木暮塵八改め飯田五十六は女の子が苦手である。
例え生まれ変わっても――いやその表現は正確ではないだろう。塵八が五十六となったのは実の父親にビール瓶で殴られた結果脳にまで及ぶ大怪我を負った事件がきっかけであり、最初から木暮塵八の記憶と意識を持って母親の胎内から生まれた時点では訳ではない。多分――根幹が木暮塵八である以上、趣味嗜好も塵八だった頃と殆ど変化していないと言って良い。
だから相変わらずナタデココ入りヨーグルト飲料は好物だし、暇があれば漫画を読んだり書いたり映画を見たり。勉強はやっぱり苦手なままで、中学まではそれなり以上に成績優秀だったが高校になった途端ガクリと成績が落ちてしまって妹にバカにされてしまったのは嫌な思い出だ――――1度やった内容にもかかわらず、数学でまたも1桁台を取ってしまう始末なのだから馬鹿にされても仕方ないけれど。
話を戻そう。ともかく五十六は今も女の子が苦手だ。特に親友の三木多可同様幼馴染で今や同じクラスの委員長を務める四天王寺花蓮はスーパーモデル顔負けの美貌とスタイルの持ち主なので、彼女と一緒に居るとかつて由美子と接していた時のようにドギマギしてしまう。
何故こんな話題が出てきたかというと、ここ数日の間に立て続けに外国人の美少女が3人、五十六の間に出現したからだ。
「五十六さん、お背中を流させて頂きますね!」
1人目は五十六の自宅にホームステイする事になった金髪の美少女、キャスリン・涼音・アマミヤ。ロサンゼルス市警のお偉いさんの娘という触れ込みで、事ある毎に露出が激しい格好で五十六の元に乱入してくる。
「そのうちウォッカを飲みながら政治と文学の話でもしよう、五十六」
2人目はバイト先の本屋に新人店員として入ってきたクールな美貌のロシア美少女、タチアナ・オゴロドニコワ。面接の最中服を脱ぎ出して成熟しきった肢体を五十六に見せつけてきたのには驚かされた。
「こ、こちらがレシートになりま――――ああっ!?あわ、あわわわわっ、どうしよどうしよどうしよっ!」
最後に3人目は漫画用の画材を購入するのに通っている行きつけの文房具店の新人店員であるメガネっ娘中国人のリー・イーチン。どうやらとんでもないドジっ娘なようで、五十六にレシートを渡すだけなのに何故かレシートは最終的に五十六の手に渡る事なく彼女の手でバラバラに破かれてしまったのは非常に衝撃的だったと言えよう。
イーチンはともかく、涼音やタチアナは過剰な程に行為を露わにして五十六に迫ってくる。その手段が非常に直接的だったりするものだから、五十六からしてみれば鼻の下を伸ばすどころかドン引きものだ。
しかもこの3人娘は揃って五十六と同じ高校に同時に入学してきたのだ。五十六のクラスに3人まとめて!
授業中だろうが休み時間だろうがお構いなしに涼音とタチアナが五十六に迫ってくるものだから、周囲の嫉妬ややっかみや疑問の視線も相まって五十六の精神的負担は累乗的に上昇中だ。クラス委員長で真面目な花蓮も留学生達の対応に四苦八苦している。申し訳ない四天王寺さん、でも俺だってイッパイイッパイなんですよ。
特に涼音は日本に来る前に観賞した漫画や映画から得た間違った日本観も合わせて発揮するものだから、その度五十六は間違った日本観を否定するのに苦労させられている。まさか今時日本観を学ぶ教材に『007は2度死ぬ』を使うなんて!そのチョイスをした人物を五十六は殴ってやりたくて仕方がない。
「ちょっと気になるんだ、キャスリン涼音さん……上手く言えないけど変な感じがして……あにき、気を付けろよな」
涼音の過激な接し方には妹の五十鈴も不信感を抱いているみたいで、五十六にだけ反抗期全開な妹には珍しく殊勝な態度で警告を伝えてきた位だ。
「どう考えてもおかしい、よなぁ」
明らかに異常だった。一斉に外国人の女の子が同じタイミングで五十六の元に集まるなんて、単なる偶然の所業である筈が無い。木暮塵八だった頃に鍛え上げられた殺し屋としての嗅覚も爆発物を嗅ぎつけたかのように警鐘を鳴らしている。此処まで盛大に勘が警告を発するのは飯田五十六となってから初めての事だ。
五十六が特に不信感を抱いているのは初対面の美少女がああも異常な程五十六に迫ってくる点だ。どうにもこうにもハニートラップ、つまり高い立場にある男性を色香で惑わして重要な情報を盗み出したり利用する為の要員としか思えない。いやイーチンに限ってはちょっと違う気がするのだが。あの慌てぶりとドジっ娘具合は五十六の目には演技には見えなかったが、彼女は3人の中でも最も豊満なバストの持ち主だしまだ断定は出来ない。
ここで問題なのは、ハニートラップ要員を送り込まれるだけの理由を五十六が持ち合わせている事である。
五十六の持つ秘密の力――――テレポーテーション能力。
最初に超能力を持っている事に気付いたのは、丁度母親が実の父親と離婚した頃だった。肉体が小さな子供に逆戻りした事に五十六がまだ戸惑いを覚えていた時期だった
五十六の目の前でマンションのベランダから当時の五十六と同い年ぐらいの少女が柵を乗り越えて転落した。目撃したのは偶々そこを通りがかった五十六だけで、彼が立っていた位置は今すぐ少女の落下予測位置目指して駆け出しても子供の足では到底間に合わない距離だった。にもかかわらず五十六は間に合い、落ちてきた少女を無傷で抱き留める事に成功した。
その時の感覚を五十六は今も詳細に思い出す事が出来る。間に合え、間に合え、今すぐあの女の子の元へ辿り着かないと、と強く強く集中した瞬間見えない力に引っ張られて空気の壁を突き抜けたような感触がしたかと思った次の瞬間には少女の身体を抱き締めて別の場所に立っていたのだ。
あれから密かに瞬間移動の能力を重ねた結果、今はかなり自由自在に能力を使いこなせるようになっている。壁や物が置いてある位置に転移してしまってそのまま一体化したり危険な場所に間違ってテレポーテーションしてしまわない為の精緻なコントロールにはかなりの集中力が必要なのだが、一旦意識を切り替えて瞬間移動の感覚に慣れてしまえば後は早いものだった。
要は射撃や狙撃を行う時と同じ要領で集中すればいい。素早く正確に標的へ弾丸を送り込む事こそ殺し屋の必須技能でありそれは五十六、いや木暮塵八にとって数少ない取り柄の1つであったのだから。
或いは漫画を描く時、ペン1本で創造したキャラクターに魂を吹き込んでいく瞬間を想像するのでも構わない。銃を撃つ時と漫画に没頭する時は同じぐらいの集中力を発揮できる。
集中力以外にもテレポーテーション能力を使いこなす為に必要なのは平常心……より正確に言えば、如何なる時でも2本の足で地面に立っている時と同じぐらいの集中力が発揮発揮出来るだけの冷静さを保つ事だ。仮に何らかのミスで高度100mの空中に投げ出されたとして、能力を使う事に集中できればすぐに無事な場所へ転移が可能だ。集中出来るだけの平常心を保てなくて能力が使えなければ、五十六の肉体は地面に激突して生き物からグシャグシャの肉の塊と化す羽目になる。
実は人目を忍んで訓練を行った時以外にも五十六は瞬間移動を行った事があった。例えば小学生の時大雨で増水した川に三木多可が転落した時。流れが速く下手に飛び込んでも逆に流されるだけだったので、仕方なく溺れる三木多可の元に瞬間移動してどうにか三木多可を助け出したのだ。
他の事例も転落した少女や流された三木多可らと同様、どれも人命がかかっていた為止むを得ず能力を用いたのだが、もしやそこから五十六の力がバレてしまったのだろうか?勿論人命を助ける為に能力を使った事について五十六は全く後悔していない。するつもりもない。だけどどうしよう?
「こんな時誰かに相談できればいいのに……」
弓華や一登、平等院会長や毒島さんに白猫さんなど秘密を共有できる『仲間』が居ない事がこうも孤独で辛い事なのか、と五十六は落ち込む。まるで簡単な『仕事』に失敗した挙句大ドジをまして警察や敵対組織にも正体がバレてしまったような憂鬱な気分だ。
――――せっかくの日曜日なのに、何でここまで頭を悩ませなきゃいけないんだ?
「(考え過ぎちゃダメだ。今は漫画に集中しよう)」
自分の頬をピシャリと張って気持ちを切り替える。ペンを片手にいざ気合を入れて机の上に並べた原稿用紙に向き直り――――
「五十六、今日は休日です!一緒に出掛けましょう!」
丁度そのタイミングで五十六の頭を悩ませる件の元凶の1人である涼音が五十六の部屋へと乱入してきた。あんまりにもあんまりなタイミングでいきなり突入してきたものだから、いざ行動に移ろうとした途端に出鼻を挫かれた五十六はまさに漫画の如く椅子の上に座りながらにしてずっこけてしまう。
苦々しさ満点のしかめっ面を思わず浮かべながら姿勢を立て直す。すると不機嫌そうな五十六に気付いた涼音が申し訳なさそうながらも悲しそうな表情を浮かべて碧眼の瞳を潤ませたものだから、慌てて五十六は謝罪する羽目になった。前世が歴戦の元ヤングガンでも泣く女の子には弱いのだ。
それにしても今日の彼女もやけに露出度が高い。屈んだだけで中身が見えてしまうであろう短さのミニスカートに小さなお臍から上と脇の高さまでだけを覆うチューブトップという組み合わせ。弓華といい白猫といいそれから豊平琴刃といい、五十六(塵八)の周囲には露出狂の気がある女性ばかり集まってやしないだろうか?
「ゴメン、誘ってくれるのは嬉しいんだけど今日はこっちに専念したいんだ」
「五十六はコミックを描いてるんですか?」
大袈裟なぐらいに大仰な驚きのリアクションを見せる涼音。それからおもむろにマジマジと五十六の顔を見つめだす。視線に質量があるならばレーザーと化して五十六の顔をあっさり貫通してもおかしくあるまい、そう思えるほどの熱い視線だ。
「眼鏡をかけてる五十六、初めて見ました」
「ああこれ?本を読んだり漫画を描く時ぐらいしか付けないから……」
照れ臭そうに頬を掻く。木暮塵八だった頃と違い、一般生活では眼鏡をかけなくても支障をきたさない程度の近視なので五十六の元にやって来て日が浅い涼音が知らないのも無理は無い。
眼鏡をかけるのには他にも理由がある。
要は意識の切り替えの問題だ。
「五十六はどんなコミックを描いているんですか?私も五十六が書いたコミックを読んでみたいです!」
相手が怪しい美少女とはいえ、自分が描いた作品を読みたいと言ってくれる事は純粋に嬉しいと思う。
五十六は机の隣の本棚に手を伸ばす。棚の1番上の段はこれまで五十六が描いてきた漫画の原稿がズラリと整理して並べてあった。1話分ごとにクリアファイルに収めて保管されている。原稿のみだけでなくスキャンした原稿のデータは個人用のPCにも収めてある上大容量フラッシュメモリーにもバックアップを取ってある。
「漫画の名前は何ていうんですか?」
「俺の描いてる漫画の題名はね――――」
――――――『ヤングガン・カルナバル』って題名なんだ。
木暮塵八だった頃、所属している中堅犯罪組織『ハイブリッド』の上司で凄腕の殺し屋で塵八の師匠だった故・椿虚のライバルでもあった毒島将成にこう言われた時がある。
ある学園に潜入したものの、結果的に塵八が一時的に所属していたクラスの仲間達と護衛対象だった少女を敵対組織から守りきれずに塵八の腕の中で死なせてしまった直後の出来事。
いつか死んだ虚や少女の事を漫画にして描いてやれ、と毒島は言った。
日頃からサディスティックな言動や振る舞いばかりする毒島には全く似つかわしくない、優しい口調で諭されたものだからよく覚えている。
『俺が死んだ時も漫画にして描いてくれ』とも言われた筈だ。結果的に毒島よりも先に塵八が死んでしまったのだけれど。
「(この世界でも漫画を描こうと思った時、毒島さんの言葉を思い出したんだ)」
『木暮塵八』が『飯田五十六』として生まれ変わった世界は、『木暮塵八』の世界とそっくりなようでだけど決定的に違う点があった。
一般人でもネットで検索すれば容易く大まかな情報が手に入ってしまうほどの巨大組織であった鳳凰連合も、豊平重工も、飛竜会も、ロシアンマフィアであるヴェルシーナもチャイニーズマフィアの紅旗幇も存在しない。最終的な塵八の両親の仇だった物部玖城は防衛庁長官どころか名前すら見つける事が出来なかったし、そもそも千葉県に窪内市という名前の都市は地図帳で探しても記載すらされていなかった。この分では『ハイブリット』も存在してはいないと、おぼろげながら五十六は確信していた。
『木暮塵八』が関わった事件も同様だ。日本でごく最近爆弾テロや大企業を狙ったテロは起きていないし現職の国会議員が何人も暗殺されたりもしていない。だけど911テロは起きたし米軍が中東で泥沼の戦闘を続けていたり日本の政治家が無能で汚職まみれなのはやはり塵八の世界の頃と同じだ。『木暮塵八』とハイブリッドに関わる全ての事柄のみ存在しない世界。
増田京治、椿虚、前田紫良、真田ソニア、四谷塁――――そして塵八自身。木暮塵八に関わって生き、死んでいった人々。この世界で彼らの事を知る人間は飯田五十六ただ1人のみ。
――――だから飯田五十六は、木暮塵八とハイブリッドに関わる全ての事を漫画にしようと思った。
彼らという人間が実際に存在していたという記憶を、思い出を、1人1人の生き様と死に様を、他の人達にも知ってもらいたいと思ったから。
全てを知っている訳ではない。『ハイブリッド』が関わった事件の中には他の人間から又聞きしただけだったり、そもそも最初から塵八が関わらなかった部分も山ほどあるので、そこは推測や創造で埋めていくしかなかった。それでも7割ぐらいはありのままの事実を描けている自信がある。
一応人物名や組織名は変更しているが、それ以外は塵八が見て経験した全ての事柄をそっくりそのまま漫画という形で描いてきた。
主人公はヤングガンと呼ばれる2人の高校生の殺し屋。漫画研究会に所属する狙撃が得意な男子高校生と1年後輩で奔放なレズビアンである2丁拳銃使いの女子高生。バイオレンス満載の青春ガンアクション漫画。
最近はイラスト投稿サイトの普及によって、サイトにメールアドレスとパスワードと名前を登録すれば素人でも気軽にイラストや漫画を掲載できるようになったので五十六も活用している。スキャナーで取り込んだ原稿のデータを投稿サイト内に設けた自分のページで公開しているのだ。評判は意外と上々、特にガンアクションや格闘戦のリアルさに定評があると読者から一定の評価を得ている。
漫画家としてのペンネームは――――木暮塵八。
漫画を描く時に眼鏡をかけるのは、そうすると五十六の意識が『木暮塵八』だった頃に近づいた気がして、当時の記憶をより鮮明に思い出す事が出来るからだ。
実は塵八のポジションに当たる主人公のキャラデザインについてはちょっと気合を入れてカッコ良く描いているのは誰にも言えない秘密である。
「どうかな。涼音さんの好みに合うのかは、大分不安なんだけど……」
「いいえ、スッゴイ面白いです!とにかく銃の描き方や戦闘描写がリアルで、読んでいるとまるで自分が実際に銃撃戦を体感してるように思えてきちゃうぐらいとってもリアルですよ!」
ええ、何せ実体験をそのまま描いていますから――――とは白状できないので五十六は笑って誤魔化す。
「出来ればもっと続きを読んでみたいんですけど」
「構わないよ。俺も楽しんで読んでもらえて嬉しいですから。そういえば涼音さんも漫画とかは結構読んだりする方なんですか?」
「はい、私日本の漫画大好きです!日本文化を勉強する為の教材としてもピッタリでした!」
「へ、へー……例えばどんな漫画を読んだんですか」
「えっとまずは赤松健先生の作品を全種類に『To LOVEる』に『ナナとカオル』に――――」
「……そんな事だろうと思いましたよ」
作品が挙げられる度に口元が引き攣っていくのを抑え切れたかどうか、五十六には全く自信が無かった。
「よし、これで終わりっと」
結局五十六は休日を丸々潰して漫画の執筆に没頭した。ありがたい事に涼音も過去の五十六の作品を読み始めてからは夕食の時間までジッと静かにしてくれたお陰で、五十六は無事次回更新分の原稿を完成させる事が出来た。涼音が乱入してきた時は支障が出るのも覚悟していたのだが、杞憂で済んだのは素直にありがたい。
入浴と夕食を済ませてからも漫画を描いていたらいつの間にかとっぷり夜も更けてしまっていた。携帯で確認してみれば既に午前2時前後、既に妹や両親に祖父母も寝入っている時間帯。一旦漫画に集中してしまうと時間の感覚が無くなってしまうのは五十六の悪い癖だ。
俺もいい加減トイレを済ませて寝よう――――椅子の上で大きく伸びをしてから立ち上がり、音も立てずに自室の扉を開けて気配を完全に消しつつ廊下に出る。腐っても中身は元凄腕ヤングガン、気配を消す事など現在もお茶の子さいさいである。それでも上には上が居るのだから世の中侮れないが。
「(新沼分隊の指揮官もとんでもなかったけど、毒島さんや師匠ももっと上手く気配を消せるんだろうなぁ)」
これまた音も無く扉を閉める。トイレに向かおうと思ったその時、五十六の耳が誰かの囁き声を捉えた。
動きを止めて耳を澄ませてみると、五十六の部屋から廊下を挟んだ向かい側に位置するゲストルーム――今は涼音が使っている――から扉越しに聞こえてきていた。
「(今のは涼音さんの声?)」
更に気配を消した五十六は、ゲストルームの扉に不用意に触れて音を立てないよう出来る限り注意しながらそっと耳を近づける。
どうやら部屋の中で誰かと電話で話しているらしい。話す先は恐らく故郷のアメリカだろう。日本とアメリカの時差を考えると向こうは丁度午前中の筈。
ただし、聞こえてくる涼音の口調は家族や身近な親しい人間と話す様な気楽なものではなかった。
『はい、はい分かっています……引き続き監視と調査は続行します……』
『監視』『調査』――――どれも只の留学生が故郷の家族と話す内容にしては不釣り合いに思える。涼音の口調もまるで上司など目上の役職に就く物に対して報告している際のそれだった。
丁度連絡が終わるタイミングだったのか、回線が切れる小さな電子音が微かに届く。それから涼音が吐き出した溜息と深い憂いと疑問を含んだ呟き。
『……五十六が世界崩壊の引き金になるかもしれないなんて……どう見ても彼は普通の人なのに……』
そこまで聞いてから五十六はその場から離脱する。足音も気配も消したまま出来る限り素早く離れていく。そうしなければ内心の動揺が扉の向こうにも涼音に伝わってしまいそうな気がしたからだ。
「俺が世界崩壊の引き金になるって?ああでも心当たりが無くも無いから否定できない……!」
ともかく1つだけほぼ確定した事がある。
――――キャスリン・涼音・アマミヤは黒だ。
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