少し間が空いてしまいましたが、投稿します。
……異動期なんて無くなればいいのに。
あと新人は何をやるかわからないので、ストレスマッハです。
新人教育は難しい……。
今回は帝都侵攻部隊との激戦……にはたどり着きませんでした。
言うなれば出撃準備編です。
『私は帝国海軍横須賀鎮守府所属、君塚章成大将である。
しかし私の今の所属は帝国海軍ではない、今の私は帝都へと攻撃を行った深海棲艦隊の提督である。
この地球は今、疲弊している。
イデオロギーによる対立、資源を巡る争い……度重なる戦争と荒廃の歴史が、この星を深く蝕んでいる。
このまま人類は愚かなる戦争を続けていれば日本に、そして人類には未来はない。
優れた科学力と武力を持った存在による強力なリーダーシップこそが、この地球上には必要なのだ。
しかし、残念なことに今の人類にはその力はない。
ではその力は誰が持つのか?
それこそ、『彼ら』である。
人々は深海棲艦を正体不明の怪物と恐れるがそれは違う。
彼らは我々よりも進んだ文明を持つ国家の、兵なのだ。そしてそんな彼らの国こそ、この地球のリーダーに相応しい。
ならばこそ、その強力なリーダーシップを誇るものと供に歩むことが人類の未来に繋がると私は確信し、私は立ち上がったのだ。
人々よ、無駄な抵抗は止め、降伏せよ。
もし降伏が受諾されない場合、我々の艦隊は帝都に対し総攻撃を行う。
その規模と被害は先程の威嚇攻撃とは桁が違うものとなるだろう。
貴重な人命を散らすことなく、正しい判断を下してくれることを私は期待する』
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「……帝都を守備する艦隊はほとんどが君塚大将によって南方戦線へと廻されがら空きになっていた帝都に強襲、多数の艦砲射撃・艦載機による空爆で横須賀鎮守府の機能は完全に破壊され、帝都市街地の被害も相当出ています。
そしてその直後に発表されたのが先ほどの声明です……」
その報告を聞き終えた提督は怒りに顔を赤くしながら、その拳を机に叩きつけた。
「ふざけるな! 何が人類の未来のためだ、ただの売国行為ではないか!!」
「提督……」
あまりの激昂に我を忘れかかる提督の手を天城がそっと取る。それで少しだけ落ち着いたのか、息を整えると大淀に尋ねた。
「大本営から指示は?」
「それが……初撃で的確に大本営中枢を攻撃され、指揮系統は完全に破壊さてしまったようで、この情報を送信してから大本営からの応答はまったくありません。
……どうなさいますか、提督?」
「……決まっている。
総員出撃準備! 帝都奪還のために出撃するぞ!!」
その言葉に艦娘たちが動きだそうとするその時だった。
「き、緊急! 緊急です!!」
そう言って駆け込んできたのは秋月だ。
「どうした秋月、今度は何があった!?」
「そ、それが……
深海棲艦大艦隊確認! 現在、本土に向けて南下中とのことです!!」
「!? 数は!?」
「およそ……150とのことです!!」
「なんだと……!?」
北方を守る
「
「……君塚め、邪魔が入らないように北方戦線の戦力をここに釘付けにするつもりか!!」
同時に、恐らくは南方戦線にも深海棲艦の攻勢が起こっており南方からも帝都奪還のために廻せる戦力などないだろうと提督は分析する。
「……どうします、提督?」
「……」
天城の言葉に提督は思案する。
かといって帝都奪還に向かえば今度は
……なるほど、見事に詰んでいる。
長年の君塚大将渾身の策なのだろう。そこは一見すると、一分の隙もないかのように見える。
しかし君塚大将にも『2つ』だけ、誤算があった。
その1つこそ、ここにはいるはずの無い艦隊……『トラック・レムリア聯合艦隊』だ。
「兄様、本土には我々トラック艦隊が向かいます」
「有希……」
名乗りを上げた妹に、提督は目を見張る。
「幸い兄様の配慮のおかげで、トラック艦隊は羅號を除き万全な状態です」
「バカを言うな。
たった9隻、しかも1隻は工作艦の明石だ。
たった8隻の戦力に出来ることなど……」
そこまで言うと、今度はアネットが前に出る。
「長門さんたちだけではありませんよ……『ウィン』!!」
「ハッ!」
「『レムリア亡命艦隊』の全戦力は友軍であるトラック艦隊とともに制圧派所属艦隊を撃滅、日本の帝都奪還作戦を支援しなさい!」
「ワカリました、アネット様。
総員、出撃準備!!」
恭しく礼をした『ウィン』が号令をかけると、『レムリア亡命艦隊』の全員が部屋から出ていく。
「すまない、アネット」
「構いませんよ、長門さん。
それにこれは高度な政治的判断の結果です。
ここで我々『レムリア亡命艦隊』が日本を助けたのなら、日本は私たち『レムリア共存派』を無視できませんもの。
恩の売り時、ということです」
肩を竦めて苦笑するアネットに、それもそうだと相槌をうちながら同じように苦笑する長門。一しきり笑うと、真顔に戻った長門が後ろを振り返る。
そこにはトラック艦隊の全員が整列していた。
「お前たち、今回の戦いは無理に参加する必要はない。
参加するかの判断は各自に任せるが……」
「何を言っているんですか、あなたは」
そんな長門に鳥海が呆れたように返した。
「トラックで誓ったじゃないですか。
進む先がたとえ地獄であろうとここまで来たら一蓮托生、どこまでも着いていきますよ」
「それに私たちにとっては故郷の土を踏むのが目的ですからね」
「帰郷だと思えば、丁度いいタイミングじゃないかしら」
鳥海、明石、夕張と次々に着いてくることを告げると、長門は目頭が熱くなるのを感じた。それを耐えると、今度は子供たちの方を見やる。
「お前たちは……その顔では聞くまでもなさそうだな」
吹雪、満潮、秋雲、そしてローに朝潮……誰もが戦意を滲ませている。
日本本土の危機……誰も退くつもりなどないのだ。
「よし! トラック艦隊、全員……」
「待ってください!!」
全員の出撃命令を下そうとしていたその時、それを止める声が響く。
それは羅號だ。
「僕も……行きます!」
「ダメだ。 羅號は艤装が大破しているだろう」
「それでもここでジッとしているなんてできないよ、ママ!
それに……制圧派にとってもこれは重大な作戦のはず。そんな重要作戦なら『ラ級万能戦艦』が配備されているかもしれないんだよ。
『ラ級万能戦艦』には……同じ『ラ級万能戦艦』しか対抗できないことはママも知っているでしょ?」
「……」
羅號の言葉に長門が押し黙る。
帝都侵攻部隊への『ラ級万能戦艦』の配備……その可能性は確かにある。
そして実際に『ラ級万能戦艦』である『モンタナ』と戦ったことのある長門は、その圧倒的なまでの戦闘能力を知っていた。既存の艦艇だけでは勝利は不可能、戦うのならどうしても羅號の力は必要になるだろう。
しかしその羅號は大破した状態でその機能のことごとくを失ってしまっている。これではいかに羅號といえど『ラ級万能戦艦』の相手などできるわけがない。
では高速修復剤を使って修理してから出撃……というのも難しい。
羅號の修理が後回しにされたのは、その修理に膨大な量の資源を必要とするからだ。これからの北方戦線の戦いを考えると、そんな量の資源の余裕などあるはずもない。
どうするべきかと長門や提督が思案を始めたその時だった。
「大変大変! 大変かも!」
飛び込んできたのは口調が特徴的な水上機母艦娘『秋津州』だ。
「何だ、今度は何があった!?」
「工廠の方に来てほしいかも!
そこの子の……羅號君の艤装が……」
「何だと!?」
~~~~~~~~~~~~~~~
昼夜問わずどこか薄暗い工廠、しかし今そこは光に満ちていた。
その光の大元は……羅號の艤装である。
ボロボロに傷つき、チェーンによって吊るされたその艤装からは、眩いばかりの光がほとばしっている。そしてその光の正体を、彼女たち艦娘は知っていた。
「『改の光』……」
『改の光』……艤装は戦闘経験を積み重ねることによって自己進化を行う特性がある。そして戦闘経験値が溜まり、進化の準備が整った時にはそれを示すかのように艤装が光り出すのだ。
それが通称、『改の光』である。
「でもこんな強い光は……」
「ええ、今まで見たことも聞いたこともないわ」
明石と夕張はその強い光に目を細めながら言った。
通常の『改の光』はこんなにも強くはない。せいぜいがボンヤリと明るくなる程度である。羅號のこれはもう桁が違う。
「……秋津州、どうだ?」
提督は、工廠作業用のツナギに着替えてコンソールを叩く秋津州に問う。
「自己進化に必要な資源は……こんなところかも!」
『改の光』が発している艤装に、進化に必要とされるだけの資源を投入することで艤装は新しい姿に文字通り生まれ変わるのだ。これが俗に『改造』と呼ばれる行為である。
「ふむ……」
そこに記された数字は改造のためのものとしては法外ではあるが、轟沈寸前にまで大破した羅號の修理費よりもずっと安い。
それを見て、提督は決断を下した。
「よし……備蓄資源を投入して、今すぐ羅號の改造を行う!」
「了解かも! すぐ用意するかも!」
この泊地の工廠の主である秋津州はウキウキとしながら作業に入っていく。
「兄様、いいんですか?」
「帝都奪還は失敗は許されない重要な作戦だ。そのためには羅號は絶対に必要なのだろう。
改造が完了次第、羅號は帝都に向かわせる。
なに、北方の守りは残りの資源でなんとかしてみせる。
この兄を信じろ、有希」
「そうよ有希ちゃん。
北方のことは私も全力で支えるわ。 だから私たちを信じて」
「兄様……
長門は提督と天城に深く頭を下げ終わると、トラック艦隊の仲間たちに向かって叫んだ。
「トラック艦隊抜錨、この長門に続け!
目標は帝都! 帝都を脅かす不埒者どもを蹴散らし、久しぶりの故郷に凱旋するとしよう!!」
「「「了解!!」」」
かくしてトラック・レムリア聯合艦隊は帝都へ向けて出撃していく。
しかしその前に立ちふさがるのは帝都を襲った大艦隊、そして改造を完了させた羅號以外の増援は見込めない、厳しく孤独な戦いを誰もが覚悟していた。
しかしそんな彼女たちの覚悟は、良い意味で裏切られる。
君塚大将の予期していなかった、『もう1つの誤算』によって……。
~~~~~~~~~~~~~~~
帝都は混乱の只中にあった。
崩れた家屋に家族がいたのだろうか、泣き叫ぶ者がいる。
そこに取り残された人を助けようと力を合わせる者がいる。
あるいは心を失ったかのように呆然とする者がいる。
今の帝都は地獄の入口、あらゆる負の感情が渦巻く混沌の入り口に立たされていた。
そんな街を歩く女が1人。長い黒髪に春を感じさせるような藤色の着物、そして凛とした表情の女である。
そんな彼女はむせ返りそうになる炎の匂いを嗅ぎながら、それでも表情を崩すことなく進んでいく。
やがて、どこをどう進んだのか、彼女はいつの間にかランプを片手に真っ暗な空間を進んでいた。時折聞こえるピチャンピチャンという水音が、ここが地下水道だということを示している。
ふと見ると、彼女の前方にボゥっと揺らぐ小さな光が一つ。
蛍火のようなその小さな光はゆっくりと近づいてくる。そしてその姿がランプの光によって映し出された。
現れたのは銀の髪が美しいスーツ姿の女である。その眼光は鋭く、まるで研ぎ澄まされた刃のようだ。蛍火に見えたそれは、彼女の吸っていた煙草である。
彼女は着物の女の姿を認めると、ひとつ紫煙を燻らせてから地面に煙草を捨てると踏み消した。
そして……。
「久しぶりね、『榛名』。 いえ……筑波八重(つくば やえ)夫人」
「ええ、久しぶりね『瑞鶴』。 いえ……天城瑞貴(あまぎ みずき)夫人」
スーツの女……佐世保を預かる天城海軍大将の妻、元『瑞鶴』の艦娘である天城瑞貴。
そして着物の女……呉を預かる筑波海軍大将の妻、元『榛名』の艦娘である筑波八重。
2人はどちらともなく微笑む。
かつて同じ海で戦い背中を預け合った2人は、暗い地下道で久しぶりの再会を果たした。
「……街の様子は?」
「酷いものです。 誰も彼もが途方に暮れています。
……軍の様子は?」
「こっちもズタボロよ。
君塚め……的確に痛いところを全力で突いてくれたわ」
そう言って忌々しそうに瑞貴は懐から煙草を取り出すと、慣れた手つきで火を付ける。
煙草の銘柄は『少し明るい海』。彼女の師が愛煙し、ヘビースモーカーだと『思われている』彼女の愛煙する煙草だ。
「……まだやってるんですね、それ」
「もう習慣だからね」
八重の呆れたような言葉に返しながら、瑞貴は煙草を吸いこむ。そして少し渋い顔をしながら紫煙を吐き出した。
片時も煙草を手放さず暇があれば煙草を吸っているように見える瑞貴だが、実をいうと彼女が煙草をどちらかというと苦手だということは極一部の親しい者しか知らない。
そしてその煙草の『意味』を知る者はもっと少ない。親友である八重は当然、その煙草の意味を知る数少ない1人だ。
「……誰の分ですか、それ?」
「……ウチのところを卒業してった教え子。
優秀な子でね、『大鳳』の艦娘としてリンガに配属されて、この間の南方の大攻勢で燃え尽きたわ……」
瑞貴は現在、空母艦娘の適正のある者を指導する指導教官をしていた。そしてこの煙草はそんな彼女の元を巣立ち、そして沈んでいった子のものだという。
彼女の煙草は線香の代わりだ。死んだ誰かを思いながら一本の煙草を吸う……かつての彼女の師である『加賀』がしていた習慣を、彼女の死後に引き継いだようなものなのである。
「全部吸い終えたらいつだってやめてもいいんだけどね、吸うそばからどんどん吸わないといけない数が増えて、吸っても吸っても無くなりゃしないわ」
そう言って苦笑するが、不意に真顔に戻る。
「……聞いたわ、有希ちゃんのこと。
その……残念だったわね」
「……私も覚悟をして送りだしたつもりでした。
でも、駄目ですね……いざそうなったら涙が止まりません……」
「それが正常よ。私だって無論覚悟してから送りだしたけど、貴子が同じようになったらどうなるか分からないわよ。
子供のためなら仏にも鬼にもなれる……それが親ってものでしょ?」
「……分かります、ものすごく。
だって私は今日……鬼になりに来たのですから。
あの子の守ろうとしたこの国を護る、護国の鬼に……」
その答えを聞いた瑞貴は、たまらないといった風に笑った。
「それなら私と同じね。
それじゃ今日は2人で『赤鬼青鬼』とでも名乗る?」
「『赤鬼青鬼』ですか……いいアイデアですね。
それもいいんですが……どうやら『数が足りない』みたいですよ」
そして八重の指す方に視線を向けた瑞貴はため息をついた。
「呆れた……『鬼になろう』とか考える、どうしようもない真正のバカがこんなにいるなんて……。
この国は頭大丈夫かしらね?」
瑞貴の心底呆れたような、しかし心底嬉しそうな声に八重も同意するように頷く。
そこには幾人もの人影があった。その数はおおよそ20といったところか。それも2人にとっては見知った顔ばかりである。
「『総会』は今日だっけか?
『退役艦娘会会長』さん」
「いいえ、『退役艦娘会副会長』さん。
でも……せっかくですから臨時総会としましょう。
『退役艦娘会臨時総会』……始めましょう!」
「ずいぶんとまぁ、素敵な『総会』になりそうだわ」
そして2人はその人影たちに合流したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~
「八重さん、瑞貴さん、お久しぶりです……」
やってきた2人にペコリと頭を下げるのはボブカットの茶色い髪の女、2人は彼女に言葉を返す。
「美羽さん、お久しぶりですね」
藤見 美羽(ふじみ みう)……元『羽黒』の艦娘であり、八重や瑞貴と戦い抜いた戦友である。
「美羽……黒子ちゃんのこと、残念だったわね。
八重のところの有希ちゃんと一緒に、トラック所属だったんでしょ?」
瑞貴の言葉に少しだけ視線を落とすが、美羽はすぐに前を向く。
「いえ、艦娘になるとなったときに覚悟はしていました。
それに……黒子ちゃんは幸せだったと思います。
お友達と……有希ちゃんと一緒に最後の瞬間まで戦えたんですから……」
そう言って気丈に微笑む美羽の目じりには涙が光っていたが、その心情を察する彼女らは何も言わなかった。
「それで、『アレ』は……」
「そっちは大丈夫だよ」
その言葉に、お下げの女が反応した。
「ああ、ええと……」
「ああ、今日は『北上』でいいって。
……どうせみんなもそのつもりでしょ?」
戦友である彼女の、人間としての名前を言おうとしたが途中で止められ、『北上』という昔の名前でいいという彼女。
「こっちだよ」
『北上』は顎で先を指すと全員を促した。
「ねぇ、そっちはどうだったの? 家族は?」
「……うちのお店が連中の爆撃でやられちゃってね、うちの娘が破片で怪我したんだ。
まったく……5歳になったばっかりだってのに、可愛い顔に傷でも残ったらどう責任とってくれるんだっての。
魚雷と一緒に文句の一つでも言わないと気が済まないからね、旦那に娘任せて地下壕に置いてきたよ」
道すがら瑞貴が尋ねると、『北上』は飄々と語りながら肩を竦める。
彼女は艦娘を退役してから結婚して、中華料理屋を営んでいた。その店は皆で食事などで利用していたのでよく知っている。
店はやられたようだが、どうやら彼女の家族は多少の怪我はあれど無事そうだ。瑞貴はそのことにホッと胸を撫で下ろすが、しかし彼女の内心が穏やかでないことを……ありていに言えば『ブチ切れている』のが、長い付き合いでわかった。
「……そっか。
あんたのとこの激辛麻婆豆腐、好きだったんだけどな」
「店なら連中を叩き出したらすぐに再建するよ。
今後ともどうぞ御贔屓に」
そんな話をしているうちに巨大な鉄の扉の前にやってきていた。
「知っての通り工廠での『開発』は、狙った物ができるわけじゃない。新型装備じゃなくて、使いもしないような旧式装備が開発されることなんてしょっちゅうさ。
そんな旧式装備はほとんどは潰して資源の再利用をするけど……信頼性の高い旧式装備は、もしもの時のためにいくつかは予備として保管されることになってるんだよ。
そして『艤装』……『解体』してリンクを切った艦娘の艤装の一部は、何かの不慮の事故で艤装を失った子のために保管されることがある。
そしてそれらの保管場所の一つがここ……横須賀地下第三隠しドッグだよ」
『北上』は扉横のパネルを操作する。
「……あんた暗証番号分かるの?」
「モチのロン。私を誰だと思ってるの?
魚雷で敵を吹っ飛ばすのも、艤装や装備の整備も全部お任せなパーフェクト北上様だよ。
こんなのちょちょいのちょいだって」
「頼もしいやら危険なのやら……」
そして重い音とともに鉄の扉が開かれた。
そこにはいくつもの装備、そして艤装が並べられている。しかしそのすべては旧式装備、積もったホコリが結構な長い時間放置されていたことを物語る。
その隅には燃料や弾薬の類が積まれているが数は少なく、おおよそ全力出撃1~2回分といったところだろう。
「本来は緊急時、
「仕方ないわ、
「それじゃ……どうせ使わないものだし、誰が使ったっていいってことだよねぇ?」
「ええ、そういうことよ」
悪い顔でニヤリと笑う『北上』に、同じような顔をした瑞貴が頷いた。
「……」
八重は目を瞑りながら、金剛型戦艦の艤装をなぞるように触れる。改二型のその艤装に懐かしさがこみ上げてきた。
当然だ。この艤装はその昔、彼女とともに幾多の戦いの海を越えてきた大切な戦友なのだから……。
やがて、ゆっくりと目を開くと彼女は全員に向き直った。
「みなさん……私もみなさんも過去に艦娘としてこの国のために十分尽くし、戦いました。
でもここで……私はもう一働きしたいと思います……」
そこで一度言葉を切ってから、彼女は続けた。
「今日は、今日だけは私は『榛名』に戻りましょう!
そして再び、あの戦いの海へ行きます!!」
その言葉に周囲から次々に歓声と賛同の声が上がった。
「私も今日は『瑞鶴』に戻るわ。
もう勝ったつもりでいるあのバカどもに、本当の空母機動戦術というものを教えてやるわよ」
「わ、私も今日は『羽黒』に戻ります!
黒子ちゃんの護ろうとしたこの国を護るために!」
「今日はハイパー北上様の復活だよ。
あいつらにはたっぷりと魚雷を喰らわせてやりましょうかねぇ」
その言葉に全員が動きだした。
「全員、艤装との再リンクと整備を!」
「整備ならこの北上様にお任せだよ。
だてに工作艦経験者じゃないからね」
「魚雷の点検と炸薬の装填、手伝ってください!」
瑞鶴が、北上が、羽黒が、その場の全員が出撃準備を始める。
榛名はそれを横目に、自分の艤装へと向き直った。
「還りましょう……あの戦いの海へ!
私たち艦娘の、魂の還る場所へ!!」
牙を休めた古兵たちは、今再び牙を剥く。
それは国のため、平和のため、そして何より……愛する家族のため。
息子のため、娘のため……母となった彼女たちはそれを害さんとするものに立ち上がった。
君塚大将のもう1つの誤算、それは彼女たち『母親』という、決して敵に廻してはいけない存在を敵に廻してしまったことだった……。
帝都を守るため、艦ママ隊が出撃しました。
……母親になった元艦娘たちとか、需要あるのかこれ!?
自分でも書いていて疑問です。
次こそは戦闘に突入となります。
次回もよろしくお願いします。