IS~歪んだ思考を持つ男~   作:reizen

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この話は一区切り後のシーンでコロコロと視点が変わります。ご注意ください。


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一部内容を変更。
場面が切り替わるところへ目印をつけました。

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全体的な改修が終了。
作品の全体的な手直しはしていませんが、先にこっちを処理します


#55 動き始めるそれぞれの思い

 ここはどこなんだ?)

 

 それがまず、織斑一夏から出た疑問だった。

 空の青さと雲がまばらに散っているその具合がとても綺麗に感じたのもつかの間、一夏はハッと気がつき、自分が木の二つの枝の間に座っていることに気付く。

 目の前には白く輝いているという印象を持つ少女が踊りながら歌っており、一夏はそれをなんとなく眺めていた。

 

(………あれ?)

 

 気がつけば少女の歌と踊りは終わっていて、ただひたすら空を見つめていた。

 

「どうかしたのか?」

 

 一夏は思わずその少女に声をかけていたが、その少女は返事を返さない。「何かあるのか」と思い、一夏も同じように空を見上げると少女は言った。

 

「呼んでる……行かなきゃ」

「え?」

 

 不意だったので一夏はその少女に視線を向けたはずだが、視線の先には少女はいなかった。

 

「うーん………」

 

 少し考えた一夏は、やがてそれを止めてまた呆然とする。すると眼を覚まさせるかのように後ろからさっきの声とは違うものが聞こえた。

 

「―――力を欲しますか……?」

「え?」

 

 一夏が振り向くと、そこには剣を逆向きにして地に刺し、その柄に両手を添えた、白い甲冑に身を包んだ女性が立っていた。顔は兜とバイザーで隠されている為、下半分しか見えていない。

 

「力を欲しますか……? 何のために……?」

「ん? んー………難しいことを聞くなぁ」

 

 そう言って一夏は一度目を閉じ、意思を確かめるように言葉を口にした。

 

「……そうだな。俺は友達を―――いや、みんなを守りたいんだ。そのために力がいる」

「仲間を…?」

「仲間をな。ほら、なんていうか、世の中って結構色々戦わないといけないだろ? 単純な腕力じゃなくて、色々なことでさ」

 

 話しながら一夏は「そんなことを思っていたのか」と驚く。

 するとその言葉に反論するかのように後ろから一夏に声をかけられた。

 

「そう言うときに、ほら、不条理なことってあるだろ。道理の無い暴力って結構多いぜ。そういうのから、できるだけ仲間を助けたいと思う。この世界で一緒に戦う―――仲間を」

「そう……」

 

 女性は静かに頷く。その様子はどこか寂しそうだと一夏は思った。

 

「じゃあ、行かなきゃね」

「えっ?」

 

 後ろから先程の少女が現れ、一夏に声をかけた。

 

「じゃあ、行かなきゃね」

 

 一夏は振り向くとその少女は待っていたかのように右手を出す。

 

「ほら、ね?」

「お、おう」

 

 空気を読んでか一夏はその少女の手に触れ、二人の体が光りだしてそこから消えた。

 

(……しかし、マスターコア(あなた)は何を考えている?)

 

 二人が消えたところから視線を逸らし、天を見上げた女性の頬には涙が流れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、福音との戦闘は専用機持ちと教員たちの共同戦線で現場を持っており、千冬、真耶、箒は休憩を行っている。

 

「榊原先生、更識の方はどうなっている」

「それが、その場にいた布仏さんが人質に取られ、同じく連行されました」

 

 それを聞いた千冬は舌打ちをする。

 

(救援を出そうにも、このままでは余計な人質を増やすだけだ)

 

 現段階ではまともに動けるものはラウラぐらいだが、肝心の機体はない。

 女権団の暴走を止めるために更識が動いていることを聞いている千冬はそっちにかけるしかないと思った。

 

「アメリカ軍の方は?」

「先程準備ができたようで、現在こちらへと向かっているようです」

「………ならば、まだ望みはあるようだな」

 

 表面上はそう言っているが、まだ彼女の中では悠夜の存在が気がかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 急に視界が明るくなったかと思うと、すぐに周囲が暗くなる。

 そしてプラネタリウムで見た宇宙を彷彿させるように、ところどころに光が出てきた。

 

「………なんなんだよ、これ」

 

 確か俺は本音に押され、落ちたはずだ。そのはずなのだが……。

 

(迷い込んだ……のか?)

 

 そう思った後、俺の口から笑いが出てきた。

 

(……呆れた。呆れたぜ)

 

 任務に出て、織斑の暴走で破綻して、俺が殿として残ったら落とされて、そして義母たちに捕まったところを本音に助けられたんだっけ。それで俺は……結局、助かった命を無駄にした、ということか。

 IS学園に入学して以降、何度も死に掛けたけど、ようやく本当に死んだのだろう。

 

「………ふざ…けるな」

 

 そう思うと思わず口に出してしまうほどに苛立つ。あの時、何もできなかった自分に。そして、歪んでしまった世界に。

 

 ―――ですが、今のあなたではどうすることもできない

 

 急に声が聞こえてきた。

 思わず辺りを見回すと少し離れた場所が青白い色で明るくなり、そこから俺と同じ年齢くらいの女が姿を現した。

 

「………」

「そう警戒しないでください。私はただ、あなたに力を授けに来ただけですよ」

 

 それを聞いて、思わず反応してしまった。

 

「…力?」

「はい。あなたにしか制御できない強大な力を…」

「………そんなもの、本当にあるのか?」

 

 雑な口調だが、内心は高揚していた。そんなものがあるならばすぐにあの女共を駆逐できる。

 

「だけど、今渡すことができません」

「……何故だ」

「あなたの心が歪んでいるからです」

 

 ………こいつ、まさか俺の心を読んだのか!?

 そのことに対して戦慄していると、その女はにっこりと微笑んできた。

 

(……間違いないな)

 

 こいつ、心を読んでいる。

 もしかして俺の思考が「駆逐」に走ったから?

 

(………じゃあ、守る方か?)

 

 そんなキャラではないことは重々承知している。

 

(……いや、守るだろ)

 

 アレからどれだけ時間が経っているかわからない。

 だけど俺は無事なら……まだ助けられるならば、本音を助けたい。だから……

 

「………その力、守る為ならば使えるか?」

「……これはある種の禁断の力。守るのはもちろん、滅ぼすことにも使えます」

 

 一瞬「最初から渡せ」と思ったが、何故かそれを言うのは憚られた。

 

「だったらそれをくれ。俺はすぐに行く」

「わかりました」

 

 すると俺の右に先程目の前の女が現れた時みたいに青白い光が現れた。

 俺はそれの中に入るとさっきまでの黒いのが消え、砂浜に立っていた。

 

「見つけたぞ、桂木悠夜」

 

 途端に銃声が鳴り、俺の耳を何かがかする。

 だが、さっきとは違って恐怖も何も感じない。

 

「死ね!」

 

 勧告もなしに撃ってくる女たち。十数人は軽くいて、全員がほとんど一斉に俺に向かって撃ってきたのが、何一つとして届かずに反射していく。

 

「悪いが、お前たちに構っている暇はない」

「何を―――」

 

 途端に俺の背中から黒い翼が生え、羽ばたかせてそこから浮く。

 それをまるで化け物を見てくる女たち。

 

「に、逃がすな!!」

 

 アサルトライフルも準備していたようで、構わず撃ってきた。

 だが同じくそれも届かないみたいだ。

 

「さすがは俺の愛機だ」

 

 思わず口に出してしまうほど、今のテンションは高い。

 三年前、こいつを完成させた時に思ったことがある。

 

 ―――いくらISでも、この機体を再現するのは無理だな

 

 どれだけ技術をつぎ込もうと、空間を操作してエネルギーを集めたり、元から多大なエネルギーを濃縮して持つことなんて無理だと思っていた。

 それが今、現実世界で存在し、再び俺の力となっている。これでテンションが上がらない方がおかしい。

 ウイングスラスターが開き、パワー全開でそこから消えるように飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――僕はもうすぐ死ぬだろう。その時、君はとある人と形だけでいいから結婚してほしい

 

 その言葉で郁江の目が覚め、自分の今の状況を把握した。

 

 郁江の娘「幸那」は悠夜との血の繋がりはない。彼女は郁江が高校生のときに知り合った男との間にできた子供だ。

 たまたま高校一年の始まりに隣同士になったのがきっかけで話すようになったとある男子。アニメやライトノベルを好むと言う変わった趣味を持っていたが、郁江にとっては些細な問題だった。

 話している内に気が合った二人は、高校、大学と同じ学校に通い、結婚した。

 

 だが、そのことでよく思わない者もいた。

 

 郁江の容姿は悪くなく、高校時代では本人は気にしていなかったがとても美しく、成績も良かったことから高嶺の花と称されていた。

 だが幸那の父親以外に動く人間は多く、その中でも一人だけ郡を抜いて何度も告白してくる男がいた。

 その男の家が持つ会社はその業界ではかなり名の知れており、郁江自身もそのことを知っていたがそんなことに興味はなく、何度も振っていた。

 

「僕はもうすぐ、殺されるかもしれない」

 

 ある日、夫の言葉を聞いた郁江は動揺した。

 昔から予言めいたことを言う男ではあったが、それは流石に冗談だろうと思った郁江は聞き流していた。

 

 しかしその一週間後、彼女の夫は予言どおり帰らぬ人となった。

 そして郁江は修吾と出会う。

 

「初めまして、竹峰さん。武彦君から話は聞いていると思うけど、桂木修吾だ。僕の元にいれば君が迷惑している男との関係は絶たせられるよ。なぁに、精々僕たちが抱える問題と言えばお互いの子供たちがないかもしれないが惚れに惚れてどこぞのドラマみたいに愛の逃避行をするかどうかということだけだろうさ」

 

 そう調子よく言った修吾は、郁江に対して付け加える。

 

「別に僕は君のことに深く干渉する気はない。僕にも息子が一人いるけど、息子のことは完全放置で構わないさ。暴力も振るってくれても、傷つけてくれても構わない」

 

 郁江にとって修吾みたいな男は自分を狙っていた男を思い出すから嫌いだった。その息子も似たようなもので、同じく嫌悪していた。それが自分たちの―――復讐を誓った自分の唯一の安定理由を動かしたとなれば気が気でなかった。

 

(………減らさなければならない)

 

 男なんて少数で、自分たちが管理できる程度の人数で十分だ。郁江がそう思うようになってもう5年が経つようになった。

 

(もう一人も捕らえたし、二人まとめて売ればいいわね)

 

 郁江が総帥を務める女権団の対と為す男権団とは敵対関係であると同時に契約している。自分たちの邪魔となる女を渡すことでお互いの関係を保っていた。

 郁江は本音を人質にして簪も捕らえており、簪にも本音と同じように強力な媚薬を打ち込んで身動きを取れなくしていた。当然ながら簪の専用機も没収していた。

 だが何故か簪の専用機「武風」には瞬時の情報の更新が行われず、今もその処理が行われている。

 

(まぁいいわ。とりあえず今ある機体だけで動きましょう)

 

 その時、郁江しかいない総帥室にあるパソコンのスピーカーからアラームが鳴り、郁江はエンターキーを押して通信に出る。

 

「私よ」

『お休みのところ申し訳ございません。先程捜索部隊から報告がありまして、桂木悠夜の姿を発見したようです』

「そう。でもその様子だと逃したようね」

『……はい。どうやら別のISを持っているようです。そして現在、こちらへと向かっているとの報告を受けました』

 

 通信相手の女性から報告を受けた郁江は、その女性に指示を返した。

 

「すぐにこの艦に戦闘準備させて頂戴。私と幸那も出るわ」

『了解しました』

 

 郁江は立ち上がってすぐ隣の部屋で着替え、そのまま幸那の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、幸那は自分の部屋で休んでいた。

 だが様子はおかしく、先程から頭を抱えている。

 

「………何なのよ…あなた……」

 

 誰もいないのに幸那はそう呟く。

 だが幸那の視線の先には誰もいない―――もっともそれはあくまで他の人間が見ればの話だが。

 

『私はあなた。その体を返して』

「ふざけないで!」

 

 自分と同じ容姿をしたその少女の霊体に対して、幸那は近くにあった枕を投げる。だがその霊体には効かず、通り過ぎた。

 

『無駄よ。今すぐ私にその体を返して』

「黙れ!」

 

 今度は殴りかかろうとしたが当たるわけも無く、タイミング開いたドアから現れた人間につかまれた。

 

「何をしているのかしら、あなた」

「……お母様」

 

 幸那は自分の母親である郁江を見て一瞬でさっきまで出していた殺気を消す。

 それを確認した郁江は手を離す。

 

「何を考えているのか知らないけど、痛い目を見たくなければ余計なことはしないことね」

 

 手を離し、幸那を自由にする郁江。

 そしてさらに言葉を足した。

 

「それと不純物がこっちに向かっているわ。すぐに準備しなさい」

『待って!!』

 

 霊体の少女が郁江を呼び止めるが、聞こえなかったのか郁江は無視してそのまま廊下へと出る。

 その様子を見て幸那は笑い始めた。

 

「ザマァないわね、あなた」

『………うるさい』

 

 幸那はそう言ってドアを開け、霊体に言った。

 

「まぁ、楽しみにしていなさい。あなたの大好きなお兄ちゃんの首を持ってきてあげるわ」

 

 そう言い残した幸那は郁江に続くようにその場に自分の姿をした霊体を残して部屋から出て行った。

 

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