宴会のあった翌日、雪華は早速、紅魔館に遊びに来た。
「やっほ〜!アルカ!早速、遊びに来たよ〜!」
「早くも来たな。まあ良い。ようこそ、紅魔館へ。歓迎するぞ」
アルカはカリスマある歓迎の仕方をしたのだが、雪華はニヤニヤしながら言う。
「お前、カリスマ持っても子供の姿じゃ全然威厳ないな〜。ね、おチビ吸血鬼♪」
「チビ言うな!」
アルカのカリスマは、こうして早くも崩壊してしまった。
***
雪華が来て数分後、既にアルカはテーブルにぐったりと突っ伏していた。
それを見て雪華はニヤニヤしている。
「アルカ、これぐらいで疲れるとか情けないぞ〜?」
「誰のせいでこうなってると……」
アルカは雪華を軽く睨みつけながらそう訴えるが、雪華はどこ吹く風で聞き流し、やはりニヤついた状態でそんなアルカを見ている。
「いや〜、やっぱりアルカは面白い奴だね♪」
「何処がだ……」
アルカは睨み付けても変わらないと分かった為、溜息を吐くと、其処に紅茶が運ばれてきた。
「お待たせしました」
「いや、大丈夫だ。『ギル』」
雪華も紅茶を持って来た人物に顔を向けると、其処には金髪の髪の執事が立っていた。
それを見ると、雪華は直ぐに興味を失くしたのか、お礼を言ってから顔を元の位置に戻した。
しかし、アルカは二人が初対面という事もあって、まずは紹介を始めた。
「雪華、此奴は此処に仕えてくれている俺の執事、『ギル・ディザスター』だ。こっちが小倉雪華。俺の正体を見破った普通じゃない雪女だ」
「何となく紹介に棘があった気がするけど、紹介された雪華。よろしく」
「ああ、よろしく。俺はギルだ。此処には弟も働いてるから、あったらよろしくしてくれ」
「ん、よろしく」
ギルと雪華はそれだけで挨拶を終えると、ギルは去っていった。
それを見てから、雪華は紅茶を飲みながらアルカに聞く。
「彼奴、『グリフォン』でしょ?」
「!……どうして分かった?俺は其処まで紹介してないが」
アルカは少しだけ興味を持って聞くと、雪華は何も難しいことが無いかのように答えた。
「簡単な話だよ。彼奴、元のグリフォンとしての姿から人の姿に『変化』してる。だからこそ、分かった。それだけの話さ」
「……なるほど」
アルカはそう言うと、雪華の目を見る。
雪華はそれに気付き、首をかしげると、アルカはそれを見て、口を開いた。
「……少し、頼みたい事がある。良いか?」
「良いよ。昨日も言ったけど、あんたの頼み事はある程度聞くから……で?どんな頼み事?」
雪華はアルカにそう聞くと、アルカはそれに対して、頼み事の内容を話し出した。
その内容をとても簡単に言うと、『地下にいる妹を助けてほしい』という事だった。
「妹……『フランドール・スカーレット』。狂気に染まった吸血鬼で、『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』ね……うわ、厄介。間違ったら私が死ぬじゃん」
「そうだ。だから、嫌なら嫌と「無理」即答か」
アルカが即答してきた早さに少し驚いたが、しかし表情を戻して雪華に理由を聞き出す。
「一応聞くが、どうしてだ?」
「理由は二つ。一つ、私の命の安全が保障されてないから」
「それは、俺達がなんとかするつもりだったが……」
「それでもだから。そして二つ目。これが一番の理由。確かに、私は狂気をなんとか出来るけど、出来ない」
「……」
雪華の言ってる事をアルカは理解しようと頭を働かせるが、ヒントがとても少ないため、結局はよく分からなかった。
「……つまり、どういう事だ?」
「そうだね〜……これは、書きながら説明した方が早いね。ねえ?紙か何かある?」
アルカはそれを聞くと、立ち上がり、紙を取りに行った。
それと一緒にレミリアも呼び、雪華にまたお互い自己紹介させてから、雪華の説明が始まった。
「んじゃ、まずは改めて私の能力の説明だけど……アルカはレミリアにどれぐらい説明したわけ?」
「能力名と変化した痕があれば其処から情報を読み取れる事。あとは能力名から察したこと全てだ」
「まあ、その察した部分を読み取るのは流石に無理だし面倒だから放っておくとして、じゃあ、まずはその辺からかな?」
雪華はまず、紙に『変化』と書くと、説明しだした。
「『変化』っていう意味はまず簡単に言えば、『物事を違う状態、性質にすること』だ。勿論、わたしもそれが出来る。
ただし、ある程度は物々交換、属性変化みたいなもの。その属性から別のに変えることは……出来ないわけではないかもだけど、難しすぎる」
雪華は其処で書くのを止めると、アルカに手を向けた。
「アルカ、全力で良いから私の手を握ってくれない?」
「は?そうすると、お前の手が潰れるぞ」
「大丈夫大丈夫。気にせずやって。ただ見せるだけだから」
アルカはそれを聞くと頷き、雪華の手を全力で握った。
そうすると、勿論力的にも身体的にも吸血鬼に劣っている雪華の手は潰れて使えないものとなった。
雪華は雪華で途轍もなく痛そうな顔をするが、それを気にせずに能力を使い始めた。
すると、どうしてかその手が再生しだし、元の状態となった。
「え、どうして!?今、潰れたはず……」
流石にレミリアも、そしてアルカもこれには驚いた。
そんな二人を少しだけ面白そうに見ながらも雪華は説明しだした。
「普通は雪女に再生能力なんて、冬じゃないと出来ない。まして夏なら絶対に無理だけど、今のは私の『精神力』を『再生力』に変化して再生させた。どちら共に言葉に『力』が付いてるから出来る芸当だ」
雪華はそう言って紙に『精神力』と『再生力』をイコールで結び、その間に『力』と書いた。
「こんな風に、最後の言葉が同じだったり、属性的に同じなら私は変化出来る。水の状態変化とか楽に出来るわけよ」
其処まで書くと、最後に『狂気』という文字を書いて、其処でイコールにバツを付けると、書くのを止めた。
「ただ、『狂気』は何も変えれない。『狂気』を何かに変化させるのはとても難しいし、無くすなんてことは絶対に出来ない。さっきも言ったように、私の能力は物々交換または属性変化みたいなものだから、流石にそんな芸当は出来ないわけ」
雪華はそう説明すると、残っていた紅茶を飲み始めた。
「だから、その『狂気』をなんとかしたいなら、まずは何に変化させるかを考えるしかないよ。言っとくけど、私は名前しか知らない相手を無償で助ける、なんて善人じゃないから考えない。そもそも、その問題はアルカ達が考えるべき事だしね。私はそのフランドールとは赤の他人だし……ま、ゆっくり考えたら良いよ」
雪華はそう言うと、紅茶を全て飲み終わって、紅魔館を去って行ったのだった。