ラブライブ!~未来へ響く多重奏~   作:朝灯

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あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!

正月だというのに夏休みの話を書いている朝灯です!

今回はタイトル通り2年生のターンです。
それではどうぞ。


サマーバケーションデートタイム!2年生編

 連休2日目。

 昨日と全く同じ時間に目が覚める。今日も快晴だ。

 

 今日は穂乃果たちか......

 

 ベッドから這い出て、ドアへと向かう。

 確か昨日は凛たちがドッキリとか言って家にいたんだよな......

 

 と考えつつもあくびをしながら階段を下りてリビングに入る。

 

「あっ、お兄ちゃんおはよう」

 

 優莉の声が鼓膜を揺らす。

 

「ゆう君おはよう!」

 

 ついでにバカでかい穂乃果の声が鼓膜を殴る。

 

「優莉も穂乃果もおはよう」

 

 挨拶もそこそこに冷蔵庫から麦茶を出してコップに注ぐ。

 

 ......また違和感を感じる。

 とりあえず、起きたところから思い出して......いや、もうそれはいい。

 

 昨日と全く同じ思考をしようとした頭を軽く二、三度振ってから麦茶を飲む。

 

「穂乃果......そのドッキリは昨日凛たちがやったぞ」

 

 種を明かす前に自分から答えを言うドッキリ潰しをしておく。

 きっと穂乃果は俺が何でここにいるのかと聞くと思っていたはずだからな。

 

「えぇっ!?そうなの!?」

 

「というかお前が俺の家を教えたんだからそのぐらい気づけよ」

 

 驚愕に目を見開く穂乃果にため息を吐きつつ一応ツッコミを入れておく。

 

「凛ちゃんがゆう君の家の場所を聞いてきたのってそういうことだったんだ......」

 

 穂乃果がいるってことは......まぁいるだろうな。

 再びため息を吐く。

 

「だからもう出て来いよ......この部屋のどこかにいるんだろ?海未、ことり」

 

 と言っても隠れてる場所ぐらいは見当がつく。っていうか誰かの足がカーテンから見えてる。

 

「あはは......おはよう。ゆー君」

 

「...おはようございます。優」

 

 苦笑しながらことり、何故かしかめっ面をしながら海未が姿を見せる。

 

「おはよう、海未。ことり」

 

 カーテンの後ろから現れた幼馴染2人にジトッとした視線を向けつつ、挨拶を返す。

 

「何故分かったのですか......気配は完璧に消せていたはずなのに......」

 

 海未の呟きが聞こえてきた。

 

 あの?ちょっと園田さん?姿見つからないように気配を消すとかどれだけ本気なんですか?

 俺暗殺でもされかかっていたんだろうか?

 そうなったら上手いことダイイングメッセージを残さないとな......

 

「優?何か言いたいことでもあるんですか?」

 

 海未が怪訝な表情を作って俺を見ていた。

 

 まさか遠回しに遺言は聞きますよって言われているのか? 

 くそっ!まだ俺にはやり残したことがっ!

 ならせめてこれだけは言わせてもらおう......

 

「死ぬ前に......せめて......彼女が欲しかった......」

 

「何を朝からバカなことを言っているのですか......」

 

 まぁ、冗談はここまでにしとくか。

 海未の視線が痛いし。

 

「海未なら朝から押しかけるなど迷惑になります!って言って止めそうなものなのによく参加したな?」

 

 そのことを指摘すると海未はバツの悪そうな顔になり、申し訳なさそうに口を開く。

 

「いえ......私も最初は止めていましたが......あぁなってしまった穂乃果はとても頑固ですから......せめてその意志の強さを少しでも他のことに回してくれれば助かるのですが......」

 

 海未のお小言に穂乃果は視線を逸らして耳を塞いでいる。

 

 穂乃果も穂乃果だけど、お前途中からノリノリだったじゃん。

 きっとやると決めてしまったからには手は抜けなくなったんだろうけどさ......まあこれが長所にもなって短所にもなることがあるから一長一短ってところかな。

 

 ことりはむしろこういうことは楽しんでやりそうだし、穂乃果とことりの2人に頼まれたら海未でも断れなかったんだろうなぁ......まるで作詞を頼んだ時みたいに。

 

「とりあえず何か食べる?朝食作るよ」

 

 多分何も口にしていないだろうと思い、凛たちと同じように朝食を振る舞うことにした。

 

「いいの!?わぁーい!!ゆう君のご飯美味しいから楽しみだよ!」

 

 バンザイをして窓から見える太陽みたいな眩しい笑顔を浮かべる穂乃果。

 

「穂乃果!朝から押しかけた挙句に朝食をごちそうになるつもりなのですか!?」

 

「いや昨日凛たちにも作ったし、ことりも海未も遠慮するな。作る側としては穂乃果みたいに喜んでもらった方が断然嬉しいしな」

 

 その言葉が決め手となったのか遠慮気味にしていたことりと海未もイスに腰を下ろす。

 

「穂乃果はパンだろうし、ここはサンドイッチとかでいいか?海未は和食って感じがするけど」

 

「私の家の場合は日によって変わりますからそれで大丈夫ですよ」

 

 へぇ...そうなのか。

 

「ことりもサンドイッチでいいか?」

 

 言いつつも既に袋からパンを出そうとしていた手を一旦止めて振り返る。

 

「うんっ♪大丈夫だよっ♪」

 

 ...めちゃくちゃ笑顔だな。

 何でこんなに機嫌がいいのかは分からないけど、この笑顔に恥じないものを俺は作って見せる!

 

「お兄ちゃんがまた燃えてる......」

 

 おっと、また表面上に出てたか。

 

「優莉ちゃん、雪穂がいつもお世話になってます!」

 

 聞こえてくる会話につい耳を疑ってしまった。

 

 あの穂乃果がお姉ちゃんしてるだと!?

 いつもは雪穂ちゃんに世話かけてばかりの穂乃果が......

 あーでも穂乃果は意外と礼儀とかしっかりしてるんだったな。

 

「いえ、私いつも雪穂には助けてもらってばかりで......それにこちらこそお兄ちゃんがいつもお世話になっています!」

 

 このしっかり者が私の自慢の妹です。

 これで中学3年生、実は普段の海未と絵里クラスにしっかりしていると思う。

 

「本当にもう優には世話をかけられっぱなしで......」

 

「ごめんなさい......うちのお兄ちゃんが」

 

 おかしくね?

 何で俺が共通の敵みたいになってんの?

 

「そうそう、穂乃果もいつもゆう君に振り回されててね?」

 

「しれっと嘘を吐くな」

 

 本当にこいつは......

 

「嘘じゃないよ!ねっ?ことりちゃん?」

 

 ことりを味方につけようとするなよ!?汚いぞ穂乃果!

 

「そ、そうだね......(色々な意味で)......」

 

「もういいや、優莉、皿出すの手伝ってくれ......」

 

 穂乃果に強要されたとはいえ、ことりにそう言われてしまうともうこれ以上は何も言えない。

 

 かと言ってここでこれ以上この話題を続けていても俺が色々と言われるだけなので優莉に手伝いを頼むことで早々に話題を打ち切る。

 八坂優先生の次回作にご期待ください。

 

 話ながらも手は動いていたので、パンが焼けるいい匂いとスクランブルエッグとベーコンが焼ける音が目の前のフライパンから聞こえ始める。

 

 あぁ、飲み物何がいいか聞くの忘れてた。

 ...とりあえずサンドイッチ出来てからでいいか。

 

 俺は考えつつもコンロと一緒にそこで考えるのも止め、静かに皿へと具材を乗せるのだった。

 

***

 

「最初の予定は?」

 

 特別何もないまま朝食を済ませ、まだ太陽による猛暑が襲ってきていない外へ出る。

 

「映画だよっ!」

 

 穂乃果からその言葉が聞こえた瞬間、思わず足を止めてしまう。

 

 ...映画?まさか昨日見たアレじゃないよな?

 嫌な予感がレーシングカー並のスピードで頭の中を走り出す。

 

「...何の映画?」

 

 しかし、不安な表情を出さないように努めながら一応違うかも知れないという希望を抱く。

 

「ん~......着いてからのお楽しみっ♪」

 

 ことりさん、大変可愛らしい笑顔だと思うのですが......今は不安材料にしかならないです。

 

 しばらく歩いていると昨日も見た建物のシルエットが見えた。

 今もなお頭の中の警報は鳴りやまない。

 

 人混みの先にある券売機の前へと着いて、恐る恐る口を開く。

 

「それで......どの映画だ?」

 

「んーっと......あっ!これだよ!」

 

 穂乃果の指の先を目で辿る。

 

 ...分かってたさ、どうせ昨日見たやつと同じだろうなってことは!

 背中を嫌な汗が伝っていったが、汗が出たのは決して暑さのせいじゃないんだろう。

 

「この映画って私たちのことみたいですよね......って優。どうかしたのですか?」

 

「いやちょっと過去を振り返った気分になってただけだ」

 

 昨日のこととか、音ノ木坂に転入してきた時のこととか。

 本当に自分の過去を見ている気分だ。

 

「噂だとかなり評判いいんだよね、この映画!ゆー君はこの男の子は誰とお付き合いすると思う?」

 

「えぇっと......どうだろうなぁ......どの子も違った魅力があるだろうしなぁ......」

 

 目をキラキラと輝かせながらことりが聞いてくる。

 俺は不自然にならないように上手く誤魔化す。

 

 ごめんな......もう結末まで分かってるんだ......。

 

 俺に出来るのはせめて穂乃果たちが不信に思わないように振る舞うだけだ。

 ひとまずチケットを4枚購入して、それぞれに手渡す。

 

「とりあえずポップコーンとか飲み物いる人は買いに行こうぜ」

 

 列から抜け出しながら、また別の列を目指す。

 しかし、進もうとするとくいっと俺の袖を誰かが引いたため足が止まる。

 

「待ってください、まだチケット代を渡していません」

 

 海未の言葉にことりと穂乃果も続いて財布を取り出そうとする。

 

「別にいいよ、昨日凛たちにもそうしたし......俺が好きでやってることなんだから」

 

「そうはいきません!それなら優のお財布の中身は余計に寂しいはずです!」

 

 まあ普通に貯金崩したし、今日はまだそれなりに余裕はある。

 父さんはこういう話題とかは協力的だからいつもより多めにお金もらえたし......

 

「んー......じゃあいつもかけてる迷惑料だと思ってくれ」

 

「ですが......いえ、分かりました......」

 

 俺がどうしてもお金を受け取る気はないというのが伝わったのか、海未は納得はしていないという顔をしながらも渋々と引き下がってくれた。

 

 毎回こうやって俺がお金を払うごとにその分を渡そうとしてくるのはありがたい。

 むしろ奢られることが当たり前と思っているやつはこういうことすら言ってこない。

 そっちの方が俺は嫌いだ。

 

 ならお金を払った分を素直に受け取ればいいじゃないかと思うだろうけど、これがそんなに簡単な気持ちじゃないんだよな......

 乙女心は男には分からないと言われるけど、結局のところ、男は単純で分かりやすいと言われてもその実、女性も男の気持ちはあまり理解出来ていないものだ。

 

「ほら、早く買う物買って劇場に入ろうぜ」

 

 背中を押して進もうと思ったけど海未の場合セクハラとか言って殴ってきそうなので肩を軽く押して先を促す。

 

「穂乃果は飲み物だけでいいですよね?」

 

 レジ前の列に並んでいる間に買う物を決める。

 するとなぜか海未が穂乃果に対して飲み物だけでいいかと聞き始めた。

 

「えぇっ!?私もポップコーン食べるよ!?」

 

 むしろ真っ先にポップコーンの入れ物が空になりそうだしな。

 

「あなたは上映中に大体の確率で眠るじゃないですか」

 

 何の為に映画館にお金を払って見に来てるんだろうか......

 

「途中からちゃんと起きるよ!」

 

 寝てる時点でアウトだ。

 全く凛といい、穂乃果といい......

 

「それに今回はゆう君もいるし!」

 

「俺のことを歩く超高性能型目覚まし時計だとでも思ってるのかお前......」

 

「さらっと自分のことを超高性能と言いましたね」

 

 言葉のあやだ。

 歩いて喋って自分のことを起こしてくれる目覚ましを高性能と言わずになんて言うんだよ。

 

「とにかく!穂乃果もポップコーン買うからね!」

 

 もうお好きにどうぞ。

 余ったら俺が処理すればいい話だし。

 

 それぞれが欲しい食べ物や飲み物を購入し、すぐに劇場内に入る。

 ことりの言うように評判は結構いいのか、劇場内にはかなり人がいた。

 いつものように1番後ろの列、自分が買った番号のイスに座る。

 

「むーっ......私ゆう君の隣がいい」

 

 席順としては奥からことり、俺、海未、穂乃果になっていたのだが、急に穂乃果がそんなことを言い出した。

 

「仕方がないじゃないですか、そのチケットを真っ先に取ったのは穂乃果です」

 

 今もなお、ふくれっ面のままの穂乃果を海未が(さと)しにかかる。

 

 まったく......本当に子供みたいだな。

 笑ったり、拗ねたり......表情がころころと変わる様は見ていてまるで退屈する気がしない。

 

「穂乃果、早く座れよ。映画が始まるぞ?」

 

 横目で穂乃果を見つつ、携帯の電源を切る。

 すると海未がため息を吐いた。

 

「分かりました。では席を交換しましょう。それでいいのですね?」

 

 穂乃果が座る予定だった席に海未が座る。

 

「何で急に席変えようと思ったんだ?」

 

 小声で問いかける。

 海未はチラリと俺を一瞥(いちべつ)し、視線をスクリーンに戻しながらふっと苦笑する。

 

「考えてみれば、席を変えれば穂乃果の枕にならずに済むと思っただけですよ」

 

 あー納得。

 

「だから寝ないよぉ!」

 

「静かにしろよ」

 

 耳元でボリュームに気を遣いながら叫ぶ穂乃果をバッサリと切っておく。

 

 さて、そろそろ始まるな。

 今回は昨日とは違う場面に注目しながら見てみよう。

 

 

 

 

 

 

 さて、いよいよクライマックス。

 主人公が自分の思いを自覚し、ヒロインのところに行き、告白。

 そしてお互いの思いが通じ合ったところでキスをしてエンディングだ。

 

 しかし、今の状況を説明しよう。

 ちょうどキスシーンに差し掛かった映画。

 

 俺の右隣ではことりが頬を手で押さえながらうっとりしている。

 対して左側、穂乃果は宣言通り起きていて、真剣に画面を見つめているが、問題はその奥。

 

「あぁぁ......若い男女が......そ、そのようなことを.......」

 

 映画を見ないように手で顔を覆い隠しながらも指のすき間から確認するようにしている海未がいた。

 

 こいつキスシーン苦手なのかよ......恋愛映画見れないじゃん。

 というかどうやったらこんな純粋になるの?

 でも渚さんがあの性格だからなぁ......それなら海未はむっつりということになるな。

 普段から俺たちがいないところでポージングとか練習してるわけだからただの妄想家ってだけかもしれないけど。

 いや、ここは乙女チックと評しておくことにしよう。

 

 エンディング曲が流れ始めるのが聞こえた俺は残っていた飲み物をストローで吸い上げた。

 

***

 

「ここが穂乃果の行きたかった所?」

 

 映画を見終わり、昼食も食べて、穂乃果の提案した場所に来た。

 見上げた先にあるのは大きな建物、さっきの映画館よりも大きい。

 

「そう!水族館!」

 

 何故か思い出深いように感じる場所だ。

 

 そういえば......小さい頃、この4人で行ったっけな。

 俺たちが来たのはここじゃなかったけど、何か懐かしい。

 

 当然あの頃よりは身長が伸びている。

 だからこそ、時間の流れを感じ、少しだけ切なくなった。

 

「ゆう君の中学の時のお話を聞いたら思い出しちゃって......どうしても行きたいなって思ったの。場所は違うんだけど......」

 

 笑顔のまま振り向く穂乃果。

 その顔は大人びて見えて、心臓がドクンと音を鳴らす。

 

「でも水族館に来たらお魚が食べたくなっちゃうんだよねー!」

 

 鼓動が通常のリズムに戻った。どうやらさっきのはただの不整脈だったようだ。

 成長しても結局穂乃果は穂乃果だな。

 

「中に入ろうぜ。いつまでもここにいたら干物になりそうだ」

 

「干物も美味しいよね!」

 

「いい加減食べ物から離れろ」

 

 ていうかさっき昼食べたのにまだ食べ物の話するのかよ......

 この腹ペコ娘...いや、略して腹ぺ()だな......

 

 そんなくだらないことを考えている内に視界が青に包まれる。

 一面水の世界。魚が通る度に影が回りを通過していく。

 いつか誰かと見たことがある景色だ。

 

 誰かって言うのは変か......今ここにいるわけだし。

 

「うわぁ......綺麗だねぇ~!」

 

「えぇ......まるで自分も水の中にいるみたいです」

 

「うん......すごいね!」

 

 幼馴染3人は青の世界の中でただじっとその風景を見続ける。

 俺自身も3人と変わらずに、今は......こうし続けていたいと願う。

 もう少しだけ......この場所で、こうしていたい。

 柄にも無く、そんなことを思ってしまうような景色。

 

 何がそう考えさせるのか、この3人といるからなのか、それともこの景色がそうさせるのかはとてもじゃないが理解出来そうにない。

 

「おっ!イルカのショーだってさ!早めに行って前の方の席で見ようぜ!」

 

 真っ直ぐな廊下を進んでいくと、途中に看板を見つける。

 

「えっ!?ほんと!?見たい見たい!!」

 

 穂乃果が子供のようにはしゃぐ。

 

「全く......あまりはしゃがないで下さい。周りの迷惑になりますから」

 

「だってさ穂乃果」

 

「えぇ?ゆう君のことでしょ?」

 

 声の大きさ的にお前しかいないだろ。

 

「優のことです」

 

「俺だけ!?」

 

 どんな採点基準してんの!?

 明らかに穂乃果の方が声大きかっただろ!

 

 不服に思いながらもショーが行われる場所へ行くと、まだ開演前なのに結構席が埋まっていた。

 それでも前方の席で空いている場所を見つけ、そこへ急ぐ。

 

「水がかかっちゃいけないから携帯とか機械類はビニール袋に入れた方がいいな、それかかからない場所に移動させる」

 

「私配ってるものをもらってくるね」

 

 ことりがたたっと駆けていき、そして戻ってくる。

 

「ありがとう......って3枚だけ?」

 

 戻ってきたことりの手には3枚だけしか袋は無かった。

 

「あ、う、うん!あと3枚しか無かったみたい!」

 

「そっか......じゃあ俺は遠慮しとくよ。3人で使っ――」

 

「――良かったら一緒に使いませんか?」

 

 3人に袋を譲ろうとするとことりが俺の言葉を遮る。

 

「けど......いいのか?」

 

「うん!もちろんっ♪」

 

 じゃあ、ここはお言葉に甘えることにするか。

 

 ことりが差し出してくれている袋に鞄ごと入れる。

 続いてことりも自身の鞄を袋に入れて、袋を膝に抱えた。

 

(えへへ......ゆー君と一緒♪)

 

「何か言ったか?」

 

「ううん?何も言ってないよ!」

 

 気のせいか。

 

 そうこうしていると派手な水しぶきと一緒にイルカが登場する。

 背中には飼育員が乗っていて、イルカがステージへと近づくと、乗っている人がステージへと足をつける。

 それだけで会場は拍手で一杯になり、これから先への期待度も増す。

 

「やーん♪イルカさん可愛い♪」

 

 ここはお前の方が可愛いよと言った方がいい場面だろうか......

 言わないけど。

 

 ばしゃんという派手な音で意識が音のした方へ向く。

 それから多彩な芸で観衆を沸かせ、イルカは去っていった。

 

***

 

「ショッピングって言っても何買うんだ?」

 

 イルカのショーを堪能したあとはことりがやりたいと言ったショッピングをしに近くのデパートに入った。

 まぁ女の子は服とかアクセサリとか色々あるんだろうな。

 

 それが楽しみでもあるんだろうけど。

 男なんてファッションに拘らなくても生きていけるし。

 夏なら上はTシャツを着て何かを羽織って下はジーパン。

 冬なら上は長袖のシャツを着て、パーカーとかコート、下は長ズボン。 

 大体はこれで乗り切れる。

 

「まずはお洋服かなぁ?」

 

「そうか、時間はあるし、ゆっくり見ても大丈夫だぞ。そして荷物持ちは任せろ」

 

 グッと力こぶを作る動作をする。

 

「わぁーい!男の子だね!」

 

 穂乃果が言いながら腕にぶら下がってくる。

 

「痛い痛い痛い!?バカか!お前は!!」

 

 人はさすがに無理だって!!

 

「穂乃果?まさかまた太ったのですか?」

 

「えぇ!?そんなことないよ!!」

 

「いや、いくら女の子でも人はぶら下げられない。せめて小学生から軽めの中学生が限度だ」

 

 穂乃果がぶら下がった関節部をさすりつつ、フォローをしておく。

 

「ゆー君がいるならたくさんお買い物しても平気だね!」

 

 こんな笑顔が見られるなら、俺はいくらでも荷物を持てるような気がする。

 何ならそのままことりをお持ち帰りしそうなまでだ。

 

 ...そしたら俺は警察にお持ち帰りされることになるか。

 あっぶねえ、行動に移す前に気が付いて良かった。

 

「海未も何か買ったら言えよ?荷物持つから」

 

「いえ、私は鍛えていますから。そしてこのことも鍛錬の一環です」

 

「それでもだ。お前は女の子、俺は男。こういうのは俺の仕事だ」

 

 普段表舞台に立って廃校を阻止するために頑張ってるのは俺を抜いた9人だ。

 だからこういうところだけでも何か力になりたい。

 

「...ふぅ。分かりました。お願いします」

 

 呆れたように微笑む海未。

 

「ゆう君ゆう君!アイス食べたい!」

 

「まず服見るって言ってんだろうが」

 

 人の話を聞きなさい。

 

「犬かお前は。少し落ち着けよ。あと太るぞ」

 

「大丈夫だよ!2つしか食べないから!」

 

「はい、それで既に(わん)アウト。犬だけに」

 

...超くだらねえ。

 

「0点ですね」

 

 ごもっともだな。

 自分でもくだらないと思ったんだから。

 

 他愛の無い会話すらも楽しみつつ、エスカレーターで上を目指す。

 更にどうでもいい話だけど、俺はエレベーターが苦手だ。

 あの動くときの無重力感がどうにも慣れない。

 なので大体エスカレーターか階段を使うことが多い。

 

「可愛いお洋服がいっぱい~!」

 

 目の前にたくさんある服を見て、ことりが歓喜の声を上げる。

 

「おー......普段女性用の服なんてほとんど見ることないから新鮮だな」

 

 いつもならこの辺はチラッと見つつ、通りすぎるだけだからな。

 

「ゆう君!何か穂乃果たちに服を選んでみて!」

 

 これは......世の中のカップルの8割(俺調べ)がやっているであろう、彼氏が彼女の服を選んであげるシステム!?(命名たった今)

 

 まずこれには男のファッションセンスが問われる。

 自分の趣味と合わないようなものを選べば幻滅され、逆に気合が入り過ぎてもドン引きされる......至極理不尽なものだ。

 ピンポイントかつ、特に気負ってもいないように見せるのが高評価へと繋がるはずだ。

 

「うーん、ファッションとか詳しくないし......そういうのはことりに聞いた方が良くないか?」

 

 ただし選ぶとは言っていない。

 時には逃げることも必要だ。

 

「私が選んでもいいんだけど......ゆー君の意見も聞いてみたいな!(服装の好みとか分かるかもしれないし...)

 

 しかし回り込まれた!

 

「あんまり期待はするなよ?」

 

 ことりに頼まれたら断れるわけがないだろ!!

 

 近くの服を物色しつつ、どんどん奥へと移動していく。

 夏らしい服がいっぱいあって正直どれを選べば正しいのかが全然分からない。

 

「じゃあこの夏用のカーディガンでいいんじゃないか?」

 

 色のバリエーションも豊富だし......3人でお揃いにも出来るな。

 値段もお手頃価格。

 

「分かった!試着してみるね!」

 

 穂乃果がオレンジ色のカーディガンを掴んで近くの試着室へと向かう。

 

「ことりと海未も行ってこいよ。待ってるからさ」

 

「うん♪行こっ!海未ちゃん!」

 

「い、いえ!私は......引っ張らないで下さい!ことりぃ!」

 

 ことりが白と青のカーディガンを持って海未を引っ張っていった。

 どうやら俺はこの服を選ぶというミッションに成功したようだ。

 

 ...今度優莉にファッションについて聞いてみよう。

 

「じゃじゃーん!お待たせ!ゆう君!」

 

 最初に穂乃果が戻ってくる。

 

「結構似合うもんだな」

 

 肩出し型のオレンジ色のカーディガンは穂乃果のイメージとピッタリ合っていた。

 

「本当!?じゃあこれ買ってくるね!」

 

「あっ!おい!」

 

 似合っていたとはいえ、もっと良く似合いそうな服を自分で選べばいいのに......

 

「あれ?穂乃果ちゃんは?」

 

 ことりとその後ろに隠れた海未が戻って来た。

 

 穂乃果と色違いの白色。

 ことりは何を着ても似合いそうだな。

 

「穂乃果ならさっきの服買いに行ったよ。それより何で海未はことりの後ろに隠れてるんだ?」

 

 顔を真っ赤にして俯く海未を見て不思議に思い聞いてみる。

 

「うぅ......露出が多くて恥ずかしいです......」

 

 肩しか出してないじゃん......

 

「海未ちゃんはミニスカートは慣れたけど、肩はまだ慣れてないんだって」

 

 苦笑気味のことり。

 

「えっ?何?部位によって慣れがあるのか?」

 

 なんて不便な体をしてるんだ......

 

「殿方の前でこのような格好......あぁ、お母様、お父様......私は汚れてしまいました......園田の跡取りとしては相応しくありません......」

 

「そこまでかよ......」

 

 悲観的になりすぎだと思うんだけど?

 

「海未は肌が綺麗だからむしろ見せないのがもったいないと思うぞ」

 

「な゛っ!?は、破廉恥です!セクハラです!」

 

 赤かった顔が怒りか羞恥かで更に赤くなる。

 

「バカやめろ!そういうことを大声で言うな!ほら店員のお姉さんが電話片手にこっち見てるだろうが!ごめんなさい!誤解です!!」

 

 数分後、なんとか落ち着きを取り戻したものの、大いに疲れるショッピングになってしまった。

 

***

 

 荷物を持って穂乃果とことりを家まで送った。

 すっかりと日が暮れて、2つの長い影が道に伸びている。

 俺と海未のものだ。

 実は最も家が近いのが俺と海未、お互いに無言で角を曲がる。

 

 すると海未の家が見えた。

 

「優。ここまでで大丈夫ですよ。ありがとうございます」

 

 丁寧にお辞儀をして見せる。

 

「おう。それにしても本当にどこも行きたい場所はなかったのか?」

 

 今回は穂乃果とことりの行きたい所に行っただけだ。

 なんでも、『私はいいですから穂乃果とことりを優先してあげてください』とのことだった。

 

「はい。現に楽しかったですから」

 

 なら、いいか。

 

 お休みと口を開こうとすると、誰かの携帯が着信音を奏で始めた。

 

「あっ、すみません。私ですね......お母様から?」

 

 携帯を耳に当てる海未。

 

『はい、海未です。......えぇっ!?もうお家の前にいるのですが!?」

 

 何か慌ててるな、渚さん何言ったんだろ?

 

『えっ?優ですか?はい、いますけど......』

 

 何でそこで俺の名前が出てくる。

 

『分かりました、代わります』

 

 えっ?

 

「優、お母様がお話をしたいとのことです」

 

 海未はそう言って携帯を差し出してくる。

 受け取るのを一瞬ためらったが、ここは素直に電話にでておくことにした。

 

『もしもし、八坂です』

 

『お久しぶりですね、優さん』

 

 控えめながらもよく通る声が携帯を通して聞こえてくる。

 

『はい、それでどうかしたんですか?』

 

『実は海未さんの分の夕食を用意していませんので2人でどこかに食事に行ってほしいのです』

 

『はい!?』

 

 どういうことだ!?

 

『今日は元々海未さんの分を用意するつもりはありませんでした。優さんから連絡があった時に決めていたことですよ』

 

『えぇ!?いや!何でですか!?』

 

 とんでもないこと言ってるぞこの人!?

 

『海未さんのことですから穂乃果さんやことりさんばかりに気を遣って自分のしたいことを出来ないでいたのでしょう?だからですよ』

 

『...その通りです。分かりました』

 

『お願いしますね』

 

 電話口から渚さんの声が途絶える。

 ひとまず海未に携帯を返す。

 

「というわけらしいな......」

 

「えぇ......すみません、うちの母がご迷惑をおかけしました......」

 

 まぁ、驚きはしたけど渚さんの言ったことも正しいのは確かだ。

 

「じゃあ、海未が行きたい所を決めてくれ」

 

「優が決めてくれて構いませんよ」

 

 また人を優先する......。

 

「海未、今日はまだ終わってない。だからお前が行きたい所に行こう」

 

 まだ......今日はまだ2年生の日だ。

 

「...分かりました。では行きましょうか」

 

「あぁ」

 

 2つの影は沈み始めた夕日に向かって歩き始めた。

 

―To be continued―

 




作「雑談のコーナー!今回のゲストは2年生の3人です!」

海「凛から聞いていた通り雑な紹介ですね」

こ「あはは......」

穂「皆さんあけましておめでとうございます!」

全『おめでとうございます!』

作「今回の話も結構考えるの大変でした......」

穂「水族館のお話もあったよね」

作「あれは書いている途中にどうせ水族館にするならそこに昔来たことがあることにした方が思い出深いなと思い、全力で後悔しました」

海「と言うと?」

作「優くんの過去で深瀬さんと一緒に水族館に行った際、ここに来たことがあると言ってしまっているので歴史改変は出来ませんでした」

こ「確かに中学生の頃のお話と違ってきちゃいますね」

作「なので思い出を残したまま、先に進むことにいたしました」

穂「ていうか海未ちゃん!ゆう君と2人で食べに行くなんてずるいよ!」

こ「そうだよ!海未ちゃん!」

海「あれはお母様が勝手にしたことですよ!」

作「はいはい、ここで揉めないで下さい。あとで優くんを問い詰めればいいじゃないですか」

こ「ふふっ♪おやつだね」

穂「むーっ......」

海「これに関しては優も何も悪くない気がするのですが......これを書いたあなたが悪いと思います」

作「おっと、そろそろ時間ですね、今年も!」

穂・海・こ「「「よろしくお願いします!」」」
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