半年以上空けてしまい申し訳ありませんでした。
というのも色々ありまして、悩んだ末に6月のボーナスを貰い、今の仕事を辞めて転職することになりました。
理由はよくある人間関係に疲れたからなのですが、これから転職活動をしないといけないとなるとまた気が滅入る思いです。
そんなことはさておき、少年と女神達の物語再開です。
爽やかな風を受けながら、駅のホームに降り立つ。一面の緑は日々、都会の喧騒に揉まれ疲れ切っている心身を癒してくれそうだ。
俺以外の面々も背伸びをしたり、大きく深呼吸をしたりとこの綺麗な空気と景色を堪能しているようだ。
「空気も美味しいし、とっても綺麗な景色だねっ!ね、ゆー君!」
「あぁ、そうだな.....俺としては西木野家って一体いくつ別荘持ってるのかってツッコミを入れたいとこではあるけどな」
チラリと赤髪のお嬢様に目線を向けると、髪の毛をくるくると右手の人差し指で弄りながら、振り返ってきた。
「別にこれぐらい普通だと思うけど。まず国内に......」
「ごめん、もういいわ」
まず国内にとか言っている時点で規模が違う。お金持ち感覚の普通で語らないで欲しい、こちとら女子校に通ってるって境遇が少し特殊なだけで育ちは一般的もいいところなんだからさ。
「そっちから聞いてきたんじゃない......まぁいいけど。全部思い出すのは面倒だったし」
「なに自慢してるのよ」
「べ、別に自慢なんてしてないでしょ!?意味わかんない!!」
にこと真姫がぎゃあぎゃあと言い合いを始める。
......一応この争いの火種を蒔いたのは俺だし、止めた方がいいよなー......などと思っていると、ドスリと重ためな荷物を置く音がした。
「さあ、無駄話はそれぐらいでいいですね!早く真姫の別荘へと向かいましょう!」
音の発生源は登山ガチ装備の海未だ。
電車に乗る前から気になっていたんだけど、何であんなに大荷物を持ってきたんだろうか?
「......なぁ、海未?何でそんなに重装備なんだ?」
「何を言っているのですか!!優こそなぜそんなに軽装備なのですか!!山を舐めているんですか!!」
「い、いや......えぇ?」
単純な疑問だったので、軽い調子で聞くと、物凄い剣幕で詰め寄られて2、3歩ほど後退る。
海未はそのまま重たそうなリュックを見てるこちらに重たさを感じさせない様子でひょいっと背負い直し、これまでに見たことがないようないい笑顔で改札の方へと向く。
「さあ、行きますよ!!山が待ってます!!!!うふふふふ!!!!!」
俺はそんなハイテンションな海未の背中を見ながら、ことりの傍に近づく。
「......もしかして海未って、登山マニア?」
「あはは、......うん」
ことりが苦笑しながらふいっと目を逸らす。
この反応はあれか、小学校や中学校とかであるハイキングや自然教室で何かやらかしたんだな?
例えば、キャンプ場の係員よりも知識があって、逆に間違っているところを指摘したり......まさかな。
......まぁ、うん、あれだ。あまり深く追求はしないでおこう。
海未のあとに続いて皆が次々と歩き出す中、凛はしきりに唸ったり首を捻ったりとを繰り返していた。
「どうした?早く行かないと皆に置いてかれるぞ?」
「いや~......何か、こう......重要なものを忘れてる気がするんだけど......あれぇ?」
そう言われてみれば、なんとなく違和感があるような、ないような?
「......そう言えば、今日は随分と静かだな。穂乃果」
いつもだったらはしゃぎすぎて海未に2回は怒られているであろう穂乃果の声が全く聞こえない。
俺と凛はそこでピタリと全ての動きを止め、お互いに顔を見合わせて冷や汗を流し始めた。
「......ここに来る時には穂乃果、いたよな?」
「......いたにゃ」
電車の中で寝るまでは、いつも通りテンションの高い声が聞こえていたのを覚えている。
「凜!!!皆のとこまでダッシュ!!今の状況を簡潔に伝えてくれ!!」
「ラジャーにゃ!!!!」
凛が駆け出すのと同時に俺は携帯で素早く穂乃果にコール。
『......おはよう、ございます』
『何やってんだ!!!!この......ア穂乃果ぁぁぁぁあああああ!!!!!!!』
俺の渾身の叫び声がやまびこになって帰って来る様は、とてもシュール極まりないものだった。
***
「酷いよ!!!!どうしてみんな起こしてくれなかったの!?」
「それに関しては悪いと思ってる......が、電車の中で爆睡したお前も悪い」
「ごめんね?忘れ物ないか確認してたら......うっかりしてて」
30分ぐらい経ってから、穂乃果とは別荘近くのバス停で合流することが出来た。
乗り物に乗る時は、大体ことりが穂乃果の隣に座るので、起こし忘れたことからかことりがシュンとしながら謝罪をし始める。
「そうか、うっかりなら仕方がないな」
「ことりちゃんとの対応に差を感じるよ!?」
日頃の行いのせいだ。
「大体ゆう君だって寝てたのに......何で起きられるの?」
「まぁ、仮に爆睡してたとしてもだ、隣は海未だし。寝過ごすことはないだろ」
「優は目的地のアナウンスが聞こえたと同時に目を覚ましていましたよ」
何か電車やバスの中で寝ると、眠りが浅いせいか音はハッキリと聞こえるんだよな。
そのおかげで寝過ごしたことはない。
「ほらほら、ただでさえ時間をロスしてるんだから話は歩きながらにして」
「絵里の言う通りよ、予選まであまり時間がないんだから!」
にこは腕を組みながら、仏頂面で言う。
「そうね......新曲の作詞に作曲、ダンスの振り付け、フォーメーション、衣装だって考えないといけないんだから、その為の合宿でしょ?」
「真姫ちゃんの言う通りです!今回のラブライブ予選は前回とは似て非なるもの!他校のスクールアイドルも予選に向けて新曲作りに取りかかっているはずです!私たちだってのんびりはしてられません!!」
「分かった、分かったから少し離れてくれ、花陽。歩き辛いから」
花陽のアイドルモードの勢いに押され気味になり、軽く上半身を後ろに逸らしながら歩く。
当の花陽は俺の言葉にハッとなり、顔を真っ赤にしながらすいませんと声を上げて飛びのくように俺から離れていった。
第2回ラブライブの予選はこれまでに未発表の曲に限られるというルールを知らされた俺たちは絵里の提案により、連休を使って真姫の別荘を借りて合宿することになった。
それが今俺たちが山に向かって歩いている理由という訳だ。
「全く......どうして今回はこんな面倒なルールになったのよ」
「確か、参加希望チームが多すぎるし、プロのアイドルのコピーをしたグループまで現れて......みたいな感じだったような気がするぞ」
真姫のぼやきにここに来るまでに軽く調べておいた情報を伝える。
前回は順位制だった予選とは違い、今回のルールはライブを行って上位4グループに選ばれればいいということもあり、より多くのスクールアイドルが参加しやすい形となった。
既に予選まで1ヶ月足らずで新曲を作り、衣装を作り、ダンスを仕上げる。
それが出来なければ参加する資格すら得られないということだな。このルールによって前もって振るいをかけようということなのだろう。
「あ!もしかして......あれが真姫ちゃんの別荘!?」
凛の声で思考が止まり、彼女が指差す方向に釣られるように見上げると、そこには物凄くリッチな雰囲気を醸し出す、どう考えてもお金持ちが住んでいるようにしか見えない建物が眼前に広がっていた。
「えぇ、そうね」
「ほえ~、さすがやね......真姫ちゃん家の別荘は」
希は感心して少々呆けた声を出し、真姫に微笑みを投げ、それを受けた真姫は照れたようにそっぽを向いた。
「いいから早く入ろうよ!!真姫ちゃん鍵開けて~!!!」
目を煌めかせた穂乃果はそっぽを向いた真姫に擦り寄り、別荘の扉が開くのを今か今かと待っている。
しかし、まぁ......流石は病院を経営しているお金持ちだな。
一体この別荘にいくらかかってるのやら......うん、想像するのはよしておこう、どうせ想像を遥かに凌ぐものだろうし。
「うぐぐぐぐぐ.......!!!!」
隣でうぐぐっているにこを置いてみんなに続いて玄関をくぐる。
中も外見と違わず、木造設計だ。
「ピアノ!」
「そうだな」
そりゃあるに決まってるだろ、無いと曲作り出来ないし。
「お金持ちの家でよく見るやつ!!」
「そうだな」
天井に付いている大きなプロペラみたいなやつだな。
「そして暖炉!!!」
「そうだな」
まんまだ。
「もう!ゆう君さっきからそうだなしか言ってないよ?もっと他にないの?」
「そうだなぁ......」
「イントネーションを悩んでる風に変えただけじゃない」
ツッコミありがとう、真姫。
まあ、別に俺も驚いてないわけじゃないけど、西木野家の別荘ならこれぐらいあるかと思ってただけのこと。
「とにかく......荷物を置いたら早速練習に取り掛かるわよ、真姫とことりと海未は曲、衣装、歌詞の作成に。他のみんなは練習、これでいいわね?」
「じゃあ俺はなんか食べるものでも作るから、出来たら呼びかけるよ」
絵里の指示に従って、クリエイト組は別荘内に残り、他のみんなは着替えてから外に出て行った。
真姫は1階のピアノが置いてあるリビングで作曲、海未とことりはそれぞれ2階の衣装と詩に関する資料が置いてある部屋が割り当てられた。
「さて、俺も始めますか」
腕を捲り、キッチンへと足を踏み入れたのだった。
***
「よし、出来たっと......」
料理も完成したし、みんなを呼びに行くか。
先に真姫に声をかけておこうとキッチンからリビングを覗き込む。
「お~い、真姫?ご飯出来たぞ~、ピアノの音すら聞こえなかったんだけど、どうかしたのか?」
返事がない、音が聞こえないほど集中してるのか?
俺の位置からじゃピアノまでは見えない為、リビングに移動する。
「......いない」
いつの間にか真姫の姿は消えていた。
気分転換に散歩でも行ったのか?
仕方ないから、先にことりと海未を呼んでこよう。
2階に続く階段を上り、海未のいる部屋をノックしてから中へと入る。
「海未?......ってなんだこれ!?」
海未のいたはずの部屋ももぬけの殻であり、机の上には習字で文字が書かれた紙が置いてあった。
『探さないで下さい。園田海未』
「この短時間でお前に一体何があったんだよ!?」
悠長にツッコんでいる場合じゃない、一大事だ。
俺はすぐにことりがいる隣の部屋に駆け込んだ。
「ことり!!海未がいねえ......って何があったァ!!!!!」
部屋に駆け込んだ俺を待っていたのは布でタスケテと張り付けられた文字だった。
「ことりまで失踪!?もうわけがわからないぞ!?......ん?」
よく見るとカーテンと生地が結び合わされ、窓の外に放り出されていた。
とりあえず下を覗き見てみる。
「......あ、いた」
木の下で膝を抱えて座る3人の姿があった。
......真姫もかよ!
***
『スランプゥ!?』
外にみんなを呼びに行くついでに3人を回収。
事情を聴くとどうやら何も思いつかないとのことらしい。
「もしかしてプレッシャーがかかってるとかかにゃ?」
凛の言う通りなのかもしれない。
ラブライブ予選まで1ヶ月も無いが、当然全てにおいてクオリティは落とすわけにはいかない。
そのことが3人に硬さを与えているのかも。
「......こうなったら、みんなでサポートするしかないわね」
「そうは言うけど......具体的にはどうやってだ?」
絵里の提案に頭を捻る。
「じゃあ、3人ずつに別れて作業を手伝うっていうのはどう?」
「それいいね!......でも組分けはどうするの?」
希の発言に穂乃果が食いつく。
組分けか......
「じゃ、クジでも作るか」
ノートから紙をちぎって、簡易的なクジを作り、みんなに引いてもらう。
「えーっと......作曲組は真姫を筆頭ににこと絵里」
「分かったわ」
真姫が頷く。
「作詞組は海未を筆頭に希と凛」
「はい、分かりました」
海未が頷く。
「最後、服飾組はことりを筆頭に穂乃果と花陽だな」
「うん、よろしくね。穂乃果ちゃん、花陽ちゃん」
俺は各組のサポートに回ることになっている。
というのもお互いの邪魔をしてはいけないから別荘内ではなく、各組ごとに別々の場所にテントを張り、今夜はそこで寝泊まりをしようという話がクジを引く前に持ちあがった。
俺は3組の進捗を確認しながら、手伝えることは手伝う、大変だけどみんなもやるのに俺だけ何もしないわけにはいかないだろう。
......そうと決まれば。
「よしっ!!じゃあμ’s一丸になって頑張るぞ!!!!」
『はいっ!!!!!』
こうして、みんなで作る新たな曲作りが幕を開けたのだった。
――To be continued――
続きを書こうとして、アニメを見始めて結局書けない。
この繰り返し、自分の意志の弱さに感服です。