東方〜博麗神社の居候妖怪〜   作:ルミナス

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第二十四話

季節は秋へと変わったある夜のこと。

 

その日、雪華は縁側に座り、月見酒をしていた。

 

そんな雅な事をしている雪華は、酒を飲みながらボーッと月を見つめている。

 

そこに、一人の客がやって来る。

 

「あら、雪華。貴女も案外、雅な事をするものね」

 

「……あ、『儛妖』」

 

その女性、黒髪で、地面ギリギリまで延ばし、服もまた平安の貴族が着ているような目立つ容姿をしているが、それが何処か似合っている。

 

そう、まるでそれが『普通』であるかのように。

 

「……あのさ、毎度思うけど、儛妖はよくその服で来れるよね?」

 

「あら?私はいつも空を飛んできているもの。特に問題も起きないわ」

 

「いや、邪魔くさくない?」

 

「邪魔とは思わないわ。だって、それが『私』の姿だもの」

 

「ふ〜ん……『雛人形の姫』も大変だね〜」

 

「ふふ、大変ではないわよ」

 

『雛人形の姫』と呼ばれたこの女性、名前は『桃之姫 儛妖(もものき ぶよう)』。彼女は雪華がある貸本屋の女の子から頼まれ、『付喪神』へと変えた存在である。

 

「しかし、あんた此処に来てていいの?『小鈴』の奴、探し回ったりしないの?」

 

「それは大丈夫よ。彼女、今頃寝ているでしょうしね」

 

「ふ〜ん……この『異変』の最中に人間はよく寝れるもんだね〜……まあ、人間に問題はないし、仕方ないんだろうけど」

 

雪華はそう話しながら酒を飲み、もう一度月を見上げる。

 

其処には、少し歪に感じる満月があった。

 

「……本物の満月を隠した犯人探し、巫女はちゃんとしてるの?」

 

「してるんじゃない?あのスキマ妖怪もいるし、九尾の狐もいるからサボるなんて出来ないでしょ。出来たらどんな勇者なんだか……」

 

「あら雪華。貴女、ずっと以前から巫女は妖怪に負けたらいけないって言ってなかったかしら?」

 

「流石にこの幻想郷作った本人に勝てる通りはないよ……」

 

「ふふ、それもそうね。ところで、お隣、座っても構わないかしら?」

 

「うん、良いよ」

 

雪華は月を見ながら話していると、儛妖から相席の許可を尋ねられた。それに許可を出し、右隣をポンポンと叩くと、儛妖は着ている衣服に皺が付かないよう、注意しながらゆったりと座った。

 

「あんたは本当に平安貴族のように座るな〜」

 

「ふふ、私は一番上のものですもの。優雅であるべきだわ」

 

「カリスマブレイクしないかな〜」

 

「……しそうで怖いわ。注意しておかないと」

 

儛妖のお猪口に日本酒を注ぎ終え、そんな話をするとお互いに月を見上げた。

 

「…………月が綺麗だな〜」

 

「ふふっ、私、死んでもいいわと答えればいいの?それだと告白してるみたいよ?」

 

「なに?百合の完成?あ、でも儛妖ならイケるかも!」

 

「流石に冗談よね?やめてよ?本気でしないでね?」

 

「流石に冗談だよ。まあ、そんな雅な相手が儛妖の相手なら私はしっくりきそうだな〜とは思う」

 

「私は雛人形であれ『姫』の位のものよ。お相手は当然、『王』に座するものでなくちゃいけないわ。でも、雅を解するお相手も良いわね」

 

「『王』に座しながら雅を解する奴……探せばいるね」

 

「でも、私はまだ『妃』にはならないわよ?私は、私を大切にしてくれたあの子が一番大切だもの」

 

「だからこそ、『厄祓い』の意味もある雛人形を大切にしたあの子には、厄は来ない。全部、お前が祓ってるもんな」

 

「ええ、そうね。あの子に『厄災』なんて似合わないもの」

 

儛妖の能力は『厄を祓う程度の能力』。彼女がいる家に『厄』は持ち込めない。何故なら、彼女がいるだけでそれを祓っているからだ。

 

そして、この能力は家族単位で祓われているため、彼女を大切にしているその家族に『厄』が来ることはないだろう。

 

雪華はそんな事を考えながら月を見上げた。

 

「……あはれとも、見る人あらば 、思ひなん。月のおもてに、やどる心は……ね。うん、やっぱり、私の心情にぴったりな心だね〜」

 

「……雪華、それ、今思い浮かんだの?雅ね。けど、それと同時に貴女が心配になったわ」

 

「どういうところを心配してるの?」

 

「貴女の心よ」

 

「う〜ん、なら変えようか?なげてとて、月やはものを、思はする。かこち顔なる、わが涙かな、とか?」

 

「それなら涙を流しなさい。慰めてあげるから」

 

「流石にそれは良いや。という事で、涙は流さないよ〜」

 

雪華はそう言いながら耳に髪を掛けつつ笑っている。

 

それを見て儛妖は雪華を優しく抱き締める。

 

「……雪華、頼むから、無理だけはしないで。私は貴方に恩があるし、何より、私にとって、貴女は『母親』も同然なのだから……だから……」

 

「……無理はしないよ。ただ、辛くなった時には……うん、胸を貸してくれるとありがたいかな……」

 

雪華はそう言いながら、儛妖と同じく腕を回し、胸に顔を押し付ける。

 

儛妖はその間、雪華の声も、顔も見ないように、十五夜の月を見上げていた。

 

その月は、次第に雲が掛かり始める。

 

「……秋風に、たなびく雲の、絶え間より、もれいづる月の、かげのさやけさ……今の月の姿は、この詠が良いわね」

 

儛妖は雪華の頭を優しく撫でながら、ポツリと呟くのだった。




はい、キャラ紹介ですよ!

桃之姫 儛妖

種族:付喪神(雛人形の姫)

能力:『厄を祓う程度の能力』
この子がいる家では、家族単位で厄が訪れることはない(家の人が望めば別)。また、家にやってくるものの厄も祓い、家に上げないようにもしている。

モデルキャラ:『ぬらりひょんの孫』の羽衣狐

性格としては雅を愛する貴族の様な性格。ただ、高飛車な訳ではない。そこまで仲良くない人には愛想だけを良くするが、懐に入れると途端に甘くなる。優しくなる。

どう考えてもモデルキャラとは正反対の位置にいますが気にしないでくださいね。これっていうキャラがいなかったものですから。

それでは!さようなら〜!
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