ラブライブ!~未来へ響く多重奏~   作:朝灯

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合宿編を終える予定だと言ったな、あれは嘘だ!




考えすぎないで

「ほとんど休憩無しで登山と下山したらこんなにしんどいんだな......」

 

 作詞組が山に登ってそこでテントを張るということで手伝いに行ってきた俺だが、テントを張った後すぐ降りたので、登山と下山の間はほとんど空いていない。

 しかし、山を登るのはそこそこ時間がかかるわけで、辺りには既に太陽と日の光の姿はなく、代わりに月と星と暗闇が顔を見せるようになっていた。

 

 やべえ、足めっちゃぷるぷるしてる。生まれたての小鹿みたいに立っているのもやっとな感覚がある。

 ......作曲組のテントまで行ったらさすがに座ろう。

 

 最後に残した作曲組のテントは別荘から1番近く、真姫たちがいるであろう場所からはたき火でもしているのか煙が夜空に向かって吸い込まれていた。

 

 俺はそのたき火を目印に3人がいるであろう場所へと向かう。

 しばらく歩くと、火を前にしてにこと真姫が肩を並べて座っていた。

 2人は俺の足音に気が付いたのか、揃って振り返る。

 

「......何でアンタそんなに疲れた顔してるワケ?」

 

「あと少し、服が汚れてるけど......何してたの?」

 

 俺の表情と恰好を見たにこと真姫からのありがたい一言がとても疲れた体に染みて、俺は2人から少しだけ距離を取った場所に崩れるように腰を下ろす。

 

「......海未、山、これで察してくれ。正直ちょっと休みたい」

 

『......海、山......川?』

 

「そういうことじゃねえよ、二人そろって何言ってんだ」

 

 確かに川辺にも行ったけど、断じて違う。

 

「ツッコめるだけの元気があるならまだ余裕でしょ?」

 

「......そういえば絵里は?」

 

 さすがにこれ以上余計なおしゃべりに使う体力は残していない。

 あー、テントの中か?灯りが漏れてるし。

 

「絵里は暗闇が怖いらしいからその中で光源を用意してるわ」

 

 絵里は怖いものが苦手だしな。

 

 たき火もどんどん弱くなってる気がするし、そろそろ燃やせそうなもの入れた方がいいか。

 多少なりとも回復した足で立ち上がり、その辺に落ちている枝を拾っていく。

 すると、ぱきっと音がして、たき火の火が一層弱弱しくなったのが分かる。

 

 俺と同様に火が消えかけているのを感じとったにこは、長めの枝を使い、たき火を整えながら必死に息を吹きかけ始めた。

 

「って、にこちゃんも怖いんじゃない」

 

「はぁ?怖くないですぅ~!優が怖くて仕方ないって顔してるから仕方なくやってるんですぅ~!」

 

「あー、はいはい。ありがとうございますぅ~」

 

 とりあえずあとでしめる、覚えておけ。

 

「私、こんな先輩たちの為に曲を作らないといけないのよね......はぁ」

 

 真姫が疲労を顔に出しながら、ぼやく。

 そのぼやきを聞いたにこがキッと目を吊り上げて、真姫を見つめる。

 

「......アンタ、ひょっとして私たちの為に曲を作ろうとしてるワケ?」

 

「そ、それは......」

 

 にこに睨まれる形となった真姫はバツが悪そうに視線を逸らす。

 しばらく、たき火の中の音がパチパチと鳴って、生まれた沈黙を埋めようとしているように感じる。

 

「はぁ、らしくないわね。何悩んでるのよ」

 

「し、仕方ないじゃない!これが最後になるかもしれない!そう思ったら、今までのクオリティじゃ満足がいかなくなって......絶対にこちゃんたち3年生の為にいい曲を作らないといけないんだから!」

 

 木々を揺らしたのは、真姫の想いか、それとも風か。

 にこはため息を吐き、たき火を見つめる。

 その目には火が反射していたが、俺には別の何かを見つめているように見えた。

 

「......バカね、そこから間違ってるわよ。いい?曲はね、いつどんな時だって、メンバー全員の為にあるのよ。私たちの為だとか、そんなに考えすぎないで......いつも通りいい曲作りなさいよ。......でも、ありがと」

 

「にこちゃん......うん」

 

 あー、やっぱりこういうとこはにこには敵わないよな。

 きっと、今の言葉で真姫は吹っ切れた。

 俺は軽く微笑み、火を枝で突く......と、中に何か固いものが入っている感覚があった。

 

「......焼き芋?」

 

「ちょうど焼けたぐらいかしら、ほら真姫」

 

「わっ!熱っ、熱っ!」

 

 両手で軽く弄びながら、熱を冷ましていく。

 というか火から出した直後のものを手渡すなよ、火傷したらピアノどころじゃないだろ。

 

「あ、熱いけど美味しいわね。初めて食べたわ」

 

「......自慢?」

 

「違うわよ!」

 

 もう大丈夫そうか。

 俺は立ち上がり、その場をあとにしようとする。

 

「ユウ、別荘には露天風呂もあるから戻るなら誰も来ない内にお風呂済ませておいたら?」

 

「ん、そうする。サンキュ」

 

 疲れた体に露天風呂なんて、贅沢ここに極まれり。

 早く入っておかないとメンバーの誰かと鉢合わせになっても困るし、早めに済ませて......寝よ。

 

「待たせたわね、これで大丈夫よ!さぁ、真姫!なんでも相談して!」

 

「もう大丈夫よ、絵里」

 

「問題はとっくにこのにこにーが華麗に解決してみせたわ!」

 

「えぇ!?」

 

 締まらねえ......何やってるんすか、賢くて可愛いが売りの人。

 背後から聞こえる喧騒を聞きながら、別荘にあるという露天風呂に向かうのだった。

 

***

 

 汗で少し湿った服を脱衣用の籠に向かって綺麗なシュートを決め、そのかごを適当な棚へとダンクシュート気味に叩き込み、外へ。

 体温の上がった体に秋の夜風が直撃、涼しいとかじゃなくもはや寒い。

 

 俺はシャワーへと小走りダッシュし、ちゃんとお湯が出るかどうかを確認してから頭からシャワーを浴びる。

 あまりの疲労感のせいか、これだけでも最高に気持ちがいい。

 思わず声を上げそうになるが、グッとこらえて手早く頭と体を洗い、駆け足で湯舟へと。

 

 桶で軽くすくって、肩からかけ、湯加減を確認。

 体温が冷めない内に体を湯舟に滑り込ませる。

 

「っ~~~~~!!!!!あぁ、俺生きてるぅ!」

 

 シャワーで我慢した分を、ここで全て開放し、心からの叫びをあげる。

 これだよ、これこれ!!!この感じ!

 疲れれば疲れているほど、風呂は気持ちいい。異論は絶対認めない。

 

 更に上を見上げれば、ひんやりとした空気の更に向こう側、世界を包むような夜空に満面の星空と大きな月。

 俺が大人なら桶に酒を入れて晩酌していたかもしれない。

 

「疲れたけど......これで、なんとか......ラブライブ予選には、間に.....合い――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あれ、俺寝てたのか。

 

 ぴちゃんと水滴が落ちる音がやたらと大きく聞こえ、意識が次第にはっきりとしてくる。

 

 ん、髪の乾き具合から見て......10分から、20分の間ぐらい、か。

 やばいな、いくら何でも寝るのはまずかった......もう上がっておかないと風邪をひくかもしれない。

 ここ外だし、今秋だし。

 

 両手を空に突き上げ、大きく伸びをしてから立ち上がって腰にタオルを巻き付け脱衣所の方へ歩く。

 

(露天風呂楽しみだね~!)

 

(そうだね~♪穂乃果ちゃん)

 

(あ、あれ?これって.....2人とも少し待っ)

 

 ん?今脱衣所の方から声がした気が......気のせいか?

 

 風の音と聞き間違えたんだと思い、扉に手をかける――

 

 

 ――寸前で扉が音を立てて開き、咄嗟に手を引っ込める。

 

 

『......え?』

 

 

 俺と扉の先にいた誰かの声が重なる。

 

「穂乃果?」

 

「ゆう君?」

 

 お互いにフリーズ、距離は手を伸ばしきらなくても触れられるほどの距離。

 視線が下の方へと吸い寄せられていく。

 

 俺の方が10cmは背が高いため、必然的に胸の谷間が目に飛び込んでくる。

 タオルで前を隠してはいるが、穂乃果も俺が入っているとは思っていなかっただろうし、隠し方が甘い。

 

 胸からウエストにかけて体の線が縮まっていき、ウエストからお尻にかけて、また膨らんでいる。

 

 穂乃果の後ろには花陽とことりが呆然と立っていて、そこまで確認してようやく脳が回り、事態を急速に理解した。

 

 oppai god(おっぱいは神)......いや、間違えた。oh my god(やるじゃん、神様)

 

 そして、俺の耳を3人分の悲鳴が襲った。

 4月からスクールアイドルを始め、発声練習と鍛え抜かれた肺活量によって強化された最強クラスの悲鳴。

 それを至近距離でくらった俺の耳はもうダメかもしれない。

 

「ご、ごめん!!っていうか脱衣所に俺の服あったのになんで気が付かないんだよ!!」

 

「すみません......私途中で気が付いて、声かけたんだけど、もう手遅れで」

 

 花陽が目を逸らし、顔を真っ赤にし、柱の陰から申し訳なそうにしながら顔だけ覗かせる。

 しかし、顔を覗かせるに伴って鎖骨から胸へかけてのラインが若干見えていて、そこに目線がいきかけるのを必死に抑え込む。

 

「えっと~......お、お背中お流ししま~す♪ご主人様♪」

 

「しなくていい!!しなくていいからな、ことり!」

 

 何をどう思ったのか、どうしてここでカリスマメイドとしての本能的な何かを出してきたのかは分からないが、タオル一枚の恰好でそんなこと言われても困る。

 本音を言えばしてもらいたいに決まっているが、今の俺には刺激が強すぎる。

 

 3人がタオル一枚のように、俺もまた腰に巻いたタオルだけが生命線なんだ。

 これ以上、視覚的刺激に加えて感触まで味わったらここにもテント張ってしまうことになる。

 

 って、そんなクソくだらないこと言ってる場合じゃねえ。

 

「いいから!早く露天風呂の方に出てくれ!扉を閉めたら着替えてすぐに出ていくから!」

 

「わわっ!!ことりちゃんも花陽ちゃんも、早く!!」

 

「う、うんっ」

 

「は、はいっ!」

 

 3人に背中を向けている間に、扉が閉められる音が聞こえて、大急ぎで体を拭いて服を身に着ける。

 もう少しで前かがみになって誤魔化さなきゃいけなくなるところだった。

 

 もし、最初に目に飛び込んできたのが希や絵里だったらと思うと恐ろしくて仕方がない。

 荷物を抱えて脱衣所を出るが、俺の耳は未だに耳鳴りを続けていた。

 

―To be continued―

 




というわけで、あまり長くなりすぎて描写が書けなくなってもアレなので程よく切れるところで今回のお話は締めさせていただきました。

4000文字もいってないですし、サブタイトルは小説内のにこちゃんのセリフから抜粋しました。

次回こそは合宿編の終わりまでいけると思います。
次回もよろしくお願いします。
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