ラブライブ!~未来へ響く多重奏~   作:朝灯

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第1期も終わったということで新キャラ登場です。
この回は多分この小説史上最大の暴走ですね。




番外編シリーズ1
真白、襲来!


俺が音ノ木坂学院の正式な生徒になってから、1週間が経った。

 9月中旬に入ったというのにまだまだ暑い日が続く今日この頃。

 今日は土曜ということで、学校は休み。

 それでもμ’sの一員として今日も練習に励む。

 

「いい天気だなー。今日も気分よく過ごせそうだ!」

 

 そう思っていたのに......

 

「おはよう!優お兄ちゃん!」

 

 ...どうしてこうなったんだろうか......

 

 

 ――事の始まりは、金曜日......つまり昨日へと遡る。

 

「ゆう君の従妹の真白ちゃんだっけ?それってどんな子なの?」

 

「...あまり思い出したくないんだけど......」

 

 学校と練習を終えた、帰り道。

 穂乃果がそんなことを言い始めた。

 そう言えば、車の中で奴の存在を知られたんだっけ?

 まじで言いたくねえな......

 

「優、従妹とは?」

 

「あぁ、その時は海未はいなかったもんな......九文(くもん)真白、優莉と同じ中3で来年高校生になる子だ」

 

 どうやら海未も興味を持ってしまったらしい。

 さて、どう説明したものか......

 

「それで、一体どんな子なの?」

 

 ことりが聞いてくるが、説明し辛いな......

 大体みんな口で言っても信じないから......

 

「はぁ......強いて言うなら、穂乃果と同じぐらいの行動力を持ち凛と同じぐらいの身体能力を持ち性格はにこに似ていて、絵里のような器用さを持つやつだ」

 

 ついでに容姿はμ’sのメンバーに混じっても違和感がない。

 普通に可愛いレベル。

 性格とかその辺全部抜けばの話だが......

 

「それは......本当に人間なのですか?」

 

 言いたいことは分かる。

 あいつが人の形を留めていることが不思議でならないぐらいだ。

 穂乃果と同レベルの行動力と凛と同レベルの身体能力を持っているだけでも手がつけられないのに......それに加えてにこみたいな猫被り、絵里みたいにやらせれば大体のレベルまでこなせるハイスペック人類。

 

「そういや近々会いに来るって言ってたな......恐ろしい」

 

「...聞く限りハイスペックなだけで特に何もないと思うのですが?」

 

 ...これを俺の口から言うのは躊躇(ためら)いがある。

 大体のやつはこれを聞いて、は?何言ってんだこいつ?って反応するんだよ......

 実際に会ってみないと分からない。

 でも、会わせたくない。

 

「海未、この世には知らない方がいいってこともあるんだぞ?」

 

「は、はぁ......?」

 

「えぇ~!!気になるよ!!」

 

 こうなったら穂乃果は逃がしてはくれないだろう。

 苦渋の決断をし、耐え難い事実を告げてやる。

 

「...あいつ、真白は俺のことを異性として大好きで......度し難いレベルの変態なんだ」

 

「「「え?」」」

 

 ほら!こうなった!

 だから言いたくなかったんだよ!!!

 

「...優。今日は良く休んで下さい」

 

「別に嘘は言ってない!やめろ!そんな哀れみに溢れる目で見るな!」

 

 従妹同士は結婚出来る。

 でもあいつのは愛が重すぎて受け入れられる気がしないんだっ!!

 

「ことり!信じてくれるよな?」

 

「...うん」

 

「目を逸らされた!?」

 

 ダメだ......だから嫌だったんだ!!

 

「ゆう君、何か悩みがあるなら言ってね?」

 

「優しさが痛ぇ!?」

 

 普段は優しさが欲しいと言ってるような俺だが、さすがにこんな優しさはいらない。

 

「...じゃあ俺はこれで」

 

 さすがにこれ以上は心が折れそうだったので、今日はみんなを家まで送ることなく、家に帰ることにした。

 まだ明るいし、近所だから大丈夫だよな?

 

「うん!また明日!」

 

「おやすみなさい」

 

「ゆー君、また明日!」

 

 靴を脱いで、家に入る。

 

「ただいまー」

 

「お帰りーお兄ちゃん」

 

 いつものようにリビングのソファに腰かけた優莉がチラリと俺を見ながら返事をしてくれる。

 

「じゃあ、俺は上にいるから、もし何かあったら呼んでくれ」

 

 俺もいつものように冷蔵庫から飲み物を取り出して、2階にある自室へ向かう。

 

「あっ、お兄ちゃん......ってもういないし」

 

 急いで2階に上ってしまった俺には優莉のその声は届かなかった。

 

「真白が明日家に来るってこと言おうと思ってたのに......まぁあとで言えばいいよね?」

 

 ...届くはずがなかった。

 

***

 

「朝か......」

 

 翌日、目が覚めた俺は体を起こしてぐぐっと伸びをする。

 

 気持ちのいい朝だな......目覚めも最高だし。

 さて、パンでも食べて早く練習に行くかー。

 

 と、ベッドから降りようとすると何か違和感があることに気づく。

 人が1人分入っていそうなぐらい隣の辺りが盛り上がっていた。

 

「...え?」

 

 何これ......朝チュン?

 いや、いやいやいやいや!?

 覚えがないぞ!?

 

 俺が身じろいでいると、その塊がピクリと動いた。

 

「ん~......あっ!優お兄ちゃん!おはよう!」

 

 容姿だけ見れば間違いなく美少女と言ってもいい、頭のおかしい変態がそこにいた。

 

「...いや、逆にお前で安心したけど......何でお前が俺ん家にいて、しかも俺のベッドに潜り込んでるんだ......真白!!!!」

 

 出来れば今すぐ親戚という関係すらも解消してしまい、会わなかったことにしたい従妹は不思議そうに首を傾げる。

 

 いや、本当こいつで安心したわ、安心出来ねえけど......もしこいつ以外が布団に潜り込んでたら間違いなく発狂してた。

 なぜ俺がこんなに落ち着いているのか、それはこの変態がいつもしていることを思い出せばこのぐらいは優しい、イージーモードもいいところだからだ。

 

「えっ?何でって......愛し合う2人がベッドの上で過ごすのは当たり前でしょ?」

 

「その言い方だと生々しく感じるからやめろ。...何もしてないだろうな?」

 

「...やだな~。いくら私でも越えたらいけないラインは分かるよ?ちょっと夜這い仕掛けただけだからセーフだよ!」

 

「それは越えたらいけないラインだ!!」

 

 急いで距離を取る。

 近くにいるとマジな身の危険を感じる。

 

「...お父さんは酷いね、真優(まゆう)

 

「お腹さすりながら言うんじゃねえ!!!!!」

 

 リアルにしか聞こえない!!

 特に両親から一文字ずつ取っていそうな辺りの名前がより拍車をかけてリアル!!

 

「なんてね。嘘だよ~!」

 

「...俺今人生最大に安心してる」

 

 一気に疲れが出てきて、俺はその場にへたり込むように座る。

 人との会話ってこんなに疲れるものだったっけと思わずにはいられない。

 

 いや、こいつを人類にカテゴライズしていいのかが判断出来ない。

 容姿云々以前に性格がぶっ飛び過ぎてるからな......

 

「...おい、いい加減布団から出てこい」

 

「はーい!」

 

 真白は元気な返事をし、布団を取ろうとする。

 

 ...何か嫌な予感がするな......

 

「待て、1つ確認させろ。お前ちゃんと服着てるよな?」

 

「あはは、大丈夫だよ!私だって乙女だからそれ相応の恥じらいはあるし!」

 

「...今のは聞かなかったことにしてやる。服着てるならいい、早く出ろ」

 

 そうして真白は布団を取って立ち上がる。

 その姿は――

 

 

 

 

 ――生まれたままの姿、つまりは裸、何も身に着けてはいなかった。

 

「嘘つき!!!!!お前にとっての恥じらいって何だ!?」

 

「そりゃ私もさすがに夜の営みをする時は恥ずかしいと思うよ?」

 

「全裸は見られても恥ずかしくないってか!?いいから早く服を着ろ!!!!」

 

 こいつに必要なのは衣服を身に着けるよりもまずは恥じらいを身に付けることだ。

 

 下着すら着ていないってどういうことだよ!!!

 やっぱりただの変態だ!!!

 

「見られて困る体はしてないよ!!」

 

「その格好で胸を張るんじゃねえ!?」

 

「優お兄ちゃんさっきから叫んでばっかりだけど......興奮してるの?」

 

「興奮しないわけないだろ!?ただし性的な意味じゃねえ!!!」

 

 親戚の子の裸なんか見て興奮したらダメだろ!!

 一応まだ身内の範疇(はんちゅう)なんだから!!!

 

「私は性的な意味で興奮してるよ!!だって優お兄ちゃんに見られてるんだから!!」

 

「優莉ぃ!!優莉ぃ!!頼む、助けてくれ!!!お兄ちゃんもうダメになりそうだ!!!!!!」

 

 朝から俺の叫び声が近所に響いた。

 

***

 

 ...はぁ、やっぱりこいつ着いてくるのか......

 横を歩くド変態をチラリと見ながら、俺はこっそりとため息を吐く。

 

 だったら走って逃げればいいんじゃないか?

 そう思うだろうが、こいつの身体能力は凛クラス......男の俺が普通に走っても負けはしないがそう簡単に撒けはしないだろう。

 

 頼むから穂乃果たちには見つからないでほしい。

 いや、やめよう。

 こんなことを考えても無駄だ......だって、こういう時に限って出会うんだからさ......

 

「ゆう君おはよ~!」

 

「おはようございます、優」

 

「ゆー君おはよう!」

 

 ほらな?

 よりにもよって幼馴染のフルコースだ。

 神様のバカやろう。

 

「あ、あぁ......おはよう、3人とも......」

 

 自分では見えないが確実に俺の瞳は今、濁っている。

 ついでに疲労も顔に出ていると思う。

 

「あれ?ゆう君その子は?」

 

「誰のことを言ってるんだ?」

 

「酷いよ!優お兄ちゃん!」

 

 存在そのものを無視する作戦失敗。

 優お兄ちゃんという言葉に幼馴染たちは不思議そうな顔をして、少し警戒の色を出し始める。

 いやいや、俺を攻撃しようとしないで。

 

「こほん、初めましてμ’sの高坂穂乃果さん、園田海未さん、南ことりさん。私は九文真白と言います」

 

「あれ?どこかで聞いたような気が......」

 

「...思い出しました。確か優の従妹でしたよね」

 

「いえ、厳密には違います」

 

 ...おい、合ってるだろ?

 認めたくはないけど、お前一応俺の従妹のはずだろ?

 いや、むしろ縁を切ってくれてラッキーなのか?

 

「私は優お兄ちゃんの――」

 

 真白はスッと息を吸い込み、一呼吸置く。

 嫌な予感しかしない。

 

「――許嫁です!」

 

「全員動くなぁっ!!!!!!!!!」

 

「「「っ!!」」」

 

 俺の叫びに穂乃果、海未、ことりの動きがピタリと止まる。

 ふぅっ......間一髪だった。

 

「OK、お前らそのまま動くなよ?今すぐそのみんなに連絡を取ろうとしている携帯をこっちに渡せ」

 

 全く、油断も隙も無い.......

 

「言っておくがただの従妹だし出来れば今すぐ縁を切りたいと思ってるぐらいだ。許嫁なんて地球が無くなろうが来世でも有り得ない」

 

「そんな......優お兄ちゃん......私たちキスだってしたのに!!」

 

「誰が動いていいと言ったぁ!!......あれ?マジでみんなに連絡取ったのか!?ねぇ、ちょっと!?」

 

「まあまあ、話は部室で聞いてあげますから」

 

「ゆー君ったら......おやつにしちゃおうかな~♪」

 

「今日も楽しくなりそうだねぇ♪」

 

 ...来世では普通の家族の元に生まれて、この変態とは血縁関係になりませんように。

 とてもいい笑顔を浮かべている3人を見て、俺はそう願わざるをえなかった。

 

***

 

「さて、それでは説明してもらいましょうか」

 

「説明もなにも本当にただの従妹だって......」

 

 部室まで連行に近い形で連れてこられた俺は、近くにあった椅子を引き寄せて座る。

 

「じゃあキスって何のことなのかな♪」

 

「記憶にございません」

 

 穂乃果と海未とことりは真っ黒に染まっている。

 その中でも断トツで怖いのがことりだ。

 笑顔のままスゥっと目が細められ、声音も俺の心臓を鷲掴むようなもの。

 

「おい、キスなんていつしたんだよ?あんまり嘘吐かれると俺の寿命が減っていくんだけど?」

 

 今がまさにその状況。

 

「今朝だよ?」

 

「普通......いや、非日常的会話をしただけだろ」

 

 宇宙人と話してるって言えばこんな感じかもしれないな。

 

「そりゃ優お兄ちゃんにはした記憶は無いと思うよ?」

 

「「「「え?」」」」

 

 幼馴染4人で同じリアクションを取る。 

 何だよ、キスしたことあるのに片方にはその記憶が無いって......とんちか?

 

「だって私がしたのって優お兄ちゃんが寝てる間だからね!」

 

 真白は胸を張って答える。

 何でそんなに自信満々なんだ?

 誇るところじゃないよな?

 

「それに私がしたのは頬だよ、唇は1番大事な時までとっておきたいしね!」

 

「変態の癖に無駄にロマンチスト......そんな時はこない」

 

 こいつのことだから大事な時は結婚式の時じゃなくて夜の方だと言いそうで怖い。

 

「いきなり連絡が来たと思えば......何の話よ」

 

「...ちなみにどんな感じの連絡がいったんだ?」

 

 真姫は携帯を俺に見せてくる。

 

<優が従妹に許嫁と言わせていてキスまでしたそうです>

 

<練習前に部室でちょっと時間もらえませんか♪>

 

<詳しくは部室で話すよ!>

 

 何故か俺が言わせたみたいなことになっていた。

 

「それで......その子は誰?」

 

「μ’sのみなさん、初めまして!私は優お兄ちゃんの従妹で九文真白と言います!将来の夢は優お兄ちゃんのお嫁さんです!」

 

 比較的にツッコミ役に回ることの多いにこと真姫と絵里は海未はこいつやばい奴だという目に変わる。

 穂乃果と凛は互いにこいつ今何て言った?夢じゃないの?と言わんばかりに頬をつねり合い、ことりは笑顔、希はおろおろする花陽をなだめていた。

 

「さ、自己紹介も終わったことだし......早く帰れ、俺たちは今から練習があるんだ」

 

 くるりと背を向けて部室から出ようとすると、真白が背中にしがみついてきた。

 ええい、暑苦しい......

 

「待ってよぉ!まだμ’sのみなさんとお話してないよぉ!!」

 

「これ以上身内の恥を晒せるか。だから帰れ」

 

 首に回っている手を引き剥がそうと奮闘していると希が口を開いた。

 

「まぁ、ええやん。うちらも少し話してみたいし!」

 

「そうね、希の言う通りよ。せっかく来てくれたんだから、ねっ?」

 

「...分かったよ」

 

 やっぱり女の子の頼みごとには滅法弱い。

 特に普段からお世話になってる絵里と希に言われると俺は強く断れないんだよな......

 

「それでは一度に全員と会話するのは大変なので、隣のお部屋で1人ずつということで!」

 

「何その面接スタイル」

 

 こうして、謎の交流会が幕を開けた。

 

***

 

『穂乃果の場合』

 

「高坂穂乃果さん、優お兄ちゃんの幼馴染でμ’sのリーダー。家は和菓子屋さんですよね!」

 

「うんっ!そうだよ!」

 

 この場には真白と穂乃果と何故か俺がいて、他のメンバーには隣の部屋で待機してもらっている。

 本当に何なんだこれは......

 

「ふむふむ、なるほど......」

 

「...何を見てるんだ?」

 

「胸だよ!」

 

「えぇっ!?」

 

 こいつ同性にもセクハラ働くのか......

 これは本格的に縁を切ることを考えないといけないな。

 というか今すぐ切ろう、それがいい。

 

「平均的ですね」

 

「うっ......穂乃果確かにあまり大きくないけど......」

 

「でも大体の男の人はそのぐらいが好きだと思いますよ!もちろん優お兄ちゃんもそうです!」

 

「やめろ!人の性癖をばらそうとするな!」

 

 真白と一緒になって穂乃果までこっちを見てくる。

 俺明日からどういう顔をして穂乃果に会えば......って俺前に穂乃果の家で裸に近いもの見てるし、胸の大きさの好みばらされた程度で今更どうにもならないか。

 どうやら俺はここで過ごす内にメンタルが鍛えられていたらしい。

 全然嬉しくねえ。

 

「しかしその人を惹きつける笑顔とカリスマ性......さすがはμ’sのリーダーです!!」

 

「えへへ!ありがとう!」

 

「でも勉強は出来なさそうです」

 

「酷いっ!?」

 

「お前いつも一言余計なんだよ」

 

 上げて落とす、こいつの得意技だ。

 

***

 

『ことりの場合』

 

「南ことりさん、優お兄ちゃんの幼馴染で服飾担当、音ノ木坂学院理事長の娘さんですよね!」

 

「そうだよー♪」

 

 頼むからことりには変なことを吹き込むなよ?

 俺の中の二大天使様に蔑まれたら俺はもう......死ぬしかないな。

 

「...なんと羨ましいスタイル......見事にバランスの取れた体をしています......」

 

「全然そんなことないよぉ!」

 

 まぁ、確かにバランスの取れた体だよな。

 前に水着姿を見たからよく分かる。

 

「私もスタイルには自信がありますが......やはり秋葉の伝説のメイドなだけはありますね」

 

「いや、それ関係無くないか......ってお前知ってるのかよ!?」

 

「ここに来るまでには大体の情報はリサーチしてるからね!」

 

 ハイスペックが無駄な方向で発揮されてるなぁ......

 こいつだけは敵に回さないでおこう......いや、既に俺の敵だったわこいつ。

 

「優お兄ちゃんって確かメイド好きだったよね?」

 

「解散っ!!!」

 

 やっぱりこいつは敵だと再認識して警戒を強化することにしよう。

 

***

 

『海未の場合』

 

「園田海未さん、優お兄ちゃんの幼馴染で作詞担当。家は日舞の家元ですよね!」

 

「はい、そうです」

 

 よし、海未なら変な感じにならずに冷静に切り返せるはずだ。

 信じてるぞ!!

 

「なるほど......日頃から鍛えてるだけあってメリハリのある体ですね。胸は平均よりも少々小さいですが」

 

「む、胸は関係無いじゃないですか!この遠慮の無さ、優の親戚というのも頷けますね......」

 

「おい、これと一緒にするな」

 

 いきなり雲行きが怪しい。

 何で矛先が俺に向く?

 いや、もう慣れたけどさ......

 

「優お兄ちゃんは胸の大きさなんて気にしないから大丈夫ですよ!」

 

「お前がフォローするなんて珍しいな......」

 

 不気味だ、そこはかとなく不気味。

 

「だって優お兄ちゃんのお部屋には大小色々な胸の大きさの女の人の本がありましたから!!」

 

「撤収っ!!!!」

 

 この後、海未から蔑みの目で見られたのは言うまでもない。

 

***

 

『花陽の場合』

 

「よし、終わろう。うん、それがいい!」

 

「何言ってるの?まだお話ししてないよ!」

 

 花陽には変なことを言ってほしくないんだよ!

 純真な花陽にはこの変態と会話してほしくない。

 自己紹介だけで終わらせてくれ、頼むから。

 

「小泉花陽さん、お米とアイドルが大好きな高校1年生ですね!」

 

「お前その情報どこから仕入れたんだ......」

 

 さっきから思ってたんだけどさぁ......

 

「は、はい!そうです!」

 

「...高校1年生にしては大きい胸ですね......それに見るだけで最高の触り心地だと言うのが分かります!」

 

「え、えぇっ!?」

 

「おいこらぁ!!!花陽にそういうこと言うんじゃねえ!!!!」

 

 ほら!!こういうこと言うから早めに切り上げたかったんだよ!!

 花陽は顔を真っ赤にして視線をあっちこっちにさまよわせている。

 

「しかも小動物みたいで可愛らしい......優お兄ちゃんの好みど真ん中!!私の次に優お兄ちゃんのお嫁さんに近いかもしれないです!」

 

「よーし、花陽もう出ていいぞ!!!」

 

 これ以上付き合わせるのは申し訳ないしな!!

 今から始まるお説教タイムに!!

 

***

 

『凛の場合』

 

「星空凜さん、身体能力抜群で猫とラーメンが大好きの高校1年生ですね!」

 

「正解にゃ!」

 

 凛は結構ズバズバものを言うタイプだからこいつとも張り合えるかもしれない。

 そろそろこいつに一矢報いてくれ。

 

「なるほど......胸よりもお尻の方が大きいようですね」

 

「ちょっと待て、何でそんなことが分かる」

 

 こいつ今座っている凛を見て言ったぞ......

 リサーチ済みってスリーサイズも?

 

「優お兄ちゃん。変態は普通の人には出来ないことを平然とやってのけるから変態って言われてるんだよ?」

 

「無茶苦茶な理論なのに筋が通ってるのが何か腹立つ!!」

 

 ドヤ顔で自らの超理論を言い放つ真白。

 超うぜえ!!

 ていうか変態っていう自覚があったのかよ!!

 

「む、胸なんてあっても運動の邪魔になるだけだよ!!だからいいの!!」

 

「あー、なるほど......多分中学が陸上部だったこともあって下半身が鍛えられているんですね」

 

 俺は今日、あと何度胸と聞けばいいんだろうか。

 恐らく全員分やると思うけど、女の子の口から直接胸とか聞くことないから何故か聞いているこっちが恥ずかしい。

 いや、俺も男だから胸に目がいったりするんだけどさ......

 

「優お兄ちゃん、私お尻も大きいよ?」

 

「何の話だ!!」

 

 中学3年生にしては確かに真白は出るとこは出てて引っ込むところは引っ込んでいる。

 でも何も感じない、だってこいつ変態だし。

 

「何かゆーサンの対応力の秘密を垣間見た気がするにゃ......」

 

「悪いな、これでみんなの分のジュースでも買ってきてくれ......」

 

 俺は凛に野口さんを手渡した。

 

***

 

『真姫の場合』

 

「西木野真姫さん、作曲担当で西木野総合病院の娘さんですよね!」

 

「えぇ、よろしくね」

 

 さすが真姫、落ち着いてるなぁ。

 俺も見習わないと。

 

「なるほど......スタイル抜群でとても美人さんですね!」

 

「別にそんなことないと思うけど......あなただってその年にしてはスタイルいいじゃない。うちにはそれ以上に育ってない人もいるし、十分よ」

 

 一体にこのことを言ってるのか凛のことを言ってるのか......

 真相は真姫にしか分からない。

 

「...今度医療関係のことを教えてくれませんか?」

 

「「え?」」

 

 突然目を輝かす真白に俺と真姫の声が揃う。

 

「それは別にいいけど......どうして?」

 

「だって......知識があった方が優お兄ちゃんとのお医者さんプレイが本格的になって盛り上がるじゃないですか!!」

 

「やらねえよ!?」

 

 真姫からゴミを見る目で見られた。

 俺悪くないよな?

 

***

 

『にこの場合』

 

「矢澤にこさん、アイドル研究部の部長でアイドル大好き高校3年生ですね!」

 

「にっこにっこに~♡初めまして!矢澤にこです!にこに~って覚えてにこ♪」

 

 あっ、そっちのキャラでいくのか。

 そういやこの2人猫被りって言えばキャラがそっくりなんだよな......

 

「高校3年生とは思えない幼児体系ですが、可愛らしいお顔ととても綺麗な肌です、羨ましい!!」

 

「...何というかこの子の性格......優に通ずるものがあるわね」

 

「これと一緒にされるのはちょっとなぁ......」

 

 というか素が出るの早くないか?

 それでいいのか?

 

「大丈夫ですよ!女の価値は胸じゃありませんから!!容姿、性格、全てが合わさって1つの魅力になるんです!」

 

「じゃあお前容姿だけで生きていく気かよ。性格全部悪い方に丸投げしてんじゃねえか」

 

「やっぱり遠慮の無さが似てるわね」

 

 やめてくれ。

 いや、勘弁してください。

 

***

 

『絵里の場合』

 

「綾瀬絵里さん、音ノ木坂学院の生徒会長でロシア人と日本人のクォーターですね!」

 

「えぇ、その通りよ」

 

 さて、絵里は......大丈夫だよな?

 俺が強制終了するパターンにならなければいいんだけど......

 

「...くっ!金髪の年上系美人、しかもスタイル抜群で頭が良さそう......私の勝てるところが見当たらない!!」

 

「ハラショー!でも真白ちゃんだってスタイルいいし、可愛らしい顔してると思うわ」

 

 おおっ!絵里が押してる!!

 いいぞ!!そのまま押し切ってしまえ!!

 

「だけど優お兄ちゃんへの愛なら絶対に負けません!」

 

「すまん、聞き流してくれて構わない」

 

 その愛は一方通行だ。

 潔く諦めてくれ。

 

「...そう言えば、外国の人って夜がお盛んだって聞いたんですけど、絵里さんはどうなんですか?」

 

「えぇっ!?わ、私は......そういうことはあまり分からないから......」

 

 やばい、攻守が入れ替わる気配がした。

 

「まぁ、私は夜だけじゃなくて優お兄ちゃんが相手ならいつでも盛ることが出来ますけどね!!」

 

「はいはい、少し黙ろうか!!」

 

***

 

『希の場合』

 

「東條希さん、生徒会副会長で占いが得意ですね!」

 

「よろしくやん!」

 

 ようやくラスト、ここを乗り切れば終わる。

 希なら飄々(ひょうひょう)と躱してくれるだろ、多分。

 

「...少し大きすぎやしませんか!?ずるいですよ!!こんなのどうやったって男はイチコロじゃないですか!!しかもそれでいて包み込むような包容力のある優しさを感じる......スタイル良くて優しいなんてただの都市伝説だと思ってたのに!!」

 

「今さらっと希を都市伝説扱いしたぞ」

 

 μ’sは都市伝説の集まりだった?

 ...ある意味そうかもな。

 

「真白ちゃんはまだ中学生なんやし、将来に期待してもええと思うよ?なんならうちが占ってあげようか?それか発育に効くおまじないもあるよ?」

 

 あぁ、なんだろう。

 おまじないの正体を俺は知っている気がする。

 というか100%あれだ。

 

「いいんですか!?お願いします!!」

 

「...うん、カードがまだ希望はあるって言ってるよ」

 

 希の占いはよく当たるからな。

 まぁ、育ったところで俺がこいつに振り向くことはない。 

 いくら可愛くても変態だもの。

 

「じゃあいくよ~......ワシワシMAXや!!」

 

「あっ.....くすぐったい......んっ!!」

 

「これは絵面的にアウト!!ここまでだ!!」

 

***

 

「お話出来て楽しかったです!では私はもう帰りますね!!では!」

 

 真白はドアを勢いよく開くと走り去っていった。

 あいつ何しにきたんだろ?

 

「何というか......凄まじい子だったわね」

 

「すまん、絵里。みんなもあのド変態が迷惑をかけてごめん」

 

 練習前なのに疲れてしまった。

 あいつは実は人のエネルギーを吸い取って生きてるんじゃないだろうか?

 

「あっ!言い忘れてた!!」

 

「うぉっ!?窓から来た!?」

 

 スパーンと背後の窓が開いたと思ったら真白がひょっこりと顔を覗かせていた。

 

「私来年この学校受験するから!!それじゃ!!」

 

「え"っ!?」

 

 部室に静寂が訪れる。

 

「終わりだ......さよなら俺の学園生活」

 

 そのまま地面に膝をつく。

 

「まあまあ、まだ受かると決まったわけじゃないにゃ!だから元気出して!」

 

「...あいつは絶対受かる」

 

「何故そう言い切れるのですか?」

 

 よろよろと立ち上がりながら、椅子に座る。

 あいつは――

 

「真白は超頭いいんだよ......ぶっちゃけ高校飛び級して大学入れるぐらい」

 

「「「「「「「「「えぇっ!?」」」」」」」」」

 

 そりゃあ驚くだろうな。

 

「じゃあ何でそこまでして音ノ木坂を受けるのかな?」

 

「そんなもん俺がいるからだろ」

 

 多分、真白に会ってなかったらみんなは今の俺の言葉を信じはしなかっただろう。

 

「あいつ行動原理は100%俺に関わってるんだ......何でも勉強したのも俺といる時間を減らしたくないかららしい......」

 

 そんなあいつが今までどうして俺に関わってこなかったのか。

 いや、偶に会いには来ていた。

 だけど、あいつは猫被りだから周りの人間に上手く合わせていた。

 真白が本性を出すのは本能的に心を開けそうな人の前だけ。

 そのことをみんなに話すとやや複雑そうに笑った。

 

 九文真白という少女は、そういった部分を全部含めて変態だと俺は思っている。

 あいつは真白って言うよりも真黒(まぐろ)の方が合ってる気が俺は今更ながらだがしていた。

 

―To be continued―

 




雑談のコーナーはお休みです。

~新たに高評価してくださった方々~

9回裏から逆転さん、田千波 照福さん

ありがとうございました!
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