IS~歪んだ思考を持つ男~   作:reizen

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#28 滑稽な独仏コンビ

「ねぇ、あれって」

「うっそ、ドイツの第三世代型だ」

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど………」

 

 ドイツから転校してきたラウラ・ボーデヴィッヒの登場により、辺りの雰囲気が変わる。どうやら俺とは別の理由で織斑を敵視しているようで、彼女の視線も織斑に向いていた。

 どうやら織斑たちは射撃練習をしていたみたいだが、空気を読んだのかそれが終わってから話しかけた。

 

「おい」

「………なんだよ」

 

 俺の中では「構ってちゃんのウザイ奴」という認識になっているが、織斑も人は選ぶらしい。……まぁ、転校初日にビンタされたら誰だって嫌だよな。ビンタされて調子に乗るやつが俺が知る中でも10人はいるが。

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

 右肩に『レールカノン』をぶら下げて、いかにも動きにくそうな形をしているISを使って戦おうとするのだからよほど技量には自信があるようだ。

 

「嫌だ。理由がねえよ」

「貴様にはなくても私にはある」

 

 そう言えばボーデヴィッヒって織斑先生の元教え子だよな? ということは―――こいつも横暴なんだろう。

 何でISという兵器だけで女があそこまで歪めれるのか不思議で仕方がない。

 

「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業を成しえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を―――貴様の存在を認めない」

 

 その発言をして同時に調べた時のことを鮮明に思い出した。

 

 ―――第二回大会にも出場していたが、決勝の時に棄権している

 

 詳しいことは記載されていなかったが、どうやらそれが織斑が一枚噛んでいるようで、ボーデヴィッヒはその辺りの事情を知っているようだ。

 

「また今度な」

「ふん。ならば―――戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

 と同時にこっちに何かがやってきたのでそれを回避する。

 それを少し体をずらしていなそうとしていると何かが発射された音がして、続いてこっちにそれが飛んできたがいじめっ子の一人に当たった。

 

「………こんな密集空間でいきなり戦闘を始めようとするなんて、ドイツ人は随分と沸点が低いんだね。ビールだけでなく頭もホットなのかな?」

「貴様……」

 

 二人は―――いや、俺と当事者以外はまったく状況を理解していないらしい。

 気絶しているみたいなので放置。俺には関係ないんだから問題ない。介抱? 悪いが俺は俺に敵意を持つ奴に対して優しくない。他のやつが勝手にするだろう。というか、喧嘩を売ってきた奴を助けるほど俺は器が大きい人間じゃない。ロリになって生まれてくるんだったな。

 

「フランスの第二世代型(アンティーク)ごときで私の前に立ち塞がるとはな」

「未だに量産化の目処が経たないドイツの第三世代型(ルーキー)よりは動けるだろうからね」

 

 ちなみに本人たちはあの惨状に気付いていないらしい。真剣なやり取りがどうしてかとても滑稽に見えた。

 

『そこの生徒! 何をやっている!』

 

 さっきまで傍観気取っていた教師が慌てて仲介に入った。子飼いの生徒が俺を倒せなかったし、なにやら穏やかではなさそうな雰囲気があるからだろう。

 

「………ふん。今日は引こう」

 

 横槍が入ってやる気がなくなったのか、ボーデヴィッヒはあっさりとIS『シュヴァルツェア・レーゲン』を解除し、どこかへ行った。

 

「一夏、大丈夫?」

「あ、ああ。助かったよ」

 

 まだあの惨状に気付いていないようだ。もういいや、黙っていよう。

 

「今日はもうあがろっか。四時を過ぎたし、どのみちもうアリーナの閉館時間だしね」

 

 平日は遅くまでできるが、土曜日は従業員が一日だけ帰省するということもあって結構閉館時間が早い。

 

「おう。そうだな。あ、銃サンキュ。色々と参考になった」

「それなら良かった」

 

 どうやらあれで色々と学んでいたらしい。俺はその間はのけ者だったし、知らない。

 

「えっと……じゃあ、先に着替えて戻ってて」

 

 デュノアがそう言うと織斑が何故か不機嫌になる。やっぱり織斑はホモのようだ。

 

「たまには一緒に着替えようぜ」

「い、イヤ」

「つれないことを言うなよ」

「つれないっていうか、どうして一夏は僕と着替えたいの?」

「というかどうしてシャルルは俺と着替えたがらないんだ? 確か悠夜もだよな?」

 

 とどうしてか織斑は俺に話を振ってきた。女の子で美少女でロリで可愛いなら―――例えば凰みたいなのが無邪気に誘ってくるなら恥ずかしがりながらも着替えるが、こいつとは絶対に着替えたくない。

 

「ど、どうしてって、その、恥ずかしいから……」

「織斑がホモだから」

「俺はホモじゃねえ!!」

 

 全力で否定する織斑。だがお前の態度は誰もが「ホモ」と断言するにはふさわしいと思う。

 

「この際ホモ云々は置いといてだ。慣れれば大丈夫。さぁ、一緒に着替えようぜ」

 

 そう言って俺たちの体に触れようとするので、俺は遠慮なく目を潰してその場に放置した。

 

「大丈夫か、デュノア」

「あ、うん。っていうか、あそこまでしていいの?!」

「大丈夫だろ。ホモに尻穴掘られそうになりましたって言ったら間違いなく正当防衛だ」

 

 流石にそこまで大人は腐ってない、はず。言っている間に少し自信がなくなってきた。

 とりあえずデュノアが「機体の調整をしたいから」と言うのでひとまず鵜呑みにし、(本当は嫌だが)織斑を担いで男子更衣室まで運んでその辺りに適当に倒した。

 

「いってぇ!!」

「うるさい」

 

 いくら部屋に風呂があると言ってもシャワーで済ませれるならば済ましておく。シャンプーとボディーソープも持参しているから問題ないだろう。

 先にシャワーを浴びてから対デュノア用に下だけ半パンを履いて出ると、既に着替えを終えたデュノアと出くわした。

 

「か、桂木君……ま、まだいたの?」

「ああ。問題があるか?」

「い、いや、そういうわけじゃないけど………」

 

 それにしても異様に慌てているな。………まさか思うが本当に女なのか。

 考え事をしているとどうやらデュノアをジッと見ていたらしい。

 

「な、何か用?」

「いや、なんでもない―――というかデュノアって改めて観察すると肩幅が男って言うより女に近いな」

「―――!?」

 

 かなり動揺しているデュノア。どうやらマジで女みたいだが警戒してもあれなので気付かないフリをする。

 

「しっかし、ロリ巨乳にツンデレツインテと続いて男の娘(おとこのこ)と来たか。三次元もなかなか捨てたもんじゃないな」

「お、オトコノコ? ぼ、僕は男だけど、確かそれって(おとこ)(むすめ)って書くよね?」

「ああ。確か一見すれば女に見えるけど、本当は男の奴のことだよ」

 

 安心した風のデュノア。俺が気付いていないことを理解したようだ。

 

「よ、よく言われるけど僕は男だよ」

「………まぁ、織斑に掘られないように気をつけろよ」

「う、うん。じゃあ、僕はこれで―――」

 

 そう言ってデュノアは先に更衣室を出て行く。

 俺も着替え終わったので帰ろうとしたら、さっきデュノアがいた場所に暗めの色のハンカチが落ちていて、オレンジ色で「Charlotte」と刺繍が入っていた。

 

(「Charle」ではなく「Charlotte」、ね)

 

 考えるしぐさをしながら観察すると、監視カメラの位置に気をつけて写真を撮っておいてデュノアのところに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ということで行きたくもなかったが「1025」室の前にいた。

 さっさと用事を済ませたいのでドアベルを鳴らす。するとドアが開き、中から織斑が現れた。

 

「ゆ、悠夜………」

「前々から思っていたんだが、何でお前は俺のことを名前で呼んでいるんだ」

 

 いつもならここで「だって俺たち友達だろ」と吐き気がする言葉を平気で吐いてきそうなんだが、どういうことかそれがなかった。

 

(これはたぶんバレてるな)

 

 そう判断した俺はさっそくデュノアのハンカチを出した。

 

「これ、デュノアに渡せ」

「え? 何で命令口調―――って、シャルルに?」

「ああ」

 

 織斑は受け取ると何か考えるしぐさをする。そして、

 

「ちょっといいか。話がした―――」

 

 ―――ゴンッ!

 

 俺は思いっきり織斑の顎を殴り飛ばしていた。

 

「な、何するんだよ?!」

「悪い。俺の右手が勝手に殴った。ホモから逃げろと理性が叫んだ。ということで俺は逃げる」

「待て! 俺はホモじゃねえ!!」

 

 そう言って俺は逃げる。後ろで何か否定しているようだが、普通に考えてあれだけ男の体を触る奴は完璧ホモである。

 自分の部屋に急いで戻ると、今日はもう終わったのか楯無が布仏に勉強を教えていた。

 

「ど、どうしたの、そんなに急いで」

「ホモから逃げてきた」

「おりむーってホモなの?」

 

 ということだ「第一回織斑はホモだったら制裁会議」が始まるわけではない。というかさせないが、先の楯無に写真を見せることにした。

 

「楯無、実はおもしろいものを見つけたんだが、見るか?」

「面白いもの?」

 

 やはり気になったようで、俺はデュノアのハンカチとその刺繍を撮影している写真を見せる。

 

「……これって、「しゃるろっと」?」

「あ、読み方はそれでいいのか」

 

 楯無が俺を見て驚く。

 

「これ、偽造とかじゃないわね?」

「当たり前だろ。正真正銘の本物だ。なんだったら織斑とデュノアの部屋を家探ししてみればどうだ?」

「……ごめんなさい。でも正直驚いたわ。今度行われる学年別トーナメントが始まる前ぐらいに無理ならって考えていたくらいだから」

 

 まぁ、普通は無理だろうけどな。俺だってデュノアがハンカチを落としていなかったらこんな風にはならなかったんだから。

 

「まぁ、その評価は正当だから今は置いておく。だから楯無、とりあえずお前はデュノア社の社長の周辺を洗ってくれ。特にああいう金持ちは総じてリア充だから金に物を言わせて焼却炉にぶちこんでも足りないほど愛人ぐらいは作ってるだろう」

「……えーっと、今の発言に私怨が混じっている気がしたんだけど」

「気のせい気のせい」

 

 と言ったところで約一名静かなので様子を見ると、布仏は案の定眠っていた。どうやら疲れがたまっていたようだから仕方がないだろう。髪が少し湿っているのはシャワーは浴びているはずだ。

 布仏をお姫様抱っこして楯無のベッドに入れて寝かせておいた。

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