IS~歪んだ思考を持つ男~   作:reizen

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うん。前よりも酷くなっているな、文章。
これもやらなさ過ぎる影響か。


#59 蠢く思いと企みと

 夜。状況報告を終わらせ、後処理を悠夜のこと以外は終わらせた千冬は一人近くの森に足を踏み入れていた。

 彼女は帯刀しており、既に殺気を放っていた。

 

「やぁ、ちーちゃん。……って、どうしてそんなに殺気を放っているの?」

「お前に会うためだ」

「へー………え?」

 

 瞬間、千冬は鞘から刀を抜き、束を斬ろうとした。

 だが束はそれを回避し、距離を取る。

 

「ちょっ、ちーちゃん。いきないどうしたの?」

「どうしたも何もないだろう」

 

 千冬は確信していた。今回の暴走事件は束が関与していることを。

 それゆえにいくらほかの人間が作ったとはいえISが圧倒的な敗北をしていることも承知しているはず、と予想していた。

 

「自分の作品が負けたからと言って、負かした人間を消しに行くつもりか?」

「………さっすがちーちゃん。よく気付いたね」

 

 束はそう言って息を吐き、本音を漏らした。

 

「まぁ、最初から邪魔だったんだけどね。アレを見ていると、10年前を思い出してしまうから」

「………剣嗣のことか」

「そうだよ。まるでアイツが生き返ったみたいでさ、本当に腹が立つ」

 

 一瞬、ほんの一瞬だけ束の瞳から光がなくなったが、すぐに千冬に笑顔を向ける。

 

「でも、ちーちゃんがそこまで庇うなら今回は引いてあげるよ」

「…………ああ、そうしろ」

 

 束はすぐにそこから去り、千冬は近くの木に背中を預けて座った。

 

「…………疲れたな」

 

 ふと、千冬は上を見る。満月が千冬を明るく照らし、彼女の頬には目から出た涙が伝っていた。

 彼女は好きだった。剣嗣という男を、おそらく当時の誰よりも愛していただろう。

 

「………どうして死んでしまったんだ……剣嗣」

 

 その様子を見ていた一人の男性はまるで興味をなくしたかのようにその場を去り、空中に投影されたディスプレイに映る数値を見る。

 

「流石は僕の子、ということか」

 

 その男の手の中では先程まで悠夜が使っていたルシフェリオンのプラモデルがもてあそばれている。

 

「とはいえ、まだすべてはの力を出し切っていない。いや、フィールドが世界そのものだから出し切ることが恐いのかな」

 

 すぐ近くに千冬がいるが、その千冬自身は過去のことを思い出して周りへの意識が削がれていた。

 

(……しかし)

 

 期待はずれだと言わんばかりに失望の眼差しを千冬に向ける。

 しばらくするとその男もそこから軽やかな動きでその場から離れる。

 

「さて、これからどうするつもりだろうな。世界は」

「―――どう転んでも、結局は消える運命でしょ」

 

 男の後ろから声がし、少年が上から着地して男を見る。

 

「こんなところを見られたら、さすがにまずいんじゃないかい?」

「心配はご無用さ。それに、その言葉はこっちのものだよ。それともあえて言っていった方がいいかい? 「死人は大人しく眠っていろ」って」

 

 少年の言葉に男はクスリと笑った。

 確かに男は死人だ。だがそれはあくまで世間一般での認識であり、確かに生存している。

 

「でもまぁ、僕としてはどうしてあなたが生きているかは知っておきたいかな?」

「簡単なことだよ。女権団のトップである彼女は薬物で意識が飛んでいる。君がいるということはおそらく亡国機業(ファントム・タスク)のお得意さんってところだったのかな?」

 

 すると少年は男と同じように笑った。

 

「ご名答だよ、お父さん。いつから気付いていたんだい?」

「義理でも幸那ちゃんは僕の娘でもあるからね。それに大切な友人の娘でもある。僕は惜しい友人をなくしたよ」

「自分が()ならばそんなことはさせなかった、とでも思ってる?」

 

 少年の質問に男は笑って答えた。

 

「どうだろうね。少なくとも、男性操縦者は織斑()()だっただろうね」

「あははは。それは言えてるよ」

 

 少年は笑い終えると懐からある物を取り出し、それを男に放った。

 

「彼女たちに飲ませてくれたら症状は安定すると思うよ。特に、娘の方は」

「…ありがとう」

「どういたしまして」

 

 急に男の周りから黒い何かが現れ、それが男を纏ったかと思うとその場から跡形もなく消えた。

 少年はそれを見た後、先程まで二人の女傑たちがいた場所に視線を向ける。

 

「………まぁ、どう動くにしても「織斑」と「篠ノ之」が危ないのは確定なんだけどね」

 

 誰に聞かせるわけでも呟いた少年は男と同じようにそこから消えた。

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 福音との戦闘があった翌日。

 IS学園の用務課に一本の電話が入った。

 

「はい。こちらIS学園用務課ですが」

『久しぶりだな、轡木十蔵』

 

 相手の声を聞いた瞬間、十蔵の口が引きつった。電話の相手が彼が知る人物であり、電話がかかってくる時は大抵厄介な話しかしないからだ。

 

「こんな時期に一体何の用ですかな、委員長。それにこちらはまだ朝の8時ですが?」

『今回の件は急務なのでね。で、君は今回の件に関わっているのか?』

 

 IS委員会委員長――チェスター・バンクスの質問の意図を察した十蔵だが、はぐらかすように答えた。

 

「はて? 一体何のことやら。銀の福音の件でしたら当然関わっているのですが」

『惚けるなよ。昨日、福音(ゴスペル)を倒した機体の件だよ』

 

 十蔵は内心「やはりか」と思ったが、悟られないようにする。

 

「ああ。織斑先生から聞いています。確か桂木君が使っていたって話でしたよね?」

『そうだ。貴様のことだから何か知っていると思ったのだがな』

「いえいえ。私も知らなかったですよ」

 

 そう答える十蔵に対し、チェスターはため息を吐いてから命令した。

 

『まぁいい。彼に関しては私が処理しよう。君の子飼いにしたようだが、邪魔はするなよ』

 

 一方的に電話を切られた十蔵。その後ろからクスクスと少女の声が漏れたからか、振り返る。

 

「用事は正規の手続きを行ってからにしてもらいたいのですがね、陽子さん」 

「細かいことは気にするな、十蔵」

 

 笑顔でそう答える悠夜の祖母だが老体には全く見えない桂木陽子。慣れているのか、十蔵は慌てて警備員を呼ぶなんてことはしなかった。もっとも、IS学園にいる警備員よりも十蔵が強いのだが。

 

「さっきの電話、あの若造からじゃろう? 何をするつもりじゃ?」

「どうやら悠夜君本人に接触するつもりですよ。接触というより強制送還するでしょうけど」

 

 十蔵の推論も交えて話すと、陽子はまた笑い始めた。それほどおもしろかったのだろうが、十蔵にしてみれば奇妙なことこの上ない。

 

「それは難しいじゃろう。入学した時ならばともかく、今ならば間違いなく不可能に近い」

 

 断言する陽子に対し、十蔵は反論する。

 

「何故そう言いきれますか? 流石の彼とは言え、人に向けて兵器を使用することなんてありえない」

「普通ならばという話じゃ。だが悠夜はこの二ヶ月と少しの間、何度も大人に裏切られておる。あのラウラというロリ娘を回収したときのこと以外は、救援の遅さに余計な邪魔、もっと言えば女権団の強襲に警察も一部とはいえ動いていたらしいのう」

 

 そこまで言われた十蔵は先程までの笑顔が消える。同時に室内に殺気が充満した。

 

「一体あなたはどこまで知っているのですかね。それに今回の件は機密事項に触れると思いますが、はてさて、誰が漏らしたのやら」

「あの牛乳メガネは無防備すぎるぞ。もう少し鍛えさせた方がいい。まぁ、それはこの学園にいるすべての生徒に言えるがの」

「………なるほど。あなたの催眠術ですか」

 

 それならば納得だと言わんばかりの十蔵に対し、陽子は「もちろんじゃ」と答えた。

 

「あまり多様しないでもらいたいですね。あなたの催眠術は私たちでも回避が難しいのですから。もちろんですが、生徒たちを操ってハーレム建設も禁止です」

「む~。別にいいではないか。大体、この学園の生徒は悠夜のことを甘く見すぎじゃ。ワシはそれに気付かせるだけじゃ!」

 

 いざ行かんとする陽子を慌てて止める十蔵。しかし陽子は気にせずドアを開けようとしたところで動きを止める。

 

「十蔵。お主はワシと違って老体なのじゃからあまり無理はいかんぞ?」

「あなたが彼の頑張りを無駄にしようとするからでしょう」

 

 そう言われた陽子は心外だと言わんばかりに非難がましい視線を十蔵に向けた。

 

「ワシは悠夜のためと思って催眠術をかけに行くのじゃが?」

「そんなことのために催眠術を使うのはあなたぐらいですよ」

 

 ため息を吐きながらそう言う十蔵だが、どこか諦めていた。

 というのも彼女のこのように突飛な行動をするのは一度目や二度目というわけではない。彼女が自分から何かしらの行動をした場合、大抵周りの人間が迷惑を被る。被害などを省みたら少しはマシになるのではないかと、十蔵はいつも思っていた。

 

「とにかく、用があるのでしたら3時ぐらいには帰ってくると思いますので、その後にお願いしますね」

「………仕方ないのう」

 

 頬を膨らませながらも妥協を示す陽子に対し、十蔵はため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、世界地図はもちろん宇宙衛星のどれにも引っかからずに一つの大型戦艦が花月荘上空を通過しようとしていた。

 その戦艦はクワガタムシを連想させる形をしており、色は夜間用か紺色に塗られている。

 

「もうすぐアメリカのテスト機が暴走した空域へと入ります」

 

 艦長席に位置する中央の特等席に座る女性が隣に座る男性へと知らせる。男性は「そうか」と答え、

 

「では派遣しておいたあいつらを回収次第、その場から離脱だ。レイ、私はしばらく休む」

「わかりました」

 

 男性は席を立ち、ブリッジを後にして小型端末と正方形の形をして金属を出す。金属に付いている突起に触れるとそれらは鳥の形をした。

 

「頼んだぞ」

 

 男性が部屋に入ると、窓を開ける。金属鳥はそこから飛び立っていき、小型端末に三つの赤い点が中央の三角からそれぞれ別の方向へと円を描くように飛んでいった。

 するとすぐに小型端末の表示が変わり、モニターには「クリーン粒子を確認しました」と表示が出た。

 それを見た男性の顔は笑みができる。

 

「やはり同型機か。まったく、とんでもないものを作ったものだな、親父は」

 

 言葉こそ迷惑そうだが、声のトーンから嬉しさが感じ取れる。

 

「―――昔からそうでしたよ。何せ私と結婚したいがために研究費を持ってくる人だったから」

「……勝手に入るなって言っておいたが?」

 

 いきなり現れた女性に対して男性はそう言うと、女性は笑みを浮かべた。

 

「大丈夫よ。そっちの方をする時にはちゃんと出て行くから」

「………はぁ」

 

 ため息を吐く男性の様子は、どこか十蔵に似ていた。




一応、失踪していないことを知らせる為にってのも含んでいます。
まぁ、これはつなぎみたいなものですから、ものですから!
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