IS~歪んだ思考を持つ男~   作:reizen

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#27 変態疑惑とウザイ女たち

 最近の昼休みは生徒会室で取る事が多くなったと思う。

 というのも食べてすぐに仕事に取り掛かることが多いので、基本的に洗面所やトイレ、シャワールームもあるこの生徒会室はある意味居心地がいい。

 

「ふーん、そんなことがあったんだ」

「でもなんか、織斑先生に同意されるのって気持ち悪い」

「助けてもらっているのにないでしょ」

 

 と言われても、実際のところ物凄く気持ち悪い。

 

「で、今日も俺はお手伝いか」

「ええ。虚ちゃんも抜けているからどうしても人手が足りないの。で、ここからが本題なんだけど」

 

 作業を開始しようとしたところで、更識はいきなり別件を話題にした。

 

()()君、実際のところシャルル・デュノアについてどう思う?」

 

 真面目な顔をして聞いてきたということは、それなりに危ない話題なのだろうということは容易に想像できた。

 ちなみに楯無が俺のことを名前で呼んでいるのはあのカラオケ店の時に「どうせだからお互いに名前で呼び合おう」ということになったが、未だに妹の方が俺のことを「桂木」と呼ぶ。まぁ、それが普通で楯無が異常なだけなのだが。

 

「正直なところ、男じゃないな」

「どうしてそう思うのかしら?」

「さっきまでIS実習を合同でしていた時に何故か密着してきたんだが、その時に女のにおいがあった」

「………密着、ね」

 

 最近の更識は正直どこかおかしいと思う。やはり校舎内にいるからか時たますれ違うのだが、俺と布仏が密着していることが多い為なんともいえない顔になっていることがある。

 

(いや、今回の場合は別か?)

 

 デュノアは一応男なんだし、それで「男同士は少し不謹慎」と思っているからだろう。

 

「まぁ、密着というほど近くはなかったな」

 

 その代わり何故か布仏の目が恐怖だったんだが。

 

「まぁ、その件に関しては後にするとして」

「後なんだ」

「ええ。後よ」

 

 有無も言わさない態度でそう言うと、更識はため息を吐いた。

 

「だが、転入できたということは政府も容認しているってことだろ?」

「それが問題なのよ。いっそのこと、彼が女だという証拠があれば話が早いんだけど………」

 

 と少しばかり物騒なことを言い出す更識。

 

「怖いなお前。暗部のプライドって奴か?」

「ええ、そうね。出し抜かれたら最後、きちんと蹴りをつけずに逃げた瞬間周りから舐められるわ」

 

 ……こいつ、どれだけ暗いことをしてきたんだろうか?

 勝手に戦慄していると、ある方法を思いついたが……うん。考えなかったことにした。

 

(いや、でも、なぁ………)

 

 実行をしようと思ったらできる。まだアドレスも残っているから尋ねることは可能だが、正直話したくない相手だから。

 

(……別の方法を考えるか)

 

 結局しばらく考えたが、マトモな案が出なかった。

 

「……悠夜君、頼み事をしたいんだけどいいかしら?」

「嫌な予感がするんだが?」

「そうね。あなたにとっては物凄く嫌な事ね。ただ安全性は高いわ」

 

 黙っていると楯無は一人で勝手に話をする。そして―――

 

「あなたに彼を探ってもらいたいの」

「それって俺がデュノアと同じ部屋になれってこと?」

「その点は大丈夫よ。織斑君が同じ部屋になっているから」

 

 織斑は篠ノ之が戻った後すぐに引越しとなったため、現在一人部屋になっているらしい。それに上層部―――つまりIS委員会から直々にそうするように指示があったようだ。

 

「それはかなり怪しいな」

「中には「怪しいなら二人目と一緒の部屋にすればいい」なんて意見があったようだけど、私が断ったから大丈夫よ。それに―――」

「それに織斑には世界覇者の姉がいて、手が出しにくい状況だから問題ないと判断されたわけか」

 

 本当にそうかと俺は疑問に思う。

 別に織斑を構うつもりなんてまったくないのだが、高々近接のみで世界覇者になっただけの女がそこまで怖いのかという疑問があった。権力云々でどうとでもなるし、仮に織斑と同じようなごり押しで来るならば、俺ならば勝てなくはないからだ。………つくづく俺はチーターだなと思う。努力したから手に入れたわけではなく、いつの間にか手に入れていた産物だ。もっとも俺はまだあの力を自在に扱えるわけではなかった。ビット操作ならばある程度はできるが、それでもまだまだだと思う。

 

「それにもあるけど、委員会は織斑先生のみを恐れているわけじゃないのよ。むしろ無視できない存在と認識はされているけど、本当に怖がっている相手は彼女じゃないわ」

 

 そんなことを考えていると楯無はそんなことを言った。

 

「じゃあ、誰だよ」

「…篠ノ之束」

 

 確かそれってISの―――というかISコアの製作者だったはずだ。だが俺にとってはそれだけの存在だ。

 

「その、詳しいことはいえないけど、世界自体はその存在を危惧しているわ」

「……ISコアは未知の存在であると同時に現存する科学や兵器すらも凌駕したからか」

「正解」

 

 だが、それが一体なんだというのだろうか? 確か篠ノ之束は篠ノ之の姉で………

 

(あれ?)

 

 ふと、登校二日目のことを思い出す。

 

 ―――そうだ。篠ノ之はアイツの妹だ

 

 そもそも何で織斑先生は「篠ノ之と篠ノ之束の関係性」を問われた時に「アイツ」なんて言葉を使った? というか誰に使ったんだ?

 だがその答えはすぐに出た。

 

「………なるほど。篠ノ之と織斑はただならぬ関係にあるということか」

「ええ」

 

 世界が危険視するということはそんな価値を持っているということなのだろう。俺の個人的意見はともかくだ。

 ということは織斑にはますます手が出せないわけだ。何だろう。アイツを二度と動けない体にしてもいい気がしてきた。

 

「話を戻すわ。悠夜君、ともかくあなたには「シャルル・デュノア君」のことを探ってもらいたいの。報酬は―――私の体で―――」

「却下だ」

 

 すぐさま俺は拒否する。

 

「これでもスタイル方が良い方だと思うのだけど……それと簪ちゃんみたいなほうがいいのかしら?」

 

 本音を言えば姉妹、そして更識と布仏二つとももらいたい。

 

「別に探ってやるさ。でもな、お前の体は割に合わないだろ」

「十分よ。むしろ今からでも―――」

「だから止めろって」

 

 脱ごうとする楯無を止める。まったく、何でこんな風になったんだよ。

 

「正直ね、あなたには感謝してるの」

「……なんで?」

「私と簪ちゃんを、きっかけがどうあれ今までとは少し違うけど、それでも一緒にいさせてくれたのはあなたのおかげなのよ」

 

 どうやら楯無にとってはそれはとても嬉しかったようだ。とはいえだからと言っても仲直りは時間の問題だっただろう。妹の方はその考えには至っていなかったが、俺がいなくても布仏先輩がいるのだからそっちに足は向いていたはずだ。

 

「だから、そのお礼ってことで」

「だから脱ぐなって言ってるだろ」

 

 大体俺は今ちょっと抜けない状態にあって、毎度毎度うなされるレベルのエロい夢を見させられているんだから、これ以上は見たくない。

 

「冷静になって考えろよ。別に俺みたいなのと寝なくても、織斑とか、他のイケメンとかでも相手にしてもらえるだろ」

「そうね。実際かなり告白されたし」

「何それ自慢?」

 

 俺なんてストーキングはされたが告白されたことなんて一度もないんだからな!! と叫びたくなるが、なんとか踏ん張った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 楯無に頼まれてそれとなく接しようとしたが、デュノアに近づくのはある意味困難だった。

 IS実習だけでも再び火がついた女子たちの軍団に妨害されるだけでなく罵倒、暴力なんて普通にされ、「デュノア君と一緒にいることが気に入らない」という理由で石を投げられ、放課後に「生徒会に出入りしている」という理由で呼び出され―――これってたぶん相手の方が半殺しにされても仕方がない気がするんだが、どうだろう? というか肝心の依頼者が障害になっている件!

 だがその転機は意外と早く訪れた。

 土曜日になり、俺は生徒会の仕事を少し抜けて第三アリーナに繰り出していた。

 

「だから、こう、ずばーっとやってから、がきんっ! どかんっ! という感じだ」

 

 これが上段から何かを振り下ろし、左、右とフック(だよな?)をする篠ノ之の教え。

 

「防御の時は右下半身を斜め上前方へ五度傾けて、回避の時は広報へ二十度反転ですわ」

 

 そしてこれがオルコットの論理的説明である。

 二人の説明を聞いてわかったことがある。

 

「やっぱり凰が早々に辞退したのは正解だったな」

「でしょ?」

 

 ちなみに「教える」のであって「恋愛」ではない。

 

「なぁ悠夜、今のでわかるか?」

「篠ノ之は論外だが、オルコットのは本当にざっくりとならわかるな。つまり防御の時は威力が相殺されるとはいえ正しい構え且つすぐに動ける体勢を。回避の場合も同じことだ」

「まぁ、及第点ですわね」

「ちょっと待て! どうして私が論外なのだ!!」

 

 むしろ擬音とあんな手振りで理解できるわけがない。なんてことは言えないので言葉を選んで説明する。

 

「篠ノ之の場合はただ相手を確実に仕留める―――言うなれば剣と拳を取り入れた動きに近い。相手が同じ接近型と言っても必ずと言っていいほど銃火器の装備はされている。それは篠ノ之も打鉄を乗っているのだからわかっているだろ」

「そ、それはそうだが……」

「で、肝心の部分だが―――不良同士の喧嘩ならともかくIS相手が弱っている限りそんな動きは必要ない。むしろそんな動きをするならオルコット相手にひたすら回避する練習や回避から攻撃する動きを身に着けた方がいい」

「……………」

 

 俺の説明に渋々といった感じで納得する篠ノ之。だがどこか不機嫌そうだ。

 

「すげぇな悠夜! やっぱり男同士はいいな!」

 

 その言葉で俺は凰を前に置いた。デュノアの奴、よくこんなホモ野郎と長時間一緒にいれる。

 

「お待たせ、みんな」

 

 どうやらデュノアが来たようだ。

 

「一夏、桂木君。ちょっと相手してくれる? 二人の機体と戦ってみたいんだ」

「わかった。じゃあまた後でな」

 

 そう言って先に織斑がデュノアと戦いを始めた。俺が拒否するタイミングすら取っていくとは、アイツは全然反省していない。で、言うまでもなく手玉に取られて惨敗していたが。

 そして俺は改めて断りを入れると、早速反省会が行われた。逃げたとか囁いている奴もいるが、今俺の機体の整備を担当するやつが別の方でかかりきりだから手間を掛けさせたくないだけだ。

 

「ええとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握していないからだよ」

「そ、そうなのか? 一応わかっているつもりだったんだが………」

「知識として知っているだけって漢字かな。さっき僕と戦った時もほとんど間合いを詰められなかったよね?」

「うっ………、確かに。『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』も読まれていたしな」

 

 二人の会話を聞いて思ったんだが、デュノアは教えるのが上手いみたいだ。二人の―――というかオルコットのポジションは危ういな。篠ノ之はもう教えずに自分のことをした方が良いだろう。幸い、胸は大きいし後は話を聞くという結構初歩的なスキルを身に着ければ妻としては完璧かもしれない。例え相手が織斑じゃなくても引く手数多なのは間違いない。

 

「一夏のISは近接格闘オンリーだから、より深く射撃武器の特性を把握しないと対戦じゃ勝てないよ。特に一夏の瞬時加速って直線的だから反応できなくても軌道予測で攻撃できちゃうからね」

「直線的、か………」

「あ、でも瞬時加速中はあんまり無理に軌道を変えたりしない方がいいよ。空気抵抗とか圧力の関係で期待に負荷がかかると、最悪の場合骨折したりするからね」

「………なるほど」

 

 どうやら俺の入る余地はないみたい(そもそも入る気すらないのだが)なので、一人で練習することにした。

 大型二銃身ライフル《バイル・ゲヴェール》展開し、射的訓練を始める。

 この《バイル・ゲヴェール》は実弾だけでなく、ビームも撃てるという優れものである。しかも高火力だ。

 一応今は出力を調整しているのでそこまで高いわけではない。わかりやすく言えば「実弾と火の球を噴く大型ライフル」と思ってくれればいい。というかそういう風に作られたようだ。

 

(しかし、試作想像段階だったものが何故?)

 

 黒鋼の武装は打鉄の初期装備である《葵》と《焔備》、そしてアサルトガンビットとシールドビットしかなかった。後でパイルバンカーの灰色の鱗殻(グレー・スケール)な拳銃とかを装備させようと思っていたようだが、《バイル》を初めとして様々な武装が存在していた。

 一次移行が終わる少しぐらい前から頭が割れそうな勢いだったが、終わったと同時にそれがなくなった。

 

(もしかして、その時にISが俺の頭の中をのぞいたのか?)

 

 考えてみれば少し恐怖ものだが、以前授業でそんなことを山田先生が言っていたことを思い出す。

 

 ―――ISにも意識に似たようなものがあり、IS側も操縦者の特性を理解しようとします

 

 一部省略されているが似たようなことを言っていた。つまりはそういうことなのだろうが、どうして未だに俺はISと会話をしたことがないのだろう。

 そんなことを考えながら射撃を続けていると、装甲に弾丸が当たった。どこかが模擬戦をしているようで流れ弾が当たったのだろう。

 最初はそう思ったが、徐々にこっちに連続して飛んできたので原因を調べようとすると、そこにはニヤニヤと笑いながらこっちに銃口を向ける女たちがいた。

 

(えーっと、教員は……)

 

 どうやら教員もグルらしく、笑いながらこっちを見ていたが目が合うと視線を逸らした。

 最近はSRsのステータスとして考え、見下すことで自尊心を満たして満足するようにしている。そうなるとどいつもこいつも三流なので逆に同情してしまう。

 

「こっちに見んな、ゴミ? それともゴミの分際で人間様に欲情してる? 引くわー」

「いやぁ。さっきからマトモに的に当てられなくてかわいそうだと思っただけだよ」

 

 まったく。何を勘違いしているのやら。

 大体お前らに欲情するなんて万に一つもありえない。あんな三下よりも凄い奴と同せ―――もとい、同居していて、禁欲しているんだから。

 

「はぁ? アンタより当てられるし―――」

「え? ミスっているからこっちに飛んでんだろ? それで当てれるとか、ウーケールー」

 

 刑事をやっているお嬢様に仕える毒舌執事のバリエーションの一つを使わせてもらった。

 

(しっかし、ざっと見た感じ二人か)

 

 実際五人くらいはいるが、戦うのは二人。黒鋼のスペックと武装バリエーションを考えると余裕と判断する。

 

「アンタ、ふざけてんの?」

「贔屓で専用機をもらったゴミのくせに粋がってんじゃないわよ」

「いやぁ」

「「褒めてない!!」」

 

 ところで何で後ろにいる奴らは逃げないのかね? 余裕のだと思ってんだろうか? 昨今の男は織斑みたいな奴とは違って卑怯戦法はむしろ十八番なのに。例を上げるならドッジボールで外野に男を数人配置させ、敵陣のエースが気になる情報を流したり、流して欲しくない情報を流したりするのは当たり前だ。

 

「どうやら調教が必要なようね」

「え? まさかあなたMなんですか? すみません、ちょっと俺は普通のがいいので」

 

 そんなことを言っていると打鉄を使っている奴が《葵》を抜いて俺に攻撃する。テレながらもラファール・リヴァイヴを使っているやつが援護する。

 

「ちなみに俺は今生徒会長と住んでいるんだけどさ、アイツって年相応なのかよく寝ぼけて俺のベッドに入ってくる」

「はぁ?!」

「妄想垂れ流してんじゃないわよ!!」

 

 何だ。楯無の盲信者ないのか。

 だったらここはサクッとやったほうがいいのだろう。

 

 ―――ドンッ

 

 ラファール・リヴァイヴのエンジンと装備をビット《ファスト・ファミリア》で破壊する。

 

「アンタ、何を―――」

「俺は大人しくしておきたいだけなのに」

 

 《葵》を奪うと消えた。そして打鉄の操縦者は《焔備》を展開して迎え撃つがこれも蹴り飛ばす。

 

「おいおい、これじゃあ「自分が弱い」って言っているようなもんだ」

「黙れゴミが! アンタみたいな汚らしい存在がいたら迷惑なのよ―――」

「実力がないくせに織斑君をないがしろにして! この変態色魔男!!」

 

 まだ信じているやつがいることに驚きを隠せないでいると、辺りが騒がしくなった。




はい。例にもよってウザイ女が絡んできました。というか、絡ませました。そしてたぶんSS系ではあまり見られないネタも使ってみました。
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