「ところで
「……あァ」
ハワイと言っても旅行をしにいくわけではない。
先日のラジオゾンデ要塞の落下阻止のときに新たに分かった敵――グレムリンがそこにいると分かったからだ。
「あの金髪チビの思い通りに動かされているのは気にいらねェが……『ウチのガキ』の住処にケンカを売った以上生かしてはおかねェ」
「……そうか。 そういえば、俺の知り合いから聞いたんだけど、あのラジオゾンデ要塞……メッセージが書かれていたらしい」
「……」
「Welcomehome,hero. だそうだ」
これは、上条の安否を確認しにきたイギリス清教の神裂から聞かされた話だ。
「
「……まあ、そうなるよな。 なんつーか……英雄とか言われるのはちょっとこそばゆいっていうか、恥ずかしいっていうか……」
今更、何を言っているのだろうかと一方通行は思う。
ロシアの地で第三次世界大戦を終結させた男が、だ。
「悪ィが生憎オレはそんなの柄じゃねェ。 余計なこと言うようだが……てめェならそれを名乗る資格ぐらいはあるんじゃねェのか? オレにはお前のような生き方はできねェ、英雄ってステータスはみンなが持てるもンじゃねェからな。 なり損ねたヤツ、なれないヤツ、そもそも資格すら持ってないヤツ……そういう奴らだっている」
「……一方通行、お前……」
「ハァ……ちょッとおしゃべりが過ぎちまッたか。 ……とにかく、魔術だろうがなんだろうがオレが潰す。 英雄のお前の出番なんざ必要ねぇよ」
「しろい人! 魔術をなめてはいけないんだよ!」
いつの間にか、モヤシを取りに野菜売り場へ行っていた、
上条の持っていたカゴにどっさりと手に持っていたモヤシ三パックセットを入れる。
「おお、大量大量! コレならしばらく持ちそうだ! モヤシ丼にモヤシバーグ、モヤシスパゲッテイーにモヤシラーモヤシ……」
「……うへぇ、しばらくモヤシは見たくなくなるかも」
気がつくと、
「一方通行」
どうせ、どちらのお菓子にするかというくだらないことなのだろうと思い一方通行はスルーをしようと決めていた。
しかし、彼女の口から出たのはそんな可愛いものではなかった。
「虫が湧いたみたいよ、あの子の所に」
油断した。
一方通行は舌打ちをする。
「どんな連中だ」
彼女はその問いに肩を竦め、適当な調子で答える。
「さぁね。 でも、こんな目立つところでやっているようじゃタダのド素人かなんかじゃない? しかも、私達が近くにいるこの状況でやっている所から考えると自滅覚悟の特攻って感じね」
一方通行はそれを聞き、口の端を歪め、笑う。
「ほォ、面白ェ。 誰だか知らねェがアイツの世界に一歩でも足を踏み込んで来たヤツは」
カゴを地面に落とし、首のチョーカーのスイッチを入れる。
「皆殺しだ」
彼は打ち止めの世界を守ると決めた。
それを犯す奴は誰であろうと容赦はしない。
「俺も行く」
「あん? 」
当麻が困っている人を見逃すわけがなく。
ここで、断ってもついて来るのが一方通行には分かっていた。
妹達の件でも本人には害の一つもないのにも関わらず、たった一つのつながりだけで踏み込んできた。
彼はそういう人間だ。
だから
「……チッ、好きにしろ」
許した。
こういう性格の人間は死んでも治らない。だったら、認めてやるしかないだろう。
正真正銘のバカであると。
「アンタ、こいつを頼む」
当麻が修道服の少女を番外個体に預けると、すぐさま走り出した。
「えっ? ちょっと、当麻? 」
「すぐ戻るから待ってろ! 」
当麻が振り返り叫ぶ。
禁書目録はまたかという感じでため息をつく。
「はぁ……ぜんっぜん変わらないんだよ当麻は」
「どこの男もああなのねぇ……バカばっかりだよホント」
番外個体も呆れ、肩を竦めた。
「でも、私は当麻のああいうとこが好きなんだよ。 ああやって、困った人の世界には迷いもなく踏み込み、救う。そういうとこが」
「へぇ……ウチの旦那とは真逆さね。 でも、守るってことだけは二人に共通してるところか」
三ヶ月前にそのバカに助けてもらった少女は、走っていく彼の背中を見つめていた。