とある化学の錬金術師   作:ぴかちゅん1号

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Present_Day_4 狩られる野良犬

 「インストール三十四パーセント……クソッ! まだか!? 」

「焦るな、じっと待つんだ。 俺らにできる手は全てやりつくした、後俺らがやることは待つことだけだ! 」

 

 自らを野良犬と称した彼らは車の中でパソコンの画面を見つめながら、何かを話している。

 菜優花は相変わらず影に身を潜め、奴らの様子を伺っていた。

 

「……ちょっとやばそうね」

 

 こうして身を潜めていたものの情報が手に入ることはなさそうだ。

 とにかく分かるのは、奴らが何かやばそうなことをやっているということだけ。

 それだけ分かれば十分、そう考えることにし奴らの車へ近づく。

 

「ちょっとあんた達、いいかしら?」

 

 誘拐犯は声に驚きこちらを向くが、菜優花の姿を見て安堵していた。

 犯人の片方が、車から降りて菜優花へ近づいていく。

 

「何だい君は? 」

「その女の子に何してるの?」

 

 菜優花は車を指差し、奴らに問う。

 

「ああ、あの子? 道端で倒れていたから、私達がこうして介抱してあげてるのさ。 未だに目を覚まさないから困った、困った」

「そう、じゃあその辺のただの一般人ってこと。 それにしては、物騒な物持ってるのね? その後ろ手に持ってる銃とか」

「……ッ!」

 

 彼は驚き、こちらにその手に持っていた銃をこちらに向けた。

 

「お前、能力者か?」

「さあ? あっても言わないけど」

 

 菜優花は手を広げ、相手を煽る。

 

「なあ、お前。 一つ教えておいてやる」

「何を?」

「世の中、運の悪い奴から先に死ぬってことをだよ」

 

 パンッ!

 という乾いた音とともに犯人の銃から弾が発射される。

 その弾は彼女の頭部を確実に打ち抜く。

 少しの沈黙の後、菜優花の額から血が流れ。

 彼女はバタッと後ろ向きに倒れた。

 

「場所を変えるぞ、ここはマズイ」

「だな。 しかし……同情するぜそいつには。 本当にツイてないぜ」

 

 さすがに、このままでは騒ぎになる。

 銃声は確実に外の通りにも聞こえただろう。

 場所を移動するために二人は車に乗り込む。

 しかし、それはできなかった。

 

「痛っああああああぁぁぁぁぁいなあぁぁぁぁぁぁもう! あんたら、本当に打つとかありえないんですけど!」

 

 奴は生きていた。

 その事実はこの誘拐犯達を大いに驚かせた。

 それは誰だって驚くに決まっている。

 銃で、鉛玉で、額を打ち抜かれて痛いですむ人間なんていない。

 いいや、違う。

 いた。

 この街には……

 この学園都市という所には……

 

「化け物がッ……!」

 

 化け物、そう正確には『超能力者』という人外が。

 

「化け物じゃないっつの、菜優花よ!」

「なななななな、なんで生きてんだよお前!」

「なんでってそりゃあ、能力者だし。さっきあんた達が聞いてきたじゃない」

 

 菜優花はさも当然のように答える。

 

「ていうかマジで痛い……とっさに、窒素装甲(オフェンスアーマー)の真似事してみたけどあれ無理。私じゃ扱える空気の量が少なすぎて銃弾すら抑えられないみたいね……」

 

 窒素装甲、絹旗最愛(きぬはたさいあい)というレベル4が使っていた空気中の窒素を操る能力だ。

 これを言っても彼らには伝わらないとは思うが、痛みという動揺からつい呟いてしまった。

 

「クソ……相手が第一位だろうが、それ以下だろうが」

「ここで始末するしかねえよなぁ!?」

 

 野良犬の二人はサプレッサー付きのハンドガンを車の中にあらかじめ準備していたアサルトライフルに持ち変える。

 それを見ても、菜優花は眉を顰めるだけで特別怯えるということはなかった。

 それほど彼女には余裕がある。

 

「う~ん……突撃銃はさすがに窒素装甲(仮)じゃ抑えられないよね…… あ、いいこと思いついた」

 

 そう言うと菜優花は地面に膝をつき、手を地面に添えるように乗せる。

 これが何を意図するのか、能力者ではない彼らには理解することができない。

 そもそも彼女はどういう力を持っているのだ……?

 

「アイツが何をしようと関係ない。打て!」

 

 その一言で二丁のアサルトライフルから七.六二ミリ弾が発射される。

 

 直後、彼女の目の前に変化が起きた。

 菜優花の周りの地面が抉れるようになくなっていく。

 地面、というよりはコンクリートが、彼女の手の平の先に集まり分厚い壁を作り出す。

 

 結果、銃弾は壁に阻まれ菜優花の体には届かなかった。

 

「なんだあれは……コンクリートが壁に!?」

「アレは、表層融解(フラックスコート)……? 一度資料で見た事がある。 いや、でもそれじゃ最初の銃弾を防いだ力は一体……!?」

「残念。そんなんじゃないよ、私の能力(コレ)は」

 

 菜優花は逡巡することすらなく、銃を手にしている野良犬の二人の目の前にいた。

 そして、二丁の突撃銃の銃身を掴み取る。

 

「溶けろ」

 

 彼女がその一言だけ発すると二人の銃が徐々に徐々に塵のように消えていく。

 その有様は溶けるというよりも空気と同化していく様に見えた。

 

「ひっ……!?」

 

 犯人の片割れは目の前で起こっている何かに驚き銃から手を離してしまう。

 だが菜優花はそのまま銃を握り締めたまま離さない。

 やがて、彼女の手にあった突撃銃は姿を消し、パラパラと粉状の物が菜優花の周りに落ちていった。

 

「火薬と不純物は残っちゃったか、まあいいや。 ところでさあ……まだやる?」

 

 牙を失った犬たちは腰を抜かしながら震えることしかできなかった。

 




表層融解(フラックスコート) ……超電磁砲一期、アニメ八話で御坂が戦っていた相手が使っていた能力 アスファルトを操れる
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