艦隊これくしょん -轟ケ天ニ-   作:キューマル式

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イベントも終盤戦、皆様シスターサラは手に入ったでしょうか?
私はサラは手に入ったものの資源が吹っ飛び朝風掘りは断念の状態です。

そして今回のイベントではついに……ついに我が鎮守府に大和が着任しました!!
大和来た! 大和来た!! 大和来た!!!
これで勝つる!!
書けば出るの法則に従ってこの小説を書き始めてもう1年半以上……やっとの着任です。正直サラより嬉しい。
劇場版でも大活躍な大和さんをレベリングしたいけど資源が……。
そんな作者のイベントでした。

今回は羅號を救うために奮戦する3人娘の話……のつもりが……。



罠 氷海の激闘(その5)

 両腰に接続されたアームから伸びる左右艤装を合体させ、まるで対戦車ライフルのようになった艤装を左の腰だめに構えたガスコーニュ。その超長砲身41cm5連装砲からは硝煙がたなびいていた。

 

「……狙撃成功だ」

 

『オ見事でス、ガスコーニュ様』

 

 狙撃成功にガスコーニュが息を吐き出すと、『ベル』からの通信で称賛の声が聞こえた。

 ガスコーニュの付けたモノクルには各種情報が表示されている。そして最大望遠状態になったそこには、飛行不能となり墜落していく敵万能戦艦『羅號』の姿があった。

 ガスコーニュは油断なく次弾を装填するが、射撃準備が整う前に氷の海に墜ちるだろう。だが、それよりも早くインヴィンシブルがトドメのドリル突進(チャージ)をしようとしている。

 だが墜ちながらも羅號から熱光線が放たれ、それがインヴィンシブルの砲塔を一基貫いた。砲の装甲が熱で融解し、一呼吸おいてから砲塔が根元から吹き飛ぶ。その衝撃で大きく体勢を崩したインヴィンシブルは空中で羅號を仕留めることができず、羅號は北極海の海中へと姿を消す。

 

「あの体勢から砲塔を狙い撃つか……なかなかやるな」

 

 ガスコーニュは羅號が油断ならない相手だと再認識する。

 

「インヴィンシブル、水中追撃戦に移るぞ」

 

 そう通信し、ガスコーニュは羅號を追おうとした時だ。

 

『君は待機だ。 奴は私が追う』

 

「……何だと? ここは我々2人で追うのが定石だろう?」

 

 ガスコーニュの当然の疑問に、インヴィンシブルはさも当然と答える。

 

『君の水中戦能力は高くない。

 通常艦相手では問題ないが、万能戦艦相手では分が悪いだろう』

 

「……」

 

 言っていることが正しいだけに、ガスコーニュは押し黙る。インヴィンシブルの言う通り、ガスコーニュの水中戦能力は高くはないのだ。

 

 ガスコーニュは万能戦艦の中でも特化型の、非常にピーキーな艦だ。

 戦艦の防御装甲、これは自身の持つ砲に耐えられるように設計されている。しかしこの装甲は『全く同じ場所に何発も砲弾が直撃する事態を想定していない』のである。

 ……当たり前の話だ。そもそもの話、基本的に砲撃は『数撃てば当たる』という考え方の兵器だ。高性能なレーダーとそれに連動した射撃管制装置によって高精度の射撃ができる羅號たち万能戦艦も、同じ場所に何発も砲弾が当たることは想定していないし、やろうと思ってもできない。

 だが、そんな誰も想定していない事象を大真面目にやろうとした者が1人だけいた。それがガスコーニュである。

 

 ガスコーニュの超長砲身41cm5連装砲はその特殊な主砲の集中配置と、主砲一本一本の高精度な微調整を行うことで、発射される5発の砲弾の着弾点を1点に集中させることができるのだ。その最大攻撃力を砲で換算すると、なんとその攻撃力は80cm砲相当となる。

 これが羅號の磁気シールドを一撃でダウンさせ、次の一撃で羅號を墜落にまで追い込んだ攻撃の正体だ。改造によって磁気シールドの出力と装甲が強化され防御力がアップしていたからよかったものの、改造前の羅號が受けていたら下手をすれば一撃で轟沈するような代物だったのである。

 ガスコーニュは額面通りの『超長砲身41cm砲10門を搭載した艦』ではない。正確には『41cm砲5門としても使える80cm砲を、2門搭載した艦』なのである。

 そしてそれを長距離から命中させることができる万能戦艦最大の精密射撃能力、相手のレーダーを欺瞞するアクティブステルス能力……ガスコーニュは『狙撃手(スナイパー)』としての能力に特化している。

 しかしその代償のように、いくつかの部分で問題も抱えていた。その1つがラ級万能戦艦の象徴とも言える『ドリル』である。ガスコーニュは万能戦艦で唯一、船尾にドリルが取り付けられているのだ。

 これは射撃精度を高めるためのバランスを考えた結果であり、ドリルは移動に邪魔な障害物の排除と船尾推進システムの保護のためと割り切られていた。

 そのためラ級万能戦艦の最大の攻撃であるドリル突進(チャージ)のためには後退で相手にぶつかる必要がありあまり使い物にならず、接近戦を苦手としているのである。

 その影響がもっとも顕著なのが、砲が使えなくなる水中戦だろう。ガスコーニュも対艦対潜誘導魚雷は搭載しているので相手が通常艦ならいいが、相手が同格の万能戦艦であれば魚雷だけで沈めるのは難しい。逆にその間に接近されてドリルで返り討ちに合う可能性が高くなってくる。

 確かにインヴィンシブルの指摘の通りなのだが……その中に手柄を求める功名心が透けて見えてしまい、ガスコーニュは何とも微妙な気分になってしまった。

 

(手柄を求めて突っ込む指揮官など、ロクなものではないぞ。

 それとも一撃受けて頭に血が上っているのか?)

 

 どちらにせよロクでもない話だ、とガスコーニュは心の中で毒づくが口には出さない。

 

「……分かった。 もし敵万能戦艦が再び浮上してきた時に備え、引き続き待機しよう」

 

『頼むよ。 もっとももう君の出番はないだろうがね』

 

 そう言葉を残して、インヴィンシブルは羅號を追い水中へと潜航を開始した。

 

『ガスコーニュ様、どうしマスか?』

 

「……今回の指揮官はあちらだ。命令通り、俺は待機する。

 お前も現状で待機、何かあったら連絡しろ」

 

『ワカりマした』

 

 『ベル』からの通信も切れ、ガスコーニュは砲に次弾を装填し、次の射撃に備えてチェックに入る。

 

「このまま終わればいいがな……」

 

 ガスコーニュたちレムリアの万能戦艦は生まれてこのかた、『勝って当然の相手』としか戦ったことがない。通常の艦娘や深海棲艦はもとより、強力な個体である『欠陥品』たちも万能戦艦にとってはずっと格下の相手だ。それは戦闘というより、楽しみで獲物を追うだけの『狩り(ハンティング)』に近い。

 対する地上の万能戦艦『羅號』は、今までモンタナとソビエツキー・ソユーズという自分と同等以上の相手と戦い、制してきた猛者だ。決して、今までのような狩られて当然の『獲物』ではないのである。

 

「手負いの獣は恐ろしいと聞くぞ、インヴィンシブル……」

 

 ガスコーニュの呟きはしかし、誰にも届くことはなかった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 空から墜ちていく羅號。羅號には意識が無いのか重力に引かれるまま落下していく。

 その姿を『ちぃ』の運んできた輸送コンテナの上で目撃してしまった朝潮は、ペタンと力なく座り込んでしまった。

 

「羅號が……私が捕まったせいで羅號が……!」

 

 朝潮の目に涙が溢れそうになる。見ればローと『ちぃ』もあまりのショックに呆然としてしまっていた。

 そんな羅號にトドメを刺そうというのだろう。インヴィンシブルがシールドドリルを唸らせながら空中から羅號に襲い掛かろうとする。

 

「や、やめてぇぇぇぇ!!」

 

 悲鳴が朝潮からほとばしる。

 その時だ。

 

電子熱線砲(マーカライト・ファープ)……照射ぁぁぁ!!」

 

 落下しながら意識を失っていた羅號がギリギリのところで意識を取り戻した。接近してきていたインヴィンシブルに電子熱線砲(マーカライト・ファープ)を放つ。カウンター気味に放たれたその熱光線は、インヴィンシブルの35.6cm4連装砲の砲塔1基を貫いた。熱光線によって装甲が融解し、弾薬庫にでも引火したのか凄まじい勢いで炎が噴き出して大爆発が起こり、砲塔が根元から吹き飛ぶ。そうしてインヴィンシブルが怯んだ隙に、羅號はそのまま海中へと逃れていった。

 そんな光景を見ながら、3人の少女の瞳に活力が戻っていく。

 

 羅號は……少女たちの恋した少年は負けていない。

 未だに闘志を剥き出しにして、勝利のために戦っているのだ。

 なら……自分たちも。

 

 そう決意した3人の少女たちは動く。

 

「あっしー! 『ちぃ』ちゃん!

 ろーちゃん、らーくんの援護に行ってきます、って!」

 

 水中は潜水艦であるローの世界だ。今羅號の助けになれるのはローしかいない。

 

「気を付けて!」

 

「大丈夫ですって!

 みんなで、みんなで必ず一緒に帰ろうね。あっしー、『ちぃ』ちゃん!」

 

「ウン!」

 

 朝潮と『ちぃ』に見送られ、ローが危険な海へと入っていく。

 

「次は私たちね……」

 

「アサシオ、ドウする?」

 

 『ちぃ』に問われ、朝潮は目を瞑って思案する。

 水の中で戦う羅號の助けは自分たちにはできない。なら、自分たちのできる助けはなんだろうか?

 

(もう1人に万能戦艦、ガスコーニュに何かする?

 無茶な……万全な状態で空を飛んでるラ級万能戦艦相手に私と『ちぃ』じゃ何もできずに終わるわ……)

 

 そこまで考えて、朝潮はあることに思い至った。

 

(そういえば……この作戦での『ベル』さんの役割はなんだろう?)

 

 まさか朝潮の世話係のためだけにいたということはないだろう。『ベル』にもこの作戦で何かの役目があるはずだ。

 

(インヴィンシブルは『ベル』さんのことをペット呼ばわりしてたし、インヴィンシブルの援護とは思えない。

 だとしたらガスコーニュの方で『何か』をしているんだろうけど……)

 

 『ベル』の存在……朝潮にはそれが突破口になる気がした。

 

(一体『ベル』さんにはどんな役目が……?

 ガスコーニュが羅號を狙撃したときにも特に何も……『狙撃』?)

 

 その単語でふと、思い出すものがあった。

 それはトラック泊地が健在だったころ、陸軍所属のあきつ丸から色々と教えてもらったことだ。

 朝潮はあきつ丸から陸軍式のサバイバル術はもとより各種の知識を授けられていた。その中の『狙撃手(スナイパー)』についての講義の内容。

 

(『狙撃手(スナイパー)』が最大の効果を発揮するためには……『あの役目』の人が必要になる。

 なら……『ベル』さんが……!)

 

 朝潮は決意を込めて顔を上げると、コンテナに用意された自らの艤装を装着した。

 完全に自分用に調整された艤装、そしてそこには見覚えのない、羅號の開発した新型武装が装備されている。

 

「よしっ! これならいけそう!」

 

 パンッと気合いを入れるように自分の頬を叩くと朝潮は海上に降り立った。

 

「『ちぃ』、偵察機を飛ばして!」

 

「アサシオ、何探せばイイ?」

 

 その言葉に朝潮はしっかりと答えた。

 

「どこかにいる空母水姫を。

 彼女を無力化し、ガスコーニュの力を……削ぎます!!」

 

 胸にある想いはただ一つ、大好きな羅號と、みんな一緒に揃って帰るために。

 少女たちはそれぞれの戦いの海へと飛び出す。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 冷たい北極海の海中へと身を沈める羅號。

 

「ぐぅ……」

 

 受けた傷の痛みに小さくうめくが、今はそんな些細なことを気にしているような余裕はない。そのぐらいに羅號は自身の焦りを隠せないでいた。

 狙撃によって機関部に受けた損傷によって安全装置が働き、羅號の超パワーの源である『零式重力炉』が緊急停止してしまっている。補助システムだけでは飛行すら満足にできない。

 おまけに非常用にプールされていたエネルギーは、今しがた墜落しながらインヴィンシブルに放った電子熱線砲(マーカライト・ファープ)でかなり使ってしまった。

 今の状態でラ級万能戦艦を相手にするのは不可能に近い。

 

「零式重力炉を再起動しないと勝ち目はない……」

 

 だがそれには時間がかかる。

 そう考えれば電子熱線砲(マーカライト・ファープ)で傷を負わせ時間を稼げたのは僥倖だ。あとは残りの時間をどう稼ぐかということだが……。

 

「ありったけの魚雷だけで……できるか?」

 

 羅號がそう思案するその時だ。

 

「この推進音は……違う、インヴィンシブルじゃない。

 これは……」

 

「らーくん!」

 

 羅號のもとに現れたのはローだった。

 

「ろーちゃん、ここは危険だよ! 早く戻って!!

 僕は、僕は大丈夫だから……」

 

 しかし、そんな羅號の言葉にローは首を振る。

 

「らーくんの嘘は分かります、って。

 お願いらーくん、正直に状況を教えてください」

 

「……分かった」

 

 ローの有無を言わせぬ雰囲気に羅號は頷くしかなかった。いつものぽわぽわした柔らかい雰囲気の少女から一転、その顔はいくつもの地獄の戦場を生き抜いてきた誇り高い艦娘のそれだ。

 羅號はローに手短に現状を説明する。

 

「……それでらーくんの『零式重力炉』の再起動には、どのくらいの時間がかかるの?」

 

「およそ……10分」

 

 10分……短いようにも見えるが、すぐそこまでインヴィンシブルが追い迫っているだろう状況ではあまりにも長い。それを理解しローは呑み込むように頷くと、羅號を真っ直ぐ見つめながら言った。

 

「……わっかりました。

 その10分、ろーちゃんが稼いでみせます、ですって!」

 

「無茶だ! 相手はラ級万能戦艦なんだよ!?」

 

 艦隊を笑いながら1隻で壊滅させるようなラ級万能戦艦を相手にたった1人で挑もうというローの言葉に、止めようと思わずローの手を握る羅號。そのとき、羅號はローが震えていることに気付いた。

 

「ほら、ろーちゃん震えてるじゃない……」

 

「む、武者震いがするのぉ!ですって!」

 

「いや、さすがにその言い訳は無理だって」

 

 こんな時だがちょっとした冗談に思わず羅號は苦笑してしまう。そんな羅號を、ローは真っ直ぐに見つめた。

 

「……確かにとっても怖いよ。

 でも……らーくんが死んじゃうかもしれないことのほうがずっと怖いの」

 

「ろーちゃん……」

 

 泣きそうな潤んだ瞳のロー。

 ローは微笑みながらゆっくりと羅號に顔を近づけた。

 

「みんなで帰るって、鳥海さんたちに約束しました。

 だから……ろーちゃん頑張ります。

 でも……すっごく怖いです。

 だから、らーくん……ろーちゃんに勇気をください」

 

「えっ……?」

 

 冷たい北極海の海の中、2人の影が重なる。

 羅號が何か反応するより早く、ローは羅號の顔を引き寄せると自分の唇を羅號の唇と重ねていた。

 しばしの後、2人の影がゆっくり離れる。

 

「ろ、ろーちゃん……」

 

「えへへっ……やっちゃった。

 これでもう何も怖くない、ですって」

 

 突然のキスに羅號が顔を赤くすると、同じように顔を真っ赤にしながら、ローはいたずらが成功した子供のようにペロリと舌を出した。

 そして名残惜しそうにしながら、羅號から離れていく。

 

「じゃあ、らーくん……行ってきます!」

 

 そう言いながらローは出撃した。

 

「ろーちゃん……」

 

 残された羅號は『零式重力炉』の再起動シークエンスに入る。

 羅號にとってもローにとっても、長い長い10分間の始まりだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……」

 

 空母水姫の『ベル』は多数の偵察機を使って羅號の墜落した海域付近を監視中だった。

 その偵察機の数は本当に多い。まるで『どんな些細な事象も逃さず観測するかのよう』に偵察に力が入っている。

 だが、そうして羅號に全神経を集中させていたからだろうか。海面スレスレを飛び、超低空飛行で接近する航空機編隊に気付くのが遅れてしまった。

 

「!? 深海の艦爆!?」

 

 一気に急上昇した編隊が爆撃の体勢に入る。

 

「クッ!?」

 

 艤装のギアの回転数が跳ね上がり、大型艦とは思えないような速度へと上げる。この速度で回避をしようというのだが、その必要はなかった。どういうわけか投下された爆弾はすべて空中で勝手に爆発してしまったのである。

 

「? 整備不良による誤動作?

 ……イエ、全弾同時に誤動作なンテ、それこそアリエない……」

 

 そこで『ベル』は自身の異常に気付いた。

 

「レーダーの誤動作? 偵察機との通信不能?」

 

 そう、『ベル』のレーダーにノイズが走り使い物にならなくなり、先ほどまで鮮明だった偵察機とのデータリンクや通信ができなくなっていたのである。

 

「コレは……さっきの攻撃!?」

 

「そうです、『ベル』さん……」

 

 その声に『ベル』が振り返ると、そこには朝潮とレムリア亡命艦隊の北方棲姫……たしか『ちぃ』という個体名だったか……の姿があった。

 なるほど先ほどの艦載機はこの北方棲姫のものかと納得する。

 

「ドウシタの、朝潮チャン?

 アナタはモウ解放されタのデショ?」

 

「……『ベル』さんなら、ガスコーニュがやられそうになったら1人で逃げますか?」

 

「私の身体ヲ盾にして、ガスコーニュ様に逃げテ頂くワ」

 

 考えるまでもないと『ベル』が即答する。そしてその答えこそ朝潮と同じなのだと理解した。

 

「それで朝潮チャンはガスコーニュ様たちに戦いヲ挑むつもり?

 勇気と蛮勇は違ウのよ」

 

 だがその言葉に朝潮は首を振ると、真っ直ぐに『ベル』を見つめながら言った。

 

「私たちごときじゃ、ラ級万能戦艦を相手に足取りすらできないことは分かっています。

 だから私たちは……『ベル』さんに戦いを挑みに来ました」

 

「私に?」

 

「『ベル』さん……あなたはガスコーニュの『観測手(スポッター)』ですね?」

 

「……」

 

 朝潮の言葉に『ベル』は押し黙った。

 トラック泊地時代にあきつ丸から学んだ『狙撃』についての講義。

 通常の場合、狙撃は『狙撃手(スナイパー)』と『観測手(スポッター)』の2人で行うのだ。

 『観測手(スポッター)』とは、目標の指示や目標の正確な距離や気象状態などの情報を観測し、『狙撃手(スナイパー)』が狙撃に集中するためそばで各種の役割を担う役職である。

 ガスコーニュという『狙撃手(スナイパー)』専属の『観測手(スポッター)』……それが『ベル』の本当の役割だったのだ。

 

「……どうシテ気付いたの?」

 

「『ベル』さんの昔話で、ガスコーニュは『ベル』さんの能力を高く評価してた。

 艦隊を1隻で壊滅させられるような万能戦艦、それが強くても通常艦でしかない『ベル』さんの何をかってたんだろう……そう考えたんです。

 それで羅號がガスコーニュからの狙撃らしき攻撃を受けた時、昔教えてもらった『狙撃』の講義を思い出して、『ベル』さんの役割に気付きました」

 

 『ベル』はまるで生徒の出した答えを聞く教師のような顔で頷く。

 

「だから……ガスコーニュは手の出しようがなくても、『ベル』さんを無力化すればガスコーニュの力を削ることができます」

 

 朝潮の指摘、それは真実だった。

 『複数の砲をまったく同じ場所にあてることによって超威力を発揮する精密射撃特化艦』であるガスコーニュは、その射撃能力に自身のリソースのほぼすべてをつぎ込んでいる。そのためドリルの使い勝手などいくつかの明確な弱点を持っているが、これもその一つだ。

 射撃にあまりにも集中する必要があるため、自身から観測機を上げて対象の詳細情報を入手することができないのである。現実でも片手でドローンを操作して相手を観察しながら、片手で狙撃できるような人間がいないのと同じだ。

 そのため『ベル』という『観測手(スポッター)』の偵察機から得られた情報をリンクすることで、最大効果の精密射撃を行っているのだ。

 ガスコーニュは単独で敵艦隊を蹂躙する決戦兵器である万能戦艦でありながら、最大のパフォーマンスを発揮するためには僚艦の情報支援を必要とするという、ある意味では矛盾を抱えた万能戦艦なのである。

 そのため、ガスコーニュは『ベル』という『観測手(スポッター)』を失えば狙撃精度が確実に下がってしまうのだ。

 

「それデこの妨害電波なのネ?」

 

「『ちぃ』のもらった、妨害電波発生弾(ノイズボム)

 通信もレーダーも、使えなイ!」

 

「今のうちにガスコーニュに気付かれる前に、『ベル』さんを無力化します!」

 

 これでは『ベル』は異常をガスコーニュに知らせることができない。

 そんな朝潮たちの策に、『ベル』はまるで正解した生徒を褒める教師のようにパチパチと手を叩いた。

 

「少ナイ情報から状況を推察する洞察力。

 自らの保有戦力ヲ正確に測り、最善手ヲ模索する思考力。

 素晴らしいワ朝潮チャン、二重丸をアゲる。

 でもネ……一つ、計算違いがアルわヨ」

 

「「ッ!?」」

 

 その瞬間、覇気のようなものが解放され、ビリビリと肌が泡立つような感覚が朝潮と『ちぃ』を襲う。

 そこにいたのは朝潮に優しく接してくれた『ベル』という女性ではない。そこにいたのは確かな実力を持つ、自分たちよりも明らかに数段階は格上の『敵』だった。

 『観測手(スポッター)』の役割の一つに、狙撃に集中する『狙撃手(スナイパー)』を守り、敵を排除するというものがある。それを任された『ベル』は、やはり只者ではなかったのだ。

 

「……私が敗北スレば、ガスコーニュ様の敗北の確率が1%でも上がル。

 そんなこと、決しテさせナイ!!」

 

 ガスコーニュのために勝利を誓い吼える『ベル』。

 朝潮と『ちぃ』は、今にも吹き飛ばされそうになるその気迫の渦に、それでも真っ向から立ち向かって返した。

 

「私たちだって……私たちだって羅號の勝利がかかってる!!」

 

「ラゴウのタメに! 絶対負けナいノ!!」

 

「私たちはまだ子供で、この感情は『ベル』さんみたいな『愛』には程遠い、弱い弱い感情かもしれない……。

 でも……それでも私たちは羅號のことが大好きだから!!

 世界で一番羅號が大好きだって、胸を張って言えるから!!

 だから……あなたに勝ちます!!」

 

 朝潮の言葉、それを合図に戦端は開かれた。

 瞬時にして無数の戦闘機・爆撃機・雷撃機を『ベル』が発艦させる。その手際はやはり達人の領域だ。

 

「『ちぃ』、航空支援を!」

 

「ワカッタ!」

 

「朝潮、突貫します!!」

 

 『ちぃ』の艦載機が発艦していき空中戦を展開、そんな中を機関全開にした朝潮が駆ける。

 

 好きになった誰かのために、互いに負けられぬ女の戦いは始まった……。

 

 

 

 




ろーちゃん「ふふふっ……らーくんとキスはした? まだだよね?
      初めての相手はこのろーちゃんだ! ですって!」

朝潮・ちぃ「……」

ろーちゃん「……え? ちょっと……冗談、ただの冗談ですって!
      そんな怒っちゃやですって。
      あっしー、ちょっと!
      謝る!抜け駆けしたの謝ります!
      だからヘッジホッグ! ヘッジホッグはやめてぇ!!」


ズガァン!!


朝潮「……さて、羅號には後ほど色々要求するとして、私たちはガスコーニュのギミック解除に行きましょう。
   大丈夫、明石さんの親友の大淀さんからの情報ですよ。
   あの人毎回イベントのたびにどこからかそういう極秘情報持ってくるんですよね」

ちぃ「それっテ……」

朝潮「ちぃ、それ以上いけない」

ちぃ「……」


というわけで3人娘の戦闘までたどり着きませんでした。

今回は改めてガスコーニュについて考えた推測をかなり誇張して表現しています。
ガスコーニュについてはホント、昔からあの船尾ドリルの意味が全く分からなかったんですよね……。
そんなわけでほぼオリジナルのような感じになりましたが、超狙撃特化艦という特色になりました。

次回はろーちゃんは決死の時間稼ぎ、朝潮と『ちぃ』はガスコーニュ弱体化のためのギミック解除、『ベル』との決戦に挑みます。

次回もよろしくお願いします。
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