そろそろアニメ第1期の物語もクライマックスに差し掛かりました。
「それじゃあ、行ってくるね。お母さん」
「...体調には気をつけるのよ」
私を空港まで送り届けてくれたお母さんに背を向ける。
もう......留学かぁ。
穂乃果ちゃんにちゃんと謝れてないんだけど.......
海未ちゃんにもたくさん迷惑かけちゃったし.......
いや、それだけじゃないよね、真姫ちゃんにも、凛ちゃんにも、花陽ちゃんにも、絵里ちゃんにも、希ちゃんにも、にこちゃんにも......ゆー君にも迷惑かけちゃったなぁ......
「...ことり」
「なぁに?お母さん」
「...本当に良かったの?」
その言葉がチクリと刺さる。
「...うん」
私はそう答えるのが精いっぱいだった。
そうしないと泣きそうで、そうなったら......きっと立ち止まってしまうから。
「そう......頑張ってきなさい。お母さん仕事があるから、戻るわね?」
「うん、頑張ってくるよ」
カツ、カツ、と足音が遠ざかっていく。
その音を頭の片隅で認識しながら、私は別のことを考える。
もし、音ノ木坂が共学で......ゆー君が1年生の時から一緒にいたら、と。
きっと、すごく楽しかったんだろうなぁ。
穂乃果ちゃんや海未ちゃんといて、楽しくなかったなんてことは絶対に無いよ?
ただ、それに加えてゆー君がいたら、私の高校生活はどうしようもないほどにキラキラとしていたはず。
ゆー君、私の幼馴染で初めての男の子の友達。
優しくて、面白くて、......ちょっぴりえっちな男の子。
周りを明るくしてくれて、私をいつだって連れだしてくれる男の子。
――穂乃果ちゃんと海未ちゃんと同じで、私のヒーロー。
そんな彼との出会いは、いつ頃だったっけ?
お母さんがゆー君のお母さん、美樹さんととても仲が良くて、よく遊びに来ていた。
その時に付いて来ていたゆー君と出会った。
初めは、ちょっぴり怖かったんだよね。
男の子とあまりお話をしたことが無くって、どう接したらいいか分からなかったなぁ。
でも、そんな考えは彼と一言交わした瞬間に溶けて無くなった。
『あ、あのぅ......』
と勇気を振り絞って声をかけた私に、彼は......
『はじめまして!おれはやさかゆう!きみは?』
『あ......みなみことりです!』
ゆー君の優しい笑顔を見た瞬間、すぐに分かった。
この男の子はきっと、見た目通り、優しくて......暖かい人なんだって。
『う~ん......じゃあことりちゃんだ!よろしくね!』
『うん!ゆーくん!』
これが出会い。
それから、穂乃果ちゃんと海未ちゃんが遊びに来て......私たち3人とゆー君は晴れて幼馴染になった。
『ことりちゃーん!あーそーぼぉー!!』
『あっ!ほのかちゃん!』
チャイムを鳴らして、その鳴ったチャイムよりも大きくて元気な声が外から響く。
『ほ、ほのかぁ!とつぜんおしかけてはめいわくですよぉ!』
『だいじょーぶだって!!おかあさんたちもあとでくるっていってたんだし!!』
『いらっしゃい!』
お家に入ってもらうと、すぐにゆー君と穂乃果ちゃんたちは出会った。
『あれ?おとこのこがいるよー!?』
『おれはやさかゆう!ことりちゃんとはともだちになったばかりなんだ!』
この頃から、穂乃果ちゃんはあまり物怖じしてなかったと思う。
穂乃果ちゃんは小さい頃は男の子と同じくらい足が速くて、よく男の子と一緒になって駆け回っていたぐらいだしね......
思い出すとクスクスっと笑みがこぼれる。
『わたしはこうさかほのか!ことりちゃんとはおともだちだよ!』
ゆー君は私とお話をした時みたいに柔らかな笑みを浮かべて、言った。
『よろしくね!ほのかちゃん!』
『うん!よろしく!ゆうくん!』
そこでゆー君の視線が穂乃果ちゃんの後ろに隠れていた海未ちゃんへと向けられる。
少しだけ不思議そうな表情を見せたあと、再びにこりと微笑んだ。
『おれはやさかゆう!きみは?』
急に声をかけられた海未ちゃんはビクリと肩をすくませて小さくなってしまいます。
『うぅ~......お、おとこのひと......!』
『ほら、うみちゃん!だめだよ!ちゃんとあいさつしないと!』
『はずかしいですぅ~......ほのかぁ、ことりぃ......』
穂乃果ちゃんが海未ちゃんをゆー君の前に突き出してしまう。
隠れられる場所が無くなった海未ちゃんはお顔を真っ赤にして、俯きながら自己紹介しました。
『そ、そのだ......うみ......です』
『うん、よろしくうみちゃん!』
私はその様子をにこにことしながら見ていました。
『よ、よろしくおねがいします......やさか......くん』
『んー......ゆうってよんで!』
『えぇっ!?むりですよぉ!!おとこのひとをよびすてなんて!!』
海未ちゃんの人見知りは昔からで......当時は男の子と会話すら出来なかったぐらいだったなぁ。
それでもゆー君とはお話出来ていた、って感じだったよね。
『だいじょーぶだよ!ともだち、なんだから!』
『...ゆ、ゆ、ゆ、......ゆう!!』
『うん、うみちゃん!』
子供ながらによく思っていた、ゆー君が同じ小学校だったらよかったのに!って。
そして、友達になってからはよく4人で行動していたし、確か......夏休みの間なんかはずっと私の家に泊まっていたこともあったぐらい。
それでも、別れはやってくるもので、私たちは大きくなるに連れて、段々と会わなくなっていきました。
私はお母さんからよくお話を聞いていたからゆー君のことはよく覚えていました。
穂乃果ちゃんと海未ちゃんとは時々ですが、このことを話して今どうしてるんだろうね?なんて話し合ったりもしました。
時は流れて、私たちは小学校6年生になりました。
この頃くらいから、自慢ではなく私と海未ちゃんと穂乃果ちゃんはよく男の子から告白されるようになりました。
穂乃果ちゃんと海未ちゃんは分かるけど、どうして私まで?と思ったのをよく覚えています。
でも、私の心の中には優しくて暖かい笑顔が残ったままで、男の子から告白されても舞い上がることがありませんでした。
中学校は女子校だったので、そういった浮いた話は出てきません。
修学旅行の夜には友達から好きな人を聞かれてなんて答えればいいか迷ったなぁ。
結局いないってことにしてもらったけど......
高校も女子校で、ほとんどが音ノ木坂中学からの同級生ばかりだったので、中学生の時と全く変わりませんでした。
そして、そのまま1年が過ぎて......ある日、私はお母さんから理事長室に来るようにと言われました。
何の用事だろ?と思いながらノックをして理事長室に入ると......
『この男の子、覚えてる?』
いきなり言われてとまどいました。
そこにはここにいるはずのない人物、ゆー君が少し困ったように笑って立っていて、驚いてしまったのです。
男の子が1人、転入してくるという話は聞いていました。
こんな映画みたいな再会あるんだなぁ!
そしてゆー君と過ごしている内に、μ’sが出来て、1年生の真姫ちゃんと花陽ちゃんと凛ちゃん。
3年生の絵里ちゃん、にこちゃん、希ちゃん。
9人になっていく中で......私はゆー君に対する想いを明確に自覚したのです。
思えば初めて会ったその時には、きっともう一目惚れしてたのかもしれません。
その人を惹きつける笑顔と性格を知ってから、私は10年間以上も片想いをしていたんだなぁ......
――もっと一緒にいたかった。
――最後の最後、卒業まで一緒に過ごしたかった。
――もう一度声が聞きたい。
――あの優しい笑顔を見たい。
――名前を呼んでほしい、それだけで私は十分頑張れる。
「ことり!」
そう、こんな風に。
「えっ?」
背後から聞こえてきた聞こえるはずのない声に、私は振り向いた。
***
「ことり!」
俺が息も絶え絶えになりながら叫ぶとことりはゆっくりと振り返る。
良かった!間に合った!
大声を出してしまった為、周りからの視線が俺に集中する。
でも、すぐに興味を無くしたのかそんな視線も無くなる。
「...穂乃果ちゃん......ゆー君......どうして......?」
「どうしてって......迎えにきたんだよ」
穂乃果が一歩前に出る。
「ことりちゃん!私、スクールアイドルやりたい!ことりちゃんと最後まで!いつか、お互いが違う道を歩き出すとしても!.......だから行かないで!!」
穂乃果がぎゅっとことりに抱き着く。
「穂乃果ちゃん......でも......」
それでもなお、ことりは弱く呟くだけだった。
「ことり、俺からもお願いだ!行かないでくれ!」
ピクリとことりが揺れる。
最初からこうしていれば良かった。
そうすればことりが悩むことはなかったんだから。
「...無理だよ、そんなわがまま......私、困っちゃうよ」
穂乃果に抱き着かれたまま、ことりは俯く。
「わがままぐらい言わせろ!!!!!これが本当に最後になるかもしれないんだ!!!!!!だから今しかないんだよ!!!!!!!」
さっきの弱弱しい感じではなく、ことりの肩がビクッと揺れ動く。
そう言えば、ことりにこんなに怒鳴ったことって無かったな......
「...ことり、お前本当は止めてほしいと思ってたんだろ?」
「...」
ことりは答えない。
でも、俺は続ける。
「よく考えたら、お前の口から留学したいって直接聞いてないんだよ。確かにそういう考えもあったのかもしれないけど、それはお前の意思じゃない。留学のことだって、ひばりさんに言ったのは服飾の勉強がしてみたいって言っただけだろ?」
「私は......」
まだ、ことりから本音は引き出せていない。
「それにさ、ことりに止めても無駄だよなって聞いた時にも......お前は連絡しちゃったから、なんて答えたんだ。行きたかったらこの時点で行きたいって言えばいいにも関わらずだ」
「私、私は......最初から......」
俺は更に言葉を継ぐ。
「花火大会の夜、お前......傷ついた顔して笑っただろ?あれが何よりの証拠だ。それに今だって......」
今だって、ことりは泣き出しそうに顔を歪めている。
「...ことり。行きたいなら、今ここで行きたいと言ってくれ。そうしたら俺と穂乃果はきっぱりと諦めるから」
「...ゆう君、うん......ことりちゃんが行きたいって言うなら、穂乃果は親友として背中を押すことにするよ」
ここまで言って引き留められないのは、それだけことりが本気ってことで......そうなったら海未に合わせる顔がないけど、ことりが選んだことって言えば納得してくれるだろう。
「私......最初から自分の気持ちに気がついてたのに......どうしようもないよね」
外から大きなエンジン音が聞こえる。
「...飛行機、乗り過ごしちゃった......」
ことりはポツリと呟いたあと、穂乃果をそっと引き離し俺に近づいてきた。
「...ゆー君、私は......まだ......みんなと一緒にいたい!」
「...あぁ!帰ろう!みんなが待ってる!」
ようやく、これでμ’sはもう一度動き出せる。
その時、俺は近くで見ることが出来ないけど......学校はこの辺りだし、もしかしたら出会えるかもしれないしな。
「留学先の学校に謝らないといけないね......」
「あとで俺と一緒にひばりさんの所に行こう、それでいいか?」
「...うん!」
きっとことりなら何度だってチャンスが訪れるはずだ。
彼女の服飾の腕は俺たちが良く知ってる。
「...ねえ、ゆー君は音ノ木坂にいたい?」
ことりが不安そうにしながら聞いてきた。
「それ、海未にも言われたんだけど......当たり前だろ、もしこのわがままが通るならお前らと一緒に学校に通いたい」
これは俺の本音。
無理でもなんでもこれだけは変わることのない想い。
「急がないとにこたちのライブ始まっちゃうぞ?母さんも待たせたままだし」
「...もしかして美樹さん!?」
ことりも会うのは10年振りぐらいだもんな。
「あぁ、空港まで送ってもらったんだけど......あぁ、いたいた」
車の前に立っている母さんを見つけ、俺たちは急いで駆け寄る。
「...ちゃんと役目は果たしたみたいね。それじゃ帰るわよ!乗りなさい!」
そうして、俺が助手席に乗り込もうとすると荷物が目の前に置かれる。
「優、ここには母さんの荷物置くから、ことりちゃんと穂乃果ちゃんの間に座りなさい」
「何でそうなるんだよ!?」
あの2人の間とか......
いやいや、やっぱり無理だって!!
「いいから荷物トランクに置けばいいだろ!?」
「つべこべ言ってるとあんたをトランクに乗せるわよ?」
「実の息子をお荷物扱い!?」
とんでもねえ母親だ......
しかし逆らうわけにもいかずに、俺は穂乃果に続いて後部座席に乗り込む。
「...ことりちゃん、久しぶりね」
「は、はい!お久しぶりです!」
俺が乗り込んだあと、車外ではこんな感じの会話が行われたとか。
―To be continued―
作「雑談のコーナー!今回のゲストは南ことりちゃんです!」
こ「よろしくおねがいしま~す♪」
作「さて、今回のお話ですが......力を入れた部分は回想シーンですね」
こ「そうなんですか?」
作「はい、幼少期からの想いを伝わりやすくするために優くんと出会った時の回想シーンを入れてみました」
こ「なるほど......」
作「他には飛行機を乗り過ごしたというセリフが自分で書いておいて1番のお気に入りですね。思いついた時はこれしかないと思ったぐらいです!」
こ「呟く感じが切ない、かもですね♪」
作「それと2年生個人回のサブタイトルですが、それぞれ名前と性格にちなんだものになっています」
こ「私の場合は迷い鳥、ですね」
作「これはことりちゃんが迷っている様子をシンプルにつけた名前です」
こ「穂乃果ちゃんの時は日の出、でしたよね?」
作「穂乃果ちゃんは太陽に例えられることが多いですから、沈んだ気持ちが浮き上がってくる様子を太陽の日の出と日の入りに例えたものです」
こ「海未ちゃんの時は海色の想い、ですね」
作「海未ちゃんのイメージカラーは青色、それに名前も『うみ』ですから、生まれたての青い気持ちをイメージカラーと名前にかけたサブタイトルですね」
こ「色々と考えてるんですね!」
作「海未ちゃんの時は無理やりな気もしますが、これ以外に思いつきませんでした!!」
こ「お疲れさまですっ♪では、次回もよろしくお願いします♪」