艦隊これくしょん -轟ケ天ニ-   作:キューマル式

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リアルが忙しく、久しぶりの投稿になりました。

誰かわりと真面目に異動という制度を破壊して下さい……。
再編とか、残ったヤツが死ぬほど苦労するだけじゃねぇかヨ!



接触 白の艦隊 後編

「敵艦隊、撃破……レーダー、ソナーともに感なし」

 

 『空母棲姫』と『戦艦棲姫』が沈み、敵がいないことを確認した羅號はホッと息をつくと構えた砲を下ろす。そんな羅號に、ローと朝潮が駆け寄ってきた。

 

「らーくん、大丈夫!? 痛くない!?」

 

「大丈夫ですか、羅號!?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

 心配そうな2人に、ヒラヒラと手を振って大丈夫だとアピールする羅號。しかし2人はそれでも若干疑わしそうな視線で羅號を見た。

 

「ホント? らーくん嘘ついてない?」

 

「あの『戦艦棲姫』に、結構いい一撃を貰ってたみたいですが……」

 

「あのぐらいじゃ、僕は沈まないよ」

 

 その羅號の言葉に嘘は無かった。咄嗟に展開した『磁気シールド』、そしてその強固な装甲のおかげで大きな損傷には至っていない。小破判定にすら届いていないだろう。これならばどうということは無い。

 

「それよりも『北方棲姫』艦隊は……」

 

 そう言って羅號が視線を巡らせようとしたその時だった。

 

「王子サマ~~!!」

 

「うわっ!?」

 

 白い塊が羅號に飛び掛かるように抱きついてくる。それは件の『北方棲姫』であった。

 

「大丈夫だった? 怪我とかない?」

 

「ウん。 アリガト、王子サマ!」

 

 満面の笑みで羅號に抱きつく『北方棲姫』。そんな『北方棲姫』の首根っこを背後から、明らかに「不機嫌です」と顔に書いてあるローと朝潮が引っ張って羅號から引き剥がした。

 

「ナに?」

 

「何じゃない、ですって! らーくんから離れて!」

 

「そもそも突然何をするんですか、あなたは!」

 

「エッ? 王子サマに助けテモラッたお礼すルの」

 

「……具体的には?」

 

「お礼ノチュー……」

 

「「却下ぁぁぁぁ!!」」

 

 何やら言い合いを始めた3人に羅號は苦笑いをするしかない。そんなところに身体を引きずるようにして『重巡ネ級』が近付いてきた。

 

「ちぃ様ちぃ様、幾らナンでモ自己紹介モせズに飛びツくのハ駄目デす。ハシたナイ。

 ウィン様に言いツケますヨ?」

 

「ウゥ……ワカった。

 ゴメンナサイなノ」

 

 『重巡ネ級』に言われると、『北方棲姫』も素直にペコリと頭を下げて離れていく。

 

「……私ハ深海棲艦『重巡ネ級』の『イリス』だ」

 

「『北方棲姫』の『ちぃ』なノ。

 助けてクレてアリガトウ、王子サマ」

 

 『イリス』はペコリと頭を下げ、『ちぃ』は花咲くように微笑んだ。

 

「僕はトラック艦隊所属、万能戦艦『羅號』」

 

「潜水艦『呂500』、ろーちゃんです」

 

「駆逐艦『朝潮』よ」

 

 返すように羅號たちも自己紹介をする。

 

「改めテ、助かっタ。 救援ニ感謝スル」

 

「いえ、僕たちもジュノーさんからの救援要請を果たしたまでにすぎないです」

 

 羅號の言葉を聞いた『イリス』は、意を決したように聞いた。

 

「ジュノーは……ドウなった?」

 

「……僕たちが見つけた時には、すでに沈没寸前で手の施しようが……。

 最後に僕たちに救援を頼んでそのまま……」

 

「ソウ……か……」

 

「ジュノー……グスッ……」

 

 『ジュノー』の最後を聞き、『イリス』は戦友を想いしばし黙祷し、『ちぃ』は涙ぐんで鼻を鳴らす。

 その姿は仲間を失った自分たち艦娘となんら変わりない。『深海棲艦は感情のない正体不明の化け物』だと教えられてきたローと朝潮は初めて見る彼女らの反応に、本当に人類と接触を持とうとしている彼女たちが今までの深海棲艦とは違うものなのだと実感する。

 ややあって『イリス』は顔を上げた。

 

「ジュノーの最後、知らセテくれてアリガトウ」

 

「……とても立派な()でした」

 

「当然ダ、私自慢の戦友ダからナ。

 ソレで……ジュノーかラ私たチの事ハどれダケ聞いタ?」

 

 その言葉に、羅號は首を振る。

 

「ほとんど何も……。

 ただ貴女たちが会話できる特別な深海棲艦で、僕たち人類勢力と接触したがっている。

 そしてそれを快く思わない深海棲艦に襲われた、ってことぐらいしか……」

 

「ソウ……か……」

 

 話を聞いて『イリス』は頷くが、その傷のためか膝を折った。

 

「イリスッ!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

 慌てて『ちぃ』と羅號が崩れ落ちそうになっている『イリス』を支えた。そして羅號に向かって言う。

 

「確かニ、我々は人類側ニ接触を望ンデいる。

 シカし、私デは詳しイ話はデキない。

 本来ナら我々の『指導者』の所ニ案内したイのだガ……コの損傷でハ、そこマデ辿り着ケルか微妙ダ……。

 頼ム、少シでイイから油と鋼材ヲ分けテくれないカ?

 ソレで損傷の自己修復ヲ行い、ソノ後に我々の『指導者』の所ニ案内しヨウ」

 

「……わかりました」

 

 『イリス』の提案に羅號は頷く。それに慌てたのはローと朝潮だ。

 

「らーくん、大丈夫なの?」

 

「そうですよ。 相手は曲がりなりにも深海棲艦ですよ?

 みんなのところに連れて行くのは……」

 

 そんなローと朝潮の心配を、羅號は「大丈夫、大丈夫」と言ってなだめる。

 

「さっきの他の深海棲艦との戦闘は本物だった。そこから考えても、人類と接触したいっていうイリスさんたちの話に嘘はないと思うよ。

 だから突然暴れ出すようなことはないと思う。

 それに……」

 

 羅號はそこで一度言葉を切ると言った。

 

「戦い終わり、助けを求める声があるのなら敵味方関係無く全力で助ける……それが海に生きる者に必要な『シーマンシップ』、『海の武士道』だよ。

 今の『イリス』さんたちは戦い合う敵じゃない。

 なら、助けないと……」

 

 その答えに、ローと朝潮は嬉しくなる。

 羅號はこういう人だ。ただ力が強いだけじゃない。最強の艦娘『大和』と、海の漢『提督』から尊い魂を正しく受け継いだ艦息なのである。

 それがこうして証明されていくのが嬉しくて仕方がない。

 そんな彼と出会えた奇跡が嬉しくて仕方がない。

 そして、2人はその姿にどんどん心惹かれていくのだ。

 

「トラック偵察艦隊、これより海域の偵察を終了し帰還します!」

 

Jawohl(ヤヴォール)!」

 

「了解です!!」

 

 羅號率いるトラック偵察艦隊は、数を2つほど増やして帰途に就くのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「報告は以上です」

 

「「「「……」」」」

 

 羅號の報告を聞き終わっても、長門たち大人4人は無言だった。

 あまりに無言なので、一緒に敬礼しているローと朝潮はどうも不安でしょうがない。ふと見ると、残りの3人……吹雪も満潮も秋雲も、この臨時司令所となっている天幕を覗き込んでいる。つまりトラック泊地残存艦隊の全員集合状態だ。その視線のことごとくが集中しており、非常に居心地が良くない。

 

「……あのぉ」

 

「……ああ、状況は理解した。

 外に出れば必ず何かしらやらかす艦息に、少しだけ頭を抱えただけだ。

 問題ない」

 

 不安にかられて声をかけようとした羅號だが、長門が遮るようにため息交じりに言ってから視線を動かす。

 そこには羅號の隣……包帯とで簡単な治療をした深海棲艦『重巡ネ級』の『イリス』と、羅號に抱きつくようにして警戒心を含む赤い瞳を向ける深海棲艦『北方棲姫』の『ちぃ』の姿がある。

 それを見て、長門は再びため息をついた。

 

 あの後……偵察任務を終えた羅號たちは帰還したわけだが、当然ながら大騒ぎとなった。それはそうだ、本来敵であるはずの深海棲艦を連れて帰って来たのだから。

 確かに、今までの戦いの中で深海棲艦の鹵獲ということは人類側はしたことはあるが、それを羅號たちが今、やるような状況ではない。しかもどう見ても……主に笑顔で羅號の腕に抱きつく『北方棲姫』を見る限りでは鹵獲という雰囲気ではない。

 何事かと思ってみれば、今度はその深海棲艦たちが『会話』ができて意思疎通が可能だという、これまでの深海棲艦の定説がひっくり返る存在だ。しかもそんな集団が人類勢力への接触を望み、それを阻もうとする深海棲艦と戦っていたというのである。

 長門たちとしては、もう頭の許容量ギリギリの大事件である。

 しかし、この深海棲艦内での『内戦』ともいえるこの事情の重要性を認識できないほどにバカでもない。

 長門は意を決して、『イリス』へと話しかけた。

 

「私はこのトラック艦隊の臨時司令である長門だ。

 『イリス』……でいいのか?」

 

「ソれが私の『個体名』デ相違なイ。

 我々のよウな『名前持ち』は、自分ノ名前を気に入ってイる。

 ソう名前で呼んデもらエると、嬉しイ……」

 

「ではイリス、こうして君たちと平和的に接触できたことを嬉しく思う」

 

「こチラこそ命を救わレ、手当てヲしてモラッた。

 貴艦隊の温情ニ、感謝すル」

 

 そう言って『イリス』はペコリと頭を下げた。

 それを見て『ちぃ』も羅號から離れる。

 

「あ、アリガトウ……なノ」

 

 いまだに警戒心は残っているものの、こちらもペコリと可愛らしくお辞儀をしてお礼を言った。

 まるで駆逐艦の艦娘たちのような小さく可愛らしい姿に、思わず抱きしめてスリスリしたい衝動に駆られる長門だが、それをグッと抑え込み再び『イリス』へと視線を向ける。

 

「怪我の調子はどうだ?

 何分こちらも見ての通り、物資は潤沢とは口が裂けても言えない状況なのでな。

 大したことはしてやれん」

 

「問題ナい。

 分けてモラッた油と鋼材デ、艤装の最低限ノ自己修復には十分ダ。

 コレで……本隊に合流デきる」

 

「詳しい事情は……話してもらえないのだな?」

 

「スマナイが、私にモちぃ様にモその権限ガなイ。

 本隊に居ル、我々の『指導者』デなけレバ……。

 ダが我々は、平和的ナ人類勢力とノ接触を望んでイる。

 ソれは、ドウか信じテ欲しイ」

 

「その辺りは羅號からの報告で理解している。

 ……イリス、君のその自己修復というのはどれほどの時間がかかる?」

 

「ソウだな……5時間ほドで、十分動けルようニなるだロウ」

 

「今は……14時か。 ならば夜には動けるようになるのだな。

 ……いいだろう、我々トラック艦隊も君たちに同行させてもらおう。

 是非、君たちの『指導者』に会って事情を聞きたい」

 

「助かル、コチラも人類勢力とノ接触は願ってもナイことダ。

 我々の『指導者』モ……オ喜びにナる」

 

 その言葉に、長門は頷いた。

 

「大したもてなしはできないが、時間まではゆっくりしてくれ。

 羅號、ロー、朝潮。 彼女たちを任せる。

 甘味類を許可するからしばらく、くつろいでいてくれ。

 ……そこの覗いているお前たちも、一緒に甘味を味わっていい。

 ただし全員、しばらく休んだら移動の準備に入れ。

 いいな!」

 

 長門のその言葉に、羅號一同子供たちから歓声のような返事が上がる。そして『イリス』と『ちぃ』を連れて、羅號たちは天幕から出て行った。天幕に残っているのは長門・鳥海・夕張・明石のトラック首脳陣である。

 

「……よかったんですか?

 全員であちらの本隊とやらに出向くことにして……」

 

「話と状況を聞く限り、ブラフであるとは考えにくいからな。

 下手に隊を割ると、そちらのほうが逆に危険だ。

 それなら全員で行動した方が、万一の不測の事態にも全力を傾けられる」

 

「確かにそうですね……」

 

「それに……『いかない』という選択肢はあり得ない。

 そうだろう?」

 

 長門の問いに、鳥海も夕張も明石も頷く。

 今までどうやっても意思疎通できなかった深海棲艦。それが『会話』による意思疎通が可能で、しかも人類勢力との接触を望む一派がいる。そしてそれを望まぬ勢力があり、深海棲艦内で『内戦』ともいえる内輪もめが起きている。

 今の状況だけでも十分大発見だが、その『指導者』と会うことでより詳しい情報を聞けるだろう。

 

「下手しなくてもこれ、この戦争の重大な転機になるわ。

 それに今まで謎だった深海棲艦のことも、深海棲艦本人たちの口から聞ける」

 

「危険を冒してでも、彼女たちと会見する価値はありますよ」

 

 夕張と明石は技術に携わる者として、深海棲艦の謎の真相に迫れると興奮気味に語る。ただ鳥海だけは、ことの重要性は理解しながらもそこに潜む危険性から渋い顔をする。

 そんな鳥海の肩を、長門はポンッと叩いた。

 

「何、心配はいらんさ」

 

「何を根拠に……」

 

「私の『女の勘』……と言ったら?」

 

「……今、信頼性がガクッと下がりましたよ」

 

 長門の冗談に、鳥海も苦笑して肩を竦める。

 

「冗談はさておき……根拠はアレだ、見てみろ」

 

 そう言って長門は天幕の外を指差す。

 そこでは水で戻すタイプのきなこ餅や桃缶、缶詰のパンケーキを開けてお茶会を始めた子供たちの姿があった。

 そしてその中心では……。

 

 

 

「ラゴウ、オモチタベる!」

 

「う、うん……」

 

 隣からきなこ餅を差し出す『ちぃ』に、羅號は何とも言えない表情だ。

 その傍らではローと朝潮が、何やら闇のオーラを纏っているのだから当然と言えば当然である。

 

「何をやってるんですか、あなたは!!」

 

「ン? ラゴウにアーンやっテル」

 

「なんでそうなるんですか!!」

 

「アサシオ、何怒ってル?」

 

 朝潮の叫びに『ちぃ』は小首を傾げる。その様子に、朝潮は今度は羅號へと喰ってかかっていた。

 

「羅號! あなたも何でされるがままなんですか!!」

 

「えぅっ!?」

 

「アサシオ、ラゴウ虐めルのヨクない」

 

「虐めてません!

 って、いつまで羅號にくっついてるんですか! 離れなさい!!」

 

「ヤッ!!」

 

 プイッと横を向く『ちぃ』。しかし、『ちぃ』は離れる様子がない。

 

「ロー、あなたからも何か言って……」

 

 仕方なく朝潮は援軍を呼ぼうとしたのだが……。

 

「えへへっ♪ パンケーキ、らーくんも食べて、って♪」

 

「待ちなさい、そこの不審な潜水艦!!」

 

 援軍と思ったローは、『ちぃ』の逆方向からパンケーキを差し出している。その光景に思わず朝潮の対潜爆雷(チョップ)がペシッ、と振り下ろされた。

 

「あぅ……あっしー、何怒ってるの?」

 

「何じゃありません! あなたこそ何をやってるんですか!!」

 

「え? らーくんにあーん、だよ?」

 

 さも当然のように言うローに、朝潮は頭を抱えた。

 

「ロー、アサシオどうシタの?」

 

「恐らくあっしーもやりたいのに場所が無くなっちゃって怒ってるんです、って」

 

「オオ、ナルほど! ローは頭イい!」

 

 そんな朝潮を尻目に、ローと『ちぃ』は何やら通じあったりしている。

 すると、『ちぃ』は羅號を立たせると右側から先ほどと同じくきなこ餅を差し出す。ローも仲良く逆の方からパンケーキを差し出した。

 

「ちょっと2人とも!!」

 

「ちぃ、分かっタ。 アサシオの場所モしっかり用意シタ」

 

「あっしー、真ん中からどうぞ、って」

 

「……えっ?」

 

 再び止めに入ろうとした朝潮だが、ローと『ちぃ』の懐柔策に動きを止める。

 そして……。

 

「し、仕方がありません。

 これ以上ガミガミ言っても場の空気が悪くなってしまいますから、ここまでにします」

 

 何やら顔を赤くしながら言い訳じみたことを呟くものの、完全に懐柔成功である。

 朝潮も桃缶の桃を一つ取り出して羅號に差し出した。

 

「らーくん……」

 

「羅號……」

 

「ラゴウ……」

 

「「「あーん」」」

 

 ……どうやら3方向を囲まれ、羅號は包囲殲滅の運命のようだ。どこにも逃げ場はない。

 そしてそんな哀れな戦艦の姿を見つめる3人。

 

「甘クテ美味シイワネ、吹雪(棒」

 

「ウン、ソウダネ満潮チャン(棒」

 

 もはや何もかもを諦めたような目で仲良くパンケーキをパクつく満潮と吹雪。

 その目には、目の前のあの見るからに甘ったるい空間が映っているのかどうか、はなはだ疑問だ。

 そして残った秋雲は……。

 

「フィヒィッヒィッヒィッ!

 滾る! 滾るぞ、らごやん!

 Nice Ship!」

 

 その精神は常人には遠く及ばない、どこか遠くに旅立っていた……

 

 

 

「……何か、とんでもない地獄絵図が展開されていますが?」

 

「うん、まぁ……否定はしないが……。

 本来敵であるはずの深海棲艦、しかも『姫』クラスである北方棲姫があの通り羅號に首ったけだ。

 あれこそ……私たち艦娘の目指していた『平和の海』なんじゃないのか?」

 

「……『砂糖の海』の間違いでは?」

 

「それは言うな。

 ……子供は素直でいい。難しいことは考えずにああして自然に、人類と深海棲艦との和平の可能性を見せてくれている。

 私は、あの光景にある『可能性』は信じるに値すると判断した。

 鳥海、お前はどうだ?」

 

 言われて、鳥海は再び視線を羅號たちに戻す。

 どうやら羅號に食べさせるという目的は全員達したらしい。やり遂げたロー、朝潮、そして『ちぃ』の3人は、今度はお互いに何やらおしゃべりをしながら甘味を楽しんでいる。

 その光景は、どうしようもなく鳥海の心を和ませた。

 

「そうですね……確かにこの光景は、信じたくなります」

 

 鳥海の答えに、長門は満足そうに頷いた。

 その時だ。

 

「少シ、いいダろうカ……?」

 

 天幕の中に『イリス』が入ってきた。

 

「どうしたのだ?」

 

「イヤ、少シ確認したイことガある……」

 

 どこか声を潜めながら『イリス』は言う。

 何かあるのなら先程話をしたときに聞いてくればいいものを今になって、しかもこの様子である。どうもあの場では聞けないような話を聞きに来たらしい。

 

「答えられることなら……」

 

 長門がそう前置きすると、『イリス』は言う。

 

「アの『羅號』のことダが……アの艦息はモシや『重力炉搭載艦』デはナイか?」

 

「「「「ッ!!?」」」」

 

 その言葉に、長門たち4人は揃って息を呑んだ。

 羅號は長門たちにとって、色々な意味で『切り札(ジョーカー)』だ。流石にその全容を知らせるわけにもいかず、羅號のことは何も『イリス』には話していない。

 しかし、『イリス』はその最大のブラックボックスである羅號の『零式重力炉』の話をしてきたのだ。それは『イリス』は羅號について、長門たちはもとより羅號自身ですら知らない『何か』を知っているということだ。

 

「……」

 

 とはいえ、羅號のことを声高に言うわけにもいかず長門は押し黙る。しかし、沈黙は時として何よりも鮮明に真実を語る。その様子で『イリス』は察したようだ。

 

「……ソノ様子でハ、私の考えテる通りらシイな……。

 アの『回転衝角(ドリル)』を見テ、ソンな気ハしたノダ……」

 

「……羅號について、何を知っている?」

 

 長門の問いに、『イリス』は首を振る。

 

「……コレも私ガ言ってイイ話でもナイので、スマナイが話せナい。

 たダ……」

 

 そこで『イリス』は一度言葉を切る。

 

「想定サレる最悪の場合……羅號が、羅號だケが最後に残さレタ希望にナる……」

 

 そうはっきりと、しっかりした口調で言い切ったのだった……。

 

 




次回は本隊と接触し、この物語の真実が語られます。

次回もよろしくお願いします。
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