに、遠慮なく気絶させる虚。こんな風景はもう見慣れたとばかりで対応が早い本音。三人の立ち位置を知るものならシュールすぎるだろう。
虚は考えるのを止め、気絶した主を部屋に届けるのだった。
■■■
―――悠夜side
翌日の放課後、早速連絡が入ったため俺は凰を慰めるのにも利用したカラオケ店に入った。
受付を突っ切り、指定された番号に入る。そこにはアニソン熱唱中の更識がいた。どうやらアイ○スか何かを歌っているようだが、アイドル系には全く興味がないのでわからない。もっと言えば、その辺りの二次と三次の違いがわからない。
歌い終わるまで待っていると、こっちに機械を渡してくる。
「……歌わない、の?」
「いいのか?」
「……ドリンクバーは二人分と、部屋代ぐらいしかないから………」
それだけで歌えたな、ここは。
そのことを思い出して俺はさっきまで聞いていた「Good ○nows」を入力して歌詞を確認して入れる。
すぐにかかり始め、マイクを持ってしばらく歌った。
「………うまい」
「そうか?」
マイクを置いてソファに座る。というか俺、つい歌ったけどここで呼び出されたのは別の理由があったはずだ。
「それで、どうして俺を呼び出したんだ?」
「………本音から、中国代表候補生のことは一通り聞いた。その上で、話を聞いて欲しい」
ということは恋愛関係か? 結局あれは玉砕したも同然だしなぁ。
一応頷くと、更識は話し始めた。
「……私は、三年前に……あなたと出会う前に誘拐されたことがある」
「そいつは穏やかじゃないな」
「…その時に、あの人……お姉ちゃんに助けられた」
まぁ、ない話ではないな。そもそもあの姉は妹のことを大事にしているし。………おそらく俺と密会しているなんて知ったら、理由を聞く前に俺を殺しかねない。
「……でも、その時に言われた」
―――あなたは何もしなくいいの。私が全部してあげるから
―――だからあなたは無能なままで、いなさいな
辛そうに述べる更識。だが正直、俺には更識がそう言ったのか怪しく思えた。
「先に言っておく。これは事実」
「………そうか」
本人がそう主張する以上、事実なんだろう。なのでこれは個人的に本人に聞くとしよ―――
「…だから、あなたの意見を聞いてみたい」
「…………………はい?」
「あなたには義理の妹がいることを知っている。だから、その立場で、どうしてお姉ちゃんが私にそんなことを言ったのか予想をしてほしい」
それを聞いた俺は額に手を付けた。
普通に考えてそれは難しい。確かに俺の周囲の中では比較的に仲が良い方だと思っているが、それでも彼女のことを100%把握できたわけではないからだ。
「真意を聞きたいなら、それこそ姉に聞けばいい」
「………そんなこと、できない」
「何で?」
「………」
………察するに、どうやら更識姉妹の家はただの裕福な家庭とかではないようだ。
だがそうだとしても情報が少なすぎるため、俺は「答えられない」と答えた。
「……どう、して?」
「情報が足りないんだよ。お前の姉はコソコソ裏で俺の情報を集めているみたいってことからは忍者とかスパイとか、それに関する何かっていうのは想像できるんだけど、いくらなんでもそれはないと―――」
「合ってる」
「え?」
更識が急に口を挟んだので言葉を止める。
「……正確には、私の家は……対暗部組織―――分かりやすく言えば、日本という居城を守るための忍者」
「……………いやいやいや、さすがにそれはないだろ……………ない、よな?」
いつまで経っても否定する言葉が一向に来ないので怖くなってきた。
「本当。……それに、お姉ちゃんは、その十七代目当主」
ついには肯定され、俺はもう一度考える。
(想像しろ。俺がその暗部の当主で、目の前の女の子が誘拐されるってことを)
幸い、俺には十分に想像できるほどの材料があったためすぐに結論が出た。
「あくまで個人的な見解だけど、二通りある」
「……何?」
「一つは自分たちと関わらず、早々に縁を切らせる方法だ。敢えて自分が嫌われ役になって、自分や周りを嫌悪させて家から出て行かせる。もしくは一般人と結婚させるか関係があるそれなりの家柄と結婚させるか……結婚に関しては後ろ盾という意味では後者だろうな」
だってお金持ちを敵に回したら融資とか受けられない可能性があるし。
「……もう一つ、は?」
「今の状況みたいに代表候補生となって力を付けて貰う。それこそ、自分をカス呼ばわりした姉を潰したいという欲望を持ってくれたらなおさら良いかもしれないな」
そう考えると更識が他国の代表になったのもある程度説明できる。その国でパイプを作り更識という家を大きくするのと、モンド・グロッソで戦えるチャンスを掴む為に努力すると踏んだかもしれない。
とここで、更識が昨日言っていたことを思い出した。
「そういえば昨日言ってたけど、織斑が更識の専用機の人員を奪ったって本当か?」
すると更識が頷き、説明を始めた。
「織斑一夏が持っている白式。私がもらうはずだった打鉄弐式よりも優先させられたのは…紛れもない事実」
「ただ、それを織斑が知っているわけがないんだよなぁ」
「……やっぱり?」
どうやら薄々感づいていたらしい。まぁ、女の噂の伝播速度って物凄く速いらしいからな。
「ところで織斑って、四組じゃどういう風に伝わっているんだ?」
「……それなりに人気。やっぱり、織斑先生の弟と、容姿」
更識も織斑の容姿はカッコいいと思っているので織斑を殺したくなってきた。いや、もうマジで。
「ただ、私は嫌い」
「専用機関係で?」
「………普通に考えて、試験会場に向かっているのにISに触れるのはどうかしていると思う」
今すぐこの子を抱きしめたくなった。そうだよね? おかしいと思うよね!?
とりあえず俺の性欲が暴走し始めているので仕方なく話を変える事にした。
「ってことは、今は専用機は別の研究所とかで開発待ち?」
「……今作ってる」
「ワンモア」
「作ってる。学園長に許可をもらって、優先的に整備室を使えるようにしてる」
それを聞いた俺は開いた口が塞がらなかった。
ということで話が進め安さを優先し、原作では妄言だったはずのあの台詞を直接言ったことにしました。そして主人公はここで更識家の秘密を知ったのですが、実はここまで、それらしい描写はなかったのでここで挿入したという次第です。
早く原作に戻りたい