IS~歪んだ思考を持つ男~   作:reizen

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#33 果て無き欲望と喚く一夏

 ―――突然の爆発

 

 その出来事にラウラとシャルルは巻き込まれ、観客席にいる全員は唖然するか恐怖するかのどちらかの行動を起こす。中継室に設けられた実況台にいる実況者と解説者ですらもあまりの出来事に呆然とした。

 

「シャルル!!」

 

 高速切替(ラピッド・スイッチ)で予備の盾を展開したシャルルはなんとか着地するも、バランスを崩して膝を付いた。

 

「大丈夫か、シャルル」

「……なんとか、ね。でも、正直これは―――!!」

 

 シャルルはおそらく仕掛けたであろう人物を見た瞬間、一夏を突き飛ばす。同時にシャルルに熱弾が飛んで襲い掛かった。

 

「シャルル?!」

 

 その瞬間シールドエネルギーが0になってシャルルのラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡは活動を停止した。

 

「……悠夜、お前」

 

 発射されたと思われる場所を見ると、そこにはさっきまでシールドを展開して防御に徹していたとは思えないほどの威圧感を出している、二人目の男性操縦者―――《バイル・ゲヴェール》を構えた桂木悠夜の姿があった。

 

「何で、何でこんなことを……」

「戦いとは、常に二手三手先を考えてするものだ。目先の勝利に囚われ、俺を完全に警戒しなかったのはお前たちの敗因だ」

「じゃあ、あの時何もしなかったのは、最初からこれを狙っていたのか!?」

「ああ。とはいえ狙っていたのはボーデヴィッヒとお前だがな。まぁ、デュノアの能力を考えれば先に潰しておいても損はない。黒鋼ならばお前の白式ごときに遅れは取らない」

 

 そう宣言する悠夜。だが一夏の怒りは既に別のところにあった。

 

「………こんな、こんなこと、いくらなんでもこんなことってあんまりだろ!!」

 

 一夏にとって仲間諸共敵を倒そうとする行為は人としてあるべきことではないと思っていた。

 一夏の言葉が発端となり、観客席にいる生徒たちも囃し立てる。当然ながら観客席にいる大人たちもいい顔はせず、女権団の女たちは特に軽蔑の目を悠夜に向けていた。

 

「……ふーん」

「ふーんって、お前……!」

「その程度のことで怒るなら、俺たちが分かり合うことなんてまず無理だ」

 

 銃口を一夏に向ける悠夜。その目に迷いはないが、レンズに阻まれてそれ一夏にはわからなかった。

 

 ―――だが、その戦いに決着がつくことはなかった

 

「―――ああああああっ!!!!」

 

 突然の悲鳴に二人の男性操縦者は音源の方を向く。悠夜はすぐに近くにいたデュノアを鎖を投げ飛ばして絡ませ、回収する。

 シュバルツェア・レーゲンの装甲がドロドロになり、再び装甲が構築される―――否、構築されたのは装甲だけではなかった。

 まるで武人のような体つきをした女性の体系―――つまりまったく別の存在がまったく別のISを纏った姿になった。

 それを見た一夏は、一目散に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――何故だ

 

 何故私は、倒れている。いや、さっきまで負けていたはずだが、それでもまだシールドエネルギーの残量はあった筈だ。

 

 ―――何故、動けない

 

 突然の爆発は私とデュノアを巻き込んだ。

 織斑がそんなことをできるほど器用ではない。そしてデュノアが仕組んでいたなら私と距離を離して発動していたはずだ。

 そこまで考えた私には、ある一つの可能性を示唆した。

 

 ―――桂木悠夜

 

 二人目の男性操縦者であり、私にとって雑魚でしかない男。

 そんな男が私諸共デュノアを攻撃しようとした? そんなことあるわけが―――いや、あった。

 つい先日、私は桂木に力の差を叩き込もうとして日本の代表候補生を少し痛めつければ来ると踏んでいたからだ。桂木は本当に来て、私にやられた―――いや、やられたはずだった。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。君はなんてことをしてくれたんだ」

 

 あの騒動の後、私は拘束された状態で通信室で上官のブルーノ・ベルナー少将と話していた。

 

「何てこと、とは?」

「決まっている。昨日の模擬戦闘の件だ。君は日本の代表候補生の機体テストの妨害をしたというではないか」

 

 下手に抵抗されては面倒だからな。ちょうどいいと思い襲っただけだ。

 

「それに君は織斑千冬をまた軍の教官として迎える動きを見せているというではないか」

「それが何か?」

「何か、だと? ふざけるのも大概にしたまえ!」

 

 怒鳴るベルナー少将だが、私のやり方のどこか間違えているというのやら。優秀な教官を迎えることの何がおかしいのか。

 

「彼女は世界的にも有名な操縦者であり優秀な指導者だ。そんな人間を一国に加担させたら戦争は不可避だ」

「ですが!」

「ですがも何もない! 今回はこちらで対処するが、以後そのような素振りを見せた場合、君を消すこともやむなしとなるだろう」

 

 ふざけるな。私はただ軍を強化する為に動いているというのに、どうして認められないというのか。

 

 ―――力が欲しい

 

 教官を引き戻し、私の存在を絶対的なものとするため―――教官を認めさせられるほどの力が欲しい。そして、私を利用した―――桂木悠夜を葬る力が、なによりも欲しい!!

 

 ―――力を欲するか?

 

 突然、私に何かが問いかけてきた。

 

『願うか? 汝、自らの変革を望むか? より強い力を欲するか……?』

 

 当然だ。私は欲する。何も負けない力を、あるなら私がすべてを使う。

 

 ―――だから私に力を寄越せ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――悠夜side

 

 変貌したレーゲンを見た織斑はいつも通り突撃した。

 だが当然のように返り討ちに遭い、威力が高かったのか、ほとんどシールドエネルギーがなかったのかはわからないが、回避したときに左腕を少し切ったようだ。ま、なんとか無事ならそれでいいや。死体なんて見たくもないからな。

 いつものノリに戻っている俺がそんなことを考えていると、織斑は、

 

「それがどうしたああっ!」

 

 いきなり叫んで突っ込んでいく。あまりの馬鹿な出来事に呆れたがそれでも死体は見たくないという気持ちが強くなって織斑をチェーンアンカーで捕まえると打鉄がそれを回収する。篠ノ之箒が搭乗しているらしい。

 

(そういえば、次の試合はこいつらとだったな)

 

 主に俺のせいで準備していて、織斑が馬鹿なことをしていたので片思いの相手を死なせたくないから飛び出してきたんだろう。

 密かにアンカーを解除すると、織斑たちが痴話喧嘩(?)をはじめた。

 

「馬鹿者! 何をしている! 死ぬ気か!?」

「離せ! あいつ、ふざけやがって! ぶっ飛ばしてやる!」

 

 織斑は一体何に怒っているのだろうか? いきなりのことだから引き金が俺だとしてもこれは暴走だと思いたい。

 引っ張っていたデュノアを運んでそっちに移動すると、

 

「どけよ箒! 邪魔するならお前も―――」

「いい加減にしろ!」

 

 悲しそうな顔を一瞬したが、それでもビンタをする篠ノ之。これが若さか?

 

「なんだというのだ! わかるように説明しろ!」

「いや、ここでしたら教員の邪魔だろ」

 

 すかさず突っ込むと俺を睨んでくるが、デュノアが「桂木君の言うとおりだよ」と言ったので渋々俺たちは移動する。

 

「それで、一体なんだと言うのだ」

「あいつのあれは、千冬姉のデータだ。それは千冬姉のものだ。千冬姉だけのものなんだよ。それをアイツは………くそっ!」

 

 次々とアリーナ内に入ってくる訓練機が千冬姉とやら―――つまり織斑千冬の偽者に対して攻撃を仕掛ける。だが次々とやられていく姿はなんとも滑稽だったが、それを見ているついでにさっきの言葉の意味を考える。

 つまり織斑は自分の姉のデータを使われているのが気に食わないらしい。顔まで再現されているわけではないからはっきりとわからなかったが、前に織斑先生の戦闘記録を見たときの姿と瓜二つだ。

 

 ―――それは少し違うんじゃないか?

 

 そんな考えがよぎるが、会話は続く。

 

「お前は……いつも千冬さん千冬さんだな」

「それだけじゃねえよ。あんな、わけわかんねえ力に振り回されているボーデヴィッヒも気にいらねえ。ISとボーデヴィッヒ、どっちも一発ぶっ叩いてやらねえと気がすまねえ。とにかく、俺はアイツをぶん殴る。そのためにはまず正気に戻してからだ」

 

 そう宣言する織斑に対して、俺は反吐が出そうになった。

 

「理由はわかったが、今のお前に何ができる。それにお前がやらなくても教員たちで事態は収拾されるだろう」

「だから、無理に危ない場所へ飛び込む必要はない、か?」

「そうだ」

 

 むしろ篠ノ之は織斑に危ない目に遭ってくれないほしくないんだろう。暴力がなければいい奥さんになると思った。

 

「違うぜ箒。全然違う。俺が『やらなくちゃいけない』んじゃない。これは『俺がやりたいからやる』んだ。他の誰かがどうだとか、知るか。大体、ここで引いちまったらそれはもう俺じゃねえよ。織斑一夏じゃない」

 

 その言葉を聞いた俺は盛大にため息を吐いた。

 

「それがどうした。織斑、緊急事態だというのに頭がおかしくなったのか?」

「え? 何で―――」

「いや、違うな。お前の頭は最初からおかしかった」

 

 そう言って俺は織斑に向き直る。後ろでは訓練機が一機、VIP席に叩きつけられていたが興味がなかった。

 

「さっきから聞いてて思ったんだが、お前は何様だ? 自分の姉のデータが使われるのが嫌? わけのわからない力に振り回されているから気に食わない? それでここで「織斑一夏」じゃないとか、はっきり言ってどうでもいいんだよ。こんな時に面倒なわがまま言ってんじゃねえ」

 

 何か知っていると思って放置していたが、結局何も出さずに自分のわがままを言っただけだ。

 

「でもこれは俺が―――」

「だから知るかっつってんだよ。篠ノ之、デュノアと織斑を連れて行け」

「し、しかし―――」

「それとも俺が運ぼうか。もっとも俺が織斑を運んだらわざと高いところから、そして頭から落とすが」

「………わかった」

 

 いつの間にか気絶しているデュノアと、わがままを言い続ける織斑。とりあえず織斑にはもう頼らないほうがいいな。どうして織斑があんなにモテるのかわからない。

 

(とりあえず当初の目的を果たすとするか)

 

 《バイル・ゲヴェール》を展開して、俺は暴走しているレーゲンの頭部を撃ち抜いた。

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