この日の雪華はアルカ弄りを終え、そのアルカと共に屋上で紅茶を飲んでいた。
雪華が美味しそうに飲んでいる目の前で、弄られたアルカはテーブルに顔を着けていた。
「お〜い。もうそろそろ生き返れ〜」
「煩い。元々から生きている。死んでなどいない」
「じゃあ精神も生き返らせろ〜」
「誰のせいだ、誰の」
「まあまあ。咲夜特性、薬草入りの紅茶でも飲んで落ち着け」
「……飲まなかったら咲夜に悪いしな……飲むさ」
そう言って一口飲むと、苦そうに顔を歪ませるアルカ。
そのアルカと同じものを飲んでいる筈の雪華は全く平気そうに飲んでいるが、それは能力で変化させているから、無害なのである。
その雪華の平気そうな顔を見て、少し悔しい思いを持つアルカだが、ふとある事に疑問を持ったので、それを直接聞いてみる事にした。
「……それにしても、それほどまでに強力な能力でありながら、どうしてお前は二代前の巫女に負けたんだ?」
「……え?」
雪華はその思わぬ質問に驚き、目を何度か瞬いた後、ティースプーンで紅茶を混ぜながら答えた。
「……実力的にも、能力的にも、あっちの方が強かったのもあるけど……何よりも興味が出たから、だね」
「ああ。変人だったのか……」
「そうだね〜。それで正解。私が見てきた中でも生粋の変人だったよ……何せ、『人と同じ』が嫌な奴だったからね〜」
その答えにアルカは首をかしげる。
「……そういう奴もいるだろ?」
「まあいるけど、彼奴はそれ以上だったの。例えば、彼奴は妖怪好きだったけど、その理由が『自分以外も人間だから、妖怪が好き』とか、『他の人間も息してるから、息するのが嫌だ』とか……まあ、さすがに後者を止めると死ぬから嫌だってだけだったけどね〜」
「……変人だな。それも、生粋の」
「でしょ?でも、その変わった所が……私は魅力的に見えたの」
雪華はそう言いながら、笑顔を浮かべる。
その笑顔は何よりも愛おしそうに、嬉しそうに、そして
「……」
「いや〜、あの頃は楽しかったな〜。彼奴も中々の面倒臭がりだったけど、彼奴の変わった所を見れるなら、面倒事は全部引き受けてもいいと思えたほどに、彼奴の存在は愛おしかったよ」
「……お前、
「うん、とっても
雪華はまたも笑顔を浮かべると、目を瞑り、思い出を振り返るように語り始めた。
***
霊夢の二代前、『博麗 零満』の事を『どんな人物』かと紫に問えば、直ぐに問いが帰ってくるだろう。
『彼女以上の変わり者の博麗の巫女は、今後出てこないだろう』……と。
霊夢もそれなりに変わり者かもしれないが、零満以上ではない。
零満は他と同じというのが嫌いだった。
だから、息をするのも、人間であることも嫌いだった。
博麗の巫女に選ばれた時、彼女は喜んで引き受けた。
何故なら、博麗の巫女には『自分以外』、誰一人として継がないのだから。
だから、『自分だけ』の術の練習を怠ることはなかった。
しかし、彼女は幻想郷が嫌いだった。
ーーー何故なら、皆んな幻想郷が『好き』だから。
彼女は季節が嫌いだった。
ーーー何故なら、皆んな季節が『好き』だから。
そんな風に人と同じ事が全て『嫌い』な彼女。
だからこその変わり者で、だからこそ、『変わった雪女』である雪華には、魅力的な存在。
雪華は零満に会ったその時、零満の変わった所を直ぐに感じ取り、自分のものにする為に勝負した。
しかし、その結果はあっさり敗北。雪華は零満のものとなった。
だが、それでも雪華は構わなかった。
零満の変わった所を見続ける事が出来るなら、なんでも良かったのだからーーー。
***
「いや〜、本当にあの頃は楽しかったな〜。ずっと変化があってさ〜」
「……自分のものにしたかったのか……だが、それだけ強力だったのに、負けたのか」
「まあ、彼奴の能力である『ありとあらゆるものを散らす程度の能力』だったからね〜。能力を使おうとしても、それを散らされるし、弾幕を作ろうとしてもそれさえ散らされ、最終的に思考さえ散らされて……どうやって戦えと?」
「無理だな……」
雪華は頭を掻きながら聞くと、アルカも小さく頷いた。
「……ま、そういう経緯で私は彼奴に仕えることになった訳。はい、おわり。アルカ、忘れてないだろうけど、夜には出掛けるから、準備しててね〜」
雪華はそう言うと、立ち上がって紅魔館を後にした。
その後ろ姿を見送ると、アルカは紅茶を飲みながら本を読ん読み出したのだった。