(あれ...私寝てたんだ...)
寝起きで重い体を起こし、周りに誰もいないかを確認する。誰もいないとわかると、ふと隣を見た。隣には、私と同年くらいの、シナモン色の様な肌色の髪を持つ男の子がすやすやと寝ていた。
(相変わらず綺麗な顔...)
この子の顔はとても綺麗に整っていて、いわゆる美少年だ。最初に会ったときは、本当に綺麗だと思った。
最初は馴れ馴れしく話してきたから嫌いだった。でも、今は違う。愛おしくてたまらない、世界で一番大切な人。
4月17日。新学期の時期だ。学生達は新しい友達を作り、新しいクラスで楽しく授業...普通ならそうだろう。だけど私は違う。私、秋倉千景には友達がいないのだ。作らない...いや、作りたくないのだ。小さい頃から人と関わるのが嫌で、友達を一切作らなかった。それは今も続いている。今日までに何人かの人が私に声をかけてくれたけど、全員無視をし、その人達の私の印象は「何か嫌な奴」になっている。でもそれでいい。その方が楽だし、面倒ごとにならなくてすむ。
(人と話して...何が楽しいのかな?)
コミュ障ではなかったけれど、人と話すのは苦手なのだ。そういう人もいる。私にとって、人が沢山いる教室は、居心地が悪かった。
(...帰ろ)
鞄を持って早足で校門を出る。この街に来たのはつい先日で引っ越してきたのは私一人だけだった。親は私が9歳の時に事故で死んでしまった。それから、ずっといとこの家にいた。お義母さんは優しかったけれど、周りの人達の「大丈夫?」「泣いてもいいよ」が嫌で、無理を言ってここに引っ越してきた。ここなら知り合いもいないし、新しい生活が始められる。一人暮らしもしてみたかったから、丁度良いと思った。
学校から15分歩いたら、白い壁の家がある。表札には「秋倉」と書いてある。鍵を取り出し、玄関を開ける。中は一人暮らしにしては広く、整理をしていない部屋もある。自分の部屋には行かず、リビングにあるソファに腰掛ける。そして、今日をなんとなく振り返る。
(今日もつまらない一日だったなぁ...平凡。)
この世界は、実につまらないと思う。私はそれが嫌で、いつも突飛なことを求めている。そんなことが起こらないとわかっていても、求めてしまう。
(馬鹿だよなぁ。)
溜息をつきながら立ち上がり、明日のことを考えながら自室に向かった。
三日後、今日の学校は早く終わり、皆はそそくさと帰る。私は今日も一人で校門を出た。
(暇...あ、探検でもしようかな?)
この街に来て以来、外をゆっくり歩いたことがなかったので、街の探検に行くことにした。
(小さい頃思い出すなぁ)
小さい頃は人と遊ぶのが嫌だったから、よく外に探検しに行っていた。それを思い出し、少し懐かしく感じる。家とは反対側の道を歩き、見たことのない景色が目に入ってくる。途中までは沢山あった家々が次第に少なくなっていき、ついに一軒もなくなってしまった。
「あれ...ここ、どこ?」
人も少なく、車もない。まさか...
「迷った?」
その言葉を口にした時、頭から血が引いていくのがわかった。知らないうちに、結構歩いていたようだ。
(やばい...道わかんない!)
このままでは家に帰れず、誰にも見つけられずに...そう思うと、もう最後だ。前向きに考えよう。
(でもどうしよう...あるものと言ったら木ぐらいしか...)
そこで初めて気がついた。立ち止まっている私の隣に、3mくらいの木で囲まれた細くて長い道があった。
奥まで続いており、一番後ろは見えない。
(でも、どうして?)
私は、まるでその道に吸い込まれるかの様に足を進ませていた。
誰かが私を待っている...そんな気がしながら。