艦隊これくしょん -轟ケ天ニ-   作:キューマル式

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エピローグ
結末 タノシイウミのおとぎ話(前編)


 

 

 『深海大戦』と呼称されることになるこの20数年にも及ぶ大戦争は、こうして戦争を主導していたレムリア制圧派の排除と、それに伴うアネット代表による新政権の発足、そしてそのレムリア皇国との間で和平友好条約が締結されたことで終結した。

 無論、世界の混乱はしばしの間は続くことになるだろうが、戦場で散る命が無くなり、世界は明日への希望を取り戻していく。

 その世界で、この戦争を終わらせる物語を織り成した人々の、その後を紹介していく。

 

 

 戦艦『長門』

 本名、筑波有希。大戦終結後、戦傷により正式に艦娘を退役するが提督へと転向。艦娘時代の経験を生かした現場第一主義な指揮は部下には好評である。

 レムリア代表であるアネットともその後も懇意にしており、レムリア製の特殊な義手と義眼を彼女から贈られた。

 意外にも教育ママであることが発覚し、提督としての仕事と義息子の羅號の教育とで忙しくも充実した日々を送る。

 

 

 重巡『鳥海』

 本名、藤見黒子。大戦終結後、その経験と分析能力を買われ作戦本部へと入る。

 戻ったのちは戦友である長門提督の鎮守府にて筆頭参謀として勤務、大戦時と変わらず長門をうまくフォローする名女房役を務める。

 最近、母の紹介で見合いをした相手と交際中らしく、それをネタに戦友たちにからかわれている。

 

 

 軽巡『夕張』

 本名、石垣苺。大戦終結後、レムリアへの技術研修生へと選ばれ留学。

 帰国後は戦友である長門提督の鎮守府にて研究部の主任を務める。

 親友である明石と現在どちらが先に彼氏ができるかで競争中だが……。

 

 

 工作艦『明石』

 本名、真田幸子。大戦終結後、夕張と同じくレムリアへの技術研修生へと選ばれ留学。

 帰国後は戦友である長門提督の鎮守府にて工廠長を務める。

 親友である夕張と現在どちらが先に彼氏ができるかで競争中だが……同期の友人だった海軍本部所属の大淀に紹介された男性と交際しており、いつ言いだしたものかと悩んでいる。

 

 

 駆逐艦『吹雪』

 本名、九条院吹雪。大戦終結後も駆逐艦娘として様々な任務で大戦中に相棒となった満潮とともに活躍する。

 その活躍が目に留まり、駆逐艦娘の指導教導艦の誘いを受け、受諾。

 その堅実かつ分かりやすい指導は、多くの優秀な駆逐艦娘を世に送り出すことになる。

 

 

 駆逐艦『満潮』

 本名、海藤満子。大戦中に相棒となった吹雪とともに大戦終結語も駆逐艦娘として様々な任務で活躍。

 その活躍が目に留まり吹雪とともに駆逐艦娘の指導教導艦の誘いを受けるもこれを辞退、あくまで現場に居続けることを選ぶ。

 その豊富な経験からくる活躍は、数多くの命を救った。

 

 

 駆逐艦『秋雲』

 本名、田中優美聖秋香奈。大戦終結後、ほどなくして退役。夢であった漫画家への道を歩むことになる。

 その作品はシリアスな戦争ものからギャグまで幅広く、多くのファンを持つことになった。

 また代表作であるノンフィクション漫画『抜錨! 万能戦艦羅號』は大戦当時の羅號の様子を知る資料として有名。

 しかし本人は「機密のせいで半分も真実を描けていない」と嘆いている。

 

 

 筑波 貴繁海軍大将

 『轟天作戦』での活躍によって元帥へと任命される。日本・レムリア両国の関係のために奔走し、混乱が一段落すると引退を宣言。

 元帥の地位にいたのはわずか1年程度であった。

 その後は後任の天城元帥にすべてを任せ、妻や孫とともに穏やかな日々を送る。

 

 

 天城 仁志海軍大将

 『轟天作戦』で活躍し、のちに元帥として筑波貴繁の後任を務める。本人は厄介ごとを自分に押し付け隠居したといたくご立腹であった。

 初孫の誕生を心待ちにしながら、日本と同盟国のレムリア、そして他国との情勢を見守る。

 

 

 筑波 茂雄提督

 『轟天作戦』で指揮官の1人として活躍、若くして少将に昇進し呉鎮守府へ異動となる。

 婚約者であった天城貴子と正式に結婚。しかし仕事のため新婚生活を満喫することができないのが不満であるらしい。

 

 

 航空母艦『天城』

 本名、天城貴子。大戦終結後、艦娘を退役し婚約者であった筑波茂雄提督と正式に結婚、専業主婦として家庭に入る。

 現在、第一子を妊娠中。

 我が子の健やかな成長を祈りつつ、夫を支える日々を送っている。

 

 

 筑波 八重

 元『榛名』。義孫の羅號にさまざまな教育を施しながら穏やかに暮らすが……。

 ひそかに10年以内にひ孫を抱くという目標を掲げ敷地内の一角を寮のように改装、羅號の嫁候補者たちを集め、教育に力を入れる。

 

 

 天城 瑞貴

 元『瑞鶴』。戦争が終わり、すべての弔いが終わったため煙草はきっぱりとやめた。

 仕事も退職し、今はのびのびと平和な生活を送っている。

 今は初孫の誕生を今か今かと待ちながら、その準備に余念がない。

 

 

 熊之宮 彩香

 元『熊野』。夫のオーランチオキトリウムの培養研究が完成、日本を産油国へと変える。

 そのほかレムリアとの貿易によって莫大な利益を得て、日本国内のさらなる発展を主導した。

 朝潮を養子として引き取り、八重とともに英才教育を施す。

 

 

 アネット

 制圧派を一掃後、レムリア皇国の樹立を世界に宣言し国家代表へと就任した。

 戦争での謝罪や保障、技術の守秘など国家としての難しいかじ取りを迫られながらも国民のために奔走する。

 長門とは今でも個人的に付き合いが深く、レムリア製の特殊な義手と義眼を送った。

 

 

 港湾棲姫『ウィン』

 レムリアの国家再編後、王室警護艦隊『ロイヤルガード』の旗艦に就任する。

 亡命艦隊時代を超える忙しくも充実した日々を送り、日本に留学した妹を少しだけうらやましく思っている。

 

 

 戦艦タ級改フラグシップ『メリー』

 レムリアの国家再編後、王室警護艦隊『ロイヤルガード』へと所属。

 結局、望んでいた長門との戦いは、長門が戦傷で退役してしまったことで果たせなかった。

 今では定期的に行われる日本との演習で、長門の指揮する艦隊を破ると息巻いている。

 

 

 戦艦ル級改フラグシップ『アイ』

 レムリアの国家再編後、王室警護艦隊『ロイヤルガード』へと所属。

 レムリア制圧派の残党などとの戦いで、常に先陣を切る。

 いまだひまにならない、充実した日々に満足している。

 

 

 空母ヲ級改フラグシップ『ヨーク』

 レムリアの国家再編後、王室警護艦隊『ロイヤルガード』へと所属。

 その後、日本の空母艦娘たちと立ち上げられた『航空戦術研究会』に参加。

 空母戦術のさらなる発展に貢献する。

 

 

 軽巡ツ級『アトラ』

 レムリアの国家再編後、王室警護艦隊『ロイヤルガード』へと所属。

 防空戦についての研究会を立ち上げ、空母艦娘たちとは切磋琢磨しあう仲となる。

 

 

 重巡ネ級 『イリス』

 レムリアの国家再編後、王室警護艦隊『ロイヤルガード』へと所属。

 その後、『ちぃ』の日本留学に際してその護衛として同行。

 その際に日本人男性と交際、初の日本人と深海棲艦のカップルとして世間を騒がせることになる。

 

 

 万能戦艦『ガスコーニュ』

 大戦終結後、捕虜返還によってレムリアに帰国、レムリア皇国軍総旗艦に就任する。

 大軍指揮というあまり得意でない分野で悪戦苦闘、そして戦場へ出ることが少なくなったことを嘆きながらも、日々書類の束と格闘する。

 

 

 空母水鬼『ベル』

 大戦終結後、捕虜返還によってガスコーニュとともにレムリアに帰国、レムリア皇国軍総旗艦付の秘書艦となり、女房役として公私ともにガスコーニュを支えていく。

 彼女とガスコーニュとの結婚式は日本からも要人を招き、大々的に行われた。

 

 

 そして……羅號と3人の少女たちはというと……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 温かい日差しが差す廊下を、パタパタという軽やかな音を響かせながら朝潮が走っていた。

 その表情は抑えきれない笑顔で溢れている。

 

「ふふっ……今日のおかずは特に上手にできたって八重おばあ様も褒めてくれたし、羅號も美味しいって言ってくれるかな?」 

 

 そんなことを考えているうちに目的地に到着、朝潮は手鏡で髪を確認してからドアをノックした。

 

「羅號、起きてますか?

 朝食、できましたよ」

 

 しかし室内から返事はない。朝潮は「仕方ない」と言いながらも、しかし嬉しそうにそのドアを開ける。

 室内に敷かれた布団からは安らかな寝顔の羅號の姿があった。その寝顔を見ているだけでなんだか幸せな気持ちになりずっと見ていたいと思ってしまうものの、このままでは遅刻すると朝潮は羅號を起こすことを決意する。その時、朝潮はなんだかおかしなものに気付いた。

 羅號の布団のふくらみが明らかに大きすぎる。具体的に言うと羅號のほかに『あと2人ほど入っていそう』なふくらみだ。

 

「……」

 

 朝潮は無言のまま、羅號の布団をはぎ取った。すると……。

 

「えへへっ……らーくん……」

 

「ラゴウ……あっタかイ……」

 

 そこには予想通り、気持ちよさそうに眠るローと『ちぃ』の姿があった。朝潮は幸せそうに眠る2人に、こめかみにピクピクと血管を浮かせる、そしてゆっくりとこぶしを握り締めた。

 

「何をやってるの、この不審な潜水艦と姫級!!」

 

 

 ゴチン! ゴチン!

 

 

 朝の部屋に、2つの重い音が響いた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「えぅ……あっしーの対潜爆雷(こぶし)、痛いですって」

 

「アサシオ、暴力イクナイ」

 

「ふんっ! 朝ごはんの用意もせずに抜け駆けしてるからです!」

 

 頭を涙目でさするローと『ちぃ』を尻目に、朝潮は素知らぬ顔でごはんを放り込む。

 

「だから役割分担です、って!」

 

「アサシオ、ゴハン作る。

 ローと『ちぃ』、ラゴウを起こしニ行っタ」

 

「それで一緒に寝ちゃったら意味ないじゃない!」

 

 そんな少女たちのいつもの朝の風景、それを羅號が食事をしながらなだめる。

 

「まぁまぁ、朝潮。

 ろーちゃんも『ちぃ』ちゃんも悪気があったわけじゃなんだし、ね?」

 

「まぁ、いいですけど……」

 

 羅號に言われてしぶしぶといった感じで朝潮は引き下がる。

 

「ん……? 今日のだし巻卵、甘くて美味しいね!」

 

 羅號がそう言うと、朝潮が顔を赤くする。

 

「どうしたの、朝潮?」

 

 すると朝潮の代わりに、奥からやってきてちょうど食卓についた八重が答える。

 

「今日のだし巻卵、朝潮ちゃんが作ったのよ」

 

「ホントに! 朝潮、美味しいよ!」

 

「そ、そう。 頑張ったかいがあったわ」

 

 羅號に褒められ照れくさそうに顔を赤くする朝潮、その様子にローと『ちぃ』は面白くなさそうに頬を膨らませていた。その様子がおかしいのか八重はクスリと笑うと、ローと『ちぃ』に耳打ちする。

 

「よかったら料理教えてあげましょうか?

 羅號、喜ぶと思うわよ」

 

 八重のその言葉に2人はコクンと頷く。八重は2人の感情をうまくコントロールして、花嫁修業を着々とさせているようである。

 と、そんな八重が時計を見ながら言った。

 

「あら、もう時間じゃないの?」

 

「ホントだ、もうこんな時間だ!」

 

 言われて羅號たち4人は朝ごはんの残りをかき込むと、それぞれがランドセルを背負った。

 

「八重おばあちゃん、行ってきます!」

 

「行ってきます、ですって」

 

「行ってきます、八重おばあ様」

 

「イテキマース!」

 

 慌ただしく出て行った子供たちに微笑みながら、八重は朝食の片付けを始めるのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 温かな朝の陽ざしの差す学校へ続く並木道、羅號たち4人はそこを歩いていく。

 そう、『学校』である。

 羅號はあまりに特殊な条件の中で、トラック泊地で生まれた子である。そのため当然学校というものを知らない。そのため大人たち、特に義母である長門や義祖母である八重の強い要望で情操教育のためもあり学校へ通うことになったのである。羅號も学校というものには興味津々だったために乗り気であった。かくして帝都内の私立小学校にこうして制服を着て通う傍ら、有事には艦息として活動しているのだ。

 そして、羅號がそんな道を選んだのなら当然のように彼に恋する少女たちも同じ道を往く。『ちぃ』はレムリアからの留学という形で滞在し、ローや朝潮とこれまた3人揃って私立小学校の制服を纏って通学することにしたのだ。

 

「あはは……!」

 

「らーくん、機嫌良さそうだね」

 

 楽しそうに微笑みながら歩く羅號に3人も自然と笑顔になった。

 レムリアとの戦争は終わった。戦いの日々は終わり、勝ち取った温かな平和な日々がここにはある。

 

「うん! 昨日先生に聞いたんだけど、今日は転校生が3人も来るんだって。

 どんな子だろう? 楽しみだね!」

 

 そう言って羅號が他意のないニコニコとした顔で言ってくる。3人は顔は羅號につられて笑顔だが、胸中は複雑だった。何故なら、八重から密かに今日来る転校生たちの素性を知らされていたからである。

 転校生は3人とも、彼女たちと同じ艦娘だ。それぞれイタリア、英国、米国が送り込んできた人物であり、その目的は羅號だと聞かされていた。羅號と懇意になってその力や技術を引き出すための工作目的、早い話がハニートラップ要員だということである。

 戦争は終わったが、それですべて解決するわけでもない。国同士が影でお互いの足を引っ張り合う、『影の戦争』は今現在も継続中であり、これからも終わることはないだろう。そしてその渦中には羅號の姿がある。

 3人は何かあっても必ず羅號を守ると心の中で決意を固めながらも、ある予感がしていた。

 

(でもなんだか……)

 

(その3人、しばらく後には……)

 

(仲間にナッテる気がスる……)

 

 自分たち羅號を想う3人娘が6人娘に、そしてさらに増えていくんじゃないかという漠然とした、それでいて確信に似たものがある。

 だが、そうだとしても今しばらくは……。

 

「毎日が楽しいね!

 行こう! ろーちゃん、朝潮、『ちぃ』ちゃん!」

 

 楽しそうに言う羅號に、3人も頷き返す。

 今しばらくはこの心地よい場所は3人だけの特等席だ。それを堪能しながら学校へ向けて歩いていく。

 

 こんな心地よい日々がいつまでも続きますように……誰かの漏らした声が、温かい日差しの中に溶けていった……。

 

 

 

 

 

 

 潜水艦『呂500』

 本名、エミーリア=フォン=エッシェンバッハ。大戦後、実家であるドイツからの帰還命令によって一時帰国。羅號が欧州へ乗り込むなどの動乱と紆余曲折ののちにドイツからの留学という形で日本に戻り、のちに帰化を希望する。

 筑波八重の教育の賜物で潜入工作員(スパイ)としての才能を完全に開花、羅號とともに学校に通いながらも羅號や仲間に降りかかる災いを事前に防ぐために活動し、のちに『東洋でもっとも危険な少女』とも称されるようになる。

 

 

 駆逐艦『朝潮』

 本名、香原朝霞。戦争孤児であり身寄りのなかった彼女は大戦後、『熊王グループ』総帥である熊之宮彩香に養子として引き取られる。

 熊之宮彩香と筑波八重の英才教育の結果、戦闘能力だけでなく経済・経営管理・交渉に関しても才能を開花、頭脳労働担当としてその後も羅號を表で裏で支え続けることになった。

 貯金が趣味だと発覚し、のちにその貯金額がいつの間にかちょっとした国の国家予算規模になっており、各国が戦々恐々として羅號たちに手が出せなくなる状況を作り出す。

 

 

 北方棲姫『ちぃ』

 大戦後、一度はレムリアに帰国するも、留学という形で日本に戻ってくる。

 筑波八重の英才教育の結果、もともとから素質があった戦闘に関する才能が完全に開花、万能戦艦を除けば地球上で最強の戦力の一つとして数えられるまでに成長する。

 ローの情報収集能力、朝潮の経済力と知力、『ちぃ』の単純な暴力と3人揃うと手がつけられない状況になり世界各国から恐れられるが、本人は難しく考える性格ではなく、今日も羅號や友達を守るために全力を尽くす。

 

 

 万能戦艦『羅號』

 大戦を終結させ、『伝説』となった少年。

 義母や義祖母の方針で学校に通いながら、有事には艦息として活動。

 そのルックスと優しさで他意なく天然に多くの少女たちを骨抜きにしていき、各国のハニートラップ要員たちを次々に陥落させていった。彼の住む筑波屋敷の寮は『蜂蜜御殿』と揶揄されるまでになる。しかし本人にそのつもりはなく、ごくごく天然で悪意のない無自覚な女誑しとして、周囲の少女たちを困らせていく。

 その後も数々の戦いを重ね、常に人類の先頭にたって平和の海のために戦い続ける。

 

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