艦隊これくしょん -轟ケ天ニ-   作:キューマル式

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ヒロインの1人の登場。
ロリっ子には、同じくらいの歳の男の子が一番合うと思います。
……ショタ×ロリ?



第三話
潜航 警戒線をぬけて 前編


 らーくんのこと? うーん……最初は何にも思わなかった。

 意外って? あはは、だって最初は余裕、無かったですから……。

 

 あの『タイダルウェブ』で、イムヤもシオイもマル・ユーもイクもはっちゃんも……でっちだってみんな沈んじゃった。

 美味しいごはんをつくってくれたタイゲーも……ビスマルク姉さんもオイゲンさんも、レーベもマックスも……みんなみーんな沈んじゃった。

 なんで私だけが生き残ったのか、今でも分からない。本当に、ただただ運がよかっただけって、今でも思ってるの。

 でも生き残ったからって、その先に待ってるのが天国(ヒンメル)とは限らない。

 私も、逝ってしまったみんなのことを思い出してずっと塞ぎこんでたよ。

 でも……泣くことだけは出来なかったの。

 あの状況では、泣くより先にやることがあるって、そう思ってずっと気を張ってたから……。

 

 そんな時にね、あの作戦をらーくんと一緒に受けたの。

 たった2隻の、2人っきりの敵中突破本土通信作戦……。

 

 ふふっ……アオーバ、ローちゃんたち潜水艦はね、『狼の魂』を持ってるの。

 そう、がるるー、って感じの。

 深く静かに潜み、必殺の牙で敵の喉笛に喰らいつく。輸送艦でも戦艦でも空母でも、どんな相手でも等しく沈める牙を持つ狼の集団……それが『群狼』、それが潜水艦隊、それが潜水艦娘なの。

 らーくんはね……大きな大きな狼さんだったの。

 ただ、らーくんはそんじょそこらの狼じゃない。神話のフェンリル狼みたいな……神様だって喰い殺す牙を持つ狼さん。

 群れの仲間を決して見捨てず、鋭い牙と強力な顎で獲物を狙う、優しくて強いハンターさん。

 えっ、あの優しいらーくんのイメージが狼さんって、意外?

 ふふっ、そうでもないよ。

 らーくんは狼さん。だって……食べられちゃった獲物の私が言うんだもん♪

 

 ……らーくんのことをどう思ってるのかって、そういう話だったよね?

 Ich liebe dich(イッヒ リーベ ディッヒ)

 ……らーくんへの想いを言葉にするなら、たったそれだけの、短く単純な言葉だよ。

 

 

 

             ――――――『呂500』へのインタビューより抜粋

 

 

 

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

 

 

「この海原に抱かれ、安息の眠りについた我らの戦友たちに……敬礼!!」

 

 朝もやけむる桟橋に、トラック泊地に生き残った全員が揃っていた。

 摘んできた花束を海に投げ入れ、長門の号令のもと全員が海に向かって敬礼を行う。

 しばしの黙祷。

 全員の脳裏には、もはや会うこと叶わぬ数多くの戦友たちとの思い出が去来していることだろう。

 

「……全員、なおれ」

 

 やがて、長門の言葉とともに全員が敬礼を解く。

 

「みんな、あの戦いをよく生き残ってくれた。

 知っていることも多いかも知れんが、今の我らがトラック泊地の状況を説明する」

 

 そして長門は今の状況を、包み隠さず話しだす。

 

「まず、知っての通りだが提督は敵の攻撃によって名誉の戦死を遂げられた。

 総旗艦であった大和も轟沈。よって戦時緊急措置によってこの私、長門が臨時艦隊司令を務めさせてもらう。

 我らがトラック泊地は現在、危機的状況にある。

 各種施設は完全に破壊され、備蓄されている資材や食料もわずか。

 戦力に関しては……言わずもがな、だな」

 

 そう言って少しだけ肩を竦めて苦笑する。

 

「だが、私は何一つ諦めたわけではない。

 ここにいる全員が生き残るため、最大限の努力をするつもりだ。

 しかし、私だけの努力ではこの状況を突破することはできん。この絶望的な状況を突破するには、皆の力が必要なのだ。

 皆も親しかった戦友たちが倒れ、悲しみに暮れているのは分かる。だが今はそれを振り払い、最大限の努力をして欲しい。

 おそらく、先に逝った者たちもそれを望んでいるはずだ。

 各員、現状に腐らず最大限の努力をせよ!

 ……私からは以上だ」

 

「長門臨時司令に、敬礼!!」

 

 鳥海の号令のもとに、再び一同敬礼を行う。

 しばらくして敬礼を解いた後、今度は鳥海が全員の方を向いた。

 

「これから今日の任務を言い渡します。

 まず朝潮と満潮は明石とともに、施設の修復と使用可能な物資の捜索を続行します。

 吹雪と秋雲は、私と夕張とともに出撃、一時休憩所からの物資の引き揚げ任務につきます」

 

 実はこの周辺のいくつかの無人島には、長期遠征のときの休憩所として物資を貯蔵しているところがいくつかある。

 その量はけっして多くは無いが、かき集めればそれなりの量にはなる。今のトラック泊地には絶対に必要な物資だ。

 

「出撃時刻は0730、各員対潜・対空警戒を厳とせよ。

 もし敵を見つけても戦闘行為は禁止、全力で逃げに徹します。

 各員、何か質問は?」

 

「あのぉ……」

 

 そこで恐る恐るといった感じで、羅號は手を挙げた。

 

「僕は一体、何をすれば……」

 

「ろーちゃんも名前、呼ばれてないの」

 

 名前の呼ばれていない羅號の言葉に、同じく名前を呼ばれていないローが続く。そんな2人には鳥海ではなく、長門が答えた。

 

「お前たち2人には特別任務を任せる。

 このあと部屋に来てくれ、そこで任務を説明する」

 

 長門の有無を言わせぬような雰囲気に、羅號とローは思わず顔を見合わせた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 羅號とローが連れだって臨時司令所となっている部屋へ来ると、待っていた長門たちから、その特別な任務についての説明を受ける。

 

「本土への接近作戦、ですか?」

 

「ああ」

 

 羅號の言葉に長門は頷くと、鳥海が広げた地図で状況を説明する。

 

「あの深海棲艦の大攻勢にさらされたのはこのトラック泊地だけではありません。

 リンガ、ラバウル、シュートランド、ブイン、タウイタウイ、パラオ、ブルネイ……各地との最後の交信によれば、どこもトラック泊地と同等の数の深海棲艦に襲われています。

 各地の保有していた戦力はこのトラック泊地と同等か少ないくらい……その戦力では防衛が難しいことはこのトラック泊地の現状が物語っています。

 このことから、正直に言って各地ともに壊滅的な打撃を受け、もはや拠点としては機能していないでしょう……」

 

 そう言って鳥海は各海域に深海棲艦をあらわす駒を置く。見事なまでに南方の各海域が深海棲艦の勢力圏だ。

 

「この事態に対し、私たちは早急に本土との連絡を取り指示を仰がなければなりませんが……」

 

 そこでチラリと鳥海は明石を見ると、明石も心得たとばかりに頷き鳥海の言葉を継ぐ。

 

「肝心の本土との通信を可能にする、大出力通信機が施設ごとやられてしまいました。

 私も夕張も頑張ったんですが……力及ばず、復旧は不可能です」

 

「このままこのトラック泊地にいても、本土との連絡を取ることは永久に不可能よ。

 そこで……」

 

「本土への接近、ってことなの?」

 

 ローの言葉に鳥海が頷き、今度は後ろの夕張が言葉を継いだ。

 

「出力の低い通信機なら、何とか直せたわ。

 これを持って隠密裏に本土に接近、こちらの現状を伝える圧縮暗号電文を発信。

 そして本土からの圧縮暗号電文を受信し、それをトラックまで持ち帰って欲しいの」

 

「このトラック泊地の命運を決するかもしれん、重要な任務だ。

 かの国ドイツからの長い道のりを深海棲艦の目を掻い潜り、この日本にまでやってきた君なら、きっと成功させてくれると信じている。

 ……頼む」

 

「了解、ですって。 ナガトアドミラール!」

 

「私は臨時司令であって提督ではないのだがな……」

 

 綺麗な敬礼をもって任務を受諾するローに、長門は苦笑しながら敬礼を返す。

 

「あれ、それじゃ僕は何をすればいいんですか?」

 

 任務内容から蚊帳の外の状態の羅號は首を傾げる。そんな羅號に、長門は苦虫をかみ殺したような顔で言った。

 

「羅號の任務はローの支援だ。

 敵水上部隊に対して打撃を加え、その気をそらす。

 それによって敵の対潜警戒網に穴を開け、ローの本土接近の支援をするんだ」

 

 単艦での囮任務……普通ならこれは『死ね』と言っているも同然だ。いくら羅號が隔絶した力を持っているからと言っても絶対の安全など有るわけがない。それなのにこのような任務を言い渡すのは長門にとっても断腸の思いだ。

 しかし……。

 

「了解です!」

 

 羅號は何の迷いも憂いもなく、真っ直ぐな視線ですぐに任務を受諾したのだった。

 その姿に、決して見せはすまいと思っていた情が、長門たちに湧き上がる。

 

「……作戦の成否はいい。

 もしいざとなれば任務を放棄してもいいから、全速力で逃げろ。

 羅號の馬力と速度なら、ローを曳航しても深海棲艦を振り切るに十分な高速度が得られるはずだ。

 すべての責任はこの長門が持つ。

 2人とも、何でもいいから必ず生きて帰りなさい」

 

 その言葉に、鳥海も明石も夕張も、同意するように頷いた。

 全員、もう年下の子供たちが沈んでいくのを見たくはないのだ。だからこそ、最悪の場合は任務を放り出して逃げろという。

 しかし、そんな年長者たちからの優しさを、羅號は首を振った。

 

「ありがとうございます、心配してくれて。

 でも……僕は大和型四番艦、万能戦艦『羅號』です。

 僕はどんな困難な状況だろうと、みんなを守って必ず風穴をこじ開けて見せます。

 ローちゃんだって、必ずやってくれます。

 だから命じてください、『必ず作戦を成功させよ』と」

 

 その姿に、長門は気弱なセリフを2人に吐いたことを心から恥じた。

 この子たちはナリは確かに幼い少年と少女だが、間違いなく人類を深海棲艦から守るために戦う人類の希望の存在なのだ。

 

「……分かった。

 ではトラック泊地臨時司令であるこの長門が命じる。

 作戦を完遂し、無事帰還せよ!

 以上だ」

 

「了解!」

 

Jawohl(ヤヴォール)!」

 

 羅號とローは敬礼をして、臨時司令所から出ていく。その後ろ姿を見送って、長門は一つ息をついた。

 

「私もダメだな……。

 作戦が始まる前から『失敗してもいい』など……あの子たちに対するひどい侮辱だった」

 

「そうですね……。

 私も長門さんと同じことを考えてましたが……自分の浅はかさを恥じてます」

 

「あの子たちは正しく、人類の希望たる魂を持つ艦娘……と艦息。

 本当に立派な子たちね」

 

 鳥海はメガネを直しながらしみじみ呟き、夕張に至っては感動のあまり目頭を押さえていた。

 

「でも……あんないい子たちだからこそ、もう誰にも沈んで欲しくないです。

 これは譲れない本音ですよ」

 

「それは全くの同感だ、明石。 だからこそ、あの子たちを心から信じよう……。

 頼むぞ、羅號、ロー。

 必ず作戦を成功させて、無事に帰ってきてくれ」

 

 長門はそう、虚空に祈るように呟いたのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 さっそくトラック泊地を出撃した羅號とローの2人は、ローに合わせたゆっくりとした速度で本土方面へと進んでいた。

 空は快晴、どこまでも澄んだ綺麗な空は時間が許すのならばゆっくりと眺めていたいものだ。

 しかしこの空の下で、今も深海棲艦との戦いは続いている。

 

「どう、らーくん?」

 

「……うん、今のところ対空・対水上レーダーともに感なし。

 ソナーの方にも敵の姿は見当たらないよ」

 

 羅號は艦息としての感覚を広げ、敵の有無を確認する。

 羅號の高性能な電子装備は、高精度かつ超長距離の敵を正確に見つけ出す電子の目だ。しかしその目にはまだ、敵の姿は捉えられない。

 

「すごーい、らーくん!

 らーくんって、いろいろできる戦艦さんなんだね。

 ビスマルク姉さんよりすごいかも」

 

「いろいろできるって言っても、実は僕も自分のできることがよくわかってないんだけどね」

 

 ローに褒められて照れ臭そうに頬を掻く羅號。

 羅號は、未だに自分の持つ能力すべてを把握できてはいない。

 普通の艦娘なら同型艦や過去の実在の艦艇からその能力を推し量れるが、羅號は『架空艦』であり、その能力を判断する材料がない。

 本来なら演習などで完熟させるべきだが、そんな時間はないため未だに羅號は自分で自分の能力がいまいち掴めていなかった。

 だからいろいろできると言われても、どうしても曖昧な答えになってしまう。

 

「ん!?」

 

 その時、羅號の顔色が変わる。

 

「対水上レーダーに感あり。

 反応の大きさから……恐らく敵水雷戦隊」

 

 潜水艦の天敵とも言える軽巡と駆逐艦からなる水雷戦隊……その報告にローの顔つきも真剣なものになる。

 間違いなく、本土への対潜警戒網の一端だ。

 

「……ここからはしばらく別行動だね。

 気をつけて、ろーちゃん」

 

「うん。

 らーくんも気を付けて、って」

 

「もし何かあったら通信でも何でもいいから合図を送って。

 絶対、助けに行くから」

 

 今から単艦で大量の敵と撃ち合いを始めるというのに、さも当然のようにピンチには助けに行くと言ってのける羅號に、ローはちょっとだけ意地悪く聞いた。

 

「本当? 水の中でも?」

 

「ろーちゃんのピンチなら駆けつけるよ」

 

「あはは、らーくん言い過ぎですって!」

 

 大真面目な表情で返され、冗談だと分かっていても吹き出してしまう。やがて一しきり笑うと、ローは真剣な潜水艦娘の顔をしていた。

 

Danke (ダンケ)

 助けに来てくれるって言葉、冗談でもうれしかったです、って」

 

 それだけ言って、ローは海中へと潜航を開始する。それを見送ってから、羅號は艤装の装備を構えた。

 

「実弾使用は最小限にしないと……」

 

 トラック泊地の窮乏を知っているため、弾薬の消費はなるべく抑えたい。そこで主砲の一斉射で牽制したら全速前進、中距離からの電子熱線砲(マーカライト・ファーブ)と冷凍光線砲という光学兵装で切り込み、ドリルによる極接近戦に持ち込む算段を立てる。

 

「仰角修正……」

 

 レーダーの情報を元に、羅號の巨大な50.8cm砲12門が未だにこちらに気付いていない敵水雷戦隊に向けられる。

 

「全主砲、薙ぎ払え!」

 

 大気を震わせ、巨砲が咆哮する。

 主砲斉射と同時に、羅號の主機である『零式重力炉』が唸りをあげ、莫大な出力を生み出していく。その出力はそのまま推進力に変換され、羅號はまるで放たれた弾丸のように海上を滑りだした。

 不幸なのは敵水雷戦隊だ。

 完全なアウトレンジからの一撃は警戒する間も与えず、巨砲の弾丸12発が天から降り注ぐ。羅號の超高精度の射撃管制による射撃は驚くほどの命中率だ。直撃を受けたものは真っ二つになって砕け散り、至近弾でもその衝撃が装甲を砕き、大浸水を発生させる。

 突然の奇襲に足の止まった敵水雷戦隊。

 そこに彼方から波しぶきを巻き上げ、爆走してくる巨大な艤装を背負った姿が映る。それが敵だと気付いたのは、その影から閃光が放たれ僚艦が吹き飛んだからだ。

 慌てて砲や魚雷を構えようとする敵水雷戦隊旗艦の軽巡ホ級が見たものは……回転するドリルが自分を粉々に貫く瞬間だった。

 

「敵水雷戦隊、撃破」

 

 最後に残っていた駆逐ハ級が冷凍光線砲の直撃によって凍りつき沈んでいくのを見て敵の全滅を確認するが、すでに羅號の対空・対水上レーダーは次の敵を捉えていた。

 空を見れば、不気味な深海棲艦側の航空機が編隊を組んで迫っており、彼方には新たな水雷戦隊、そしてその向こうには戦艦ル級・戦艦タ級といった水上打撃部隊の姿も見える。

 それは本来なら、単艦では出会ってはいけない陣容の敵だ。

 しかしそんな部隊を羅號は、絶対的な自信をもって『勝てる』と確信すると再び高速で駆け出す。

 そんな羅號に敵航空機が攻撃をかけようとするが、羅號の艤装のそこかしこからの対空砲火が火を噴き、的確にその敵機を叩き落としていく。

 運のいい雷撃機が魚雷を投下するが、機銃がうなり迫る魚雷を迎撃し、そもそも羅號の速度が速すぎて魚雷が振り切られる。投弾に成功した急降下爆撃機も、その速度のせいで当たらない。

 やがて羅號と敵艦隊の距離が詰まっていた。深海棲艦隊の砲が一斉に火を噴く。

 

「面舵いっぱい!」

 

 だが羅號はその高速性で素早く右に切り返しその一斉射を回避すると、そのままT字有利になるように位置を修正、電子熱線砲(マーカライト・ファーブ)と冷凍光線砲の射撃を開始する。

 軽巡ホ級と駆逐ロ級が電子熱線砲(マーカライト・ファーブ)に焼かれて炎を上げ、駆逐イ級が氷像となって砕け散る。

 その攻撃は戦艦ル級にも襲い掛かり、電子熱線砲(マーカライト・ファーブ)によって右手に持つ盾型の艤装を貫かれた。弾薬庫に引火したのか、そのまま凄まじい爆発をともなって艤装が吹き飛び、その右半身が焼け爛れる。

 だが戦意を喪失することのない深海棲艦は再び、羅號へと攻撃を仕掛ける。

 まず軽空母ヌ級の艦載機たちが再び急降下爆撃と航空雷撃を仕掛ける。大半を先程と同じように対空砲火によって叩き落とされながらも、何とか投弾を行う敵急降下爆撃隊。しかし、その爆弾は羅號には当たらない。

 だが、軽空母ヌ級の狙いはそれで十分だった。戦艦タ級と、左の残った艤装を構えた戦艦ル級がピッタリと羅號の進路上に照準している。

 軽空母ヌ級は自分の減らされた艦載機では羅號に打撃を与えるのは不可能だと判断していた。そこで軽空母ヌ級は自身の艦載機が全滅することを覚悟の上で突撃させ投弾、羅號の進路を限定することで戦艦タ級と戦艦ル級の砲撃のキルゾーンに誘い込んだのである。練度の高い艦娘なら艦載機の無謀な動きからその意図を読むことも出来ただろうが、経験値が絶対的に少なすぎる羅號にはそこまでの判断は出来なかったのだ。

 戦艦タ級と戦艦ル級の生き残った砲が一斉に火を噴いた。その砲弾は羅號へと明らかな直撃コースで迫る。戦艦タ級と戦艦ル級は羅號への痛撃を予想し、うすら笑いとも言える笑みが浮かべた。

 だが……その笑みはすぐに凍りつく。

 羅號が右のドリルと、左手で持つ50.8cm砲を交差させ、防御の姿勢を取った。

 ある砲弾は高速回転するドリルによって防がれ、空中で爆散した。

 ある砲弾は50.8cm砲の分厚い装甲に阻まれ、甲高い音と僅かなへこみだけを残して弾かれる。

 戦艦タ級と戦艦ル級の必殺の意思を持って放たれた砲弾は、羅號になんの効果も表さなかったのである。

 だが、それを考える暇は彼らには存在しない。羅號の両肩、50.8cm4連装砲2基8門が照準していたからだ。

 

「てぇぇぇぇぇ!!」

 

 必中距離で放たれた8発の砲弾は、残っていた戦艦タ級と戦艦ル級、そして軽空母ヌ級と生き残っていた駆逐艦級深海棲艦を撃ち抜いた。致命的な一撃を受け、抵抗する間もなく、全てが水雷戦隊と同じ運命を辿ることになったのである。

 

「ふぅ……」

 

 対空・対水上レーダー、そしてソナーから敵の反応が無くなったことに羅號は一息つく。いったんは囮の役目を果たせただろう。

 

「ろーちゃん、大丈夫かな……」

 

 羅號は本土に接近する任務に向かった少女の名前を、心配そうに呟いたのだった……。

 

 

 




次は2週間後辺りで投稿予定。
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