第二十五話
夜が明けない異変から季節が変わり、既に春へと移り変わっていた。
春は命が新しく芽吹く季節でもあり、桜が咲き誇り、色とりどりの花も咲き誇る季節。そんな春が来れば、妖精の気分は上がり、妖精同士、もしくは妖怪へと弾幕ごっこが始まる。勿論、妖精は幻想郷の種の中で一番弱く、頭が悪いことが一般常識であり、変わらぬ事実。互いが倒れ、妖怪に倒される妖精が続出している。
そんなことには一切の興味がなく、花を愛でている吸血鬼が一人。
スカーレット家長男ことアルカディア・スカーレットは、パラソルの下で、本を読みながら優雅な時間を過ごしていた。そう、とても素敵な悠々自適な朝食後の時間。アルカにとっての至福の時間は、しかしーーー、
「アールーカー!!外に出るから準備しやがれーーー!!」
ーーー屋敷内へと続く扉が勢いよく開き、其処から入ってきた雪女、小倉雪華によって邪魔される結果となった。これにはもう、アルカは頭を抱えるしかなくなったのだった。
***
「ーーーで?俺の至福の時間を邪魔したからには、それ相応の何かがあるんだろうな?」
アルカは綺麗な笑顔で、しかし怒気を滲ませながら雪華に問えば、雪華はそれを楽しそうな笑顔で返し、話し始めた。
「アルカはさ、おかしいとは思わない?」
「……この季節外れの花々が咲き誇っている状況か?」
「そう、それ!」
雪華は目を輝かせながら返すが、アルカはそれはもう退屈そうに返す。
「こんなもの、ただの異変だろう?確かに花々は綺麗だし、愛でるのも好きだが、そのうち博麗の巫女が解決して終わりだろう。というより、それはお前が一番知っていることだろう?」
首を傾げて雪華にそう問えば、雪華はそれに人差し指を立て、横に振りだす。
「チッチッチ、実はこれ、異変じゃないんだよな〜」
「……そうなのか?」
異変じゃないと聞き、少し驚いたのか目を丸くするアルカに、雪華はそれはもう良い笑顔を浮かべて肯定を返す。
「実はこれ、幻想郷特有の自然現象の一つなんだよね〜。まあ、原因が原因だから仕方ないっちゃ仕方ないけど」
「ほう?原因とは?」
「大量の霊が溢れちゃってね、行き場がない霊達は花に憑き、その花を咲かせてる。六十年周期で起こる大結界の異変……ね?自然現象でしょ?」
「確かにそうだな……それで?それをあの巫女には教えたのか?」
アルカが雪華にそう問えば、雪華はとても良い笑顔を浮かべる。
その表情で確信したーーー博麗の巫女である霊夢には言っていない、と。
「……はぁ、お前、何を考えているんだ?」
「ん?別に何も?強いて言えば、面白そうだったから?」
「何がだ」
「異変だと思ってあっちこっち行ってる姿が?まあ大変だろうけど、取り敢えずは解決に奔走してますよーって姿は見せとかないと、とは思ってた」
「なんだかんだちゃんと考えてやってるんだなと、俺は初めてお前に関心を抱いたよ」
「もっと尊敬して見習って来れても良いんだよ?」
「誰が見習うか。せめて関心までだ。お前を見習ったら、大変なことになる結果など見え見えだ」
その反応に雪華は面白くなさそうな顔をするが、すぐに切り替え、笑顔を浮かべる。
「で、本題だけど!今から1日、あんたの時間頂戴!」
「……何するつもりだ?」
「今この自然現象が起こっている間に、花見観光をしようよ!結構楽しめるよ!!」
アルカは其処で目を瞠る。今目の前に浮かぶ雪華の表情は、弄るときの笑顔でも、作り笑いでもなく、純粋に楽しみで仕方がないという、まるで子供のような表情だったからだ。
「……珍しい」
小さく呟くように言えば、雪華は小首を傾げる。
「ん?今なんか言った?」
「いや、別に。……そうだな。今回ばかりはその誘いにのろう。確かに楽しそうだしな」
その返答をした後に椅子から立ち上がれば、雪華は本当に嬉しそうにガッツポーズを決めたのだった。
いつも通りの短さですみません。
さて、今回から花映塚ですが、予定では大事な章となるので、ちょっと長くなるのではないかと思います。
……まあ、一日で花見観光がどこまで出来るかを考えながら、やって行くつもりです。
それでは!さようなら〜!