あれからほんの少し時間が経ち、オルコットと凰の二人は山田先生と二対一で模擬戦を行った。
だが山田先生のIS操縦技量は全員にとって意外すぎるほど高く、専用機持ちの二人を圧倒した形となった。
そして俺はと言うとあの発言のせいで頭に大きなたんこぶができた。先生曰く「余計なお世話だ」らしい。
「さて、これで諸君にもIS学園の教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」
どうやらそれが目的だったらしい。そういえば山田先生は日頃からはいじられキャラとしてクラスでは立場を確立させていたが、それは本人には不本意だったようだ。
「専用機持ちは織斑、オルコット、桂木、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。織斑とデュノア、そしてオルコットと凰は10人、残り二人は9人で班を作って実習を行え。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな? では分かれろ」
すると一斉に女たちが織斑とデュノアのところへと集中する。俺のところには布仏と…確か、鷹月とかいった委員長タイプの女子がこっちにきた。
「この馬鹿者共が。さっき指示した通りに分かれろ。次にふざけたことをしたら今日はISを背負ってグラウンド百周させるからな!」
鶴の一声というよりも鬼の一喝ですぐに分かれる女たち。ですが織斑先生、この班に二人ぐらい泣きそうな奴がいるんですが。
「最初からそうしろ。馬鹿者共が」
布仏と鷹月は完全にとばっちりである。この二人ぐらいしかまともなことをしたないから仕方ない―――という言葉ですむわけがない。
「………やったぁ。織斑君と同じ班だぁ」
「セシリアかぁ……。さっきボロ負けしてたしなぁ」
「凰さん、よろしくね。後で織斑君のお話聞かせてよっ」
「デュノア君! わからないことがあったらなんでも聞いてね! ちなみに私はフリーだよ」
「……………」
「はぁ。何で私が桂木と一緒の班なのよ。嫌になるわ」
「ホントよねぇ」
今ほどボーデヴィッヒが羨ましいと思ったことはない。俺だってお前らみたいな奴よりも、布仏とマンツーマンであんなことやこんなことを、手取り足取り腰取り胸取りイチャイチャしたい。
「ええと、いいですかーみなさん。これから訓練機を一斑一体取りに来て下さい。数は打鉄とラファール・リヴァイヴがそれぞれ三機ずつです。早い者勝ちで好きな方を班で決めてください」
なので俺はこっそりとラファール・リヴァイヴをもらってきた。黒鋼は打鉄の発展型でもあるが、ウイング辺りはラファールの方からも取り入れているからだ。
「いってぇ! なっ……なっ、なんだなんだ!?」
織斑が何故か一人で騒いでいるが、気にせずにラファール・リヴァイヴの配置を完了させた。
『各班長は訓練機の装着を手伝ってあげてください。ぜんいんにやってもらうので、フィッティングとパーソナライズは切ってあります。とりあえず午前中は動かすところまでやってくださいね』
開放通信で山田先生が連絡してくる。とりあえずそれに従うことにした。
「じゃあ、今回は左端から順番に乗っていってくれ。装着と起動、そして歩行でできるならホバー移動だ」
「わかっているから偉そうにしないでよ、男風情が」
そう言ってくる女の一人。とりあえず一発殴りたくなっているんで殴らせろ―――とは言えないので我慢する。
「「「お願いします!!」」」
デュノアの方でそんな声が上がり、女たちが全員デュノアに右手を出していた。おいそこ、授業中だぞ。
だが織斑先生が行動を起こし、デュノアの班の女子たちは悲惨な目にあった。
「………虎の威を借る狐のように、織斑先生に頼むのもありか?」
「ちょっ、アンタ、それを本気で言ってるの?!」
「当たり前。ま、でも一人で大人数は大変だろうし、布仏と鷹月だっけ? その二人だけはこっちで見ようか」
すると全員の顔が青くなり、ラファールに乗っている女に至ってはキビキビと動きを変えた。
「ゆうやんのおに~」
「知略に富んでいるといえ」
そして次の番になったところで、アクシデントが起こった。最初の搭乗者が俺の指示を無視して立ったまま降りたのだ。
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「いや、あのさ、コックピットが届かないんだけど……」
「あ! あ~………」
一方、織斑班も同じようなアクシデントが起こっていた。
様子がおかしいと思ったのか山田先生は一夏の方に近づいて尋ねた。
「どうしました?」
「えーと、ISをしゃがませるのを忘れてしましまして……」
「あー、コックピットが高い位置で固定されてしまった状態ですね。それじゃあ仕方がないので織斑君が乗せてあげてください」
「………え?」
「な、何?」
「えええ~っ!? で、でも、超ラッキー!」
様々な反応をする彼らだった。
「だってそれが一番楽ですし、織斑君、白式を出してください!」
「ちょっ、ちょっと待ってください! どうしてそんなことをする必要があるのですか!?」
真耶が一夏に白式を出すように言うと、箒が食って掛かった。
「ISは飛べますから、安全にコックピットまで人を運ぶのに向いています」
「そんなことをしなくても、一夏が踏み台になれば済む話でしょう!」
そんな会話を繰り広げられているのを桂木班の女子が聞き、二番目の女子にアドバイスする。それをどうしようかと思っている悠夜に言おうとした矢先に先手を打たれた。
「よし、登れ」
「―――え?」
悠夜の提案に全員が驚く。
「の、登るって、コックピットまで?」
「もちろんだ。A○乗りは全員そうしている」
「何の話?!」
女の意見はすべて無視している悠夜。当然ながらそれに異を唱える女はいた。
「何でそんなことをしないといけないのよ! アンタが踏み台になればいいだけじゃない!」
「……はぁ」
「言ってんだ、こいつ」と言わんばかりの悠夜の態度にその女子は目くじらを立てて怒る。
「ふざけないでよ! どうしてあたしが上らないといけないのよ!」
「じゃあ、さっきの奴。登ってこれをしゃがませろ」
悠夜がそう言ったからか、その女生徒は切れる。
「そんなのアンタがすればいいじゃない!」
「何で? というか論点がずれてるからどっちかさっさとしてくれ」
長引きそうになるのを予感したのか、間に入ったのは本音だった。
「ゆうやん、私が先にするよ~」
「そうか」
それだけ答えて悠夜が乗るように促す。どうやら悠夜は本音にも登らせるようだ。
「ゆうや~ん。抱っこ~」
「自分で登れ」
「抱っこ~」
「登れ」
とうとう観念したのか本音は自分で登ろうとするが、一向に登れないので見かねた悠夜は脚部だけを展開して本音をコックピットに乗せる。
そして動かせるために少し離れると本音は一人で練習し始めた。
■■■
―――悠夜side
「お、織斑先生! 桂木が差別してきました!」
布仏が一人で練習を終えて鷹月に代わろうとしていると、一人の女子が大きな声でそう言った。
「……なんだと?」
「差別したんですよ! さっきまで私たちに厳しくしたのにその気持ち悪い女には態度を優しく接したんです! これって差別ですよね?!」
デュノア班のしごきの途中でデュノアに見て置くように指示した織斑先生がそんな主張を聞いて、ため息を吐いた。
「私にはもたついていた布仏を見かねて行動を起こしたとしか思えないが?」
「で、ですが―――」
「その前にだリアーデ、お前は先程桂木の指示を無視して立って降りたな。何故そうした?」
「そ、それは聞こえなか―――」
「開放通信でか?」
するとリアーデと呼ばれた女生徒は顔を青くする。あ、やっぱりわざとだったのね。
「仕方ない。お前たち7人は今から指示する人間と交代しろ」
「ちょっ、ちょっと待ってください! それって私たちが桂木のところに行くってことですか?」
どうやら俺を嫌っている人間は多いらしい。ちょっと泣きそうになった。
「じゃあ、こうすればいいじゃないですか? 俺は布仏だけを個人的に見ますので、俺の代わりに織斑先生が残りを見てください。さっきデュノア班にしていた分の倍をするとのことです」
「と班長が言っているが?」
「ゆうやん、しずしずを忘れてるよ~」
どうやら布仏は鷹月以外を見捨てる方針のようだ。たまに凄いことを言う布仏に対して、俺もそうだがメンバーは驚きを隠せない。
「そうだな。19人を見るのは少しばかり疲れる。何人かをボーデヴィッヒのところにも回そうか」
「でもボーデヴィッヒがそんなことをしますかね。俺のところを除けば一番遅いのはボーデヴィッヒですが」
「アイツを動かす材料はある。問題ない」
本人たちそっちのけで会議は進む。
「じゃ、じゃあ私たちは桂木のところへ行っていいでしょうか!?」
するとデュノア班の女たちは渡りに船と言わんばかりにそう言った。どうやらかなりきつかったようだ。
「頼めるか、桂木」
「そいつらが指示に従ってくれますかね?」
「し、従いますから一緒に練習させてください!!」
ということで俺は布仏と鷹月だけでなく、デュノア班のメンバーとも練習することになった。
ちなみにデュノア自身もこっちに貸し出され、俺とデュノアは何故か12人を一緒に教えることになったが、技量の高さからデュノアがメインとなり、俺は少し楽をすることになった。