ラブライブ!~未来へ響く多重奏~   作:朝灯

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やっと書けた・・・・・・
お待たせしました! 合宿編は今回で終わりです!





衝撃の展開!?

「うん、ようやく耳鳴りも収まった、かな?」

 

 露天風呂での胸囲......脅威の3人分の悲鳴を耳に受けてから恐らく10分近くは経過しているだろうか?

 俺はキッチンで夜食の準備をしつつ、右耳を手でトントンっと軽く叩き具合を確認する。

 

 すると、玄関の方から物音が聞こえてくる。

 誰かが戻って来たのか?

 

「――真姫? どうした?」

 

 リビングに姿を見せたのは外のテントでにこと絵里と一緒にいたはずの真姫だった。

 

「ん、ちょっとね。今ならいい曲が出来るって思ったの」

 

 真姫はこちらを一瞥しつつ、ピアノの前に座り、大きく深呼吸をすると指を鍵盤へと伸ばす。

 

「......真姫? それに優も」

 

「海未、山から下りて来たのか?」

 

 俺ほどではないにしろ、登山と下山を短期間で行ったはずの海未には全く疲れた様子は見当たらない。

 化け物ですか?

 

「はい、今ならいい詩が書けるような気がしたんです」

 

 そう言って椅子へと腰かけて、海未はテーブルにメモを置き、精神統一とばかりに姿勢をよりピンっと正して目を閉じ、集中状態に入った。

 

「あれ? ゆー君に海未ちゃん? それに真姫ちゃんも」

 

「ことりもか? いい衣装が思いついたんだな?」

 

 同じことしている人間が2人もいる、これならさすがにことりが来た理由も恐らくは同様のものだろう。

 

「うん、アイデアたくさんもらっちゃったから」

 

 ことりはいつもの柔和な顔に真剣味を帯びた目を携え、ソファへと静かに腰を下ろし、スケッチブックに向き合い始めた。

 

 ピアノが鳴る音とペンを走らせる音が張り詰めた空気の中で混ざり合い、一つの音になって俺の元へと届く。

 恐らくだけど、3人の世界には既に自分のイメージしか映っていない。

 

 こうなってしまえば、俺に出来ることは見守ることだけだ。

 ことりが座っていないソファに腰を下ろして、静かに目を閉じる。

 

 数分間経っても音は鳴り止まず、さっきまでスランプだったというのが嘘みたいに感じるぐらいの進行具合。

 今日一日の疲れが、何故か、少しだけ緩和されたような感じ。

 

 いつしか、俺の意識は、心地のよい、まるで子守歌のような作業音の中に沈んでいった。

 

***

 

「眩しい・・・・・・」

 

 カーテンの隙間から襲い来る日光に敗北し、目を開く。

 俺としては瞬きしたら夜が明けていたって感じなんだけど、まぁ・・・・・・疲れてたんだろうな。

 

 見守るつもりが寝落ちしていた体を起こすと、誰がかけてくれたのかは分からないけどかかっていた毛布がずり落ちていく。

 

 それを拾ってソファへと置き直すと、立ち上がって部屋を見回す。

 視線の先には、何かをやり遂げたという表情ですやすやと寝息を立てる海未、真姫、ことりの姿があった。

 

「あぁ、起きたらお疲れ様の一言ぐらい言わないとどやされるな、これは」

 

 苦笑と共に、3人の手元を見て回る。

 そこには完成した楽譜、衣装デザイン、歌詞が置かれていて、言うまでもなく渾身の出来栄えだというのが見て取れる。

 

 3人の肩に毛布を丁寧にかけて、俺は外へ。

 早朝ということもあって、いつもより澄み渡った山の空気に少しだけ霧がかかった景色。

 

 体をグッと伸ばして、朝露で湿った葉っぱと土を踏みしめて歩き始める。

 なんとなくふらふらと歩き続けていると、開けた場所に出た。

 

 左手には崖、右手には森がある。

 落ちたらただじゃ済まないよなぁ。

 

 数秒ほど崖を見つめて、当たり前の思考に至って、ブルりと身震いが起きる。

 散歩は終わりにして戻るか・・・・・・ん?

 

 元来た道を戻ろうと、後ろを向こうとした時だった。

 右手の森から、ふらふらと見覚えのある人物が歩いてきたのが見えた。

 

「穂乃果?」

 

 まるでゾンビのような足取りで崖に向かって歩いているのは穂乃果だった。

 何やってんだ、あいつは?

 

 動向が気になり、しばらく見つめていると、弾かれたように穂乃果が走り出した。

 

「ランチパックの川があるー! 待ってぇぇー!!!」

 

 その先はもちろん崖がある。

 

「お前が待って!? 何やってんだバカ!!」

 

 その先にあるのはランチパックの川じゃなくて三途の川だ!!

 俺は全力で穂乃果に追いついて、肩を掴んだ。

 

 すると穂乃果は脱力したように俺に体重をかけてきて、体の柔らかさと体温に脳が沸騰しかける。

 

「お、おまっ!! ・・・・・・嘘だろ?」

 

 確認するように、顔をこちらに向けると、そこには間抜け面をして口から涎を垂らす穂乃果が。

 

 さっきまでのって寝ぼけてたのか!? 寝相が悪いなんてレベルじゃないぞ!?

 

「おい、起きろ~。穂乃果ぁ」

 

「もう食べられないよ~・・・・・・やっぱりまだいける」

 

 なんだかよく分からないが、自分の限界を超えることに必死なようだ。

 しかし、このままここに放置するわけにもいかないし、仕方ない。

 

「よいしょっと・・・・・・やっぱ人の体重って女子だろうと重いわ・・・・・・」

 

 起こすのを諦めて穂乃果を背負うと、別荘の方に向けて歩き出す。

 歩いている間もくうくうという安心しきった寝息が一定のリズムで聞こえてきて、苦笑しながら歩を進め続ける。

 ・・・・・・苦労代として、背中に当たり続ける2つの柔らかな膨らみの弾力を楽しんでやることにしよう。

 

 いや、別に俺が自分から触ってるわけじゃないし? あの場に放置していく方がもっと悪だし? 背負うと自然に当たるんだからしょうがないじゃん?

 

 ・・・・・・誰に対しての言い訳だよ・・・・・・はぁ。

 

 男って本当に虚しい生き物だね。

 

 無駄に悟っていると、前方に別荘が見え、そして花陽、凛、希、絵里、にこの5人が集まっていた。

 5人は近づく足音に気が付いて、一斉に振り返り、静かに歩いて近づいてきた。

 

「おはよう、みんな早いな」

 

「さっき目が覚めて・・・・・・穂乃果ちゃんとことりちゃんの姿が見えなかったから、もしかしたら戻ってきてるのかもと思って」

 

「あぁ、ことりたちは別荘の中で眠ってる。多分だけど、さっきまで作業してたんだと思う」

 

 チラリと絵里とにこの方を見ると、2人は揃って頷いた。

 私たちも同じ理由で戻ってきたの、という意味の頷きだろう。

 

「ところで、穂乃果ちゃんはどうしたの?」

 

 凛が俺の背中を覗き込み、不思議そうに首を傾げている。

 

「あぁ、夢の中でランチパックの川をシンクロナイズドスイミングしてる」

 

 ため息交じりに寝ぼけて森の中を徘徊していたということも伝えてると、それぞれの苦笑が手元に返ってきた。

 まぁ、普通に寝ながら歩いてるのって普通じゃないからな。

 

「それで、これからどうするのよ? 当然練習はするとして」

 

「うーん、あと2~3時間は寝かせておいてやろうぜ。8時ぐらいから13時ぐらいまで振り付けとフォーメーションの確認して、夕方前には家に着いてるぐらいでいいんじゃないか?」

 

 にこの問いかけに、穂乃果を軽く背負い直しながら答える。

 

「えぇ、そうね。今回の合宿の目的は達成しているんだから、仕上げるのは明日からの練習でも遅くないだろうし・・・・・・」

 

「うん、分かった。じゃあわたしは朝食の準備を進めますね」

 

「あとで俺も手伝いに行くよ、凛は穂乃果をいい加減に起こしてくれ」

 

「分かった! 穂乃果ちゃ~ん!! 起っきるにゃぁぁぁぁあああああ!!!!」

 

 忘れないでほしい、穂乃果の耳元に向かって叫ぶということは俺の耳元で叫ぶのと同じ意味なのだということを。

 

「うるせえ!! 背中から下ろしてから叫べ!!」

 

「起こせって言ったのはゆーサンにゃ!! ・・・・・・というかこれだけ近くで騒がれて起きない穂乃果ちゃんがおかしいよ!」

 

 それに関しては同意なんだけど、起きないもんはどうしようもない。

 ふぅ、とため息を吐いて希を見る。

 

 希は俺の視線に含まれた意味を的確に理解したみたいで、うちに任せとき! と言わんばかりのいい笑顔とサムズアップを返してきた。

 

 ひとまず、別荘の中に入り、二階のベッドへと穂乃果をそっと下ろす。

 さ、あとは任せよう。希と穂乃果を残して、部屋を出てから扉を静かに閉める。

 

 閉める前の僅かな隙間からは希が手をワキワキと動かして悪い顔で笑っているのが見えたが、気のせいだろう。

 俺は何も見ていない。

 

 よし、まず花陽と朝食作ってから、みんなが使っていたテントの回収でも行くか。

 背後から穂乃果の叫び声と、希のワシワシMAXやという声が俺のあとを追って階段を下りてきたような気もするが、それもきっと気のせいだろう。

 仕事しよ。

 

***

 

「休憩したら次が最後の確認だ! 各自しっかりと体を休めること!」

 

 手をパンパンっと2回叩くと、周りの山々に反響して音が返ってきた。

 それを合図にみんなは座ったり、立ったままタオルで汗を拭いたりを始める。

 

 パッと見はいい感じだな、あとはしっかりと本番までに仕上げられればきっと地区予選は突破出来る。

 なんとなしに、周りを見渡していると、気になるものが目に入った。

 

「お前ら何やってんの?」

 

「うぐぐぐぐ・・・・・・見れば分かるでしょ!! アンタも手伝いなさいよ!」

 

「いや、さっぱり分からないんだけど? 組体操でもしてんのか?」

 

 俺の位置からは左手で木を掴んでいる凛と凛の右手を左手で握って、斜面へと体を伸ばしているにこしか目に入らない。

 そのポーズは傍から見ると、ただの組体操にしか見えなかった。

 

「そんなわけないでしょ!!! いいから手伝いなさい!!」

 

「にこちゃんまだぁ~!? 凛もう限界だよぉ~!!」

 

「手伝えって・・・・・・とりあえず凛がやばそうだから一旦やめてやれ」

 

 渋々といった感じで、にこが体を起こして、凛が一気に脱力する。

 さて、一体何をしてたんだか・・・・・・って、あぁなるほど。

 

「なんであんなとこににこのリストバンドが落ちてんの?」

 

「リスに取られたのよ! 全くいくらにこにーが野生動物すら惹き付けてしまう魅力があるからって盗難なんて許されないわ! ファンならマナーを守ってこそファンでしょうが!!」

 

「凛、大丈夫か? 正直あれは2人じゃ届かないだろ。俺も加わってギリギリってぐらいじゃないか?」

 

「うぅ~ゆーサン辛かったにゃあ・・・・・・」

 

 にこのよく分からない憤慨は置いておいて、凛に声をかける。

 いくらにこの体重が軽くても、凛の細腕では辛かっただろう。

 凛は運動は出来るけど、力のあるタイプじゃないからな・・・・・・。

 

「じゃあ、多分一番リーチがある俺が先頭で、凛には悪いけど、3人いないとリストバンドには届かないし、もう少し頑張ってくれるか?」

 

「分かったよ、頑張る!」

 

 むんっと力こぶを作る後輩に対しては今度何かで(ねぎら)おう。

 

「それでどっちが真ん中に来るかなんだけど・・・・・・じゃんけんで決めてくれ」

 

『ジャンケンポン!! あいこでしょっ!!』

 

 結果は凛、にこ、俺の順番になった。

 けど、2人とも非力だろうし、大丈夫か? これ。

 

「もう休憩終わるし、とっとと始めるわよ」

 

 元はと言えば取られた人が悪いんじゃないですかね?

 まあ、手伝うと言った以上はやるけど、さっ!!

 

 左手でにこの右手を掴んで、左腕を目一杯伸ばす。

 指先が触れるか触れないかの辺りまで25と文字が入ったピンク色のリストバンドが近づくが、あと一歩足りない。

 

 後ろからは凛とにこの苦しそうな声が聞こえてきて、焦りが出る。

 凛には片腕に俺とにこの体重がかかり、にこは俺と凛に左右から引っ張られる形になっている。

 

 現状一番楽なのは俺なんだから根性見せろ!! うぐぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!

 支えている右足をグッと踏ん張り、左足を可能な限り開脚する。

 

 当然、足は攣りそうになるし、より一層の負荷が後ろの2人にかかってしまう。

 だけどその甲斐もあって、指先でリストバンドを掬いあげることに成功した。

 

 ――その矢先だった。

 

 にこの右手が俺の左手をパッと離す。

 すると、どうなるか。

 

「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!? 何してんだにこバカお前ぇぇぇぇえええ!!!!!!」

 

 当然、俺の体重が前にかかっていたことと、斜面だったこともあり、俺はグングンと加速して坂を駆け降りる羽目になる。

 って冷静に言ってる場合じゃねえよ!!

 

「もう・・・・・・ダメ・・・・・・限、界・・・・・・にゃああああああ!!!!」

 

「ちょっとぉぉぉぉおおおお!!! 踏ん張りなさいよぉ!! きゃぁぁぁぁあああああ!!」

 

 何故か先に走っていたはずの俺に2人が並ぶ。

 

「お前にこぉ!! なんで手離したぁ!?」

 

「しょうがないじゃない!! 重かったし!!! それにこの宇宙No.1アイドルにこにーが男と手を繋いだなんてスキャンダルが出回ったら困るじゃない!!」

 

「お前あの状況でんな下らないこと考えてたのかよ!? というかこの山の中でどこの誰にスキャンダルが広まるんだよ!!! 野生のリスに手を繋いでるのを見られて困ることでもあんのか!?」

 

 俺とにこの口論と共に、斜面を駆け降りる速度も徐々に上がっていく。

 

「2人とも今は口論してる場合じゃないにゃぁぁぁああああ!!!」

 

 凛の叫び声での指摘に口論は止まるが足は全く止まる気配を見せない。

 

「マジでどうすんだよこれ!?」

 

「知るわけないでしょ!? アンタマネージャーなんだからなんとかしなさいよ!!」

 

「この状況にマネージャーは関係ないだろ!! 神様かよ! 俺は!!」

 

「それは自惚れすぎだと思うにゃあ!!!」

 

 軽口の応酬が出来ている辺り、案外余裕があるのかもしれないが、割と本当に切羽詰まっている。

 って、うわ!?

 

「なんで! こんないいところに! 丸太が! 転がって! るんだよ!」

 

「知るわけ! ないでしょ! というか! 無駄口叩いてると! 舌! 噛むわよ!」

 

「にゃ! にゃ!! にゃあああああ!!!」

 

 まるでハードル走のように迫りくる、というよりは俺たちが近づいているだけの地面に転がっている丸太をジャンプで躱していく。

 普通のハードル走と違うのは、俺たちは常に全力で走っている為に全くスピード調整が出来ないということだ。

 

「へぶぅっ!?」

 

「にこぉ!?」

 

「にこちゃん!? 大丈夫!?」

 

 そしてにこは突き出た枝を躱せずに顔から葉っぱの中に突っ込んでいく。

 痛そうってレベルじゃない。

 

「痛いわね!! にこにーの顔に傷が残ったらどう責任取ってくれるのよ!? 優!!」

 

「俺ぇ!?」

 

 全くよく分からない八つ当たりが俺にきた!?

 まぁ木に当たっても仕方がないけどさ!!

 

「にゃ!? にゃあぁぁぁ!? あれ!! 前を見るにゃ!!」

 

『あれって・・・・・・崖ぇ!?』

 

 斜面の終わりには地面がなく、このままだと3人仲良く谷底に向かって真っ逆さまだ!

 下がどうなってるのかは分からないけど、このままじゃやばいってことだけは分かる!!

 

 あー!! もうやるしかねえ!!

 

「にこは左手! 凛は右手を後ろに伸ばせ!!」

 

「それでなんとかなるの!?」

 

「いいから!! 早く!!」

 

 少しだけ歩幅を調整して、体重をやや後ろへとかける。

 すると、止まりはしないけど、俺はにこと凛の背中を追いかける形になる。

 

 そして、俺の言った通りにそれぞれ手を後ろに伸ばしている2人の二の腕の部分を掴んで思いっきり後ろに引っ張る。

 両腕に体重がかかり、走っていた勢いもプラスされて腕が軋みを上げる。

 

「ぐっ!? こ、のぉぉぉおおおおお!!!!!」

 

「ちょっ!? 優!!」

 

「ゆーサン!?」

 

 全体重を乗せて、にこと凛を後ろに引っ張ると2人は尻もちを着いて少しだけ滑った後に完全に勢いを止めて、停止した。

 

 必然的に、俺は2人を引っ張った反動で前へと出る。

 まるでスリングショットから射出される球のように、勢いよく。

 

 眼前にはグングンと崖が近づいてきている。

 これはもうどうしようもないだろう。

 

「うわぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!」

 

 俺の足が何もない空間に足を踏み入れると、刹那に襲い来る浮遊感。

 視線を下に向けると、そこには川があった。

 

 思いのほか、高さはそうでもない。

 でも良かった、もしこの高さからでも落ちたら捻挫してしまうかもしれなかったわけだし。

 

 ――あぁ、本当、2人を助けることが出来てよかった。

 瞬間、俺は自身の上げた悲鳴と共に着水し、激しく上がった水柱に飲み込まれた。

 

***

 

「へっくし!! へっくし!! さみぃ・・・・・・」

 

「ゆー君大丈夫・・・・・・?」

 

「あぁ、大丈夫。ごめん練習中断させて・・・・・・」

 

「全く!! 崖の下が川で深い部分だったからよかったものの・・・・・・もしそうじゃなかったら命を落としていたかもしれないのですよ!!」

 

「あぁ、落ちたのが俺だけでよかったと心底思う」

 

 川から上がった俺はすぐに別荘の方まで戻った。

 先に戻っていたにこと凛が話を通してくれていたらしく、待っていたのは海未のお説教と火のついた暖炉という身に染みるものだった。

 

「まぁまぁ、優くんも無事だったんやし、海未ちゃん落ち着いて」

 

「・・・・・・はあ。すみませんでした。取り乱しました」

 

 希の一言に海未は深呼吸1つでこの話にもオチがついた。

 

「でも海未の言う通りよ? 身を挺して女の子を守ってあげるのはカッコいいけど、あなたが無事じゃないとみんな悲しむんだから」

 

「・・・・・・ごめん、ヘックション!!」

 

「でもゆう君が無事で本当に良かったよ!! 崖に落ちたって聞いた時は心臓が止まるかと思ったんだから!!」

 

「優さん、ケガはしてないみたいだから・・・・・・良かった・・・・・・」

 

 花陽の心配が一番罪悪感があるんだよなぁ・・・・・・マジでケガしないように気を付けよう。

 

「ゆーサン、本当に怖かったよぉ・・・・・・」

 

「凛、俺は大丈夫だから、泣かなくてもいいだろ?」

 

 自然に凛の頭を撫でる。

 

「・・・・・・ふんっ! 助けてもらわなくたって、私ならなんとか出来たわ!」

 

「え、お前宙に浮けんの? 人?」

 

「こ、この宇宙No.1アイドルにこにーにかかれば宙に浮くことぐらい!」

 

「にこっち~? 浮くのはクラスの中だけにしとき? お礼も言えないなんてアイドル以前に人としてどうかと思うな~」

 

「う、うるさいわね!! 今はクラスのことは関係ないでしょ!! 分かってるわよ!! 助けてくれてありがと!!」

 

 まぁ、一連の流れはにこの照れ隠しということは分かっているから、笑って謝罪を受け取る。

 というかお前クラスに友達いないの? 俺そっちの方が心に来るんだけど・・・・・・。

 

「真姫も暖炉使わせてもらってごめんな?」

 

「・・・・・・別にいいけど、あとでちゃんと掃除してよね。その暖炉は冬になったらサンタさんが使うんだから」

 

『サンタさん?』

 

 真姫の一言に、思わず俺たち9人の疑問の声がハモる。

 

 待て待て、整理しよう。

 俺たちの何が疑問なのかと分からないという顔をしている真姫を見る。

 

 まぁ、夢は壊すべきじゃないよな、うん。

 

 俺は真姫以外に目配せをし、黙っておこうとジェスチャーを送る。

 

「ぷぷっ・・・・・・真姫が・・・・・・サンタぁ?」

 

 このバカ!! 何1つ理解してねえ!!

 

「穂乃果! 凛! 希!」

 

『了解!』

 

「ちょっ!! ちょっと!? 何すんのよ!!」

 

 素早く指示を飛ばすと、穂乃果と凛がにこを両側から掴んで宙に浮かす。

 そして希がにこの脇の下から両手を差し込んで簡易型の処刑台が完成した。

 

「さて、被告人。何か言い訳は?」

 

「だって・・・・・・あの真姫がサンタよ!?」

 

 足をジタバタさせて抵抗を試みるにこ。

 

「ふぅ・・・・・・真姫、花陽と一緒に風呂の準備頼めるか? 服乾かして、俺も体を温めたい」

 

「いいけど・・・・・・それなら1人でも出来るじゃない」

 

「ここのお風呂広いから、私真姫ちゃんと一緒に準備したいな~・・・・・・お願いっ!!」

 

「ヴェェエエ!? 分かったわよ!!」

 

 さすが花陽、ことり直伝のおねだりを使うとは。

 真姫は花陽に背中を押されて、部屋を出て行った。

 

「にこ、お前に姉妹はいるか?」

 

「・・・・・・何よ急に? いるけど」

 

「さて、お前はアイドルだな?」

 

「そうよ」

 

「アイドルは人に夢と笑顔を与えるものであって、奪うものじゃないな? あとは分かるな?」

 

 うぐっと喉を詰まらせて、目を逸らすにこ。

 

「分かればいいんだ、じゃ希。あとは頼む」

 

「なんでよ!? もうしないってば!!」

 

『やめるとは言ってないから!!!』

 

 俺と穂乃果、凛と希の声が完璧に揃う。

 

「この鬼畜共ぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!!」 

 

 当然、このあとにこの悲鳴が響き渡った。

 

 俺は服を取りに、荷物を置いた部屋へと戻ると着替えを取る。

 暖炉の前にいたおかげで少しは乾いているけど、肌に張り付いて気持ちが悪い。

 

「あ、ゆー君! みんなで話し合ったんだけど、ゆー君がお風呂に入ったあと私たちも汗を流してちょっと早いけど、明日の練習に備えてもう帰ることにするって!」

 

「そうなのか、本当ごめんな? 練習時間少なくして」

 

「ううん、元はと言えば私がスランプに入っちゃったからだし・・・・・・気にしないで?」

 

「あぁ、じゃああまり待たせるのも悪いし、なるべく早めに上がるよ」

 

 俺は若干駆け足になりながら、浴室へと駆け込んだ。

 

***

 

 その後、みんなで暖炉を掃除して、13時を少し過ぎたところで電車に乗り込んだ。

 穂乃果に今度は寝過ごさないようにと注意して、一笑い起きて、無事に東京に着いた。

 

 時刻は16時過ぎ、思ったより早く帰ってこれた。

 あー、どうしようかな・・・・・・そうだ。

 

「早めに隣室の人たちに挨拶を済ませておこう」

 

 合宿に行く前に、大きめの荷物は部屋に送っておいたし、あとは小物を部屋に運び入れるだけだ。

 先に挨拶を済ましておくことに越したことはないだろう。

 

「よし、早速行くか」

 

 菓子折りを穂むらで買い、自分が住んでいる家のすぐ近くにあるマンションへ。

 マンションは10階建てで、俺の部屋は最上階の一番奥にある角部屋だ。

 

 その内、同じ階に住んでいる人にも挨拶にいかないとな。

 でも、もう今日はそんな時間もないし、とりあえず隣人だけ・・・・・・。

 

 インターフォンを鳴らして、中から応答があるのを待っていると、扉が急に開いた。

 

「英玲奈~? あんじゅ~? 今日18時からって・・・・・・あれ?」

 

「・・・・・・ん?」

 

 扉が開いた先には、見覚えのある人が立っていた。

 短めの前髪、ショートカットのデコ出しルックで活発そうな印象を受ける、小柄女の人。

 

 ・・・・・・この人は!?

 

「A-RISEの・・・・・・ツバサさん!?」

 

「確かあなたは・・・・・・μ’sの、八坂・・・・・・優君?」

 

 まさかの部屋から出てきたのは、トップスクールアイドルであるA-RISEの綺羅ツバサ、その人だった。

 

-To be continued-

 




さて、どうでしたか?
最後駆け足になった感が否めませんが、なんとか合宿編も終えることが出来ました。

実はリストバンドや暖炉の展開は前回の話で入れておくべき部分だったのですが、うっかり書き忘れて、急遽後付けで入れさせてもらうことになりました。

それはそれとして、サンシャインの映画も観に行ってきました。
無印とは感動のベクトルが違うものの、終わりの感じも爽やかな感じで私は面白いと思いました!

この無印編を書き終えたらサンシャイン編も小説書きたいなとは思っていますが、だったら投稿早くしろやって感じです。

実はサンシャイン編の方へは繋ぎ方も既に考えており、主人公の設定も頭の中では練り終っています。

まずは頑張ってこの多重奏を進めていきたいと思います!
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