アルカ達は図書館に着くと、そもそも来ることになった原因の雪華を探した。
「彼奴、何処に……」
「此処の図書館、大きいよ……」
「……誰を探してるの?アルカ、レミィ」
アルカ達が辺りを見渡しながら歩いていると、この大図書館の主となっている大魔法使い『パチュリー・ノーレッジ』が静かにアルカ達に近づいて来た。
アルカはそれに驚かずにことの経緯を話すと、パチュリーが一つの方角を指差した。
「……その雪女らしき妖怪とシファなら、扉の方から数えて三つ目の本棚の四つ目の本棚の間を通って行ったわ。小悪魔にも私にも頼らなかったし、多分、私達に気付かなかったんでしょうけど、これだけの本の中からお目当ての本が見つかってるとも思えないわ。探したらいると思うわよ」
「分かった。ありがとう」
「どういたしまして」
アルカはパチュリーの言った通りの通路を選び、レミリアと織姫を連れて再び歩く。
辺りを見渡し、探しながらも歩くと、漸くお目当ての人物を見つけた。
「雪華」
「お?来たんだ、アルカ達」
雪華は読んでいた本を一度閉じると、顔を上げてアルカ達を見た。
「どうだ?役に立ちそうな本は見つけれたか?」
「まあね」
雪華はそう言って本を軽くアルカの方に投げると、アルカはそれを上手にキャッチした。
「……俺みたいに妖怪じゃなく人間だったら、確実に怪我してたぞ」
「アルカだから無造作に投げたんだよ」
雪華はアルカから顔を外すと、本を探しながら得た情報を話しだす。
「ホッキョクギツネ。動物界・脊索動物門・脊椎動物亜門・哺乳網・ネコ目・イヌ科・イヌ亜科・キツネ属・ホッキョクギツネ種。分類はそんな感じで、和名としては『シロギツネ』とも呼ばれてる」
「『シロギツネ』……」
「住処はやっぱり寒い所。餌としてはホッキョクグマの食べ残しとかを食べたりもするけど、死骸とかも食べてる動物。人間の死体だろうと喜んで食べるんだってさ。そのほかにも、羊とかも食べるから害獣として処分されてる。……あの銃弾はやっぱり、そういう事みたい」
雪華はそう説明しながら別の本を読んでいる。
その雪華を少し見て本に視線を移すと、その本の内容は誰かのレポートの様だった。
「……これにその事が書かれてたのか?」
「そう。治すにしても、先ずはどんな動物か知る必要があると思ってね……お陰で体の作りとかも分かって良かったよ」
「え、貴女……この本の内容を全て覚えたの!?」
レミリアはそれに驚いた顔をするが、雪華は溜息を吐いた。
「そんな訳ないじゃん。必要なとこだけしか頭の中に叩き込んで無いよ。私がそんな頭いい訳無いじゃん」
そう言ってから口元に笑みを浮かべると、ニヤニヤ顏でアルカを見ながら続ける。
「この頭を使うとしたら、どうやってアルカをからかってやろうかとか、そういう時だよ」
「おい……俺をからかうな」
アルカは頭を抑えながら溜息を吐くと、その姿を見て雪華は笑う。
「え〜?最初の約束に同意したのはお前だぞ〜?」
「あの時に戻れたなら絶対に拒否するのに……」
アルカは過去の自分の間違いに悔しそうに顔を歪めるが、雪華はそれを楽しそうに見るだけだった。
「せっちゃん!そんな事して無いでちゃんと探そうよ!」
そんな二人の会話に織姫が割り込み、強制終了させるとアルカに近付き、謝った。
「せっちゃんが迷惑掛けてごめんね?アルくん……」
「いや、織姫が謝る事じゃない」
「そ〜だぞ〜。織姫は謝らなくて良いぞ〜」
「俺に謝るべき人物がどうして謝らないんだ?」
「どうして私がアルカみたいなお子ちゃまに謝らないといけないの?」
「お子ちゃま言うな!」
「あ、ごめんね?身長が低いから彦星と同じ『坊や』かと思ってた♪」
「雪華……」
「せっちゃん!」
織姫が雪華を叱る様に声を上げると、雪華は肩を竦めてまた本を読み始めた。
それに織姫が溜息を吐くと、後ろから何か力を感じ、振り向くとそこには、何かの力を集めてるレミリアがいた。
「れ、レミちゃん?どうしたの?」
「お兄様をからかうこの雪女にちょっと制裁を入れるだけよ……」
「こ、此処で喧嘩はダメ!」
織姫は必死にレミリアを止め、レミリアはその収まらない怒りを雪華にぶつけようとする。
それの会話を聞いていた雪華は同じく調べ物を始めていたアルカに声を掛ける。
「お〜、妹に愛されてるね〜」
「兄としては嬉しい限りだ。それに、俺もレミィの事が大好きだからな」
「何?シスコン?シスコンなの?背が低くてシスコンなの?」
「背が低いは余計だ!」
そんなやり取りを一人見ていたシファは思う。
「……僕、この会話の中に入れませんよ……」
そしてシファはそれを忘れるために、一人密かに調べ物を続けるのだった。
***
調べ物を続けて暫くすると、何とか治療方法を見つけたため、雪華とシファがその治療を始めた。
その間、織姫はアルカとレミリアとお茶会をする事になった。
「それにしても、織姫、だったかしら?貴女は妖怪?」
「うん、着物の付喪神だよ。此処に来たのも、せっちゃんからの頼みみたいなものだったから」
「?雪華からの頼み?」
アルカはそれに首を傾げると、織姫は一度頷いてから続ける。
「うん。この前、咲夜さんっていうメイドさんの服が少し傷付いてて、それを見てせっちゃんが私に『メイド服を新しく作ってやってほしい』って頼んできたの。勿論、その本人である咲夜さんから『必要ない』って言われたりしたら別にしなくても良いとも言ってたよ」
「……彼奴が」
アルカはそれを聞いて驚いた顔を少しだけ表に出す。
それを見て、織姫は苦笑する。
「知ってるとは思うけど、せっちゃんは別にお人好しじゃないよ?ただ、せっちゃんからしてみたら、私とアルくんを何としてでも仲良くさせたいと思ったんじゃないかな?」
「貴女と……お兄様を?」
「うん。せっちゃんは『友達』だと思ったら、まず最初に私を相手に紹介して、仲良くさせようとするから……」
「……それは、ずっとそうしてきたこと?」
「うん、ずっとそう。私が『付喪神』となって、この体になった時からずっと変わらない事だよ」
織姫はそう言いながらも嬉しそうに口元に笑みを浮かべる。
「……二人は親友……なんだな」
アルカの言葉に、織姫は満面の笑顔で頷いた。
「お〜、なんの話し合いしてるの〜?」
其処に治療を終えた雪華はやって来た。
「あ!せっちゃん!あの子の様子は?」
「何とか素人ながらもやったから、どうかな?……でも、今は大人しく寝てるよ」
「そっか……そうだ!あの子はどうするの?」
その織姫の質問にはアルカも気になったのか、雪華を見ると、雪華は笑顔を浮かべる。
「あの狐は私が引き取るよ。あの子、気に入ったしね」
「白いから?」
「白くてモフモフだから」
織姫はそれを聞いてまた嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「それなら、名前はどうするんだ?決めてるのか?」
「うん、まあね。名前は『コガネ』にしようかなと思ってる」
「何でその名前にしたんだ?」
「別に深い意味も何もないけど、ふと思いついたから……かな?」
「そうか」
「あ、そうだ。アルカ、流石に今日は動かすわけにはいかないから、今日一日だけあの子預かってくれない?明日の様子ではまた預かってもらう事になるかもだけど」
それにアルカは頷くと、雪華はお茶会に参加し、アルカをまたからかい、織姫がそれを止める光景がまた始まったのだった。