雪華から零満との事を聞いたその日の夕方、アルカはある妖怪と共に紅魔館の門の前で待機していた。
その隣にいる妖怪の姿は特徴的で、一番の特徴として、目のような『何か』が二つある事だろう。
「それでアルカくん。その迎えの人はいつ来るの?」
「さあな?あの話した後、夕方に変更としか聞いていなかったからな……」
「そうなんですか」
そんな会話を終えてから少しすると、雪華が織姫とリラを連れてやって来た。
「よっ!お待たせ!」
「ああ。よく俺を待たせてくれたな、雪華」
「うわぁ。普通、男が言う事じゃないよ?男ならこういう時は『いや、待ってない』とか言うもんだよ?」
「ああ、お前相手じゃなかったらそう言ってたな」
「差別?うわ、最低ー」
「俺を良く弄って遊ぶ奴にそう言われても何のダメージも……」
「そんなんだから体も器も小さいんだよ、おチビさん?」
「体と器は関係ないだろ!」
ついにアルカが叫び、それを楽しそうに笑う雪華。
が、その雪華の着物の裾を引く者が一人。
先ほどの二つの目がある妖怪である。
「あの……」
「?あんたは?」
「初めまして。僕は『古明地 ひかり』です。実は、気になることが幾つかあるので質問させていただきます。まず、最初の男が言うべき言葉と言っていましたが、それは何故男が言わなければいけないのですか?」
それを聞かれて一瞬面食らう雪華だったが、一応は答えた。
「えっとだな……普通、女性に気を使うべきだろ?女性の準備が長いのは普通のことだし、だからその事を非難するような事を言うのは失礼だからだな」
「どうして女性の準備は長いのですか?」
「そりゃ、色々するからだな」
「色々するとは何をするのですか?」
「だから、化粧とか服とか……」
「どうして化粧をするのですか?」
ここでようやく気付いた雪華。
(あ、此奴、面倒な奴だ……)
それに気付くと即座に行動に移るのが雪華である。
まずは能力でこれ以上、質問が来ないように思考を変えようとする……が、
(え、変えられない!?)
流石に驚いた雪華は表情にまででた。
それを見逃すはずがないひかり。
「何をそんなに驚いているんですか?」
「……お前、なんで、思考が変えられないんだ!?」
雪華が余りにも狼狽した状態で聞くが、相手は当たり前のように冷静に答える。
「僕の能力の一つに『不動不変である程度の能力』というのがあります。これは、周りからの影響を受けない能力なので、だから貴女の能力は僕には効きません」
それを聞き、雪華は納得したと同時に余りにも面倒かつ楽しくもない自身の『天敵』であると理解すると、溜息を吐き話を終わらせようとする。
が、それをひかりは許さない。
「それで、質問の続きなのですが、結局、どうして化粧をするのですか?」
「その質問はアルカにしてくれ……」
雪華はとても面倒臭いと表情に出してアルカに視線を向けながら言う。
そのアルカはと言うと、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「俺が答えても良いが、雪華。折角だから答えてやれ」
「はあ!?何で私がそんな面倒臭い事をしなきゃいけないわけ?」
「良いじゃないか。体験の一つだと思えば」
「い・や・だ。という事で行くぞー」
「質問に答えて貰ってません。結局はどうして化粧をするのですか?」
「こいつ面倒くせーーーー!」
そのやり取りを一部始終見ていた織姫とリラ、そしてアルカは悟る。
(ひかり(ひかくん)は雪華(せっちゃん)の苦手な相手だ……)
そして、雪華達が目指す目的地までの間、何度もひかりに質問攻めにあい、遂にはひかりから逃げ出す雪華を目にする事になったのだった。
***
雪華達が到着したのは人里から少し離れた所にある森。
その森を歩いていると、途中で開けた場所に出た。
その場所の中心には小さな湖があった。もちろん、霧の湖よりも小さい。
「こんな所があったんだな」
「あんたがあの館に引きこもってるからだろ」
「引きこもっているわけじゃない。吸血鬼は太陽に弱いだけだ」
「確か、吸血鬼は太陽の光に当たると灰になる……でしたか」
「力の弱い吸血鬼は確かに灰になる……が、俺達『スカーレット家』の吸血鬼は弱くない。ただ、太陽の光は本当に弱いがな」
アルカはそう説明しながら、ある人物を思い出す。
綺麗な金髪、紅い目、黒いゴスロリの服、自身やレミリアとそんなに変わらない背でありながらその真実の姿は麗しの女性。
いつも優しく、慈愛に満ち溢れた自身の誇り、自身の祖先。その全てを守る事も出来る強い力と能力を持った姉。
(俺は、いつか姉上の様になれるだろうか……)
「……もう、なってると思うけどね〜」
其処まで考えた時にふと、目の前にいる雪華からそんな言葉が聞こえた気がした。
「……雪華、今、何か言ったか?」
「ん〜?何も言ってないけど?」
雪華は髪を耳にかけながらそう言った。
少しは暗くなってきても、妖怪の視力で吸血鬼ともあれば暗くともまるで朝の様に綺麗に見えるのだ。
そして、この発言は流石のアルカでも『嘘』だと気付いた。
(……隠さなくても良いと思うんだがな)
そう考えていると、誰かが近づいて来た事に気づき、そちらに目を向けてみると、彦星ともう一人、見た事もない女性がいた。
その姿はさながら『書道を志す』人で、その背中には大きな筆が背負われていた。
「彦星を見ててくれてありがとうね、『
「私は別に構わないよ〜?それに、折角のこの集まりだもん。来なきゃ損でしょ〜」
そんな風に話していると、また雪華の裾を引っ張るひかりに諸に嫌そうな顔をする雪華。
「あの、この人はどちら様ですか?」
「ああ、そうだった。知らない奴もいたね。この子は『
「改めて、入木硯っていうの。よろしくね〜」
「よろしくお願いします。僕は古明地ひかりです」
「よろしくね〜、ひかり君」
お互いが自己紹介を終えると、雪華が空を見上げた。
「……もうそろそろ、かな?」
「……結局、何があるんだ?」
アルカが改めて聞くと、雪華は笑みを浮かべただけで、何も言わなかった。
そして、どんどんと暗くなり、月明かりが照らし始める。
その満月が見え始めると、遂に雪華が見せようとしていたものが現れた。
「……うわぁ」
「……これは」
その光景はまさに『幻想的』と言わざる終えなかった。
何故なら、月明かりに照らされ、湖の上で何十匹といる蛍が光ながらまるで踊る様に飛んでいたからだ。
そして、丁度その時には湖の水面に満月が綺麗に浮かび、まさに『幻想的』な光景がそこにはあったのだ。
「別に霧の湖でも良かったんだけど、彼処って良く霧に覆われるし、此処ならこれだけ綺麗な光景も見れるし……って事で、此処に連れてきたわけ」
「いつもなら彦星君と雪華、そして数人の付喪神達が集まっていつも見てたんだけど、さすがに二人まで入れると大人数になるから、今回は二人に席を譲ったんだよ〜?」
その幻想的な光景は夏にしか見れない。
夏だからこそ見れるその光景を、アルカは胸に焼き付けたのだった。
さて、恒例の新キャラ紹介!
古明地 ひかり
種族:サトリ(妖怪)
能力:『不動不変である程度の能力』(もう一つあるがまだ解禁しない)
性格:自由奔放で純粋。しかし生真面目でもある。そして何より好奇心が旺盛。
名前で察する人もいるだろうが、あの姉妹の兄。
好奇心が旺盛だからなのか、疑問に思った事は人から全て聴き出さないと気が済まない。
放浪癖な部分があるため、よく外に出て来ている。
アルカとは知り合い。雪華とは今回が初対面。
入木 硯
種族:付喪神(筆)
能力:(まだ解禁してないので)
性格:どこか子供っぽい。そしてマイペース
口調がよく間延びしている。
人里で書道の先生をしている。
甘いもの大好きの甘党。好物はイチゴショートケーキ(作っているのは雪華)。
モデル:ミカグラ学園組曲の『八坂 ひみ』
さて、今回は雪華さんの天敵であり、苦手な相手が登場!
今後の展開はどうなるか、お楽しみに!
それでは!さようなら〜!