書こう書こうとはしていたのですが、どうにも筆が進まずこのようなことに......
一応ネタを考え続けてはいたんですけどね......
「よーし!今日の練習はここまで!」
夏らしく熱を持つ屋上での練習が終わる。合宿から帰って来てからは毎日のように屋上での練習が行われている。もうすぐラブライブに出場出来るところまで来てるだけあって、みんなの気合の入りようもこの猛暑に負けない程熱いものだ。
「疲れたぁ!」
元気が取り柄の穂乃果もこの日差しの中での練習は流石に応えるらしく、すぐに日陰に行って座り込む。
「暑いにゃー......」
同じく元気が取り柄の凛も穂乃果の横に走って行き、壁を背にして水分を補給する。
「まぁでも明日から一応3日間の休みに入るわけだし、久しぶりにゆっくり出来そうだな」
俺は汗をタオルで拭きながら日陰へと避難して、疲れを深いため息にして外へと送り出す。
せめて涼しい風でも吹いてくれればこの暑さももう少し余裕を持てるぐらいに変わるのだろうが、そんな俺の思考を嘲笑うかのように熱風しか吹かない。これならばいっそ風なんて吹かない方がマシに思えるぐらいだ。
夏休みも残すところ1週間。課題も終わらせてるし、明日からの連休は何をして過ごそうかな......。
「休んでる暇なんて本当はないぐらいだけど、休むことも大事なことよ」
スポーツドリンクとタオルを手に持った絵里がいつの間にか俺の横で休んでいた。汗でシャツがピッタリと肌に張り付いていてボディラインが強調されている絵里に全力で意識がいかないようにする。
「ところでゆー君、3連休の中のどこかに予定は空いてる?」
これまたいつの間にか隣に来ていたことり。汗をかいているというのにどうして女の子というものはいい匂いがしてしまうのだろうか。というか絵里もことりもいつ近づいて来たんだ?まるで忍者みたいだってばよ。
「ん?まぁ予定は空いてるな。どうかしたのか?」
頬が赤くなってるのは暑さのせいなのか、瞳を潤ませ、ことりは意を決したように口を開く。
「それなら......デート、しませんか♪」
なん......だと......?
今デートって言ったか?暑さのせいで耳までやられたのか?もし今の言葉が暑さで起こった幻聴なら俺はきっと恨みのあまり暴れてしまうだろう。それもきっと暑さのせいだからな。俺は悪くない。
「ゆー君?」
返事がない俺を見て不安になったのかことりは上目遣いで見上げてくる。
「......ごめん、ぼうっとしてた!いつにする?」
「えー!?ことりちゃんだけずるいよぉ!!私もゆう君と遊びたい!!」
ことりとの会話が聞こえていたのだろう穂乃果が横から大声を上げる。
あーもう近い!この人たち少々俺に対してガード甘すぎませんか?もっと気を遣わないととんでもないことになるぞ!......俺の理性が。
それとなく穂乃果から距離を置きつつ俺は周りを見渡す。するとこちらをチラチラと見ていた花陽と目が合った。
「もしかして......花陽も?」
「は、はい......」
急に名前を呼ばれ、びっくりしたのか肩をビクッとさせ、俯きがちに答える花陽。
「凛もかよちんたちと遊びたい!!」
凛が花陽の後ろからひょこっと顔を覗かせる。
「待て、連休は3日間しかないんだぞ?......じゃあ穂乃果とことり、凛と花陽をセットにして日にちを分ける!これでいいか?」
確認していると視界に映る金髪が落ち着きなくそわそわし始める。......おい、まさか......
「絵里?ひょっとして......」
「えりちが行くんならうちも行く!」
そわそわしている絵里の代わりに希が手を挙げる。これで休日が3日潰れたわけか......いいんだけどね?うん。
「なら希と絵里がセットで......明日は1年、その次は2年、最後が3年だ。それでいいか?」
「真姫ちゃんも一緒に遊ぼうよ!」
我関せずといった感じで髪を指でくるくるとしている真姫に凛が呼びかける。
話が全然まとまらん......こうなったら仕方ない。
「もう全員で遊ぼう。1年生3人は明日、2年生3人は2日目、3年生3人は3日目だ。異論は認めない!」
「私もですか!?」
「私もなの!?」
「勝手に決めるんじゃないわよ!」
海未、にこ、真姫がそれぞれ声を上げるが、知ったことか。
「ここまで話が肥大化したら誰が欠けても不公平だ。それぞれ行きたいところを絞っておいてくれ。9人分のプランを考える余力は俺には無い!」
「かっこ悪いのに言い切った感じが清々しくて逆にカッコよく感じるわね......」
ほっとけ。9人分のプランなんか練ってたら夜が明けるだろうが。それぞれ好みも性格もバラバラなんだから......
「ことりもそれでいいか?」
「......うん」
笑顔なのに複雑そうな顔してるんだけど......どうしたんだ?
「あの、私はお稽古があるんですが......」
「渚さんには俺から説明しよう。これで解決だ」
こうして連休をフルに使ったデート?の計画が決まったのだった。
......小遣い足りるかなぁ。
一抹の不安を抱えながらも実は結構楽しみだったりする。夏休みもわずか1週間、思い返せば練習の思い出しか残っていない。別に今の生活に不満があるわけじゃないが、少しぐらい楽しい思い出を残しておきたいというものだ。
さてと......どんなプランを経てて来るのか楽しみだな。
完全に男子と女子の立場が真逆な気もするが、今の俺は文字通り熱に浮かれてそんなことは微塵も気にならなかった。
***
翌朝、聞きなれたアラームの音で目が覚めた。天気は快晴、今日も良い日になりそうだな。
時刻は9時前、俺は朝食をとるために1階へと下りる。
「お兄ちゃんおはよう」
既に起きていた優莉が朝食の準備をしていた。リビングはパンのいい匂いと窓から入ってくる柔らかな朝の陽ざしに包まれている。いつもなら5時にはすでに朝練をし、この時間は学校で授業を受けているだろう。
いつもは慌ただしい朝も今日はひっそりとしている。
偶にはこんなのんびりとした時間も悪くないな。休日最高。
「ゆーサンおはよう!」
「おう、優莉も凛もおはよう」
冷蔵庫から麦茶を出してコップに注いでから違和感を覚える。
何だ?何が違った?
俺は違和感を探るために起きたところから全て思い出していく。
まず起きた。ここまでは普通だ。1階に下りてきてリビングに入って優莉と凛に挨拶を......
そこまで考えて後方にあるテーブルに向かって思いっきり振り返る。
「何でいる!?」
当然のように居座っている凛に思わず大声を出してしまう。
「かよちんと真姫ちゃんもいるよ?」
「え、えっと......おはようございます」
「やっと起きたの?」
凛と同じくテーブル付近の椅子に腰かけた花陽と真姫がそれぞれ声をかけてくる。
「何で俺の家を知ってるんだ......」
「穂乃果ちゃんから聞いた!」
......なるほどな。
「で?何で家にいるんだ?」
「ドッキリ大成功!!」
ドッキリというかビックリしたんだが......朝起きたらいきなり後輩の女の子が俺の自宅に!?そんなラノベみたいな展開なんてノーサンキューだ。実際はマジで心臓に悪い。見慣れた光景の中に見慣れないものが入ってくるだけで違和感しかない。
しかしそんなことを延々と言ってても意味が無いので喉元まで出かけた言葉を麦茶と一緒に飲み下し、ため息として外に逃がす。
「折角だしご飯食べていくか?」
「いいの!?」
「凛ちゃん、それはさすがに迷惑だよ......」
「私はいいわ、家で食べて来てるから」
凛と花陽は食べずに来たのか......念のため聞いておいてよかった。
「今更何人分用意するのも変わらないし、花陽も遠慮しなくてもいいよ。優莉も休んでろ、あとはやるから」
とりあえずこれなら目玉焼きかスクランブルエッグだな。あとはトーストを焼いておいて......いや、ここはフレンチトースト辺りにしておくか。
冷蔵庫から食材を取り出しつつ、ついでに飲み物を取り出す。
「飲み物は何がいい?オレンジジュースとかリンゴジュースとかあるぞ」
「オレンジジュース!!」
「あ、私はリンゴジュースを......」
コップを3つ取り出してそれぞれに液体を注いでからテーブルにいる3人の前に出す。
「私頼んでないんだけど......」
真姫にはミルクティーを出しておいた。何か1人だけ飲み物出さなかったら仲間外れにしたみたいだし、ドッキリの形とは言えお客様だからな。
食材の下ごしらえも平行して行ったため、スムーズに調理を行うことが出来る。
......あっ。
「なあ、花陽は朝はご飯派っぽいけど......これで良かったのか?」
白米に対して物凄いこだわりを持ち、好物も白いご飯と答えるぐらい白米愛好家の花陽にとって朝からパンを出すと言う行為は挑戦状を突き付けるに等しいものなんじゃ......。
今更ながら自分の失敗に気づく。
「ううん、確かにいつもはご飯だけど......朝からお家に押しかけて朝食まで出してもらってるんだから、わがまま言ったらそれこそ迷惑だよ、だから気にしないで下さい!」
天使の寛大な心とお言葉に全俺が泣いた。
いい子過ぎるでしょ!?これはもう全身全霊をかけて美味しいものを作らざるを得ない......!
「お兄ちゃんが燃えてる......」
「えっと......優莉ちゃんもごめんね?朝から急に」
そういえば優莉はみんなと話すのは初めてだったな。
「いえ、いつもはお兄ちゃんがお世話になっていますし......それにいつもお兄ちゃんと2人の食卓だから、こうして賑やかなのも久しぶりで楽しいです!」
母さんは今1人暮らしで家におらず、父さんもこの時間は寝てるかどこかに出かけている。よっていつもは2人だけの物静かな食卓だ。静かと言っても普通に会話もするし、騒がしくないという意味だ。
それに優莉は俺が来るまで大体1人で食事をしていたんだ。だからこんな空気が楽しいんだろう。
俺も似たような感じだったし。母さん忙しいからな。
俺がそんな感情に浸るのと、リビングに甘い匂いが立ち始めるのはほぼ同時だった。
***
「それで?最初はどこに行くんだ?」
朝食後、時間にも限りがあるのですぐさま外に出る。
俺は目的地も知らされてないため、3人に尋ねた。
「まずは映画を見ようってことになってるよ」
映画か......そういえば最近は映画館に行って見ることが無かったな。テレビでたまにやってるものを見るか、DVDとかを借りて見るかばっかりだし。
何気に映画で1番好きな瞬間は予告動画を見ながらポップコーンを食べることや本編が始まる前の暗くなる瞬間だったりする。これって俺だけか?
「何の映画?」
再び3人に問いかける。
「着いてからのお楽しみです」
なるほど、この映画の案を出したのは花陽なのか。てっきりアイドルショップにでも行くと思ってたから少し意外だ。
そのまま談笑しながら歩く。人通りが増えてきたってことはもう少しのはず......って言ってるそばから着いたな。
「どの映画のチケット買えばいい?」
建物の中に入り、人でごった返しているロビー。なんとか券売機の前に並ぶことが出来た。凛と真姫にはポップコーンの方に並んでもらっているため、隣にいる花陽に聞く。
「えぇっと......あっ!これです!」
花陽の指の先に視線を投げる。
どうやらスクールアイドルを題材にした青春群像劇らしい。
なるほど......これならアイドルショップじゃないのも納得だ。
「はい、チケット」
4枚分の内の1枚を引き抜き花陽の手の平に置く。
「ありがとうございます......今お金を......」
「いや、いいよ。ここは俺が持つ」
財布からお金を出そうとしている花陽を止める。
「そういうわけには!」
それでもお金を出そうとしている花陽と一緒に列から出て凛たちの方に向かう。
「いいって。チケットって結構高いしさ。それに後輩、しかも女の子に払わせることなんてあんまり好きじゃないし」
さすがにポップコーン代までは厳しいかもだけど。
「はぅっ///」
急に花陽が目を泳がせながら赤面しだす。
「どうかした?」
「な、何でもないよ!あっ!凛ちゃーん!!」
俺がそう聞くと花陽は誤魔化すように凛たちを呼びに行ってしまった。
何だったんだ?
合流した凛たちからポップコーンを受け取りつつお金を手渡しながら入場待ちの列に並ぶ。
その間にロビーの小型テレビでやっているCMに軽く目を通して内容をふわっと掴んでおく。
なるほど......舞台は女子高。年々入学希望者が減っていく中、共学化の案が出されてある1人の普通の男子が試運転に伴いその女子高に転入したところから物語は始まるのか。それで1人の女の子がスクールアイドルを始めて仲間が増えていく過程で恋愛方面にも発展していくと。
......すごい既視感。何この映画?前にどこかで見たことあったっけ?
人が流れていく列と一緒に思考も流す。そのまま劇場内に入り席に着く。
俺は映画館の席は全体が見えるように大体いつも1番後ろ辺りの列の席を取る。前に人がいなかったらなお良し。でもスクールアイドルを題材にした映画が出来るなんてな......スクールアイドルの知名度も段々と上がっていってるってことだよな。
なぜかちょっと誇らしい気分に浸りつつ、若干暗くなり始めた劇場内から徐々にざわめきが薄れていくのを肌と耳で感じ取る。
同時に意識をスクリーンに集中し始める。
すると隣の席からすぅすぅという微かな息遣いが聞こえ、肩にコツンという軽い衝撃と共に僅かな重さが加わった。スクリーンにいきかけていた意識を少しだけそちらへ傾ける。
......嘘だろ!?もう寝たのかよ!?
視線の先にあったのはまだ本編が始まってもいないのに寝こけている凛の姿だった。
肩に頭が乗ってる為、いつもよりも近い。
微かに漂ってくる柑橘系の香りと時々かかる寝息で鼓動が忙しく動き回り始める。
そのおかげであどけない表情で眠っている凛の顔から目が離せなくなる。
恐らく平均以上に整った顔立ち。
スッと通った小ぶりな鼻につやつやとした形のいい唇と長めのまつ毛。
普段の賑やかな感じも寝ている時には息を潜める。
それすらもミスマッチな魅力を感じる。
俺は星空凛という少女の魅力を改めて再認識したのだった。
***
「あー!面白かったぁ!!」
映画館から出るなり、凛は伸びをしながら大声で言う。
「何?夢が?」
俺の言葉に凛は心外そうな顔をする。
「違うよ!ちゃんと途中で起きたにゃー!!」
途中で起きた時点でダメだろ......でも確かに凛が起きたのは映画が始まって10分後ぐらいだったはずだからほとんど見ることが出来ていると思う。
「次はどこだ?」
時刻はちょうど昼時といったところ、昼ご飯を食べるにはちょうどいい時間帯だな。
「次は凛の提案だよ!こっちこっち!」
凛はそう言うと駅の方面に向かって歩き出す。
どうやら少し距離があるらしい。
途切れを知らない人の波をかき分けて電車に乗ると冷房の冷気が暑さを忘れさせてくれる。
運よく空いていた席に座って一息吐く。
「結局どこに行くんだ?」
凛が行きそうな所を脳内でピックアップしながら聞く。
運動系とかだとボウリング、他に凛って言ったら......動物とか?
「何だと思う?」
当ててみるにゃ!と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべる挑戦的な凛を見て、思わず俺も口角が上がる。
俺も結構な負けず嫌いらしい。
「ボウリングか動物園だろ」
さっきあらかじめピックアップしておいた情報から有力候補2つを抜き出す。
「にゃっ!?」
どうやらどっちかが当たりっぽいな。
「んー......動物園かな」
何となくだけどそう思った。
まだ昼も食べてないこの時間に体を動かすとは考えにくい。
もしかしたら食べながらボウリングをするのかも知れないけど......大体は園内に食事が出来る施設のあるだろう動物園が俺の中で残った。
「はずれにゃ!」
してやったぜという顔と外れてホッとしている顔を2つ同時に行う凛。
器用だな......
「凛って動物好きそうだから動物園かと思ったんだけどな......」
「動物は好きだけど......凛が好きなのはネコだし、動物園にネコはいないにゃ......それにいたとしても凛はネコアレルギーだから触れないし......」
凛はガクッと肩を落とす。
「......そっか。よし!ボウリング楽しもうぜ!」
これ以上は酷な話題だ。
俺はそう思い、盛り上げる方向で話題を変える。
好きな物なのに触れないとか何て残酷なことを......
「スコアで俺に勝てたらラーメン奢ってやる!」
落ちた肩がビクッと跳ね上がり、それと同時に凛の顔がきらめく。
「本当に!?よーし!負けないにゃー!!」
電車がガタンと揺れて停止する。
「あっ!降りないと!」
どうやらこの駅らしく、俺たちは慌ただしく電車から降りる。
移動と言っても一駅分程度だったみたいだな。
「早く早く!」
ラーメンがかかってるとあって凛のやる気は全開みたいだ。
すぐ近くに目的地のボウリング場を含む娯楽施設があり、駆け足でそこに入って行く。
「昼はどうする?」
一応凛に続いてボウリング場に入って、レーンを借りながら後ろにいる花陽たちに聞く。
「そんなに激しい運動じゃないし、終わってからの方が良くないかにゃ?」
貸し出されているシューズを借りながら凛が返してくる。
「そうだね。その方がお店が空いた時間に食べられるだろうし......」
花陽も凛の隣でシューズを借りながら言う。
「そうね、人が多いと並ぶのも面倒だし」
真姫は棒立ちで花陽と凛の横にいる。
「......真姫?シューズ借りないのか?」
1人だけ見ているだけの真姫にそう問いかける。
「か、借りるわよ......」
と言いつつも真姫の視線は泳ぎ続けている。
......もしかして?
「真姫ってこういう所来るの初めてか?」
「べ、別に!」
あーうん分かった。その反応が全部物語ってる。
「凛。花陽。真姫にシューズの借り方を教えてあげてくれ」
レーンを借りて自分自身もシューズを選びながら2人に指示を出す。
そうしている間にも辺りにはパッカーンという小気味のいい音が響く。
ボウリングするのも久しぶりだな。
シューズを選び終わり、靴を履き替えてロッカーに入れながら雰囲気というものを楽しむ。
「まず玉を選んできてくれ。自分に合った重さのものだぞ」
これ女の子にとっては少々重かったりするだろうからな......場合によっては腰を痛めかねないし。
俺の指示で3人はそれぞれ玉を選びに棚に向かう。
見た感じ、花陽と真姫が同じで凛がそれより1段階重めのやつっぽい。
「どうする?個人でもいいけど......初心者っていうか未経験者もいるからチームのスコアで勝負する?」
でもそれじゃ俺と凛の賭けに真姫と花陽を巻き込むことになるか......
「凛はどっちでもいいよ!」
「でもチーム戦も面白そうだよね......」
うーん......チーム戦で賭けは俺と凛だけってことにすれば問題ないか。
「じゃあチームでやろう。どう組む?」
俺と凛は確定で別れるとして、あと2人をどうするか......
「ゆーサンとかよちんでいいんじゃないかにゃ?」
凛が花陽と組まない方を選ぶなんて意外かも?
「まあそれでいいか」
少々引っ掛かりを覚えるけど......納得してるならいい、よな?
「まずは凛から!えいっ!」
綺麗なフォームで転がされた玉は吸い込まれるようにして中央のピンに当たる。
しかし運悪く奥の両端が残った。
「これはプロじゃないと無理だよぉ!!」
泣き言を言いながらキッチリと片方のピンを倒す。
さすが凛だな。
「次は俺だな。しょっ!っと」
そこそこの速度で中央のピンに当たってピンが一本だけ残った。
これは楽にスペアが取れるな。
「うぅ......先手取られたにゃ」
こうしてボウリング対決は幕を開けたのだった。
「よしっ!ストライク!」
対決は終盤に差し掛かりスコアはほぼ同点。
次の投球者である花陽が投げて、ラストが真姫だ。
「えいっ!......やったスペア!」
「おぉ!ナイス花陽!」
これで真姫がスペアを取れば俺たちの負けだ。
ここまで真姫は覚えたてというのもあり、あまりいいスコアを取れていない。
花陽もあまり得意ではないらしく、俺と凛の双方がスコアを取ってカバーしあうという試合展開だった。
でもここで花陽がスペアを出してくれたおかげで勝ちが近づいた。
「真姫ちゃん頼んだよ!」
「ま、任せなさい!この私にかかればっ......あっ!」
真姫が転がした玉は中央のピンに当たった。
しかし、凛の最初の時のように奥の両端だけが残ってしまう。
「ま、真姫ちゃん......」
「まだよ!見てなさい!」
そう言って最後の投球を行う真姫。
玉は片方のピンに当たって......その飛ばされたピンがもう片方の残ったピンを弾き飛ばした。
「ス......スプリット......」
すげえ......初めて見た。
「や、やったわ!」
「真姫ちゃんすごいよ!!」
負けたけど、楽しかったからいいか。
「じゃあ約束通りラーメン奢りだな」
「わーい!!やったぁ~!!」
あまり夜に女の子を連れまわすのは良くないし、ちょうど今から昼食だ。
だったら今から奢るのが1番早そうだな......
忘れていた空腹が今更やってきて、俺はついお腹をさすった。
***
「美味しかったにゃ~!」
結局凛だけじゃなく花陽と真姫にもラーメンを奢り、寂しくなってきた財布の中をチラッと覗いてから静かにポケットにしまう。
凛は満足気に笑い、真姫は意外と悪くないわね。みたいな顔をしている。花陽は奢られることに納得がいっていないようだったけど、今はみんなと同じで満足そうだった。
......貯金を出して明日や明後日に備えないとな。
最悪父さんから少しもらおう。しかしあの人マジで何の仕事してるんだろ?優莉は知ってそうだけど......
「最後は真姫か」
今はちょうど15時30分。
まだまだ日が暮れることはないだろう。
真姫がどこで何をするのかは分からないけど、これなら外の場合も大丈夫のはずだ。
「真姫ちゃんはプラネタリウムだよね?」
「まあ......そうね」
プラネタリウムにはさすがに行ったことがない。
あぁいう所ってカップルで溢れかえってるイメージしか浮かばないんだよな......
俺は彼女なんて出来たこと無かったし、もし星に興味があっても男同士で入ってカップルに囲まれようものなら、多分その後に話すのは星のことではなくどうすればいちゃついてたカップルを星に出来るかという最低な内容となるだろう。
「真姫は星が好きなのか?」
少し黒く染まった内面を出さないように聞く。
「似合わないとでも言いたいの?」
皮肉気に答えてくる真姫。
「いや、そんなことない」
単純に興味本位で聞いただけだ。
真姫も本気で言ってはいなかったのか、軽く微笑むとくるりと
「真姫ちゃん待ってよー!」
凛はたたっと駆けていき、真姫の隣に追い付くと並列して歩き始める。
花陽はそれをにこにことしながら見守っている。まるで保護者だ。
合宿以来、真姫はみんなとどんどん打ち解けているように見える。
最初からグイグイいっている凛や穂乃果はともかくとして、他のメンバーには少々一線を引いていたように見えた。
でも合宿から帰って来て、みんなの名前を自然と呼べるようになり、少しだけ素直になった気がする。
まぁ、まだ照れ隠しも多いみたいだけどな。
「優さん?どうかしたの?」
花陽の不思議そうにしている声が耳に届く。
「ん?何が?」
どうしてそんなことを聞くんだろう?
「何だか楽しそうだなって」
どうやら無意識の内に笑みを浮かべていたらしい。
気を付けないと街中で急に1人笑顔になるとかやばい奴だと思われちゃうな。
「そりゃ楽しいからな」
これだけ充実した休日を過ごすのは結構久しぶりだ。
いつもは休日でも1人でゲームをしたり本を読んだりするだけだからな。
......これただのぼっちじゃね?
音ノ木坂には男子生徒がいないから休日遊べる友達がいない。その為必然的に1人で出来るようなことに限られるというわけだ。
「えぇっ!?急に泣き出してどうしたの!?」
笑顔だった相手がいきなり涙を流し始めたらこういう反応になるだろう。
「いや、目にゴミがな......」
自分が置かれている状況を思い出し、悲しくなっただけだ。
「着いたわよ......って何してるのよ......」
前方から呆れたような真姫の声。
あぁ、もう着いたのか......意外と近かったんだな。
「気にするな、それよりも早く入ろうぜ。暑いし」
チケットを購入する為に受付へ行き、4枚分を購入する。
当然代金は俺持ちだ。
「何て言うか......ユウは将来確実に尻に敷かれるタイプね」
「俺もそう思う」
どうにも俺の周りの異性は変わり者ばっかりでその為かどうにも頭が上がらな......って単に俺が女の子に対して弱すぎるだけか。
「今の時期だと夏の大三角形が見られるわね」
今回は夏の星座特集らしく、あまり星に詳しくない俺でも知っているものが挙げられる。
「あぁっ!それ知ってる!えぇっと......確かあるたいるにべが......それと、で......でぶね?だよね!」
「おい、最後普通に悪口じゃねぇか」
何ということだ。並び変えるだけで綺麗な星があっという間に汚い悪口へと変わったではありませんか。
正しくはデネブだ。
「凛にはこの機会に覚えて帰ってもらいましょ......」
真姫もさすがにこれを訂正するのは疲れると思ったのか、この後の講演に丸投げしていた。
会場内に入ると席がたくさんあり、人もぽつぽつと座っていた。
指定された番号に行き、腰をかける。
講演が始まるまでしばらくの間は雑談していたが、辺りが暗くなり始めた為にすぐに口を閉ざす。
そして満点の星空が映し出され、俺は感嘆のため息を吐く。
チラリと横を見てみると凛も花陽も真姫の目にもキラキラとした夜空が映り込んでいるのが見える。
反射して輝く瞳は頭上に見える星と同じく輝いていて、吸い込まれそうな感覚になった。
***
その後はいい時間帯になっていた為、普通にみんなを家に送り届けてから、家に帰った。
明日もまたこんな風に楽しい1日になることを期待する。
何となく部屋の窓を開けて、作りものじゃなく本物の夜空を見上げてみる俺だった。
―To be continued―
作「雑談のコーナー!今回のゲストは3人、1年生トリオです!」
凛「すごいざっくりと略されたにゃ......」
花「あはは......」
真「遅いわよ」
作「いや、本当にネタを考えてはいたんですけど......むしろ考えすぎて迷ってたといいますか......」
凛「例えばどんなの?」
作「本文にも出てきたボウリングと動物園で迷ったりしました、割と真面目に」
花「凛ちゃん体動かすの好きですし、動物さんも好きですもんね」
作「凛ちゃんは絶対動物は好きだと思うんですが......それなら花陽ちゃんの方が動物好きそうだなと映画の辺りを書き終えてから気づきましたね」
真「作中で凛が花陽とユウを組ませてたけど、あれにも何か意味があるんでしょ?」
作「そのことには優くんも違和感を覚えていましたが、詳しいことはあまり言えません。強いて言うなら花陽ちゃんのことを大事に思ってるんです」
凛「照れるにゃー!」
真「なるほどね」
花「えぇっと......」
作「まぁこの話の内容を覚えていれば、いずれ本編で分かる時が来ると思います!それでは次回も!」
まきりんぱな「よろしくお願いします!」