ラブライブ!~未来へ響く多重奏~   作:朝灯

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遂にお気に入り100人越えました!
読んでくれている皆さま本当にありがとうございます!

実はお気に入りが100人に到達することを密かに目標としていたので、大変嬉しい限りです!
(つたな)い小説ですが、これからもどうぞよろしくお願いします!




サマーバケーションデートタイム!3年生編

 連休3日目。

 今日は一段と暑くなりそうな予感がする。

 余計にうるさく感じる蝉の鳴き声のせいだろうか?

 

「今日は3年生だし......少しは落ち着いた感じの休日になればいいんだけどな」

 

 ...さすがにもう家には来てないよな?

 

 考えすぎかも知れないけど、2日も続けてドッキリを仕掛けてきたバカが2人いたからな。

 でも希ならやりかねないよな?

 何かとんでもないものを仕掛けたりしてそうなんだけど......大丈夫だよな?

 

 起きたばかりの脳をフル回転させ、軽くあくびを1つ吐く。

 

 考えていても仕方ないか......いざ!戦地に(おもむ)かん!

 

 謎の気合を入れ、静かに階段を下りる。

 リビングから物音がするのが聞こえてきた。

 優莉の立てた音であって欲しい。

 

「優莉、おはよう」

 

 ドアを開けるとイスに腰かけているマイシスターの姿が目に入った。

 いつものように挨拶をしながら周囲に視線を飛ばす。

 

 人影は無し......どうやら今日は本当に誰も来てないみたいだな。

 

 ホッと胸をなで下ろし、もはや習慣となってしまった冷蔵庫から麦茶を取り出すという行動に移る。

 

「うん、おはよう。お兄ちゃん」

 

 サクッと食パンをかじる良い音をさせながら優莉は挨拶を返してくる。

 

「今日は誰も来なかったんだね」

 

「毎日数名ごとに違う女の子が家に来てたらご近所さんから変な噂をされて白い目で見られることになるだろうし......本当さすが3年生だ」

 

 別に家に来られて迷惑というわけじゃないけど、この間近所のおばさんから彼女9人いるの?って聞かれてしまい耳を疑ったばかりだからな。

 おかしいだろ。彼女いるの?って聞かれるならまだしも9人いるの?って......

 あとどこからそんな情報が流れたのかが知りたいところだ。

 穂乃果と海未とことりは近所に住んでるからまだ目撃情報があっても不思議に思わないけど1年と3年のことはどこから知られたんだよ......怖えよ、おばさんの情報網。

 

「おっと、そんなことよりも早くご飯食べて準備しないとな」

 

 今日はお茶漬けとか食べたい気分かなー......などと思っていると来客を知らせるチャイムの音が響く。

 

「誰だろうね?」

 

 優莉が食パンを咀嚼しながら首を傾げる。

 

「さぁ?はーい!今出まーす!」

 

 玄関まで急ぎ、鍵を開けてドアを開ける。

 

「どちら様です「優くんおはよう」......か?」

 

 ドアの前に立っていたのはμ’sが誇るスピリチュアルガールこと東條希。

 

「朝からごめんなさい」

 

 我が音ノ木坂学院の生徒会長を務めるモデルと言っても通じるスタイルの持ち主綾瀬絵里。

 

「何で私まで......」

 

 そして我が音ノ木坂学院のアイドル研究部部長を務めるアイドル大好き矢澤にこその人だった。

 

「とりあえず.....何で俺の家知ってるんだよ......」

 

 思わず額に手を当てて天を仰いでしまう。

 個人情報筒抜けすぎだろ......

 

「ふふっ、カードがうちにここやって教えてくれたんよ」

 

「怖え!スピリチュアルパワーまじ怖え!」

 

 いつかこの人は世界を掌握する気がしてならない。

 

「と言うのは冗談や。みんなに教えてもらったんよ」

 

「希が言うと冗談に聞こえないんだよ!」

 

 この3日の中で1番のドッキリを受けた瞬間だったかも知れない。

 とはいえ、いつまでも家の前で立たせておくわけにもいかないな......

 

「とりあえず入ったら?朝食ぐらい出すよ」

 

 来てしまったものを今更どうこう言っても仕方がない。

 

「うちらはえりちの家で食べてきたんよ」

 

「じゃあ飲み物だけでも出す」

 

 この時間帯はまだ涼しいといってもそれなりに喉は渇くからな。

 こまめな水分補給をしておかないと体調に影響出るかもしれないし。

 

「優くんは紳士やなー。ねっ?えりち?」

 

「どうしてそこで私に振るのかしら......?お邪魔します」

 

 2人の掛け合いを見ながら、俺もあとに続く。

 

「にこ、入らないのか?」

 

 仏頂面をしたままのにこは玄関の前から動こうとしない。

 

「私はここでいいわよ」

 

 顔と違わずのそっけない態度で答えてくる。

 

「何で?」

 

「このスーパーアイドルにこにーが男の家に上がり込んだなんてスキャンダルを「はーい、更に1名ご案内!」ってちょっと!!話は最後まで聞きなさいよ!!!」

 

 めんどくさかったのでとっとと肩を押して家の中に入れる。

 するとぶつくさと言いながらも観念したのか、渋々と靴を脱いで廊下に上がる。

 

「いつも亜里沙と遊んでくれてありがとね、優莉ちゃん」

 

 リビングに戻ると優莉がすでに飲み物を配り、絵里たちと話し始めていた。

 

「いえ、亜里沙といると毎日が楽しいですから!」

 

 片手間にその会話を聞きながらにこの分の飲み物を用意する。

 

「にこー、お前コップとジョッキと湯飲みどれがいい?」

 

「あんたバカじゃないの!?普通にコップよ!!」

 

 準備ついでにちょっとしたボケを入れるとキレのいいツッコミが返ってきた。

 もうアイドルってよりも芸人に近いレベルだな。

 

「じゃあ飲み物はどうする?」

 

「何があるのよ?」

 

 ジトッとした目を作りながら聞いてくる。

 

「うーん、牛乳とミルクと練乳だな」

 

「牛乳もミルクも同じでしょうが!!それにさりげなく混ぜてるけど練乳は飲み物ですらないじゃない!!」

 

 おおっ!このボケにも対応してくるのか!

 

「冗談だ。本当はオレンジとアップルとブドウと麦茶と水とミックスジュースだ」

 

「今度は無駄にラインナップが豊富ね......じゃあミックスをお願いするわ」

 

 ミックスね。......ありゃ?もう少ないな。

 仕方ない。

 

「...ちょっと待ちなさい。その両手に持ってるオレンジと牛乳のパッケージをどうするつもり?」

 

「いや、ミックス少なかったから作ろうかと」

 

 自分で聞いておいて出せないのもアレだし。

 

「どうしてその2つを選ぶのよ!?それならせめてオレンジとアップルでしょうが!!」

 

「いや、にこはもっとカルシウム摂った方がいいかなって......」

 

「あんたケンカ売ってるわけ!?」

 

 何を言う、親切心だ。

 

「悪い、ミックスなかったからオレンジでいいか?」

 

 にこはツッコミを終えて肩で息をしている。

 

「...普通のものならなんでも......いいわ......」

 

「もう、優くん?あまりにこっちをいじめたらあかんよ?」

 

 希が見かねたのか、笑顔のまま軽く俺を(たしな)める。

 だけど俺は知っている。こいつがこういう顔をした時は何かを企んでいる時だということを。

 希は笑顔で俺からトレーを受け取り、にこの所に持っていく。

 

「ほらにこっち、オレンジ持ってきたで」

 

 希はツッコミの疲労から少し俯いているにこの前にトレーを置く。

 

「あ、ありがと......ってこれただのオレンジじゃない!?絞れって言うの!?」

 

 そう。希がにこに持っていったのはジュースではなくただの果実。

 本物はここに置いたままだ。

 

「希!」

 

「優くん!」

 

 お互いにパンっと手を合わせ、ハイタッチをする。

 

「「イェーイ!!」」

 

「あんたたちねえ!!!爽やかな顔してんじゃないわよ!!」

 

 よーし、今はここまでにしとくか。

 あくまでも今は。だけどな。

 

「本当うちのお兄ちゃんがごめんなさい......」

 

「もう優がそういう人間だっていうのは分かってるから、気にしないでいいわよ?」

 

 だって反応が面白いんだもの。

 ついやっちゃうんだよな。

 

「悪かったって、ほらジュースだ」

 

 今度こそ本物を渡して近くのイスを寄せてから座る。

 

「そういえば絵里って家族と一緒に住んでるのか?」

 

 昔ロシアに住んでいたってことは両親も一緒に来てるんだろうか?

 そんな疑問がつい口を出る。

 

「いいえ。今は亜里沙と2人暮らしよ。両親と一緒に日本で住んでいたころの家を使っているの」

 

 そうだったのか。

 

 その後、俺が朝食を食べ終わるまで色々と会話は続いた。

 

***

 

「...」

 

「何よ急に黙って......どうかしたの?」

 

 そりゃあなぁ......3日連続映画館に来ることになったら誰でもこうなると思う。

 自分で行くって決めて来たならまだ納得はいく。

 でも3日間連続で内緒にされた挙句に行きついた先が全部同じなんだぜ?

 テンションを保つ方が難しいんだよ......

 

「いやー、映画来るの久々だなぁ......って思って」

 

 しかも相手に嫌な思いをさせないようにもう既に二度見ていることは言えないんだぞ?

 もしかしたら他の映画の可能性もあるかも!なんて無駄なことをほんの少しだけ思ったけど、にこがいる以上は100%この2日間見てきたものだ......

 

「ふーん.....じゃあ早速チケット買いましょ」

 

 俺は無言のまま券売機に向かう。

 

「ちょっと?見る映画分かってるの?」

 

「...どうせこれだろ?」

 

 視界に表示されているのは俺の生き写しと言ってもいいような映画。

 何でこう何度も自分の過去みたいなものを振り返った気分にならないといけないんだか......

 というか1年や2年からデートの内容聞いてないのか?

 

「何よ、分かってるじゃない」

 

 この問題だけは絶対外す気だけはしなかった。

 寸分の迷いなく購入ボタンを押して、チケットを受け取る。

 

「ほら、チケット」

 

 まずにこに渡す。

 続いて絵里と希。

 渡した順番に特に意味はない。

 ただ近くにいた順だ。

 

「優くんありがとう!」

 

「ハラショー、優くん」

 

「あ、ありがと......ほらチケット代!」

 

 これももうお約束だな。 

 

「このぐらいは俺が出すよ、ほら行こうぜ」

 

 と言って素通りしようとするとがしっと腕を掴まれる。

 

「何言ってんのよ。先輩が後輩に払わせるとかかっこ悪いにも程があるでしょうが」

 

 にこが意外なことを言ったおかげで完全に足が止まる。

 

「...何よ?」

 

「いや、にこがそういうこと言うとは思わなかったから......」

 

 まじでびっくりした。

 

「あんたねえ......ま、いいわ。とにかくこの世界では礼儀が1番大事なの、だから細かいこと言わずに受け取っておきなさい」

 

 にこが言うこの世界とは多分アイドル業界のことで、先輩が後輩の面倒を見るのも仕事の一環だったりするのだろうか。

 

「...悪い、やっぱ受け取れない」

 

 にこが何か言いかけるが、結局何も言わず目だけで先を促してくる。

 本当話がスムーズに進んで助かる。

 

「これは俺からの投資だ」

 

「投資?」

 

 にこは発言の真意を探るように目をジッと見てくる。

 こいつ今日は勘が鋭いな......

 

「あぁ、スーパーアイドル......いや、宇宙№1アイドル矢澤にこへの投資だ」

 

 それだけ言うとにこはふーんと呟く。

 どうやら宇宙№1というのがお気に召したらしい。

 

「分かったわ、そこまで言うなら今回はそれでいいわよ」

 

 ため息混じりの言葉を吐き、そのままお金を財布に戻すのが目に入る。

 

「でも、これが投資って少々安くない?」

 

「それはこれから頑張ります......」

 

 俺に何が出来るかは分からないけど、ここにいる限りは何かをしてみようと思う。

 

「それなら私と希は投資を受け取れないからお金払うわよ?」

 

「じゃあμ’sへの投資だ、これで文句ないな?」

 

 俺の屁理屈に近い言葉に希と絵里は苦笑し、そのまま何も言わなくなった。

 

「どうする?ポップコーンいる?」

 

「いや、飲み物だけでいいわ」

 

 絵里がそう言うと希とにこも頷く。

 じゃあ俺はホットドッグでも買っておこうかな。

 

 レジで素早く清算を行い、シアターの方へと歩き出す。

 

「そういえば1、2年からデートの内容は聞いてないのか?」

 

 先ほど気になった疑問を聞いてみる。

 

「聞かないようにしようって決めてたんよ」

 

「どうしてだ?」

 

 もし聞いていれば俺の映画3日連続という悲劇は生まれなかったわけだし、ちゃんと理由が聞きたい。

 次回があればこんな悲劇は繰り返されるべきじゃないからな。

 

「凛ちゃんたち1年生は1日目だからどことも被らないからまだいいと思うんよ。でも穂乃果ちゃんたち2年生がどこに行ったのか、なんて聞いてもし行先が被ってたら計画練り直すのが大変やん?」

 

「なるほど」

 

「だから優くんがおらん時にみんなで決めたんよ」

 

 その結果がこれか。

 ま、日にちずらしてるのにみんなが最初に映画館をセレクトして同じ映画を見るなんて普通思わないもんなー。思う訳ないもんなー。思って欲しかったなー......

 

 内心でやさぐれながらも、楽しそうに話す絵里、希、にこの3人を見て頬を緩ませてしまう自分がいた。

 それは俺という犠牲を何度払ってでも見たいと思わせる。

 そんな笑顔だった。

 

***

 

「久しぶりに来たなー。遊園地」

 

 3年全員というか、絵里の希望が遊園地で、希とにこは特に行きたい所も無く、午後は昼食も兼ねて全ての時間をここに費やすことになっているらしい。

 

「私は実際に来るのは初めてね」

 

「え?まじで?」

 

 遊園地に来たことが無いという絵里。

 ロシアにいた頃とかは行かなかったのか?

 

「小さい頃は毎日バレエの練習があったから、忙しくて行けなかったし......小学校と中学校の修学旅行では目的地に遊園地は無くて、遠すぎて自由時間に行くことが出来なかったの」

 

「高校は?」

 

「うちらの代は北海道にスキーやスノボをしに行ったんよ」

 

 あぁ、なるほど。

 他の地方だと大体行先は東京になるんだけど、東京に住んでるのに修学旅行は東京に行くなんて言い出したらその教師の頭を疑ってかかるべきだしな。

 それで自然を味わうとか言って田舎ばかりになるものどうかと思う。

 せめて歴史的建物の多い京都が1番いい選択と言えるのではないだろうか?

 

「じゃあ友達と行かなかったのか?」

 

「...今までの私は真面目すぎたのよ」

 

「何かごめん」

 

 ふっと遠い目をする絵里に思わず謝ってしまう。

 

 μ’s加入前の絵里は言っては悪いけど、堅物と言っても良かったぐらい真面目だった。

 責任感が強すぎるあまり、自分を押し殺すことも多かったのだろう。

 だから周りからは友達というよりも尊敬から来る近寄り辛さとかの方が強かったのかもしれない。

 

「一応えりちは誘われてはいたんよ?でも忙しいからって全部断っててな?本当はすごく行きたかったんよ」

 

「ちょっ!希ぃ!」

 

 おぉ、希が赤面する絵里を見て超にやにやしてる。

 良かったな、絵里。希と出会えて。

 

「こほん。とにかくそういうわけだから今日はすごく楽しみなのよ」

 

「そうね、決める時からずっとそわそわしてたものね」

 

「今度はにこなの!?もうやめてよ!恥ずかしいから!」

 

 わざとらしく咳ばらいをする絵里ににこからの追撃が入る。

 まるで溜まりに溜まった鬱憤(うっぷん)を晴らそうとしているみたいだな。

 それにしても......ホームページを見たり、パンフレットを握りしめたりしながらそわそわする絵里か......

 ...すげえ見てみたい。

 まぁ絵里に限っては場所が重要なんじゃなくて友達と一緒に遊ぶってことが重要なんだろうな。

 

「それじゃ早速中に入ろうか。時間がもったいないし」

 

 入口でチケットを購入し、ゲートをくぐる。

 入口の前でも十分賑やかだったのだが、中は人だけじゃなく、アトラクションの音も混ざりそれが興奮を(あお)る。

 

「ハラショー......」

 

 1番楽しみにしていた絵里も目の前の巨大なアトラクションの数々に呆気に取られているようだ。

 それでもハラショーは忘れてないんだけど。

 

「まず何から乗る?」

 

 入口付近の店からパンフレットを取ってきて絵里に渡す。

 しばらくあっちを見たりこっちを見たりと忙しかった絵里の視線がある一点で止まる。

 その視線を追っていくとそこにあったのは......

 

「いきなりジェットコースターか」

 

 この遊園地で一際大きな悲鳴が上がっているであろうアトラクションを見て、少し尻込みをする。

 こうして見ている今も歓声なのか悲鳴なのか判別し辛い叫びが俺たちの耳に届いていた。

 

「じゃ、昼食は軽く摘める物にして、あれに並ぼうか」

 

 ゴミは乗った後に処理すればいいだろうしな。

 ジェットコースター付近の店でそれぞれが食べたい物を購入するとすぐに順番待ちの列へと移動を始める。

 

「そう言えばにこはこれ乗るのに身長足りるのか?」

 

 ついついからかいに走ってしまう。

 

「そんなに小さくないわよ!」

 

「いやいや、分からんよ?ギリギリ足りないかも知れんやん?」

 

 俺の悪ふざけに希も加わる。

 

「はぁ!?そんなわけないでしょ!?」

 

 にこがこっちをくるりと振り向く。

 

「あっ......」

 

 にこはこっちを見たままなので、まだ気が付いていないみたいだ。

 

「今度は何よ?」

 

「にこっち、前見た方がええで?」

 

 希も当然俺と同じ方を見ているから気が付いている。

 そして絵里も。

 

「前?」

 

 急に真剣な口調で言い始めたのが気になったのか、にこは前を向く。

 

「っ!!痛ぁ!!」

 

 前を向いたにこの頭に身長制限のバーがぶつかる。

 歩くペースでかなりゆっくりぶつかったから怪我とかはないと思う。

 

「...良かったなにこ。身長、足りたぞ」

 

「嬉しくないわよ!!ていうか笑いこらえてるのバレバレなのよ!!」

 

 口調こそ真剣だったが、にこの言う通り俺は笑いを我慢している状態だ。

 絵里も希もそれは同じようで、顔を俯かせて肩をぷるぷると震わせている。

 

「悪い、ちょっと言い過ぎたな......くっ!」

 

「笑うなぁ!!」

 

 にこの叫びからしばらく経つとようやく俺たちの順番が回ってきた。

 

「席順どうする?」

 

 並んでる間に決めておけばよかったな......

 

「えりちと優くん、うちとにこっちでいいと思うよ?」

 

「時間も無いし、それでいくか。ほら絵里、こっちだ」

 

 荷物を足元に置いて、落ちないようにする。

 絵里を見るとおっかなびっくりといった感じで立っていた。

 

「ほら、こっち」

 

 絵里の手を掴み隣に乗せる。

 

「っ!///あ、ありがとう」

 

 そのまま絵里の荷物も同じようにする。

 そして安全バーが下りてきて体を固定すると微かな衝撃と共に乗り物が動き始めた。

 

「...(手を握ってエスコート......ハラショー)

 

 隣で絵里が何かを呟いているが、風の音で全く聞こえない。

 乗り物は徐々に坂を昇っていく。

 

「ね、ねえ。これ大丈夫よね?」

 

 絵里は不安そうな表情で俺を見てくる。

 普段の大人っぽい感じとはまた違う可愛らしさ。

 

 これがギャップ!?

 

「大丈夫だって。ほらちゃんと固定されてるだろ?」

 

 そして頂上付近になると絵里は青白い顔をして体を固定しているバーを無言でギュッと握りしめる。

 

「だからそんなに緊張しなくても大丈夫だって!......(アーメン)

 

「今アーメンって!?きゃあああああああああああ!!!!」

 

 直後、強烈なGが俺たちを襲う。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 そのまま乗り物は生きているようにレールの上を走り続けた。

 その後無事に終着地点へとたどり着く。

 

「どうだった?」

 

「とても面白かったわ」

 

 ジェットコースターが気に入ったらしい。

 後半は悲鳴が歓声に変えり、顔も笑顔だったしな。

 

「じゃあ次は後ろ向きに走るやつに挑戦だな」

 

「そ、それはさすがに......でも楽しそう」

 

 俺は実際に乗ったことはないけど、どうやらそういうジェットコースターが存在するらしい。

 背中から落ちるってどういう感覚なんだろうか......

 

「えりちえりち、次はあれ行かん?」

 

 希が指差す方向には暗い洋館っぽい外見の建物がある。

 

「お化け屋敷か......って絵里、顔が引きつってるぞ?」

 

 視線を絵里に戻すと、そこには何とも微妙な顔をした生徒会長様の姿があった。

 もしかしてこいつ......

 

「お化けとか苦手?」

 

「に、苦手とかじゃないけど......」

 

 言葉と表情が一致してないぞ。

 そんな怯えた表情しながら言われても説得力がない。

 

「まあまあ、優くんもおるし大丈夫よ。2人で組んで行けばいいやん」

 

「今日は俺と絵里を組ませることが多いけど、何かあるのか?」

 

 この質問こそ特に意味はないけど。

 

「んー、やっぱり初めての遊園地やし......男の子に案内してもらいたいと思うんよ!」

 

「そういうことか」

 

 口では納得したように言っておくが、ほんの少し違和感がある。

 何かはぐらかされている気が......

 

「ほな、行こか」

 

「絵里、行けるか?」

 

「だ、大丈夫よ」

 

 本当にいいのかよ。

 ...本人がいいって言ってるし、やばくなったら途中で抜ければいいか。

 

「絵里にも苦手なものってあるのね」

 

 にこが心底意外そうに言う。 

 普段は気の強い落ち着いた雰囲気の年上の人がお化けや暗闇が怖い、なんて言い出したらそれはむしろプラス要素にしかならないんじゃないか?

 弱点があって可愛らしいとしか思わない。

 

「にこは何が苦手なんだ?」

 

「この私に苦手なものなんてあるわけないでしょ?」

 

「あー、うん。嘘が苦手なんだな?正直でいいことだ」

 

 いつも通り軽くあしらっておく。

 

「...そういう優は何が苦手なのよ?」

 

「うーん......強いて言うならば、あの黒光りしたカサカサ動くあいつかな」

 

 あえて言葉を濁す。

 

「あれは耐性が無い人全ての共通の敵でしょ?」

 

「いやいや、俺のは人のとは少しだけレベルが違うんだ」

 

 実害を受けてない人には分からないものがあるからな。

 

「へえ。何よ」

 

「小さい頃までは別に平気だったんだけど......ある日あいつが俺の顔に向かって羽を広げて飛んできたんだ。それだけだ」

 

 想像して見てくれ。

 小学生ぐらいの時に顔に向かって羽と手足を目いっぱい広げて飛んでくるんだぜ?

 そりゃあトラウマにもなりますよ。

 と言っても今は苦手なだけで撃退ぐらいは普通に出来る。

 

「...夢に出てきそうね」

 

 本当にな。

 というかこの話題出したら大体の女の子は悲鳴を上げるんだけど......にこは平気なのか?

 見た目に反して随分とたくましい精神を持ってるんだな。

 

「お、やっと俺たちの番か」

 

 苦手なものの話題が思いのほか盛り上がり、気がつけば目の前には薄暗い空間があった。

 隣で絵里の喉が鳴る。

 

 4人で一緒に足を踏み入れるとおどろおどろしいBGMが聞こえ始め、ひんやりとした空間に切り替わる。

 へぇ......結構雰囲気あるな。

 と感心しているとがしっと腕を組まれる。

 

「...絵里?」

 

「ごめんなさい......やっぱりこういうのちょっと怖くて......」

 

 いやいいんだけどね?

 歩き辛いだけで別に何ともないしさ。

 でもその......豊かな双丘が当たってるんだけど。

 何これ?試されてる?

 

「きゃああああああああ!!!!」

 

「うおおおおおおおお!?」

 

 絵里が仕掛けに驚き、更に腕に抱き着いてくる。

 するとあら不思議。俺の腕が谷間に埋もれたじゃありませんか。

 ちなみに絵里のは本気の悲鳴。俺のは興奮から来る衝動だ。

 

「2人ともいいリアクションやん」

 

 違うんだ......俺は別に怖くなんてない。

 いや、怖い。

 無邪気に俺の理性を削る絵里が怖い。

 

 くっ!お化け屋敷......なんて恐ろしい所なんだ......

 

 今もなお、俺の腕にはたゆんとかぽよんとかいう感覚が張り付いていて、俺の心を(むしば)んでいく。

 ハラショー......

 

 更に仕掛けは続き、恐怖が襲い掛かってくる。

 

「「きゃあああああああ!!!!!!!」」

 

 そして、俺と絵里の悲鳴は完全にシンクロを果たした。

 色々な危機を乗り越えて出口に着く頃にはすっかりぐったりした俺と絵里の姿があった。

 

「何よ、優も私と違って怖かったんじゃない」

 

 あぁ、にことは何もかもが桁違いだった......主に体の作りとか。

 普段ならお前もびっくりして希にしがみついてただろうが、とか言っているだろうけど今はちょっと無理だ。

 

「じゃあ、次は何に乗りましょうか?」

 

「何で敬語なん?」

 

「気にしないで下さい」

 

 途中から俺は完全に悟りを開いた。

 この状況なら故意に触っても怒られないんじゃないか?

 そんな欲求を抱いてしまった自分をぶん殴りたいほどだ。

 

「さぁ、時間ももったいありませんし......どんどん周りましょう」

 

 その後、30分ほど俺は敬語のままだった。

 

***

 

「全く......どういうつもりなの?」

 

 あれから色々な遊具に乗って遊んだ。

 そして今は観覧車の中で夕日を浴びながら希と2人っきりだ。

 何故か優と絵里は2人だけで別の観覧車に乗っている。

 

 まぁ......聞かなくても分かるけどね。

 

「にこっちも気づいとるんやろ?えりちのこと」

 

 微笑みを絶やさない希。

 

「何となくだけどね......それよりあんたはいいの?」

 

「...うちのことよりも今はみんなのことの方が大事なんよ」

 

 表情を全く変えないから相変わらず何を考えているのか分からないわね......

 

「そういうにこっちはどうなん?」

 

「別に......何とも思ってないわよ」

 

「ふーん......」

 

 観覧車内に静寂が訪れる。

 何とも思っていないはずなのに、希の言葉が心に引っ掛かったまま取れてくれない。

 きっとここから見る夕日のせいでセンチメンタル気味になっているだけね。

 それとも絵里の影響から来ているせいなのかしら?

 

「明日からまた練習やな」

 

 どれだけの時間お互いが喋らなかったのかは分からないけど、希が不意にそんなことを言う。

 

「そうね。ラブライブ出場は目前なんだからいつも以上に気は抜けないわよ」

 

 そう言った時、ちょうど観覧車のドアが開く。

 そして先に降りていた優と絵里に合流し、一部の話を伏せて観覧車の中で何を話したのかを言い合いながら遊園地の出口へと向かった。

 

―To be continued―

 




作「雑談のコーナー!今回は3年生の3人です!」

に「せっかくお気に入り100人越えたんだからちゃんと紹介しなさいよ」

希「まあまあ、ええやん!」

絵「仕方ないわよ。凛や穂乃果たちからも聞いていたことでしょ?それに輪をかけて今は浮かれてるんだから」

作「だって100人ですよ!?他の作者さんたちが書いたラブライブの二次小説と比較したらUAも少ないぐらいですし、これぐらい喜んでるんですよ!!」

希「でも気を抜いたらどんどん読者さんたちが減っていくことになりかねんと思うんよ」

作「そうですね......読んでいただける読者の方々を増やすために作品のクオリティの向上を目指したいと思います!」

絵「その為にはもっと他の作者さんたちの作品を読み込んで勉強が必要ね」

作「学校の勉強に比べたらとても楽しいぐらいですよ!現在も色々な作者さんの作品を読んで笑わせてもらっているぐらいですから!」

に「というか今回の話全く振り返ってないけどいいの?何か裏エピソードは?」

作「そうですねぇ......今回は特に悩んだりはしていないんですよ。何となく全学年の中で1番書きやすかったですし、頭にスッと浮かんできましたから」

に「ふ~ん、ならそろそろコーナー終わらせないと長くなりすぎてだれるわよ?」

希「にこっち、もう手遅れやん」

絵「そうね。時間もいい頃だし、そろそろ終わりましょ」

作「本当はまだまだ話したいぐらいなんですけどね......では!次回も!」

に・絵・希「「「よろしくお願いします!!!」」」
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