リリカルな魔法使い<一時凍結>   作:悪事

14 / 21
温泉は静かに入りましょう

なのはとフェイトとの情報交換の翌日。

朝の7時、爽やかな朝日を体に浴びて潮風を受ける。

そんな朝にドアのインターホンが音をあげる。

 

ピンポーン、ピンポーン。

 

 

「こんな時間に、誰だろう?」 「誰でもいいが、ホノカさっさと飯を作れ」

 

 

「はぁ、誰が来たのかちょっと見てきます」

 

 

洋館の一階に通じる階段を早足で降りていく。

玄関に到着し、ドアを開ける。

 

 

「どちらさまですか~」

 

 

「あっ、その、おはよう ホノカ」

 

 

「フェイトがおはようって言ってるんだ、なんか言うことないのかい?」

 

 

「………ああ、おはようフェイトちゃん

それにアルフさん」

 

 

フェイトたちが来たのは予想外で多少の驚きはあったが、

落ち着きはらって朝の挨拶を行う。

するとフェイトは顔を下に向けてうつむいた。

仄からは見えなかったが、その時彼女は顔を真っ赤にしていたのだ。

フェイト自身これがいったいどういうことなのか自覚していないようだが。

 

 

「う、うん えっとホノカ、その部屋を貸してくれるって

話なんだけどお世話になってもいいかな?」

 

 

「ああ、部屋はいくらでも空いてるからいいんだけど、

入ったらあぶないところがあるから、それだけ注意してもらえれば

こちらは大歓迎だよ」

 

 

「そう?じゃあお邪魔します」 「お邪魔するよ」

 

 

フェイトを部屋に案内する。

彼女が荷物を部屋に置き終わったら仄が突然、朝食に誘った。

 

 

「今から朝御飯なんだ、よかったら一緒に食べないかな?」

 

 

 

「朝御飯? いや、いいよ 自分たちで買ってこれるから」

 

 

「買ってきたのじゃなくて、作ったヤツを食べないと健康に

悪いんだよ、だからフェイトちゃん、一緒に食べよう」

 

 

遠慮するフェイトを尻目に多少強引に手を引っ張って、

食堂の方に彼女を連れていく。

 

 

「ホノカ、遅いぞ いったい何があったと…………

ああ、昨日のお嬢さんか」

 

 

「はい、今日からここでお世話になります!

フェイト・テスタロッサです、よろしくお願いします!」

 

 

「そんなに緊張することはない、自分の家だと思って過ごしなさい」

 

 

「先生、ここは僕の家なんですけど」

 

 

「それより朝食を出さんかい」

 

 

 

「はい、わかりましたよ」

 

 

 

テーブルに目玉焼き、ご飯、唐揚げ、トマトジュースをだし、

朝食をいただいた。

 

 

「ホノカ、これ美味しいよ!」 「この肉のヤツうまいね~」

 

 

「それはよかった、じゃあ僕は学校に行くけど二人はどうする?」

 

 

「………ジュエルシードを探します」

 

 

「………そっかじゃあ頑張ってね

ああ、それと一階の奥の部屋には行かないようにね

じゃあ二人ともそれに先生、行ってきます!」

 

 

「おう、行ってこい、バカ弟子」

 

 

朝食を食べ終わり、仄は学校に行くためバス停まで行こうと

玄関を飛びだした。

 

 

「ホノカっておかしなヤツだね、フェイト」

 

 

「うん、…………でも優しい人だよ。アルフ」

 

 

 

 

 

学校に着いて、何ひとつ変わらない日常を過ごす。

ぼーっとしているとアリサちゃんとすずかちゃんが声をかけてくる。

 

 

「仄、あんた今度の連休って暇?」

 

 

「仄くん予定空いてる?」

 

 

「うん?空いてることには空いてるけど、

どうかしたの?」

 

 

「えっとね、仄くんつまり今度の連休にみんなで温泉に行こうって

話なんだけど、仄くん行けそう?」

 

 

なのはちゃんが懇切丁寧な説明をしてくれたおかげで、

話の概要は理解できた。

 

 

「うん、じゃあ一緒に行こうかな」

 

「そうこなくっちゃ」 「仄くん、楽しみだね」

 

 

「あ、゛でも仄くん、もし私達がいない時に

ジュエルシードが発動したらどうしよう?゛」

 

 

「゛今、ジュエルシードは見つかってないんだし、

緊張しすぎていざというときに動けなくなるより、

休息をとって、ジュエルシードが発動した時に活躍できるように、

しておいた方がいいよ゛」

 

 

仄のいうことには説得力があった。

かくいう仄もあれから使い魔や結界を使って捜索しているが、

見つかっておらず、進展がないという現状。

このままでいてはだめだと一端休息をとることにしたのだ。

 

 

「ちょっと何二人で内緒話してるのよ」

 

 

「なのはちゃん、ずるい~」

 

 

「えっ!アリサちゃん、すずかちゃん、これは違うんだよ~」

 

 

 

そうした会話に華を咲かせ、授業を淡々と済ませていき、

学校も終わって各々が家へ帰っていく。

 

 

 

「そういうわけでフェイトちゃんも一緒にどうかな?」

 

 

「…………………一緒に行くの?」

 

 

「私達は私達で行くことにしようかね」

 

 

「そうなの?どうしてもダメなのかな?」

 

 

「ホノカ、わがままを言うな、彼女たちには彼女の理由があるのだ」

 

 

「先生だけには、わがままとか言われたくないんですけど

フェイトちゃんがそういうならわかったよ。

泊まる旅館の場所は教えておくから、

何かあったら僕を頼ってね」

 

 

「……………………プッハハハハ、ホノカ心配しすぎだよ」

 

 

「ホノカは過保護なところがあるからな。

まあ、いざとなればワシもついているのだ。

遠慮するようなことはないぞ」

 

 

「…………先生も温泉いくんですか?」

 

 

「何か問題でも?」 「この前、なのはちゃんの両親と言い争ってた気がするんですけど」

 

 

 

温泉には思わぬ同行者も加えて行くことになった。

もしかすると温泉旅館への旅行は面倒なことになりそうだと、

予感、予測ができてしまっていた。

奇しくもそれは的中するはめになってしまうのだが、

ひとまず時計の針を連休まで進めるとしよう。

 

 

 

 

海鳴の中心部から車で50分余り、

普段気軽に行くには遠いが、夏休みなど長期の休みに行くには、

近すぎる場所、ようするに二泊くらいなら泊まって帰れる旅館に着いたのだ。

旅行それは普段の疲れを癒す場所なはずだが、

先生と桃子さん、士郎さんの無言の気まずさに、

温泉へ浸かる前に疲労困憊したのだ。

ちなみになのはたちはノエルさんが運転する車に乗っています。

 

 

車内の会話

 

 

「いや、今日は世話になるよ」

 

 

「いえいえ、呼んだのは仄くんだけでしたが、

歓迎いたしますよ、ゼルレッチさん」

 

 

「ほうそれはありがたい」

 

 

「ところでゼルレッチさんはどんな職業に?」

 

 

「そうだな、世界を旅していて、あちこちで起きた厄介事を

片付けるような仕事と言えるかな」

 

 

「まあ、それはすごいですね

でも失礼ですが、収入は安定しているんですか?」

 

 

「問題ない、それにホノカには援助金があるから

いくらでも金がある」

 

 

「子供に大金を持たせる危険、リスクはきちんと考えているのですか」

 

 

「ホノカにそのような心配はしておらん」

 

 

「何も考えていないということですか?」

 

 

車内はまるで極寒のシベリア、もしくは南極、北極レベル。

気まずいを通り越して、気の弱い人なら胃に穴が空くだろう。

前に士郎さん、助手席は桃子さん、真ん中はゼルレッチ先生と荷物を、

最後に恭也さん、美由紀さん、仄という席順だが、

最後部座席に座っている僕らは、前の座席でおきているブリザードに震えていた。

 

 

「仄くんだったか?」 「はい、えーっとなのはちゃんのお兄さん?」

 

 

「ああ、その認識でかまわない。いやこの際名前で呼んでくれ。

俺は高町恭也、君の言った通りなのはの兄だ

君のことも名前で呼んでよかったかな?」

 

 

「はい、名字はなんだが遠い感じだから名前で呼んでくれたほうが嬉しいです」

 

 

「そうか、俺の隣にいるのはなのはの「お姉ちゃんの美由紀だよ」

割り込むなよ」

 

 

「えっと、よろしくお願いします」

 

 

「ああ、よろしくところで君は、前のあれを止められるかな」

 

「ムリですね~とりあえず温泉につくまで我慢しましょう」

 

 

胃に壊滅的なダメージを受ける前に温泉旅館について本当によかった。

 

 

 

 

 

 

部屋に荷物をおいて風呂道具を持って温泉へ向かう。

すると浴衣を着ている女性陣に出くわす。

(ちなみに自分も浴衣を着ている)

なのはちゃんは勘がいいのか自分の様子にすぐ気づいたようだ。

 

 

「仄くん、どうしたの?疲れてるみたいだけど」

 

 

「たぶん、普段の疲れがどっと出たんだと思う。

とりあえず早く温泉に入ってくるよ」

 

 

などと適当な理由をでっちあげる。

魔術師は基本的に人でなしであって、自分のためならどんな外道も許容するが、

仄はそこまでろくでなしではない。

だがこれくらいの嘘はいいだろうと思ってる時点で将来が心配になってくる。

 

 

「ふーん、まあ疲れてるんならこの機会にすっきりしちゃいなさいよ」

 

 

「あれ?仄くん 士郎さんとゼルレッチさんはどうしたの?」

 

 

その二人は今、男部屋で話し合っていて恭也さんはそれを見届けてからいくそうだ

まあ、十中八九 口論になる一歩手前の話し合いだろう。

だが、本当のことをハッキリ言うのもなんだ。

 

 

「二人は今、部屋で盛り上がってるよ」

 

 

そうごまかす、それになんとか納得してもらえたのか

温泉に行くことになった。

 

 

『キューキュー』ユーノくんが温泉に入る前に暴れていたが、

女性陣に連れていかれた。

まあフェレットでもオスはオス、男性用の温泉に入りたかったのだろうが

今はなのはちゃんのペットであって、その扱いは諦める他ない。

 

 

 

 

 

 

 

女性陣は温泉街を歩くそうだが、あいにくと今の自分にそこまでのエネルギーはないため、慎んでお断り申し上げた。

女性のあの買い物、おしゃれなどの力はいったいどこからくるのだろうか。

まあ、わからなかろうと問題はないだろう。

 

 

 

 

 

夜の食事を済ませて、ゼルレッチ先生はどこか外へ、

大人に恭也さんたちは別の部屋に行ってしまった。

子供組のなのはちゃんたちは部屋で眠っているだろう。

僕はゼルレッチ先生と同じ部屋だが先生は帰って来ていない。

そこで僕は久しぶりにある女性に連絡をする。

頭を下げ続けてようやく持ってもらった電話、彼女が捨て(壊し)てなければ、

おそらく通じるだろう。

 

 

プルルルプルルル

 

規則的な電話の呼び掛け、相手が出てくれるか心配しながらも電話を続ける。

 

 

『はい、誰かしらこんな時間に、電話をかけてくるような不躾な魔法使いは』

 

 

「あ、時差を忘れてた。ごめんね 今、大丈夫だった?」

 

 

『ええ、朝日を浴びても問題はないのだから朝でも問題はないのだけど。

できれば、あなたとはもっといい夜に話をしたかったわ』

 

 

「うん、というか最近はいろいろ忙しいことがあってね。

手間取って連絡とかできなかったんだ」

 

 

『へえ、あなたが手間取るようなことがおきてるのね。

面白そうね、私も行っていいかしら?』

 

 

「君が来るっていうなら、あの二人もくるんでしょう。

せめてもうちょっと後に来てよ。

今、君に来られたら僕はパンクしちゃうよ」

 

 

『あら、それは大変、まあ私も日本に行くのに時間がかかりそうだし。

わかったわ、行くのはもう少し後にしましょう』

 

 

「それはありがとう、とても助かるよ」

 

 

『お礼されることではないわ。

ああ、でも前にあなたが持ってきた…………タ…タマゴメンっていうのどこにあるか

教えてくれない?あの子が食べたいって駄々をこねるの』

 

 

「海鳴にはないよ、あれは北海道に行かないとないんだ」

 

 

『へえ、じゃあ海鳴とやらに行く前に北海道に行くとしましょう』

 

 

「うん、楽しみに待ってるよ」

 

 

『私もよ、最も小さく最も強い魔法使いさん』

 

 

「それじゃあまたね、アルト」

 

 

『ええ、また、また連絡してちょうだい ホノカ』

 

 

ブツ

 

 

 

異国のどこか、人など来ないような古い、それでも手入れの行き届いた城。

 

 

「どうかなさいましたか?アルトルージュ様」

 

 

「リィゾ、聞いてホノカから連絡があったの」

 

 

「ホノカ、ホノカ、ああ あのゼルレッチに振り回されてた少年ですか」

 

 

「あら、そういえばリィゾはホノカと会ってなかったわね。

フィナは会ってるのに」

 

 

「フィナに?ああ、その少年、気の毒にフィナに会っているとは、

ん、でもフィナに狙われて無事でいるとは、

パレードをどう対処したというのですか。」

 

 

「フィナのパレードを破ったのではなく改竄したのよ」

 

 

「改竄した?それはどういうことで「ワン!ワン!バウ!」

 

 

「あら、プライミッツどうしたの?」

 

 

「バウバウ、ワン!……ク~ン」

 

 

「プライミッツ、タマゴメンはもうないの。

我慢しなさい、血ならいくらでも吸ってきていいわよ」

 

 

「ワン!ウォーン!」 「あらあら、困った子ね」

 

 

「というか、フィナはどこに行ったのでしょう?」

 

 

「また、美少年のところにでも行ってるのではなくて?」

 

 

「あいつの悪い癖か、あれがなければ騎士として言うことないんですが」

 

 

 

SIDEOUT

 

 

 

Side多華宮 仄

 

 

 

 

久しぶりに連絡を取ったが、元気そうで何よりだ。

というか、プライミッツのヤツ 玉子麺をそんなに気に入るなんて。

ずいぶん会ってない知己の事を考えていると、森の方からすごい魔力を感じる。

温泉に来てまでこれか、半ば諦めるように浴衣からローブを羽織り、三角帽子を被って、箒に跨がり森へ飛んでいった。

 

 

 

ジュエルシードを発動したのは、おそらく森のトカゲだろう。

しかしトカゲという存在の定義からすると、

これはトカゲとは言えない、そう言ってしまえばトカゲの方が気を悪くするかもしれない。

 

 

 

「デカイし、脚がたくさんあるしで、

B級ホラーのモンスターでも、もうちょいイカしてるよ」

 

 

「ホノカ、あれがそうなの?」

 

 

「へえ、ぶったおし甲斐のありそうなヤツじゃないか」

 

 

「まあ、チャッチャと終わらせようかな」

 

 

途中でフェイトちゃんたちに会って、

そのままこの化け物と対峙することになったのだ。

 

 

「そういや、あのお嬢ちゃんが来てないけどどうしたんだい?

昼間に会ったからここにいるにはいるんだろう?」

 

 

「アルフ、いいよ。いないのならそれで、これは危険なことなんだ。

無理をしてまで来ることはない」

 

 

「でも全部集めたら、そのジュエルシードをかけて闘うんだろう?

あいつが手伝いもしてないってのに、

ジュエルシードを全部かけた闘いをするなんて気に食わないよ」

 

 

 

「まあまあ、アルフさん。落ち着いてなのはちゃんはそんな子じゃないよ」

 

 

「は?何を言ってんだい。現にあいつここにいないじゃ「すみませーん!」

 

 

森の木々を掻き分けてやってきたのは白の魔導師、

フェイトとは真逆のカラーリングの少女。

 

 

「遅れちゃってごめんなさい、仄くん、フェイトちゃん、アルフさん」

 

 

「………何で来たの?別に来る必要はなかったのに」

 

 

「フェイトちゃん、ジュエルシードを封印するのユーノくんと約束したし、

ジュエルシード全部封印するまでは協力しようって約束もしたでしょ」

 

 

「………………………………………」

 

 

「協力って言うのはね、フェイトちゃん

お互いを利用するんじゃなくて、信じることでもあるんだ」

 

 

「信じる………そうか、そうなんだ」

 

 

すると今までじっとしていたトカゲもどきの怪物が、

飛びかかってくると、仄たちはそれを避ける。

全長5メートル弱の巨体に似合わない俊敏な動き、

それぞれが意思を持っているように動く脚、

魔法使いと魔導師は反撃に出る。

 

 

フェイトがまるで弾丸(ブリッツ)のように高速で動きまわって

敵の気をそらさせ撹乱する。

 

 

「ブリッツアクション」

 

 

「坊や、あれならどのくらい抑えられる?」

 

 

「……万全な時で十秒……今の僕では何秒もつか」

 

 

「そうか、じゃあ私も手伝ってやるさ」

 

使い魔たちは捕縛魔法でサポートを行う。

 

 

「チェーンバインド!」 「逃がさないよ!ストラグルバインド!」

 

 

拘束、捕縛の魔法がバケモノトカゲに命中する、

予定ならここでトカゲは停止するのだが、

 

 

「重い、こいつジュエルシードを二個は発動してる!」

 

 

「バインドが…………………保てない」

 

 

「ユーノくん、大丈夫なの?」

 

 

「…………ぐっ、……危ない!なのは!」

 

 

拘束を破ったトカゲは大口を開ける、

その口から長い舌が槍のごとく発射される。

 

 

フェイトとアルフ、ユーノがなのはの傷ついた姿を幻視する。

しかし、ここにはもう一人の登場人物が存在する。

 

 

「リライト(構造変換)エクスキュート(起動)!!!」

 

 

槍のように尖った舌が空気のように霧散する。

 

 

「なのはちゃん!フェイトちゃん!今だ!」

 

 

「アーク………セイバー!」 「……ディバイン…バスター!」

 

 

少女たちの攻撃が衝突する、トカゲは必死で耐えようとするが、

そこからの脱出は不可能、ジュエルシードは無事に封印された。

 

 

「フェイトちゃん、お疲れさまー~」

 

 

「ジュエルシードは二つか、まあ街中で発動しなくてよかった、よかった」

 

 

「呑気だね、あんたはさ

もしあそこでフェイトたちがしくじると思わなかったのかい?」

 

 

「信じることは怖いのかもしれないけど、

信じられたいのなら僕が信じないとさ」

 

 

「………すみません」 「え、フェイトちゃん?なに?」

 

 

相手の目を見て、背筋を伸ばし、真剣な表情で言った。

 

 

「あなたの名前を教えてください」

 

 

「……高町、高町なのはです。なのはって呼んで!

これからよろしくね フェイトちゃん」

 

 

「うん、よろしく ナノハ」

 

 

少女たちは信頼を結んだようで、ここに夜の一幕は終わりを見せた。

 

 

 

少年は旅館に戻って、部屋に着く。

ゼルレッチ先生はまだ帰って来ていないようで

自分の貸し切りのような感覚である。

 

 

「動いたら、汗をかいちゃったよ

遅いけど、もう一回温泉に浸かってこよう」

 

 

そういえば温泉は他にもあって、

外の見晴らしのいい温泉があるのだとか。

旅館の露天風呂もよかったが、

思い出したせいでそちらの方への興味が出てしまう。

これはもうそちらに行かないと止められない欲求、

別にそこに行くと不利益をこうむる訳でもなし、

温泉道具のタオル、着替え、石鹸やその他を持って温泉へと出発した。

 

 

 

「ふーーいい湯だなー」

 

疲れが温泉に溶けていくような感覚、そうこれぞ極楽というものだ。

 

 

チャポン

 

 

゛ん、他にも入ってるひとがいるのかな?゛

 

 

「あれ?もしかしてホノカ?」

 

見慣れた声を耳にする。

そちらを見るとそこにはもう見慣れた金髪、

ルビーのような深紅の瞳、華奢な体、

いつもはツインテールにしてる髪も下ろしていて、

普段の彼女とはまた、違った印象を受ける。

というかそこにいたのは、つい最近自分の家の新住人となったフェイト・テスタロッサその人だった。

 

 

頬をヒクヒクとひきつらせ、疲れたように呟く。

 

 

「ここって混浴だったんだ」

 

まさか混浴だったとは、というかこの時間にくる客はいないと、

たかをくくって、風呂の確認をしなかった自分の落ち度だろう。

 

 

「フェイトちゃん、ごめんなさい

煮ようが焼こうが文句は言わないよ」

 

 

深々と頭を下げる、古今東西こういった場面は男が悪いと相場が決まっている。

ビンタの一発くらいは受けてしかるべきと覚悟を決める。

 

 

「えっ、えっ?ホノカどうして謝るの?」

 

 

「というか何で平然としているの!」

 

 

フェイトは怒るような素振りも見せず、

無防備なままこちらに接近してくる。

 

 

「………じゃなくて隠して、隠して!」

 

 

「何を?ホノカちょっとおかしいよ?」

 

 

「フェイトちゃんがおかしいって!」

 

 

困ったことに彼女は羞恥心を見せようとしない。

 

 

「フェイトちゃん、恥ずかしいっていうのはないの?」

 

 

「ううん、大丈夫だけど」 この子おそらく天然にちがいない。

 

 

「もし僕じゃない人だったら危なかったよ」

 

 

「ホノカ、今日はありがとう」

 

 

「ああ、ジュエルシード?あれは僕がいなくても封印できたと思うけど」

 

 

「でも、その場合ナノハの無事は確定しなかった」

 

 

「なのはちゃんのこと、心配だったの?」

 

 

「彼女はすごいスピードで強くなっている、

もしかしたら今の自分では勝てなくなるかも」

 

 

「ジュエルシードが全て集まったらそれらを賭けて闘うんだよね」

 

 

「うん、でも絶対に負けない」

 

 

「フェイトちゃん、がんばれ

僕はそれしか言えないけど君たちならジュエルシードを全て封印できるって信じるよ」

 

 

「信じる……か うん、ホノカ 私 頑張るよ」

 

 

「そっか、じゃあちょっとお説教もしようかな?」

 

 

「え、お説教って?」

 

 

「フェイトちゃん、まず最初にこういうとこで男の人に、

自分の裸は見せないようにしないと…………」

 

 

 

そしてこれからフェイトが、

のぼせかけるまでの間に恥ずかしいという意味とは、

羞恥心を持って行動することは、男の危険度などを、

お説教してお風呂を上がったのだった。

ちなみにゼルレッチ先生は朝に帰ってきて桃子さんに士郎さんと、

ひと悶着があったようだが、蛇足というヤツだろう。

温泉街での休息を糧にして魔法使いの物語は進んでいく。

 

 

 

 

Sideフェイト

 

温泉から帰って来て向かうのは

今までに住んでいたアパートとは違う洋館、

自分とは異なる魔法を使う少年の暮らす家であった。

しかしどうもこう、入ろうとすると緊張してしまう。

数分の葛藤の末に玄関のドアを開ける。

すると

 

 

「ん? お帰り、フェイトちゃん」

 

 

ホノカの笑顔を見た瞬間に、まるで歯車が噛み合ったような感覚を覚える。

 

゛そうか、自分は帰って来たのか゛

 

 

「ホノカ、お腹空いたー肉が食べたーい」

 

 

「アルフさん、もうすぐ夕食だから安心してください

………ほらフェイトちゃんも早くおいで」

 

 

 

ホノカに声をかけられたと感じたその時に心臓がドクンと高鳴った。

しかし今は返事を返そう、自分と同じくらいの年齢で、

ちょっと天然気味な少年に最高の笑顔で戻ったということを伝える言葉を。

 

 

「ただいま」

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「おお、ようやく帰ったのかな

お嬢さん」

 

 

ビクッ まるでライオンに出会ったような反応で距離を取るフェイト。

それは相手を警戒するような態度。

 

 

「ホノカこれはいったいどういうことだ?」

 

 

「男は危ないっていうことを言ったら、こんなことに」

 

 

しばらくの間、フェイトは男性にたいして距離を取るようになった。

それはゼルレッチや街中の男に対してであって、

仄にだけは距離を取らなかったようだ。

これがどういうことなのかフェイト自身はまだ自覚していない。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。