目を覚ますと私はベッドの上にいた。
どこだ、ここは。
確か私は、誘拐犯をぶちのめすために、戦いに行って。
そしたら実は三人目がいたり、横から人間砲弾が飛んできて……
それで、白い髪の男が加勢に来て
白い髪……!?
「
私は辺りを見回した。
が、誰もいな……くはなかった。
でもそれは、一方通行ではなく、大きなカエル。
でもないだろう、白衣を着ていることから見て医者だ。
この人が治療に当たってくれたのだろうか。
「お、気がついたのかね? ……何が起きたのか、覚えているのかい?」
「……大体は」
「君は一方通行の知り合いなのかい?」
なぜ知っているのだろう。
ああ、さっき大声で叫んでいたからそう思われたのだろう。
「私はそうだと思っています。 彼は今どこにいますか?」
「病院の待合室だよ、ツンツン頭の子も一緒なんじゃないかな?」
それを聞き、立ち上がろうと私はベッドから降りる。
「……痛ッ!」
腹部に痛みが走る。
そういえば、アイツに鉄の棒で殴打されていたの忘れていた。
「そりゃ痛いよ? 内臓まで破裂しそうになっていたからね? しばらく、絶対安静だよ?」
「でも……一方通行は……また……どこかへ……」
はぁ……と、このカエルドクターはため息をつく。
「心配せずとも彼はここに来るんじゃないかな?」
「…………え?」
「だって、彼は君のこと覚えていないようだしねえ? きっと君の素性を探りに来る、と私は思っているけどね?」
この医者は彼と仲がいいのだろうか?
まるで、いつも彼と会いどんな人間か熟知しているような言い種だが。
「まあ、どのみちこれから私は彼に会うからね? 来る気がないようなら私がそれとなく、そそのかしておくから安心するといいよ?」
それだけ言い、彼は部屋を出た。
「…………覚えてない、か」
覚悟はしていた。
先の再開ときの彼には私が見えていなかった、そんな気はした。
でも。
じゃあ、どうして……どうして彼は、私には……
そこまで、考えていると、自分が頭が回っていないことに気づいた。
緊張で疲れが出てしまったのだろう。
「ちょっと寝よう。演算さんには後で連絡しておかなきゃね……でも、多分怒ってるだろうな……、言われたこと無視して突っ込んじゃったし」
とりあえず今は休もう、このまま一方通行を待っていたら気が持たない。
枕に頭を預け、目を閉じる。
気づいたら、眠りが私を包みだし、外界から遮断されていた。
*****
ドアのコンコンという音で私は目を覚ます。
「……来た、かな」
はい、とドアの方へ返事をする。
それを確認したのか、外にいる誰かはドアを開ける。
「具合はどうだ?」
入ってきたのはあの人間砲弾と化したツンツン頭の人。
心配してきてくれたのは嬉しいけど、同時に少しがっかりでもあった。
だが、それはすぐに消えた。
もう一人いたのだ、人には不自然な白い髪を持つ男、一方通行が。
「一方通行! 痛ッ……!」
「お、おいしばらく安静なんだろ? じっとしてろって」
スーパーマンさんが心配そうに声を掛ける。
「ごめんなさい……それとありがとう、助けてくれて」
「それはお互い様だ。アンタがいなかったら、場所を特定できなかったし何よりあの子を助けようとしてくれた。こいつに代わって礼を言わせてもらうよ」
彼が指したのは、一方通行。
あの子は彼と何か関係があるのだろうか。
「さて、オマエに聞きたいことがある」
一方通行は現代風の杖を突きながら、さらに私に近づいてくる。
「オマエは誰だ?」
彼は確かに覚えていないようだ。
そしたら、おそらく私の過去も……
「
「…………なンだ? オマエもその辺のくだらねェ連中と同じ、復讐絡みかァ? それなら今この場で受けてやッてもいいがなァ」
彼は言うと、首に付いている装置のボタンの近くに手を持っていく。
私を殺す準備はできている、という意思表示だろうか。
だが生憎、彼に恨みのない私にはそんなことをするつもりは毛頭ない。
「違うわ、私のはその逆。あなたに助けてもらったのよ」
「…………………………はァ?」
「…………………………え?」
二人とも驚きの顔で私を見る。
「だから! 私は一方通行に! 助けてもらったの!」
「………………ええええええええええ!? お、お前が人助けとか、人違いじゃないのか!?」
「……ややこしくなってきやがッたぜ、クソ」
そんなに驚かれても……。事実を言っただけだし。
「まァいい……オマエにはもう一つ聞きたいことがある。オマエが車の中で呟いていた『木原』についてだ」
私自身は呟いた記憶がないのだが、なぜこの人はそんなことを聞くのだろうか。
とはいえ、ウソをつく理由もないので素直に答えることにした。
「……え? 演算さんのこと? それとも、那由他さんの方?」
「……知ッてるんだな?」
彼は首の装置の電源を入れると同時に私の腕を掴みあげる。
速い、私の目では追えなかった。
ギリギリと私の腕が音を鳴らす。
「痛いッ……な、何を……?」
「質問にのみ答えろ。腕が裂ける前にな」
「お、おい! 一方通行! 病人だぞ!? 手を……」
「黙ってろ。敵かどうかまだ確定できてねェ。雑草なら、早めに抜いておくべきだ」
一方通行の目に、私は怨念のようなものを感じ取った。
『木原』が何だというのか、私には分からない。
でも、後ろめたいものだってない。
だって演算さんも、那由他さんも悪い人じゃないもの。
「……ええ、知っているわ」
「演算と那由他ってのは誰だ。どこにいる?」
「演算さんはいろいろな学区に作った隠れ研究施設を転々としているわ。那由他さんは風紀委員の四十九支部にいるはずよ」
「…………あいつらは今度は何を企んでいやがる?」
企む、というの何だろう。
彼らの研究内容を話せ、ということでいいのか。
よくわからないが、とりあえずそれだけでも話してみよう。
「那由他さんは今は特に研究には興味ないらしいわ。演算さんは、私を
「レベルを上げる……方法は?」
「社会奉仕よ」
「…………あァ?」
彼の手がさらに強く握られる。
そろそろ、腕がマジで痛い。
千切られるような痛みが走る。
「痛! ……ほ、本当よ! あの人は、超能力者はみんなその技術力と社会貢献性で認められていると言っていたわ! 私の能力は希少だから、後は社会への認知とその奉仕力しだいでなんとかなるって……!」
嘘は何一つついていない。
あの人も、一方通行と同じく私を助けてくれた。
そして誓った。 あいつらとは違う道で、強くなろうって……!
「………………はァ。こいつはシロだ」
彼はそういうと手を離す。
「呼吸、脈拍、血圧、脳への血流のベクトル、全部測ったが怪しいところがねェ。こんなアホそうなやつが、ポリグラフ対策なんてモンをやッてるようには見えねェしな」
私への疑いは晴れたらしい。
もし、挙動がおかしかったら私の腕はどうなっていたのだろうと考えると怖くて仕方ない。
「まったく、そういう理由があるなら初めから言ってくれよな」
「いやだがまだ、『木原』の連中の容疑は晴れてねェ。あいつらと何をしていたのかそれを吐け」
「そこまでにしておいたほうがいいよ?」
部屋のドアを開き、入ってきたのはあのカエル顔。
一方通行の方を向き、手に持っていたファイルを渡す。
「君、風紀委員にスカウトされていたようだね?」
「え? ええ……。その、那由他さんが私の能力をみて面白いって言って……」
「そうかい、それはウソではないみたいだよ?
一方通行は渡された資料に目を向ける。
ツンツン頭もそれを横から覗きこむ。
備考欄:上記人物は風紀委員の適正人物であると推測。彼女の了承を得しだい推薦する。
ツンツン頭が私のデータを読み上げる。
なんだか少し恥ずかしい。
「大能力者なのも、間違ってはないみたいだぜ? これは……なんだ? 何をする能力なんだ?」
彼は続けて、私の能力プロフィール欄も読み上げる。
「それは……じゃあ、今から見せるわ」
私は左手を前に出し手のひらを上に向け、集中する。
そして、少しずつ少しずつ手の上に何か細かいものが積もっていき、一つの塊へと整えられていく。
やがてそれは三センチ上の丸い球体へと姿を変えた。
「できたわ。それ触ってみて」
「ん? 何だコレは? 匂いは……鉄か?」
「そう、鉄よ。空気中の酸素から作ったの」
彼の頭の上には?が乗っかっていた。
しかたない、口で説明するにも少し難しい能力だし。
「おもしろいね? その資料、わざと能力説明だけ省いておいたんだけど、自分から見せてくれるとは思わなかったよ?」
わざとだったのね……。
入れておいてくれたほうが手間が省けたのに。
「コレを目に付けてくれたのは演算さんなのよ。『君の能力には素晴らしい価値がある』って私にそういってくれたの」
彼の持っていた鉄の塊を再び手にとり、手の中で転がしながら私は語った。
「やっぱり、一方通行。あなたには聞いて欲しい。演算さんがどんな人なのか、私があの人にどんなことをしてもらったのか、その過去を」
木原演算、私の恩人。
一方通行は何か、おかしな誤解をしているようだ。
演算さんがどんな人か知ってもらえば、それは消えると思った。
だから、話そう。
彼と私の昔話、二人で
「どのくらい前だったかしらね、あの人と出会ったのは」