紅魔館から去った後、雪華はそのまま帰らずに織姫の店へと遊びに来た。
お店に入って来た雪華はまずは織姫を探すために店内に声を響かせると、やって来たのは織姫ではなく彦星だった。
「なんだよ、雪華。また来たのか?珍しい」
「遊び帰りのついでに遊びに来たんだよ」
「なんだよそれ……それで危なく織姫が仕事を中断されそうになったのかよ」
「あ、仕事中だったのか……ここにいないって事は、今は着物を作ってるのか?」
「ああ。丁度作ってるけど……」
それを聞くと、雪華は家に上がり、織姫の仕事場まで向かった。
そんな雪華の行動はいつもの事で、止めるつもりもない彦星は雪華の後を歩いて追う。
その追われている方の雪華はこの家の構造は既に熟知しているため、迷う事なく織姫が仕事をしている部屋へとたどり着く事が出来た。
其処は襖で廊下と部屋が区切られており、雪華はその襖を音を立てないよう、ゆっくりと、少しだけ開け、中を覗いた。
その中にいる織姫は真剣な表情で、しかしどこか楽しそうに着物を作っていた。
その近くにはどこか古びた織り機が置いてあり、それでよく織物を丹精に織っているのを、雪華は知っている。
(これはもう直ぐ、私の出番かな?)
雪華はそう推測すると、織姫が着物を作り終わるまで、廊下で待つ事にした。
***
織姫が作っているのを見てから一時間経つと、織姫は着物を作り終えたのか、息を吐いた。
「ふぅ……これで完成!」
そう言って広げて失敗が無いかを確認してみるが、何処にも失敗は無かった。
「よし!頼まれた着物完成!……って、言いたいけど……やっぱり、だよね……」
織姫は一瞬喜んだかと思えば、次には苦笑を浮かべた。
その理由は、先ほど織姫が作った着物にあった。
確かに、失敗は何処にも無いのだが、その着物事態に問題がある。
彼女、織姫の能力は『衣類を作る程度の能力』。
一見してみれば何処も特別な事はない能力なのだが、しかし彼女が作った衣類は、どうしてか柄が『動く』のだ。
花柄であればくるくると着物の中を周り、風が吹けばその回る早さが早くなる。
中には、散るものまで出てくる始末である。
そんな状態の着物を売りには出せない。
しかし、織姫自身にはその柄を動かせなくさせるような力は生憎と持ち合わせていない。
だからこそ、其処で別の人物に手伝ってもらうのだ。
「せっちゃん、其処にいるんでしょ?入って大丈夫だよ」
織姫が嬉しそうに襖の方に顔を向けると、雪華が入って来た。
「仕事、終わったみたいだな」
「うん。だから、後はお願いね、せっちゃん」
それに雪華は頷くと、着物を持ち、能力を行使する。
『柄が動く』という『変化』を止め、柄を動かなくさせるのが雪華の仕事。
それを終えた着物を織姫に返すと、織姫はお礼を言って、その着物を綺麗に畳んでから立ち上がった。
「それじゃあ、手伝ってくれた分のお駄賃と、お茶と茶請けを取ってくるから、何時もの部屋で待っててね」
「分かった!良いものを頼むね!」
雪華のそんな様子に織姫はクスリと笑い、炊事場へと向かって行った。
それを見届けた後、雪華は軽く着物を触ってから立ち上がり、居間へと向かう。
そして、居間で暫くの間待ち、織姫達がやって来ると、今日あったことを話し始めた。
その際、アルカの妹を助けなかった事に対して、織姫が「せっちゃんらしいね」と言い、「なら織姫は助けるの?」と雪華が問うと、
「う〜ん、私と趣味や話が合いそうな人なら助けるかな?後は、お店のお客さんとか……」
と答え、それに対して彦星も賛同し、雪華もやっぱりねと言って笑った後、またお茶菓子を食べ始めた。
そうして暫く話していると、あっという間に妖怪の時間となり、雪華は霊夢に一切連絡せずに織姫の家に泊まった。
その翌日、正座で霊夢に小言を言われている雪華の光景が博麗神社にはあったのだった。