雪華は織姫と彦星と一緒に楽しく談笑していると、急に外の方に顔を向けた。
織姫はそれを見て何かに気付き、問い掛ける。
「もしかして、『異変』終わった?せっちゃん」
「ああ、終わったみたい。さて、相手は誰だったんだろうね〜」
「調べてなかったのかよ」
「後でも良いかと思って調べてなかった」
雪華はそう言ってから目を閉じる。
少しして目を開けると、雪華は立ち上がった。
「なるほどね〜。彼方からしたらしたくなるわ、確かに」
「?異変主は誰だったの?せっちゃん」
織姫がそう聞くと、雪華は答える。
「異変主は吸血鬼の『レミリア・スカーレット』。理由は太陽を隠して昼でも動けるようにする為、だってさ」
「吸血鬼……あ、太陽に弱い妖怪か」
「そう。だからこそ、太陽を隠す為のあの紅い霧だったみたいだね」
雪華はそう説明すると、店の扉の方に向かって行く。
その後ろに付いて行くように織姫は立ち上がった。
「せっちゃん、行くの?」
「ああ。だって……お酒タダ飲み出来るんだよ!?これが行かずにいられる!?」
織姫からの質問に、雪華は振り返ってからそう答えた。
その目は何処か輝いている。
それに対して織姫は苦笑した。
「あ、なんだったら織姫と彦星も来る?」
雪華からのそんな誘いに、織姫も彦星も首を横に振った。
「ううん、遠慮しとくよ。異変が終わったなら、きっとお客さんが来るだろうからね」
「俺も遠慮する。だって俺、13歳だし。何より、織姫行かないなら俺も行かないさ」
「織姫にベッタリだもんね〜、彦星坊やは♪」
そんな雪華の煽りに彦星は顔を紅くして意味の無い反論をするが、しかしそれを最後まで聞くことなく雪華は外へと出て、飛び始めた。
「……あんまり此処にいるのはね」
そう言って人里をチラッと見ると、霧の湖がある方へと向かって行った。
***
飛び始めて暫くすると、いきなり氷の粒が飛んできて、雪華はそれを楽々と避ける。
そして面倒臭そうに頭を掻くと、氷を投げてきた相手に顔を向けた。
「おいおい……何でいきなり投げてくるわけ?妖精さん?」
雪華はジト目で妖精三人組を見ると、その中心にいた青い妖精『チルノ』が笑顔で答える。
「此処はあたい達の縄張りだ!通りたかったらあたいと戦え!」
「もう!チルノちゃん!敵わないからやめた方が良いです〜!」
そんなチルノの名を呼び、止めるように言ったのは、クリーム色のストレートな長髪、袖のみ半透明な若葉色のワンピースを着た妖精。
「『フウノ』ちゃんの言う通りだよ?チルノちゃん。やめた方が良いよ……」
『フウノ』と呼ばれた先ほどの妖精に同意する様にそう言って止めるもう一人の緑の長い髪をサイドテールの妖精『大妖精』。
この二人からそう言われるも、しかしチルノは聞く耳を持たなかった。
「だって!此処はあたい達の縄張りなんだから!さっきも言った通り、通りたかったらあたいと弾幕ごっこで勝負……?」
チルノはそう言って、大妖精とフウノに向けていた顔を雪華の方に向け直したが、しかしその方向にはどうしてか雪華はいなかった。
「……あれ?」
「え?ど、どこ行ったのですか〜?」
「……あ!分かった!私に恐れて逃げたのね!やっぱりあたい最強!」
チルノはそんな風に優越顏で喜ぶが、実際は既に雪華はそんな三人組を無視してその先にある館へと向かって飛んでいた。
「誰がそんな面倒臭いことするかっての。全く。変な時間を食わされたわ」
雪華はそう言って少しだけチラッと見て、興味を失った様に顔を前に向け、霧の湖の直ぐ近くに建っている紅い建物、『紅魔館』へと降り立った。
その前には緑の中華服の女性が立っており、降り立った雪華を警戒した目で見つめていた。
「はぁ……何でそんなに警戒されるんだか……」
雪華はそう言ってまた頭を掻くと、その中華服の女性『紅 美鈴』は鋭い目を向けながらも答える。
「理由はとても簡単です。貴女が不審者だからですよ」
「不審者って……此処で宴会があるからタダ酒を飲みに来ただけなのにな〜、私」
雪華のその言葉に、更に警戒心を上げた美鈴は構えをとる。
それを見た雪華は心底面倒臭そうな顔をしてそれを見つめる。
「はぁ、もしかしなくても、そこを通りたかったから弾幕ごっこで私に勝てって言うの?」
「はい、そうです」
「私、弾幕ごっこ弱いんだけど……しかも面倒」
雪華はそう言って少し考えると、ある事を思い付いた。
「そうだ。だったら、此処に来てる博麗の巫女にでも確認を取ってよ。あ、私は小倉雪華ね。名前を出せば分かるだろうから」
「……分かりました」
美鈴はそう言って、一旦中へと入ろうとした。
しかし、その世界は直ぐに止まった。
雪華はそれに敏感に気付き、どうしてか嬉しそうな顔をした。
「おお!凄い!世界が止まってる!」
止まった世界で雪華は何故か自由に動き回っている。
そんな雪華に別の視線が鋭く睨み付け、警戒しながら声を掛ける。
「どうして、貴女は動けるのかしら?」
その声がした方に雪華は顔を向ける。
其処には、メイド服を着た銀髪の前だけ三つ編みにした女性『十六夜 咲夜』がいた。