各資源5万いかないとか、ここで冬イベの告知でも来たらヤバい……。
恐らくは今年最後の投稿となりますが、長くなったので2つに分けました。
3人娘の奮戦をお楽しみください。
北極海の冷たい海の中をローがゆっくりと進んでいく。
ソナーの感度は最大、まもなく接敵するだろう。レムリアの最強兵器、たった1人で戦場を蹂躙するラ級万能戦艦と、だ。
(……怖い)
ラ級万能戦艦の戦闘能力と非常識さをローは誰よりもよく知っている。ラ級万能戦艦と戦うのなら、同じラ級万能戦艦でなければ相手にならない。それを知っていながら恐怖を感じなければ、それはもう『狂っている』と言っていい。ローはまっとうな精神と思考の持ち主だからこそ、震えがくるほどの恐怖を感じていた。
だが、そんな相手にローは今からたった1人で挑むのだ。
(らーくん……)
ローは心の中でその名前を呟く。
命を、そして心を助けてもらった。
その優しさと大きさ、そして気高い魂……その眩しさに自分も、大切な友達たちもどんどん惹かれていった。
そんな大好きな羅號が今……危機に陥っているのだ。
(絶対に……らーくんは死なせない!
ろーちゃんが、ろーちゃんたちがらーくんを守る!!)
ローの細い指先が自分の唇をなぞる。
先ほど交わした唇の温かさと柔らかさを思いだすとローの中で恐怖はなりを潜めた。ローは今、獲物の喉笛に喰らい付くことだけを考えるただ1匹の狼へと変わる。
ローは機関を停止させ、敵の現れるのを静かに待つ。そして、その時は来た。
(来た……)
羅號を探し、インヴィンシブルが進む。
ローには気付いていない。もしかしたら気付いているのかもしれないが、それなら取るに足らないと見逃されているのだろう。
(好都合、ですって!)
ローは魚雷の発射準備をする。
(誘導魚雷……てーっ!!)
ローから発射されたのは羅號が開発で引き当てた対艦対潜誘導魚雷だ。誘導魚雷は弧を描くようにしながら、インヴィンシブルの船尾部分に直撃する。
『推進器に!?』
インヴィンシブルの声に、ローは羅號には決して見せない顔でニヤリと笑った。
いかに羅號製の対艦対潜誘導魚雷だとしてもラ級万能戦艦の装甲を貫くことはできない。しかし船尾推進器やレーダーやソナーといったウィークポイント、ここを責められてはいくらラ級万能戦艦だとしても不調は免れない。ローはそこを狙い、時間稼ぎに出たのだ。
『おのれぇぇぇ!!』
インヴィンシブルの怒りの声、どうやら先にローを排除して羅號のところに向かうことにしたらしい。
(ターゲットがろーちゃんに移れば、その分らーくんが安全になる!)
好都合だと心の中でほくそ笑み、ローはインヴィンシブルに啖呵を切った。
「海の中は私たち潜水艦の世界なの!
あなたなんか、怖くないですって!!」
『たかが通常艦の分際で! 消えろ!!』
体勢を立て直したインヴィンシブルから魚雷が放たれる。その魚雷は羅號のものと同じ、対艦対潜誘導魚雷だ。
装甲の薄い潜水艦であるローがそんなものを受けたらひとたまりもない。しかも高速で迫る誘導魚雷を避けれるような速度もローにはない。普通ならばローの命運はここで終わりだ。
だが、ローには秘策があった。
「らーくん……ろーちゃんを守って……。
迎撃魚雷、てぇぇぇ!!」
ローから放たれたその魚雷は、迫るインヴィンシブルの誘導魚雷に向かって軌道を曲げながらぶつかった。爆発による衝撃と発生した激しい気泡が周囲にばら撒かれる。
迎撃魚雷……敵の魚雷推進音を追ってぶつかることで魚雷を防ぐという対魚雷用の防御兵装である。羅號によって開発され、明石によって装備されたそれがローの命を守った。
『何っ!?』
絶対の自信をもって放たれた誘導魚雷を防がれ動揺するインヴィンシブルに、再びローから対艦対潜誘導魚雷が叩き込まれる。その衝撃によってソナーが不調となり、インヴィンシブルの水中索敵力が低下する。
『この……小娘がぁぁぁ!!』
予想外のダメージにインヴィンシブルが吠えた。そこからは最初の紳士然とした雰囲気は感じられない。インヴィンシブルはその手に持つシールドドリルを唸らせて前進を始めた。
『ドリルで押しつぶしてやる!』
「突撃!? 回避! 回避!!」
インヴィンシブルの意図を察知したローが全力の回避行動に移る。インヴィンシブルの速度を考えれば間に合うか微妙なところだ。
ガリッ!!
「あぅっ!?」
ローの全力の回避、そして先ほどのローの魚雷攻撃によってソナーに不調をきたしローの位置を正確に測れなかったことによって、ローはドリルの直撃を免れる。しかしそのドリルはローの艤装を掠めていた。
即座に浸水が起こり、ローは必死のダメージコントロールを行う。
そんなローの様子をあざ笑うかのようにインヴィンシブルは悠々と旋回すると、再びローに向かってドリル
『トドメだ、小娘ッ!!』
ダメージコントロールで精いっぱいのローに回避の手段は……ない。
ローは少しだけ目を瞑った。
(あっしー……『ちぃ』ちゃん……らーくん……。
ごめんなさい。 一緒に帰ろうって約束、果たせそうにないです……)
ローは心の中で大切な人たちに謝ると目を見開いた。その目は潜水艦娘の『狼の魂』をもつ者の目、どこまでも相手の喉笛を狙うハンターの目だ。
「アップトリム90! 魚雷発射準備!!」
ローは真上……魚雷を海上へと向けた。
「ろーちゃんの最後の魚雷……てぇぇぇ!!」
ローから4発の魚雷が海上に向かって放たれた。
『バカめ、どこに撃っている。
恐怖で狂ったか?』
インヴィンシブルがあざ笑う中、ローの放った魚雷は炸裂した。そしてインヴィンシブルはその表情を驚愕に歪める。
『き、貴様! 氷山を狙ったのか!?』
ローが撃った魚雷、それは何も苦し紛れのものではなかった。最初からローはこの北極海の海上に鎮座する、巨大な氷山を狙ったのである。
ローが放った魚雷によって氷山が崩れ、凄まじい重さの氷塊が海中に沈んでくる。これに直撃すればいかにラ級万能戦艦であろうと無事にはすむまい。
『こんなことをすれば貴様も!?』
「でもあなたも道連れ!
あなたはろーちゃんと一緒に、この氷の海で沈むの!!」
『ふん! 貴様を潰してすぐに離脱してやる!!』
氷塊が降り注ぐ中、インヴィンシブルがローに迫る。
(あっしー……『ちぃ』ちゃん……らーくん……。
さよなら、です……)
ローは今度こそ、そのドリルを避けられないと目を瞑った。
その時だ。
スッ……。
「あっ……」
後ろから優しい温かさがローを包み込む。それはローが求めていて、しかしここにあってはいけない温かさ。
それは……。
「ろーちゃん!!」
「らーくん!」
それは羅號だった。ローを後ろから左手で羅號が掻き抱いている。
死を覚悟し、もう会うことはできないと思っていた羅號がそばにいることにローは嬉しさがあったが、それ以上に混乱の方が大きい。
何故なら、ローが死を覚悟してまで時間を稼いでいたのは羅號を生かすためなのだ。しかしこのままでは2人揃ってインヴィンシブルのシールドドリルの餌食となってしまう。それでは何のためにローが戦ったのか意味がない。
『ハハハッ、愚かな!! その小娘のために現れたか!
2人で一緒に潰れてしまえ!!』
「らーくん! ろーちゃんはいいから逃げて!!」
まだ10分経っていない。ならば羅號の『零式重力炉』は再起動していないのだ。それでは羅號はインヴィンシブルには勝てない。だが、そんなローに羅號は微笑みながら言った。
「大丈夫だよ、ろーちゃん。
ろーちゃんのおかげで……すべての準備は整った!!」
そして羅號は右手に接続されたドリルを構え、吼える。
「起きろ、『零式重力炉』!!」
その声に応えるように、羅號の艤装中枢から光が溢れる。
キュィィィィン!!
羅號の心臓とも言える超機関、『零式重力炉』が再び目覚め咆哮とともにその超パワーを生み出していく。そしてそのパワーによって、羅號のドリルが高速回転を始めた。
『な、なにぃぃぃ!?』
驚愕するインヴィンシブルのシールドドリルと羅號のドリルが激しくぶつかり合った。回転するドリル同士が拮抗し、火花が散っては冷たい海に溶けていく。
『バカな、その力……重力炉が起動しているな!
この短時間でもう再起動が!?』
インヴィンシブルの指摘通り、ローが時間稼ぎを始めてから10分経っていない。そのではまだ『零式重力炉』の再起動はできないはずだ。
同じように考えていたローに、羅號は微笑みながら答える。
「ろーちゃんは僕のために命を賭けて時間を稼いでくれると言った。
だからろーちゃんを信じて、僕も自分の命を賭けたんだ」
『零式重力炉』の再起動のために必要なエネルギー、これを補助システムから捻出すれば確かに10分の時間がかかる。しかし……非常用にプールされているエネルギーすべてを再起動のために廻せば話は別だ。羅號はそれをすることで『零式重力炉』の再起動までの時間を短縮したのである。
しかし、それは危険なギャンブルだ。
非常用のエネルギーをすべて再起動のために使ってしまっては、本当の意味で羅號は身動きができなくなってしまう。ローが時間稼ぎに失敗したのなら、何の抵抗もできずに轟沈させられていただろう。しかし羅號はローを信じて、自分の命をチップにしたそのギャンブルに勝ったのだ。
ドリル同士をぶつけ合わせる羅號とインヴィンシブル。その頭上から、巨大な氷塊が沈んできた。
『くっ、氷塊が!』
「ろーちゃん、しっかり捕まって! 離脱するよ!!」
このままでは双方氷塊に潰されると判断した羅號とインヴィンシブルは同時に後退を開始する。だがお互いにそれで終わらせる気はなかった。
『魚雷発射!!』
「魚雷装填! 撃てぇぇぇ!!」
インヴィンシブルの誘導魚雷が迫り、羅號は左手に抱いたローを守るように抱きしめると装甲を前面に押し出した。羅號の装甲に魚雷が直撃し爆発と気泡が巻き起こる。しかし羅號の強固な装甲はその程度では破れない。無論インヴィンシブルもそれは承知の上で目くらましと、運が良ければ衝撃でレーダーやソナーといった電子装備にダメージを与えられるかくらいのつもりだった。
羅號から放たれた魚雷も同じで、インヴィンシブルの装甲を破ることはできないのだが……しかし、そんな中で羅號は不敵に笑うとローへと話しかける。
「いくよ、ろーちゃん。 2人で一緒にあいつを倒そう!!」
「はい、ですって!!」
ボンッ! ボンッ!! ボンッ!!!
羅號の魚雷がインヴィンシブルに炸裂した。しかしその魚雷は爆発の衝撃を発生させることはなく、その変わりのように大量の泡を発生させる。
『こ、これは!?』
「欺瞞用の
『ソナーが!? 奴を失探する!?』
大量の特殊な泡によって敵ソナーをかく乱する欺瞞用特殊魚雷、それが『
『くそっ!?』
慌ててインヴィンシブルはその泡から脱出すると早速ソナーで羅號の位置を探り始めるが……。
~♪~~♪
『なんだこれは? ところどころから……音楽だと?』
ソナーから聞こえたのはいくつものメロディーの音楽だ。
『『軍艦行進曲』……『メーサーマーチ』……『海色』……『加賀岬』……『艦娘音頭』……地上の音楽か?』
その詳細データを見ながらインヴィンシブルは困惑した。
『……わからん。欺瞞だとしても何の意味があるというのだ?』
その意味不明な行動が、物事を深く考える性格のインヴィンシブルの注意をそらす。
相手の意味不明なもので一瞬でも気をそらす……ただそれだけが羅號たちの狙いだとは気付かず、インヴィンシブルはまんまとその術中にはまり、ありもしない裏を深読みしてしまう。
その時、インヴィンシブルのソナーが後方から迫る水中推進音を捉えた。魚雷だ。
『そこか!!』
振り向きざまインヴィンシブルは自慢のシールドドリルを構えた。シールドドリルに命中した魚雷は、しかしインヴィンシブルの防御力の前にまったく損害を出すことはできない。
『地上の万能戦艦がこざかしい真似を! いますり潰してくれる!!』
すぐにシールドドリルが回転を始めるが……。
『!? 万能戦艦じゃない!?』
そこにいたのはローだった。彼女は不敵な顔で笑っている。
その瞬間、インヴィンシブルの背中に悪寒が走った。その予感に従いインヴィンシブルは右に……左手に持つシールドドリルとは逆側にある右、そこにある『氷塊』に視線を巡らせた。
……いや、それ以前に……泡にまかれる前に、こんなところに『氷塊』など浮いていただろうか?
『しまっ……!!?』
「もう遅い!!」
ガシャァァァン!
回転するドリルで氷を砕きながら羅號が突撃してきた。
羅號は
「おぉぉぉぉぉ!!!」
『ぐがぁぁぁぁ!!?』
シールドドリルで防ぐひまはなく、羅號のドリルがインヴィンシブルの右わき腹を貫く。装甲を穿ち貫くが羅號のドリルは止まらない。そのままインヴィンシブルの身体を貫き、艤装の中枢を粉々に破壊する。
『私が……この私が野蛮な地上の猿どもなんぞにぃぃぃ!!』
羅號のドリルがインヴィンシブルの艤装を真っ二つに叩き割った。インヴィンシブルの身体と砕けた艤装、そしてシールドドリルが海底に向けて沈んでいく。
「ろーちゃん!!」
羅號は水柱でローを抱きかかえると、そのまま海面を目指す。
『れ、レムリアに栄光あれぇぇぇぇぇ!!!』
そして水中でインヴィンシブルが大爆発を起こした。
巻き起こる水中衝撃波からローをかばいながらそのまま海上へと浮上する。
「敵ラ級万能戦艦……撃沈。
ろーちゃん、ここをすぐに離れて! 僕はもう1人の万能戦艦と……戦う!!」
「うん、らーくん気を付けて。
それでみんなで、みんなで帰ろうね!!」
「うん!」
ローに答えると、羅號はゆっくりと空中へと身体を浮遊させるのだった……。
ろーちゃんサイド、終了。朝潮&ちぃサイドに続きます。