東方〜博麗神社の居候妖怪〜   作:ルミナス

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第十八話

前の宴会から三日後。また博麗神社で宴会が開かれる事となった。

 

「また宴会か……流石に連続はな……」

 

「飽きますよね……やっぱり」

 

アルカとレミリアが同時に溜息をつく傍で、フランは楽しみという風にはしゃぎながら石段を登っていた。

 

そんな紅魔館組の後ろから迫る影が一つ。

 

「!?あ、危ないから退いてーーー!」

 

「……え?」

 

紅魔館組全員が驚いて後ろを見てみれば、アリスがフィールを抱えて全力疾走で石段を駆け上ってきていた。

 

それを見て当然驚いた紅魔館全員がほとんど反射的にそこを退けば、アリスはそのまま最後の石段まで駆け上り、転けた。

 

その転けた瞬間、フィールを守るように背中を地面に回転させると、アリスはそのまま背中から転けた。

 

「……お姉ちゃん。大丈夫?」

 

自分を守ってくれたアリスに、フィールは相変わらずの無表情ながら首を傾げて聞くと、アリスは笑顔を浮かべて答えた。

 

「え、ええ、大丈夫よ。貴女さえ無事なら……」

 

「……お姉ちゃん。ありがとう」

 

「ふふ、どういたしまして」

 

アリスは微笑みながらフィールの頭を撫でていると、そこにアルカ達が割り込んできた。

 

「……で、さっきは何であれだけ慌てていたんだ?」

 

「……えっと、貴方達は確か、この前の宴会の時にもいた……其処のメイドさんに関しては異変の時にも会ったわね……」

 

「ええ、そうね……で、結局、慌てていた理由は?」

 

咲夜がそう聞くと、アリスは握り拳を作って怒りを露わにしながら答える。

 

何があったのかを……。

 

***

 

「……え?それ、マジで?」

 

アリスと紅魔館組が境内で話した後、同じ事をアリスが雪華に話した後、雪華はそんな反応を返した。

 

「ええ、本当よ……フィールが人里にいたロリコンに狙われたのよ……いや、服装が何方かというと外の人間だったから、外来人ね」

 

「外から来たロリコンとか……え?何?外の世界ってロリコン好きばかりの悪魔も逃げ出すような世界なわけ?」

 

「悪魔は逃げ出さないけど吃驚はするかもね……というか、そんな世界なら寧ろ一度滅ぶべきよ」

 

「さ、流石に私も其処まで言うつもりはなかったんだけど……」

 

雪華はアリスの黒い笑顔で放った言葉に若干引きながらも返す。

 

それに対して、アリスは意味深に笑うだけ。

 

それに益々、恐怖を抱き出し、そっと離れる事にした雪華。

 

「おー、怖い怖い……アリスって、本気で怒ると怖いんだな」

 

「どんな生き物でも、本気で怒ると怖いものだ」

 

雪華が一人で離れて飲もうとしていると、其処に桜暗がやって来た。

 

「……いや、何であんた一人で来てんの?あの亡霊は?」

 

「幽々子も来ている。今は其処で飲んでいるがな」

 

桜暗がそう言って指差した方向には、確かにお酒とその摘みに団子を食べている幽々子の姿があった。

 

その隣でせっせと団子や食べ物を用意している妖夢の姿も見える。

 

「……うわぁ。結構な量食べてるじゃん」

 

雪華がそう言いながら見ているのは、幽々子の隣に重ねられているお皿の枚数。

 

見た限りでは既に五皿乗っていた。

 

「なに?あの亡霊ってあんなに暴食なわけ?」

 

「幽霊なんて、食べることしか楽しみなどないのさ……」

 

「ふ〜ん……てか、あんた、私が嫌いとか言いながら何で話しかけてきたわけ?」

 

「ふん。用も無いのに話しかける訳がないだろ……用があるから話しかけたのさ」

 

桜暗は其処でニヒルに笑うと、雪華に顔を近づけ、体を近づけ、手に自分の手を重ね、妖艶な雰囲気を出し始めた。

 

「……なあ?雪女。お前……負の感情をどれだけ『変化』させてる?」

 

「……は?何のこと?」

 

雪華はそう言って耳に髪をかけようと手を動かそうとしたが、その手は桜暗に抑えられており動けない。

 

それに気を良くしたのか、桜暗は更に機嫌よく饒舌に語る。

 

「ふふ……惚けても無駄だ。私には全てわかる。負の感情は私にとっては極上の餌だ。怒り、憎しみ、悲しみ、苦しみ……その全てが私を形作る。西行妖は全ての人、妖から恐れられる……謂わば、妖の頂点に君臨するもの……つまり、負の感情を人一倍、いや、百倍も感じやすいのさ……だから、お前が変化させた所で私には関係ない……無意味な事だ」

 

雪華は其処で漸く平常に戻そうと変化させようとするが、それは中々変化出来ない。

 

何故なら、桜暗が心の恐怖を増幅させているから。

 

桜暗はそれを見て、その耳に口を寄せ、囁く。

 

「……さて、雪女よ。……一々、負の感情を変化させるのは『面倒』だと思わないか?……ならば、我に預けろ。我に食わせろ……その負の感情を……さあ」

 

桜暗は其処で雪華を負の感情へと呑み込もうとしたが、それは雪華から聞こえた溜息によって中断される。

 

「……はぁ。あのさ……そんな事するわけないでしょ?馬鹿なの?」

 

「……なんだと?」

 

桜暗が其処で初めて眉間に皺を寄せるが、雪華はその目を真っ直ぐ見つめる。

 

「だーかーら、私の感情をあんたに渡すわけないじゃん……これは私の問題。例えそれがあんたにとってのご飯でも、私には関係ない。渡すつもりもない……はい、終わり。さ、退いた退いた」

 

雪華はそこで筋力を変えると、無理やり腕を剥がして移動していく。

 

桜暗は其処で小さく舌打ちすると、離れていく雪華に向かって言う。

 

「……やはり、あの雪女は嫌いだ。歪なのは良い。だが、私を付喪神に変えたお前を許すつもりはないからな……とことん不幸になれ。後悔しろ……歪な雪女」

 

その言葉は、残念ながら雪華には聞こえていなかった。

 

***

 

雪華と桜暗が会話していた頃、アルカは織姫と彦星と一緒に飲んでいた。

 

「ねえ?本当にレミちゃんと飲まなくて良いの?アルくん」

 

「ああ……レミィが望んであの博麗の巫女の所に行ったからな。その間は暇なんだ……付き合ってくれ」

 

アルカのその言葉に織姫は頷くが、彦星は残念ながらまだ飲めない年なので代わりにお茶を飲んでいた。

 

そして、一緒に飲んでいると、アルカはふと、気になっていた事を織姫に聞くことにした。

 

「なあ?織姫」

 

「ん?なに?アルくん」

 

「……雪華が激怒するほどに怒らせた女が誰か、知ってるか?」

 

「せっちゃんが……」

 

「……彼奴が、激怒?」

 

アルカからのその言葉が余りにも意外だったのか、織姫と彦星は互いに顔を見合わせ、首をかしげる。

 

「……そんな人いたかな?」

 

「……少なくとも、俺は聞いた事ないけど……それこそ織姫は心当たりとかないのか?」

 

「ううん、全く。……せっちゃんが私に隠し事する事なんて、そんな事もありえないし……」

 

「?そんな断言するのか?あり得るかもしれないだろ?」

 

アルカが織姫の言葉にそういうが、雪華は首を横に振る。

 

「ううん。ないよ……大体、例えせっちゃんが隠し事してたとしても、せっちゃんの顔見れば大体分かるもん」

 

「……彼奴は顔の表情すら変えれるんじゃなかったか?」

 

「変えれるけど……なんていうのかな?私とせっちゃんって、他の付喪神達よりも長い付き合いだから、例え能力で変えちゃってても分かっちゃうんだよね〜……」

 

「……そうなのか……ん?つまり、雪華は……」

 

「……うん。つまり、せっちゃんはその時、アルくんに嘘を吐いたって事になるよ」

 

「……嘘を……」

 

アルカは其処で考える。

 

彼処で嘘を吐く意味を。

 

「……なんで、あんな所で嘘を吐いた?何の意味が……」

 

「……ねえ?アルくん。その人の特徴とか、覚えてる限りで良いから教えてくれないかな?」

 

「あ、俺にも頼む」

 

アルカが思考に入ろうとした所で、織姫と彦星が割入り、その女性の特徴を聞かせて欲しいと言い出した。

 

アルカは其処で思考を止め、その女性の特徴を話すと、織姫と彦星はまた互いに顔を見合わせた。

 

「……その人って」

 

「……やっぱり、あの人か?」

 

「……なあ?教えてくれないか?あの女が誰なのかを」

 

アルカは織姫と彦星にそう言うが、その二人は言いにくそうな顔をしていた。

 

「……ごめん、アルくん。私、その事に関してはせっちゃんから『命令』されてるから……言えない」

 

「俺も、雪華から口止めされてるから……ごめん」

 

「……そうか」

 

アルカは其処で一度引くと、酒が入った杯を掲げる。

 

「まあ、その事はどうでも良い。取り敢えず、飲むか?」

 

「あ!うん!飲もうっ!」

 

「いや、だから俺飲めないって……お茶飲んでるけどさ」

 

こうして、この場ではアルカと織姫、彦星は一緒に飲んで宴会を終えた。

 

その次の日、また三日後に宴会がある事を新聞で知る事になるのは、また別の話。

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