アリスとフィールから道を示すヒントを貰った後、雪華達はただただ上へと向かって飛んでいた。
「桜が降ってるからって、上に本当にあるのか?霊夢」
魔理沙が心配そうな声でそう言うと、霊夢は振り返って答える。
「私が知るわけないじゃない。けど、勘がこっちっていうからこっちなのよ」
「そうか!なら、一番乗りは私だぜ〜!」
魔理沙はニヤリと笑って言うと、飛ぶスピードを上げて、霊夢達より先へと行ってしまった。
「あ!こら魔理沙!待ちなさい!」
「ちょっと、私まで置いてかないでよ」
それを見て霊夢も咲夜も後を追っていく。
その姿を見て、雪華は呟く。
「……子供だなぁ」
***
その後、マイペースに飛んで、何かの結界へと入り込んだ雪華が見たのは、薄暗い世界、桜並木がある石段とそれに連なる石灯籠。
それを見ても雪華は何の感動も湧かない。
博麗神社も春になれば似たようなものである。違いがあるとすれば、石灯籠が無いことだけだ。
「……ま、死んだ時に此処に来たら、そりゃ極楽だろうね〜。こんだけ景色が綺麗なんだから」
雪華はまた周りを見てからそう言うと、飛び始めた。
その階段の途中、音楽の幽霊三人がこっ酷くやられているのを見たのだが、それはスルーした。
やった犯人など分かりやすい。そして何より、興味が無い。
関われば厄介事を言われそうで面倒という理由もあり、それが彼女に『無視』という選択肢を選ばせることとなった。
そうして飛び続けてから少しすると、金属のぶつかり合いの音が聞こえ始めた。
(こんな所で誰と誰が戦ってるんだか……)
雪華はそう思いながらもスピードは変えずに飛び続けていると、弾幕まで見え始めた。
その弾幕に当たら無いように頂上に降り立つと、其処では咲夜と青緑のベストとスカートを着た銀髪の少女が、それぞれの得物でぶつかり合っていた。
「……うわぁ……超危険な戦い……」
雪華のその声に魔理沙と霊夢が反応し、振り向いた。
「あら?雪華。遅かったじゃない」
「別に、急ぐほどに興味を惹くものは無いしね〜」
「興味が惹けば雪華は急ぐしな」
そんな会話をしていると、その銀髪の少女がスペルを宣言した。
「獄界剣『二百由旬の一閃』!」
すると、その銀髪少女の近くを浮遊していた白い塊が離れ、其処から大型の丸弾を撃ち始めた。
それがスペルなのかと思えば、次には妖夢が近くにあったその弾幕を、自身の剣で斬った。
「彼奴、自分の弾幕を斬ったぞ!?」
魔理沙が少し驚いた表情をすると、その斬られたところから赤い小型の丸弾が発生した。
「おお、最後の仕上げだな、アレ」
雪華はそう言って目を輝かせて見る。
とても楽しんでいるようだ。
そのスペルを咲夜は余裕を持って避け、ナイフを持って接近する。
妖夢はそれに対して焦ることなく、また剣で受け止めた。
「くっ!いい加減にして下さい!生きてる者が来ていい場所ではありません!帰りなさい!」
「ええ、帰るわよ。『春』を返してもらえたならね!」
その言葉を交わすと、次には斬り合いが始まった。
勿論、リーチ的に剣の方が長く、その上、妖夢は剣を二本持っている為、ダメージが大きいのは咲夜。
……しかし、咲夜のダメージは少なかった。
その理由は、本人と雪華しか知らない。分からない。認識出来ない。
誰も、『時』を止められている事など、認知出来ないのだ。
咲夜は自身の能力を使って戦いで妖夢を翻弄していた。
その場にいたのにいきなり消え、それを見た妖夢は慌て、冷静な判断が出来ていない。
其処をついて、咲夜は自身の技を浴びせる。
「空虚『インフレーションスクウェア』」
その宣言した次の瞬間、妖夢の視界の中には一面ナイフだらけの世界が映った。
「ッ!?」
妖夢は自身にダメージを与える事となるナイフを剣で落とすが、流石に全部は落とす事が出来ず、遂には体のほとんどにナイフで出来た切り傷があった。
最後のナイフを妖夢は剣で落とし、肩で息をしていると、その後ろから組み伏せられ、首にナイフを当てられた。
「動かないで。ここで負けを認めれば、これ以上の傷は増えないわよ」
「……分かりました。私の負けです」
妖夢は其処で負けを認めた。
それが嘘でない事を雪華も知っている。
人が『嘘』を吐くと心臓や表情、視線に『変化』が必ず起こるので、それがないという事は本心から敗北を認めた事になる。
「それで?この冬を長く続かせている元凶はあんた?」
霊夢は傷付いている妖夢に対して休ませる事なく聞くと、妖夢はそれに首を振った。
「違います。私は、私のご主人様である『西行寺 幽々子』様からの命で『春』を集めていました」
「……そう。分かったわ」
霊夢はそう言うと、その先にある大きな木へと向かい始めた。
その霊夢の後を追うように、雪華達も付いていくのだった。