機能が完全に停止し、待機状態に戻る黒鋼。
幸那を掴んだ悠夜は黒鋼を回収し、幸那を海に捨てた。
『悠夜、その娘は回収しておけ』
通信機から陽子の声が聞こえるが、悠夜はそれを無視し、虚空から二丁のロングライフルを展開する。
それは中央部がジョイントで接続されており、片腕でも持てるタイプだった。
それを標的もいないのに、悠夜はある場所に向ける。
「行け」
砲口から光が飛び、空へと消えていく。
同時にルシフェリオンの翼が広がり、光の後を追うように悠夜は飛んでいった。
「……行きおったか」
その姿を画面で見ていた陽子は残っているであろう潜水部隊を向かわせようとすると、
「見つかりました! 簪様! ISが見つかりました!!」
部隊の一人が水を滴らせたままデッキに来て、簪に武風を持ってくる。勢いに流されてそれを受け取る簪。その時に二人の手が触れる。
「………ありがとう」
その時にわずかにハニカんだ簪を見た男が「いえ。これくらいは」と言ってその場から去り、ハイテンションのままその場から去った。
裏で嫉妬むき出しの部隊員に暴行を加えられているが、それに気付かない簪は武風の調整を見る。
「師匠。私が、あの二人の救助に行ってきます」
そう言ってISを展開し、桂木親子がいる場所へと飛んでいった。
■■■
その頃、福音との戦闘を行っている専用機持ち、そしてシュヴェルトパッケージを装備した玉鋼を使用する千冬に、の連合部隊はアメリカの編成部隊を待ちつつも戦闘を行っていた。
「うぉおおおおッ!!」
一夏が突っ込み、福音が回避したところを千冬が死角から攻撃を食らわせる。その後ろを真耶とセシリア、そしてシャルロットが攻撃していく。
福音はその包囲網を突破すると上から鈴音が《双天牙月》を振り下ろした。だがそれを体を捻って福音は攻撃を回避する。
「ああ、もうっ!」
そして福音はランスを展開し、鈴音の喉を突く。先端の刃が届く前に千冬が物理ブーメランを持って間に入る。
「無事か、凰」
「は、はい」
鈴音はすぐにそこから離脱。それを確認した千冬は次々と繰り出される槍を弾いてバランスを崩させ、示し合わせたかのように真耶が援護する。福音はそこから離脱し、距離を取って《銀の鐘》を稼動させた。
二次移行し、銀の鐘も威力が上がっているだけでなく、非実体の翼から無制限に光弾が放たれる。
全員がその場から離脱し始めると、その先を狙って福音は光弾を撃つ―――かに思われた。
―――ズガァンッ!!!
いきなり福音の後ろから二本のビームが直撃し、広範囲に撃つ為に伸びていた非実体の翼が一瞬で消え去った。それもそのはず、直撃したのは翼の付け根だったからである。
その影響か周りの装甲も段々と爆発し、専用機持ちたちを苦しめた福音はたった二撃で満身創痍となった。
『……La……LaLa…』
「―――何処を見ている」
瞬間、黒い翼を背負った悠夜がフェードインして福音に触れる。そして福音は粒子へと変換していき、それが悠夜に右手に集まって一つの結晶と化した。
悠夜は左腕を伸ばし、落下する女性を受け止める。
「………悠夜、お前、無事だったのか?」
「何だ? それだとまるで俺が無事じゃ嫌だったような言い方だな」
「そ、そんなんじゃないって!」
咄嗟に否定する一夏を見て悠夜はため息を吐く。
「って、アンタ。その機体どうしたのよ」
「……………」
指摘されて悠夜は一瞬で赤くする。その様子に疑問を持った周りは首を傾げたりとした。
悠夜が指摘されて赤くなったのは、単純に今使用している機体が中二病全開の機体だからである。
「まぁ、ともかく帰るか………」
そう言ってその場から離れようとする悠夜。だがすぐに動きを止め、持っていた福音の操縦者「ナターシャ・ファイルス」をその場から捨てる。
「危ない!」
鈴音はすぐにナターシャを回収し、悠夜に何かを言う。だが悠夜は既に聞いておらず、結晶を捕まえている機械を誰もいない場所に放った。
すると急に機械から電気が溢れ出、日々が入り、爆発した。
「ちょっ、何よ」
「一体なんですの……」
結晶が光を放ち、周辺を照らす。そのまぶしさが故に全員が自分の目を光から隠す。
やがてそれが消える。光源となった場所には何もおらず、その代わりなのか上から光弾が降り注いだ。
全員が回避運動を行い、千冬は真耶に指示した。
「凰、すぐに戻れ。ファイルスが危険だ」
「わ、わかりました」
鈴音は言われた通り、その場から離脱しようとするが、形が変貌し翼が増えた福音が立ち塞がった。
「鈴!」
一夏は
鈴音は死ぬかもしれないと思った。甲龍自体が機動力に特化しているわけでもなく、タイミング的にも逃げ切れないからだ。だが―――
―――ガッ
福音は自身の手首から伸びる爪を振り下ろそうとした瞬間、後ろから鎌によってその動きを止められた。
「………ゆ、悠夜……」
鈴音が自分たちを助けた姿を確認し、その名を呼ぶ。悠夜の手からは文字通り鎌が伸びており、今も福音の動きを止めていた。
「うぉおおおおおッ!!」
その隙を狙って一夏は鈴音たちを助ける為に特攻をかける。だが悠夜が左手を一夏に向け、ロングライフルを展開して一夏を撃つ。
「一夏ッ!?」
「一夏さん!!」
一夏はそのまま吹き飛ばされる。海面にぶつかるギリギリで体勢を立て直す。
「貴様! とうとう狂ったか!!」
箒は叫び、悠夜に向かって《空裂》を振るう。だが悠夜は特に反応を見せず、それにロングライフルの銃口を向けて相殺した。
「命令を間違えているぞ、織斑千冬」
そう言って悠夜は鎌を振るって福音をぶん投げた。
「―――全員邪魔だ。帰投しろ―――俺だけで十分だ!」
福音は悠夜に向けて銀色の球体を生成し、光線を放った。それを悠夜は左腕を向けると装着されている籠手が反応し、装甲が開いてエネルギーを吸収していった。
福音はすぐにその攻撃を止めるが、球体はすべて吸収されていき、福音が出していたエネルギーはすべて持っていった。
「な、何なんですの……あれは」
思わずセシリアは口に出してしまう。それほどまでに彼女に―――彼女たち専用機持ちにとって悠夜の機体「ルシフェリオン」は異常なのだ。
「だからと言って、黙ってみているわけにはいかない」
「待て、篠ノ之!」
箒が悠夜たちのところへと向かう。千冬は声をかけるが、彼女の耳には届かなかった。
箒は福音に向けて《空裂》を振る。《空裂》から飛び出したエネルギー刃は福音にぶつかるが、当の福音には何の変化もない。ただ悠夜にのみ攻撃を仕掛ける。
それが箒には気に入らず、箒は容赦なく攻撃した。
「止めろ箒!」
一夏は箒の前に現れ、白式が
「退け一夏! こいつは私が―――」
「落ち着けって箒! どうしてそう無茶をしようとするんだよ!」
瞬間、二人がいる場所を一夏に背中を向ける形で千冬がシールドを持って流れ弾を防御し箒を一夏が掴んでいることを確認してそのまま二人をみんながいる地点へと投げた。
そして千冬もそこから離れると、福音がそこを通った。
「全員、今すぐ帰投しろ」
「なっ?!」
千冬もみんながいる地点に合流すると、はっきりとそう言った。
そのことに信じられずにいる箒は反論する。
「待ってください! あのまま危険なあれらを置いて行くと言うのですか!」
「そうだ」
はっきりと告げる千冬になおも箒が食い下がろうとした時、千冬の元に通信が入った。
『織斑先生、応答してください!』
「更識か。無事に脱出できたんだな」
『…はい。本音…布仏さんもいます』
声の主が簪と知った千冬のテンションが少し上がったが、すぐに平静を保つ。
「………そうか」
心の中で二人の無事に胸を撫で下ろす千冬に対して、簪は指示を出した。
『織斑先生、今すぐその場から……いえ、花月荘に戻ってください。彼がそこにいるのならば長くその場に留まるのは危険です』
「…桂木に関して何か知っているのか?」
『……はい。おそらく今彼が使っている機体は我々の常識を遥かに越える機能を有しています。操縦者の命とISコアはもうないものと思ったほうがいいでしょう』
千冬は鈴音の方に視線を向ける。
「了解した。これより帰投する」
「織斑先生!」
「くどいぞ篠ノ之。確かに桂木の機体は問題だが、今お前がしようとしているのは命令違反だ。それに奴は一人でいいと言った。つまり何か策が―――」
悠夜がいると思ったところに千冬は視線を向けると絶句した。
そこにいたのは確かに悠夜が駆る「ルシフェリオン」と福音がいた。いたにはいたが、当の福音は
■■■
―――何なんだよ
―――何なんだよ……こいつは……
その部屋は荒れていた。
中央にいる女性が原因であり、怒りをぶつけたが故の結果である。原因は言うまでも悠夜にあった。
―――お前はもうとっくにくたばっているはずだろ!!
その女性こと束はそう思わずにはいられなかった。
確かに彼女は福音を暴走させ、黒鋼の絶対防御を無効化させて福音に無理矢理殺させた。今もその福音はわずかに命令を拒否しようとするが、それを上回るスピード命令を書き加えていく。
「ちゃんと葬ったはずだ………なのに……」
―――何でそんな機体を持って現れる?!
瞬間、束が見ているモニターに灰色の嵐が起こる。すぐに束はコア・ネットワークにアクセスし、紅椿、白式、玉鋼、ブルー・ティアーズ、甲龍、ラファール・リヴァイヴCⅡから見ようとするが、電波障害が起こっているのか確認できなかった。
「…………一体、何がどうなって……」
―――わからない わけが、わからない
福音以外の部分の画面が復旧する。しかしそこには束が知りたい情報はなく、あるのは悠夜が飛び去っていくところだった。
■■■
福音を上半身と下半身の二つに分けた悠夜は、使用した「ダークカリバー」首と胴を切断した。
(さぁって、コアはどこかなぁ)
邪悪な笑みを浮かべる悠夜。そして、ルシフェリオンにも宿る「サードアイ」を発動させ、コアの位置を探る。
すぐに見つけた悠夜は頭部を貫きそこにあるコアを握り締める。
「じゃあな、ゴスペル。テメェの戦いを楽しもうって努力したけど……クソ詰まんなかったわ」
そう言って悠夜はコアを握り潰し、頭部を腕を振るって開放させ、ロングライフルで先に落とした装甲を巻き込んで撃ち抜き、爆発させる。
そして「仕事が終わった」という態度で翼を広げ、その空域から離脱した。