疾走する若い元殺し屋の秘密と青春   作:ゼミル

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一旦この回で完結とさせていただきます。


エピローグ:愛しき日々、そして世界最悪の敵

 

――――まさか本当に撃ち落してしまうなんて。

 

少しでもチャンスがあれば戦闘ヘリと戦っていた五十六の援護射撃を行おうと、巨大なライフルと共に雑居ビルの屋上に寝そべっていた四天王寺花蓮は、1km先に広がる墜落した戦闘ヘリが炎上している光景を呆然と見つめていた。

 

たった1人で完全武装の戦闘ヘリを相手に1丁のライフルだけを携えて立ち向かう五十六の姿を発見した時は、酷く驚いたと同時に彼らしいとも納得してしまった。だが花蓮の中の冷静な一面は、幾ら彼がテレポーテーション能力を持っているとはいえ余りにも無謀で勝ち目は殆ど無いとも判断していた。

 

だからこそこうして可能ならば何時でも援護射撃を行えるよう狙撃用スコープを覗き続けていた訳だが、どうやら杞憂で済んだようだ。

 

 

「それにしても五十六君は一体何処に……?」

 

 

無事五十六がブラックシャークを撃墜してみせた事に驚きと安堵を覚え、つい気が抜けて狙撃用スコープから目を離した隙に、気が付くと次にスコープを覗き込んだ頃には五十六の姿を花蓮は完全に見失ってしまっていた。

 

彼は瞬間移動が使えるので、一瞬で遥か彼方に移動されてしまうと狙撃用スコープだけで見つけ出すのはかなり難しくなる。涼音とターニャの元へ戻ったのかと2人が隠れているビルの屋上も確認してみたが、そこにも彼の姿は無い。

 

――――連続して五十六達があの手この手で襲撃される様をほぼ一部始終、遠く離れた狙撃地点から目撃し続けていたせいで焦りが燻っていたのだろう。

 

すぐ後方に銃を持った人間が降り立つ気配を、花蓮は声が掛けられる瞬間まで気付く事が出来なかった。

 

 

「動かないで。ゆっくりと銃から離れて下さい」

 

 

声の主は昔からずっと聞き続けてきた――――花蓮が今探し求めていた人物。

 

ハッとなって勢い良く振り返ると、飯田五十六が彼に似合わない武骨さとSF映画に出てきてもおかしくない近代的な雰囲気を併せ持った大きなライフルの照準を、ピタリと花蓮に対しまっすぐ据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花蓮の背後を取った五十六が陣取っているのは、ビルの階段口の屋根である。

 

銃口に狙われている花蓮から階段口までの距離は10m前後。彼女の周囲に隠れる為の遮蔽物になりそうな物体は全く存在せず、今や花蓮は逃げも隠れも出来ない状態だ。

 

何よりも、『あの』五十六に銃を向けられているという現実が、花蓮の思考と肉体を一時的な機能停止に追い込んでいた。それ程の衝撃だった。ガツンとバットで頭を殴られたようなそんな感覚。勿論錯覚だ。

 

花蓮に対し突き付けられた銃口はピクリとも揺らがない。正しい訓練を受けていない素人ならば凶器を他人に突き付けるという行為自体に恐怖を覚えるだろう。敵を殺す為の訓練を受けた兵士であれば逆に極度な興奮状態に陥って暴発させる可能性が高くなる。

 

だが五十六は違った。花蓮にライフルを向ける事に対して恐怖で震えている風でもなければ、些細な事で臨界点に達して不用意に引き金を引きかねない程興奮している様子でもない。冷静に自らが構えている存在の正体を把握している上で、いざという時には冷徹に撃ち殺さねばならない『敵』――つまり花蓮だ――をジッと見据えていた。

 

銃の照準に人を標的として捉え慣れた人間独特の、殺し合いを生業とするプロフェッショナル特有の雰囲気。

 

五十六にそんな目で見られる事が、最も花蓮の心を傷つける。

 

 

「五十六く……」

 

「――――これだけは答えて下さい、花蓮さん」

 

 

普段の五十六からは信じられない、固く冷たく何より鋭利な虚偽は一切認めないであろう最高級ナイフのような切れ味鋭い声。

 

銃口は揺らがず、安全の為ピンと真っ直ぐ伸ばされていた右手の人差し指がゆっくりと引き金に触れる。

 

 

「――――貴女は、俺を騙してたんですか?」

 

「違う!そんな訳ない!」

 

 

返事は完全な絶叫。花蓮にとっては魂からの叫びだった。

 

 

「五十六君が各国の諜報機関から狙われているなんて、公安の幹部だったお母さんから教えて貰うまでまったく知らなかった!確かに、お母さんからも『手伝って欲しい』って頼まれたけど、でも、だからって国の利益が理由で任務を受けたつもりは……!」

 

 

言い訳したって、結局五十六を騙していた事は紛れも無い事実ではないか――――そんな考えが脳裏を過ぎり、言葉が詰まる。

 

何より今日彼を襲った急展開のそもそもの発端は、花蓮が五十六のカバンに涼音達の盗撮写真を忍ばせた事なのだから。上からの『命令』とはいえ、ここまでの展開になるとは花蓮も上も予想だにしていなかった。

 

一旦グチャグチャになった花蓮の思考は加速度的に坂道を転げ落ちていき、論理だった言葉を吐き出す事ができない。途切れ途切れの言葉の羅列しか搾り出せない。

 

 

「私は、ただ、他の、人に、五十六君のことを、任せたくなくて……せめて、私が、誰にもっ、心配で、五十六君が、失いたく、いやぁ、きらいにならないでっ……!」

 

 

『敵』に対する殺意以外のあらゆる感情を配した冷徹な光を眼鏡越しに浮かべる五十六の姿が俄か浮かんだ涙によって視界が歪み、ハッキリと見えなくなる。

 

そのままもう何もかも見えなくなればいいのに。花蓮は俯いて泣きじゃくりながらそう願った。

 

五十六に冷たい目を向けられる事は覚悟していたが、これほどまでに自分の心が傷つくとは花蓮自身想像だにしていなかった。

 

 

 

 

――――ただ私は、ずっと一緒に居た五十六君の運命を他人の手に任せたくなかっただけなのに。

 

 

 

 

正直に本音を吐露したって、今となってはもはや五十六を懐柔する為の方便の1つにしか彼には聞こえまい。

 

だからすぐ耳元からとても優しげな五十六の声がした時はとても驚いた。気がつくといつの間にか五十六が目の前に居て、涙で顔をクシャクシャにした花蓮の頭をすっぽりと腕に抱えて花蓮を柔らかな肢体を抱きしめる。

 

花蓮はポカンとしばらくの間じっと抱きしめられていたが、今どういう状況に置かれているのか認識を終えた途端熟したトマトみたいに赤面した。

 

 

「いっ、五十六くん?」

 

「ごめん四天王寺さん、泣かせるような事しちゃって。意地悪したつもりは無いんだ。、ただ四天王寺さんが本当の事を言ってくれるようにする為の演技のつもりだったんです」

 

 

穏やかな声。さっきまでの威圧感を秘めた質問が嘘のようだ。本当に同一人物なのか疑いすら覚えてしまう。

 

 

「信じてくれるの?……だって、私、五十六君にずっと嘘を吐いていたのに」

 

「涼音さん達にも同じような事を言ったんですけど、花蓮さんが嘘を吐いてたのも俺を守る為なんですよね?だったら驚きこそすれ、怒りとかの感情はまったく湧いてきませんよ」

 

「だっ、だけど各国の諜報機関から送り込まれてきたあの3人みたいに、私も五十六君を誘惑しようと送り込まれてきたかもしれないのよ?」

 

 

咄嗟にそんな質問を口走ってしまった花蓮だが、それを聞いた五十六は顔に浮かべた苦笑の色を強くした。

 

 

「いやあ、四天王寺さんの場合は多分本当に偶然ですよ」

 

「だからどうして!」

 

「だって四天王寺さんと俺……それから三木多可は幼稚園からの付き合いなんですよね」

 

 

幼稚園の頃は頭の怪我のせいで覚えてない(本当はそもそも最初から知らない)んですけど、と付け加えつつ。

 

 

「そうだけど……」

 

「俺が瞬間移動を使えるようになったのは小学生の時――――それまでは自分でもこんな能力を持ってるなんて知らなかったんですよ?だったら俺と四天王寺さんが知り合えたのは、それこそ偶然以外の何物でも無いと思いますよ。だから花蓮さんが自分の事を悪役みたいに言う必要はありませんって」

 

 

何て強い人なんだろう――――そう花蓮は強く感じた。

 

戦闘能力がどうこうという意味ではない。長年の友人が己の人生を左右しかねないような嘘をずっと吐き続けていたのをいきなり知らされていながら、嘘を吐き続けていた花蓮を感情の赴くままに糾弾するでもなく、論理的な分析を経た上で花蓮の事を許してしまう、そんな精神の強さ。そして優しさ。

 

強くて優しくてカッコいい――――私の幼馴染。もっと好きになってしまいそう。

 

 

「(!!?わ、わたっ、今何を考えたの!?)」

 

「四天王寺さん?」

 

「へっ、い、いえううん何でもないの。五十六君が私の事を許してくれた事に驚いたのと、嬉しかっただけだから……」

 

「俺も四天王寺さんが泣き止んでくれて良かったです。正直泣き出された時はもう少しマシな言い方すれば良かったって自分を殺したくなりましたから」

 

「もう大げさ過ぎよ……」

 

 

心底安堵の溜息を漏らす五十六の姿に、花蓮の口からクスリと笑いが漏れてしまう。それからさっきまでみっともないぐらい泣いてしまった事を思い出して、もう1度赤面してしまった。

 

五十六も花蓮を抱きしめたままだった事をようやく思い出して慌てて離れる。その際「あっ…」と花蓮の口から名残惜しそうな声が発せられたのだが、微かな音量だったので屋上に吹く強い風の前に呆気なくかき消され、五十六の耳には届かない。

 

 

「じゃあ、俺は涼音さん達の所に戻りますね。涼音さんの怪我の手当てや後始末とかも多分やらなきゃいけないと思いますから」

 

「わ、分かりました。ところで私の存在については出来れば涼音さん達には……」

 

「分かってます、黙っといた方が良いんですよね。花蓮さんは今日の出来事には何も関係なかったし、この場にも居なかったという事で」

 

「そんな感じでお願いします……でもよく私の場所が分かりましたね」

 

「それはほら、無人戦闘車両に襲われた時の狙撃音と着弾から飛んできた方向は分かりましたから、後は狙撃に最適なビルに目星をつけて転移で虱潰しに。お礼を言うのが遅れましたけど、公園ではありがとうございました」

 

「そんな五十六君が頭を下げる必要は……ただ私は五十六君を守りたかっただけで……ゴニョゴニョ」

 

 

念を押されなくても、最初から五十六も花蓮の素性やこの場での出来事を涼音達に教えるつもりはなかった。

 

花蓮は自分から正体を晒した訳ではないし、彼女にも立場がある。出来るならば援護射撃を行ってくれた彼女に不都合が及ばないようにしたい。恩人には変わりないのだし――――何より花蓮は大切な幼馴染だ。

 

 

「それじゃあ俺は行きます」

 

「……あのっ、五十六君!」

 

 

花蓮に背を向けて五十六が瞬間移動を行おうとした直前、花蓮は声を振り絞った。

 

 

「明日も、また何時もどおり学校で会えるよね!!」

 

「――――ええ、もちろんです」

 

 

首だけ回して五十六は微笑んだ。学校では意外と見かけない、眼鏡をかけた状態での五十六の優しい笑顔は、花蓮にとってとても新鮮な光景だった。特に先程まで鋭利なナイフを連想させる雰囲気漂う彼のもう1つの側面を見せつけられていたとあっては、その思いもひとしおだ。

 

五十六の微笑は花蓮の胸に強く刻まれた。これから長い年月がどれだけ経とうとも、今この瞬間の彼の姿を花蓮は生涯忘れない。

 

 

「それじゃあまた明日、学校で」

 

 

今度こそ五十六の姿は完全に消え去った。

 

だけど落ち込む必要はない。彼とはまた明日、必ず会えるに違いないから。飯田五十六が約束を破った事は花蓮が記憶している限り1度もない。

 

 

「明日会ったら、五十六君に本当の事全てを話そう……」

 

 

決意の呟きも夜風に流れて消え去っていく。

 

彼ならきっと全てを白状してもきっと受け入れてくれる――――花蓮にはそんな確信があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五十六を中心に起きた一連の怒涛の出来事も、翌朝になる頃にはアメリカ・ロシア・中国・日本を中心とした各国の諜報機関総出の隠蔽工作によってほぼ全てがカバーストリーによって覆い隠された。

 

各航空機による爆撃は飛行機の『ひ』の字も出てこない爆発事故に偽装され、五十六が撃墜した戦闘ヘリも『民間のヘリコプターが整備不良が原因で墜落したが死傷者はゼロ』という形でニュースになったに過ぎない。日本の都市で発生した陸空の兵器によって行われた市街地戦をたった一晩で隠蔽してしまうその組織力と能力に、五十六は改めて国家権力の巨大さに対して驚嘆と畏怖の念を抱いてしまったものだ。

 

あの日を境に五十六の身の回りで変わった事もあったし、変わらなかった事もある。

 

事件の翌朝、この数日で久しぶりに1人で登校した所(何せ自宅から一緒に登校していた涼音は怪我の治療の為数日間家に戻っていない)、五十六と同様に何事も無かったかのように登校してきた花蓮から昼休みに呼び出された。

 

話の内容は昨晩はきちんと話す暇が無かった花蓮の素性について。彼女によると元々花蓮は両親を交通事故で亡くした孤児であり、その後日本の諜報機関である公安調査庁の幹部だった現在の養母に引き取られて特殊作戦の訓練の身を受けた立場なのだとかなんとか。

 

五十六のカバンに写真を忍ばせたのも花蓮だったそうで、何度も平謝りされたのにはちょっと戸惑ったけど、もちろん五十六は花蓮を許した。彼女は命令されただけだったのだし、むしろ少女達の素性を問い詰めて明らかにする良い機会だったと割り切る他無い。

 

 

「五十六君は、こんな私でもこれからもずっと一緒に居るのを許してくれますか……?」

 

「もちろんですよ。これまで通り、これからもよろしくお願いしますね」

 

「――――うんっ!!」

 

 

その時の花蓮の笑顔は、今まで見てきた女性の中でも5本の指に入るぐらい綺麗だった――――後に五十六はそう述懐している。

 

花蓮についてはそれ以外に目立って変わった部分は無い。敢えて言うならこれまでよりも少しだけ花蓮の方から五十六に話しかける機会が増えたぐらいか。

 

涼音達についても一連の戦闘から5日後辺りに学校に復帰してからはこれまでと変わらず……いやむしろ今まで以上に誘惑してくるようになった点を除けば今まで通りだ。普通少しは大人しくなりそうなんだけどなぁ、と相変わらず五十六の悩みの種となっている。

 

 

 

 

 

 

 

これまでと変わった事といえば他にも2つあった。

 

1つは五十六が拳銃を隠し持つようになった事。『WATF』の傭兵から奪った例のSW1911だ。

 

SOPMOD-M14は目立ち過ぎるし、本来CIAの備品なので惜しみながらも返却したが、SW1911の事は黙っておいたのである。涼音とターニャも知っていた筈だが、彼女達は組織に何も言わなかったようだ。想定外の事態が連続したせいでド忘れしていたのかもしれない。

 

もう1つは、涼音が復帰するより前のある日の帰り道に『日本政府のある諜報機関の人間』を名乗る女性が接触してきた事。

 

40がらみの女性が言った内容を要約すれば、『五十六の身柄は日本が保護したいがアメリカが邪魔で手出し出来ない。だけどだからといって好きに手出しをさせるつもりもない。各組織同士が牽制し合っているお陰で結果的に五十六の身柄は自由を保っている』、と大体そんな感じ。

 

これからも五十六の周囲には各国の組織からエース級エージェントが送り込まれて来るだろう、という忠告も受けた。『正直涼音さん達と四天王寺さんだけで十分お腹一杯なんだけどなぁ』というのが五十六の本音。正直気が重い。

 

一方的に話しかけてくる女性は厳しい環境で逞しく生きてきた白熊を連想させる雰囲気の持ち主だった。

 

『日本の諜報機関の人間』と聞いて五十六の脳裏に思い浮かんだのは花蓮も所属している公安調査庁。もしかすると五十六の前に現れたこの女性は花蓮の上司なのかもしれない。

 

わざわざ直接忠告に現れた辺り、性根は誠実な人物なのかもしれない(もちろん諜報機関の一員なのだから演技の可能性もあるが)。

 

 

「君を『世界の敵』として排除しようとする者も当然沢山居る。ただし、1つだけ信じて欲しい」

 

 

踵を返して五十六に背を向けたまま女性は続ける。

 

 

「日本政府は――――いや、少なくとも私は、君を見捨てたりしない。君が『世界を滅ぼす』のか『世界を良くする』のかは分からないが、同じ日本人同士後者に賭けてみるのが正解だと考えている」

 

「俺は――――」

 

 

ようやく五十六も自分の意見を返そうと口を開いた。

 

 

「俺みたいなガキが暴れたくらいで滅びるような国や世界は無いと思うし、その程度でぐらつくような世界は滅びるべきだと思います」

 

「っ!!!」

 

 

振り返った女性がサングラス越しに強く五十六を睨みつける。残暑が過ぎ過ごしやすい夕暮れの空気が、五十六と女性の居る空間だけ俄かに数度急降下したような冷たさを帯び始める。

 

まったく臆した様子を見せないまま五十六は更に考えを舌に乗せて表明していく。

 

 

「……だからって俺は自分の力を使って暴れるつもりはありませんし、この力のせいで国や世界が滅びて欲しくないと願っています」

 

「それは何故?」

 

 

制服のポケットからゆっくりと眼鏡ケースを取り出し、中身を目元へ運ぶ。

 

 

「家族が居て、暖かい家庭が在って、学校に行けば友人達と授業や部活の事で他愛の無いお喋りをして、バイト先の先輩とも本や仕事の話題で話し合って、家に帰れば両親や妹や祖父母が『お帰り』と出迎えてくれる――――『飯田五十六』には、そんなちっぽけかもしれないけどどうしようもなく大切な人達が周囲に居てくれるだけで十分満足なんです。自分から好き好んで壊すつもりなんて更々無いですよ」

 

 

『小暮塵八』は、家族も家庭も奪われた挙句、血と硝煙の世界から最期まで抜け出せずに死んだのだから。

 

だから『飯田五十六』はこの命が続く限り、大切な人達と共に過ごせる愛しき日々を守り続けたいと強く誓う……前の人生は、余りにも多くの大切な人を失い過ぎた。

 

勿論『大切な人達』の枠組みの中には今や涼音達も含まれている。出会ってこの方度々彼女達には振り回されてばかりだが、皆悪い人間ではないので五十六は嫌っていない。

 

 

「――――ただし、国や世界が俺の大切な人達に手を出そうとした時は話は別です」

 

 

眼鏡を装着する。意識を『小暮塵八』へ切り替わり、五十六が放ち始めた本気の気配によって周囲の体感温度が更に急下降する。

 

何者かによって五十六の周囲が害された時には、それこそテレポーテーション能力と殺し屋時代に培ってきたありとあらゆる知識と技術と経験を駆使して報復を行うつもりだ。フセインやビンラディン以上の汚名を被ろうとも構うものか、それだけの覚悟はある。

 

 

 

 

――――俺の周りに手を出すな。さもなくばその時こそ五十六は世界最悪の敵となるだろう。

 

 

 

 

単純明快な取引。だが仮にその誓約が破られた場合、どれほどの被害が世界に及ぶのか女性には全く想像がつかないがこれだけは理解できた――――もし彼が敵となれば、それこそ世界にとって最悪の事態に違いないと。

 

五十六がまさに言った通りの事を実行すると確信した女性は表情を変えず、しかし額にほんのわずかな冷や汗を浮かべながら小さく頷いた。

 

 

「もちろん、私達も最大限可能な限り貴方の周囲の人々を保護すべく動くつもりです」

 

「よろしくお願いします。やっぱり俺1人じゃ何事にも限界がありますから、そう言って貰えると心強いです」

 

 

女性の返事にそれなりに安心し、五十六は気配を緩める――――願わくば、今の五十六の言動がきっかけで逆に彼女達が後々心変わりしませんように。

 

殺気と威圧感のぶつかり合いで凍てつきかけた空気を解そうと、肩を竦めながら五十六は更にこう付け加えた。

 

 

「そもそも超能力を持っているからって、俺1人なんかに世界の命運を背負わすのはどうかと思いますよ?」

 

「あらそうかしら?貴方の持つ力は世界の運命を左右するには十分なのだから、そんな扱いになってしまうのも仕方ないと思うけれど」

 

「そんな訳無いじゃないですか。何たってほら――――」

 

 

苦笑を浮かべて頭を掻きながら五十六はハッキリとこう言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――俺はまだ、たかが高校生なんですから。

 

 

 




感想というかご意見返し的なもの:


>判断って投稿小説の人気度、読者の満足度みたいなものを指してるのかな?最後に改善したほうがいいのかなって言ってるから批評して欲しいってことかな?それとも単純にモチベーション上げたいから感想なにか書いてってことかな?ちょっとわからなかった。

自分が言いたかったのは『閲覧数や評価は増えてるのに感想は少ない』という意味です。
皆様が拙作を読んでくれているのは分かっていても感想は増えない分、自分が書く作品は皆様のニーズに求められていないと言われているような気がしまして…
自分で改善したいと言っているのは、要は『感想貰わないとモチベ維持できないからって読んでくれる皆さんに一々感想くれくれ言うぐらいなら、すっぱりと作品書くの止めろ』という自分への戒めみたいな感じです。
でも書くのを止めたら止めたでまた書きたくなる衝動がむくむくと湧いてくるという……こういうのを痛し痒しと言うんでしょうか?


>【悪い点】ちょっとかまってちゃんを前に出していること

弁解のしようがありません。

>純粋に閲覧数や感想が欲しければ、もっと人気のある原作を選んだ方が良いですよ

流行の某作品ネタ書いてた時も結果的に感想貰えなくなったりしてた場合は一体どうすれば…
もっとも途中からプロット崩壊して話が迷走したりしたのが読者離れしていった原因なんでしょうけど。
結局自業自得じゃねーか!orz思えばそんな失敗ばっかり繰り返してないか自分…


>強いて言えばヒロイン達がちょっと空気すぎるかな?と

主人公描写やドンパチメインになった結果がごらんの有様だよ!
申し訳ありません。ヒロイン達については作中で描写した以外はほぼ原作通りなので、気になるようでしたら原作をお読み下さいw


>それと疑問なのですが、M14には、狙撃用と言うことですからスコープが付いているんですよね。それにしては、ゼロインの距離が800mぐらいまで狙える7.62mmNATO弾にしては短すぎる気がするのですが。

100ヤードでゼロインのくだりは劇中にある通りハンター御代の『狩りのとき』をネタにしております。
肖ったシーンでも100ヤードでゼロインしてたんですよ。実際には更に100ヤード刻みで何クリックという部分も原作では描写していましたが作中では流石に省きました。




ここまで読んで下さった読者の皆様、お付き合い頂き本当にありがとうございました。

感想随時募集中~。

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