リリカルな魔法使い<一時凍結>   作:悪事

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魔法使いと管理局

前回のジュエルシード発動をきっかけにしたかのように、その二日後にジュエルシードを発見し封印をすることができた。そして彼女らと仄はこれからの事、残りのジュエルシードの回収についての相談をするため、なのはにフェイトたちは多華宮邸で集まっていた。仄、なのは、フェイトとユーノ、アルフたちジュエルシードを共に封印してきたメンバーは応接室と呼べる豪奢な家具に囲まれた部屋で、お茶をしながらこれから残ったジュエルシードの場所を予想していた。

 

 

「街中にはもうないのかな、ホノカ?」

 

 

「まだ可能性はあるかもしれない、街中で発動したらどんな形であれ、被害がすごいことになるから警戒しておかないと…………隠蔽とかにすごい苦労するから………………時計塔に気づかれてないのが奇跡だよ」

 

 

「そういえば前の、街で樹が生えた事件ってもう誰も話題にしないけど何でなのかな?他にも色々な事件が噂になってないし、仄くん?」

 

 

「まぁ、企業秘密ってことで見逃してよ。なのはちゃん。

この街が僕の管理してるとこだからできた裏技なんだ」

 

 

「…………………本当にあんたって何者なんだい?

デバイスなしで魔法を使ってるし、この世界には魔法文明は存在しないってはずなのに訳のわかんない魔法を知ってる。あんたは信じちゃいるが、こうも訳がわかんないと不安になるんだがね」

 

 

前提として仄の魔法と魔導師の魔法はまったく異なっているモノだ。仄の魔法は限られた者しか使えないモノで、魔導師の魔法は魔力、技術、研鑽があれば誰でも使えるモノなのだ、この二つは比べること、考察することさえ間違っている。

 

 

 

「アルフ、ホノカは悪い人じゃないよ」

 

 

「良い人すぎんだよ、この街での住む場所に自分の家を貸してくれたのはありがたいけど何を考えてるのかが、わかんないんだ」

 

 

「別に善意でやったんじゃないよ。単に自分の管理地で好き勝手されるより自分の家の一部屋を貸した方がいいと判断しただけだよ」

 

 

「あう、ゴメンね。ホノカ」

 

 

「あっ、いや、大丈夫だよ。フェイトちゃん」

 

 

「…………あの~そろそろジュエルシードがどこにあるかの、

本題に入りませんか?」

 

 

「……そうだね、ユーノくんの言う通りだ。

僕としても早くこの街からジュエルシードを持っていって欲しいしね。というか下手したら、いや下手しなくても魔術協会がこの事態に気づいて大変なことになりかねないし」

 

 

「「「「魔術協会????」」」」

 

 

「仄くん、魔術のことは前に聞いたけど魔術協会って?」

 

 

「……………いや~、なのはちゃん。今はジュエルシードの話が先でしょ。

その話はまた後でということで、それでは本題に入ろう」

 

 

「ホノカ~」「ホノカ」「仄さん」

 

 

ここにいるメンバー全員がこっちを物言いたげな目で見てくる。魔術のことをある程度話したのが間違いだったと考えていいだろう。

 

 

「わかったよ、わかった、魔術協会について少し話すから……」

 

 

「少しだけなのかい?」すぐにアルフさんが不機嫌そうに呟く。

 

 

「はい、そもそも魔術の話をすることだって危ないのに、魔術協会まで説明するんだからそれで納得してくださいよ」

 

 

「………確か、ホノカの話では魔術っていうのは等価交換で成り立っていて、根源を目指して研究するモノなんだよね?」

 

 

「そうだよ、フェイトちゃん。まぁ今時魔法を目指して研究している魔術師はものすごく少ないんだけどね」

 

 

「少ない?何でですか。仄さん」

 

 

ここでユーノくんが質問をして仄はまた余計なことを言ってしまったと後悔する。だがこれは魔術協会の話に僅かだが共通している話題であって失言というほどではないと、自分のミスを自分で誤魔化す。

 

 

「それについては魔術協会の話に密接に関係しているから、

おいおい話していくよ」

 

 

「………わかりました」

 

 

「じゃあ、魔術協会について話すけどここで聞いた話は他言無用だからね、例えどんなことがあっても言わないで欲しい。そうどんなことがあっても、そこだけはしっかりと理解してほしい」

 

 

「わかった」 「うん、わかったよ。仄くん」

 

 

「はい」 「やけに念押しするねぇ」

 

 

三人は理解してくれたようだ、アルフさんが微妙に理解してなさそうだが、まぁ話をしたら記憶をごっそり消せばいいかと自身を納得させ、世界の裏のとある組織の話を簡単にしようと思う。

 

 

「はい、じゃあ誰でもわかる魔術協会について~」

 

 

「「「「…………………………」」」」

 

 

「……ゴメン、………………おほっん…魔術協会っていうのは魔術の存在を、魔術師以外に気づかれないように隠蔽する場所なんだ」

 

 

「………?、何でそんな面倒な真似をするんだい?」

 

 

「確かに、…魔術というモノを公表すれば、この世界ももっと繁栄するのでは?この世界が管理外世界のままでもいいというんですか?」

 

 

アルフとユーノの二人が魔法技術を隠すことに対して疑問に思うのも無理はない。だがそれをもしも、この世界のまっとうな魔術師にいえば二人は即座に三途の川に直行するだろう。

 

 

「ん~、その話はどうやっても平行線だろうから、いったん置いておこう。それで魔術っていうのは誰かに知られれば知られるほどに、力が無くなるものなんだ」

 

 

「え!じゃあ、私たち魔術のことを知っちゃったから仄くんの魔術も弱くなってるの?」

 

 

「ああ、別にすぐに弱くなるわけではないからね

でも遠い未来に弱くなるんだ。現代では魔術はどれも神秘、ああ、いわゆる力が弱くなってるからこれ以上弱くならないよう魔術協会が監視しているんだ」

 

 

「……………それが魔術協会なんだね」

 

 

「うん、あとは魔法が関係しているんだ」

 

 

「え、魔法が?」

 

 

「うん、さっきのユーノくんの質問が魔術協会の存在している理由に繋がっているんだよ」

 

 

「魔法が魔術協会の話に繋がっている?

ホノカ、それってどういうこと?」

 

 

「うん、現時点で魔法に辿り着ける可能性は限りなくゼロに近い。魔術師は魔法に、というか根源に至ろうとしてるけど、さっき言った通り現代は魔術の力が弱くなっていてこれ以上弱くなったら魔法どころか魔術が消えてしまう。それを回避するために魔術協会という神秘の秘匿を強制させるところができたんだ。でも魔術師はただでは動かない、だから魔術協会は様々な資料、研究成果を共有することで存続しているんだ。魔術協会では自分の家系で手に入らない情報が得られる。だから魔術師は魔術協会のいうことを聞いているんだ」

 

 

「ホノカも魔術協会に入っているの?」

 

 

「正式に入ってはいないけど、将来は入ることが決定してるっぽいよ。僕はあんまり興味はないんだけどね」

 

 

「仄くんはいつ頃に魔術協会に入るの?もしかして小学校を卒業したら、すぐに魔術協会に?」

 

 

「ああ、いや高校を卒業したら魔術協会に行くつもりだよ」

 

 

「あの仄さん、その魔術協会はどこにあるんですか?」

 

 

ユーノくんはまだ質問したりないのか、興味、好奇心を隠さずにさらに質問をしてくる。だがこれ以上の解答はもう無理だ。

 

 

 

「…………………ユーノくん、魔術協会については話したけど、これ以上は説明できない。説明しないんじゃなくて゛説明できない゛んだ」

 

 

「ちょっとホノカ、隠し事をするなんてどーゆうつもりさ」

 

 

「アルフさんだって説明していないことがあるでしょ。

でも僕はそれについては関わってない、それで納得してよ」

 

 

「ぐっ、でも……………わかったよ。これで貸し借りは無しだからね」

 

 

「はいはい、では疑問が解消されたところで今日集まった理由の本題に移っていこう。ジュエルシードは海鳴のどこにあるのか?」

 

 

「……………おそらくまだまだ見つかってないジュエルシードがあるでしょう。それらのある場所はランダムで予測しきれないです。やはり後手に回るしかないですね」

 

 

ユーノくんは自身で折り合いをつけて納得してくれたようで、問い直すことはしないようだった。なのはちゃん、フェイトちゃん、アルフさんも僕がこれ以上言わないと理解したのか、自分の中の疑問を断ち切ったようだ。結局、ジュエルシードの話は大したこともなく終わりを迎えた。

 

 

「ごめん、ちょっと御手洗いに行ってくるね」

 

 

「ん、いってらっしゃい。フェイト」

 

 

「仄くん、このお茶ってすごく美味しいけど、どこで見つけたの?私の家でも飲みたいなぁ」

 

 

「これって知り合いが送ってくるものなんだよね。

今度、どこのか聞いておくよ」

 

 

ちなみにこの紅茶は時計塔のロード、バルトメロイが送ってくるもので、そのあまりの高額な値段に驚き呆れるのは、また別の話。そんなことを考えているとフェイトちゃんたち異世界の魔導師とは何者なのか、疑問が湧いてくる。………………………………ジュエルシードの機構を見てから思っていることがある。もしや魔導師とは並行世界に行った魔術師なのでは?いやデバイスという神秘の欠片もない道具を使っていて何かちぐはぐだ。もし並行世界に行く技術があるのだとしたら第二魔法は魔術になっていてもおかしくない。謎が深まっていって思考するのを強制的にやめ、目を閉じて紅茶を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

Sideフェイト

 

 

御手洗いを済ませて、廊下を静かに歩く。

ホノカの話はいつも私たちの魔法とは違った話を聞けて、驚きが尽きない。ミッド式でない、いやデバイスすら使わない魔法技術があったなんて。そんなことを考えているとボーッとして、いつの間にか、一階の奥の部屋の方に来てしまったようだ。かつて、ホノカはここに来てはいけないと言っていた。好奇心が僅かに疼いたが、急いで応接室に戻ろうとする。ここには近付かないようにと言ってたホノカを思い出して、元来た廊下を戻ろうとすると、突然、背筋に強烈な悪寒が襲う。それは言葉として形にするとすれば蛇ににらまれたカエル、猫に追いかけられているネズミ、己の死が確定したような感覚。

 

 

「なっ!…………………………」

 

 

そう、奥の部屋の扉が突然開いたのだ。言葉にすれば、それだけのことなのに体から汗が止まらない。あの部屋には関わりたくない。だが、そんな意識に反して足が勝手に部屋に向かう、ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ、ホノカとの約束を守るためというのもあるが、あの部屋に入れば自分の命の保障がない。怖い、恐い、それでも、そんなことは露知れず足は黙々と部屋に進んでいる。何故?産まれてきてから今まで、従順だった己の体が意思に反して自らを殺そうとする。声をあげようとしても喉は誰かに抑えられているように言葉を発せない。

 

 

カツカツ、ゆっくりと足は動いて抵抗することさえできない。

産まれて始めて感じる明確な死の吐息、自分が終わる、なんの意味もなく、誰にも気づかれることなく、母の笑顔をもう一度見ることもなく、ただただ終わる。いいのか?そんなわけない。まだ自分はホノカに皆に感謝を伝えきれていない。

そんな思考をしている間に開かれた部屋の一歩前に到着する。あとは足を一歩踏み出せば自分の終焉は確定する。

 

 

『いやだ!…………助けて………ホノカ』

 

 

死に捕まったのを理解した自分の最期の瞬間、助けを求めたのは頼れる使い魔のアルフでも、今自分が必死で尽くしている母でもなく、この街で会ったお人好しで、天然な魔法使いの少年だった。

 

 

「フェイトちゃん!」

 

 

足が部屋の床に触れてしまう前に、自分の肩を掴んで引っ張ってくれたのは自分が助けを求めた少年、ホノカ。彼は走ってきたのか、息を僅かにきらして自分を真っ直ぐに見つめてくる。今、フェイトはホノカの胸の中で普段ならフェイトは顔を赤くして離れようとするが、彼の心臓の音がフェイトの恐怖心をほぐしていく。

 

 

 

「フェイトちゃん、こっちに来ちゃいけないって言っただろう。どうして来ちゃたのさ?」

 

 

「……………………」 「フェイトちゃん?」

 

 

「…………………………」 「お~い、フェイトちゃ~ん?」

 

 

「…………う、う、うわ~~~ん!…怖かったよ~!!」

 

 

恐怖心から解き放たれ、涙が溢れ出る。

ホノカの胸に顔を当てて生まれたての赤子のように泣きじゃくる。ただ恐怖心だけではなく、自分の声なき助けに応えてくれた嬉しさに感動して。

 

 

「え、………フェイトちゃん?うわうわ、…泣かないで~!!」

 

 

その鳴き声を聞きつけてアルフ、なのは、ユーノが集まり、

仄は大分怒られることになった次第。

さて、ここで何故にフェイトを助けに行けたのかというと、この家の一階、奥の部屋は仄の工房になっていていくつかの防衛機構を張ってある。それに突然、反応があったから急いで行ってみるとフェイトが防衛機構に捕らわれていたというわけだ。今回の件は一概にフェイトだけが悪いとは言えない。部屋の前に来ただけのフェイトがトラップにひっかかったのは部屋の鍵を閉め忘れていた仄のせいでもある。結果としてアルフたちに説明をして仄は何とかアルフにガブッていかれるのを回避できたわけだ。しかし、ここでフェイトが仄の腕をしっかり掴んで離そうとしない。アルフが仄に強く文句を言えなかったのもこれが原因である。それを見てなのはの機嫌が悪くなったという事態も発生し、仄は何故なのか、わからないまま二人の少女、なのはとフェイトに平謝りを敢行し、どうにか収拾をつけたのだ。そんなこともあり、多華宮邸の集会は終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

なのはが仄に買い物に一緒に行く約束を取り付け、どうにか機嫌を直し仄たちに別れを告げ、自宅に戻った後アルフは二階の部屋に、ゼルレッチは海鳴の散歩に出掛けていて、二人しかいない応接間でフェイトは仄の顔を見れないでいた。理由は単純で仄のことを意識しているからだろう。フェイトは自分を助けてくれた少年を見ると心臓が強い鼓動を鳴らす。それが何故なのか気づかぬまま、少年の淹れた紅茶を飲んでいる。ただこの時間がずっと続けばいいと願いながら…………しかし、そんなフェイトの願いを裏切るように外から魔力反応が発生する。望まない時に限って事態というヤツは進展を見せることが多い。

 

 

 

「ジュエルシードが発動したみたいだよ。

フェイトちゃん、行こう…………ってフェイトちゃん?」

 

 

「…………うん」

 

 

何故か彼女は少し不機嫌そうに頷き、仄とフェイトは多華宮邸を後にする。アルフもジュエルシードに気づいて二階の窓から飛び降りてくる。商店街、図書館前、夕焼けが照らす海鳴の街並みを急ぎ駆け抜けて、海鳴で最も大きい公園、臨海公園でなのはちゃんとユーノくんの二人と合流した。

 

 

「二人ともジュエルシードは?」

 

 

「どうやら公園で発動したみたいです。幸いなことにもう誰もいません」

 

 

「早く封印しないと、フェイトちゃん、仄くん」

 

 

「うん、アルフ。行ける?」 「もちろん!」

 

 

さて、ジュエルシードの封印を三人がかりでやっているのだが、まさかなのはちゃんが、あんなに強くなっているとは思わなかった。なんでも収束砲という魔法らしいのだが、青子先生から習った魔弾にそっくりなことに驚いた。やはりなのはちゃんたちの使っている魔法はもともと魔術ではないのか?そんなことを考えているとジュエルシードの暴走体に僕の魔弾、なのはちゃんが放ったもはや桃色のビームと言えるモノ、フェイトちゃんの雷の一撃が撃ち込まれてジュエルシードの暴走体は討伐された。……なのはちゃんとうちの師匠を混ぜたら危険だ。……………まぁ何事もなくジュエルシードを封印できてよかった。うん、なのはちゃんを怒らせるのは本当にやめておこう。普段の僕だったら、自分に接近する存在に気づかないなんてことはないんだけど、ジュエルシードを封印して気の緩んだ時に近くから突然、自分と同年代くらいの声で警告が飛んできた。

 

 

「待った!そこを動くな!」

 

 

威嚇するような大声になのは、フェイトは驚き仄のローブの裾を掴んだ。彼女らがローブを掴んだ時に僅かに黒の三角帽子が、ずれて声の主を確認し損ねる。仄は帽子の位置を正して声のした方向を見る、そこには黒一色の例えられるモノで一番近いのは軍服といったところか、だが、それには、なのは、フェイトたちの服装、いや彼女らが言うにはバリアジャケットと呼んでいるモノに共通した部分が存在する。それを纏った自分と同い年くらいの少年は、どこか凛と大人びたような雰囲気を出していて、第一印象では良くも悪くも融通の効かないと予想できた。

 

 

「僕は時空管理局執務官、クロノ、……クロノ・ハラオウンだ。管理外世界での魔法の無断使用、危険度の高いロスト・ロギアの所有、以下のことを加味し、執務官の権限でこれ以上の戦闘行動の停止を命じる。デバイスを持つ者はデバイスを待機形態にしてくれ。詳しい事情を聞かせてもらう」

 

 

この時の仄の心情は『自分の管理地で何を言っているんだ』と心の中で、いや素直に心情を顔に出していただろう。だが、フェイトたちは彼の告げた言葉に反応してこの場所から撤退をしようとしていた。

 

 

「フェイト!逃げるよ!」 「…っ」

 

 

アルフの下した判断は主人第一、それは使い魔としては当然の物でむしろ称賛されてしかるべきものだろう。しかしフェイトは、この場所のなのは、仄を残していくことに躊躇してしまいアルフの動作に間に合わない。ここで躊躇した理由は彼らから自分の情報が漏れてしまうことを危惧した……のではなく二人を心配したという、お人好しな理由であり、この場所では心の贅肉というべき余計な思考。そんな隙のできているフェイトたちを見逃さず、クロノと言う魔導師の少年は二人にバインドをしようとするが……………

 

 

「はいはい、二人ともストップ」

 

 

仄はアルフの手を抑え、フェイトの額に軽くチョップをして二人の行動を制する。その行動にクロノは毒気を抜かれ、構えていたデバイスを静かに下げる。

 

 

「協力に感謝する、では君たちは…「ちょっと待った、僕は協力したつもりなんてないよ」何?」

 

 

仄の一言を耳にしたクロノという少年は仄の顔を睨み、下げていたデバイスをもう一度構えた。アルフはクロノにいつでも飛びかかれるような姿勢をとり、フェイトは不安を隠しきれていない、ユーノはここで下手な行動を取らず、見に集中している。なのはは現状がどういうことなのか理解しきれず、おろおろとしている。

 

 

「それはどういうことだ、理由次第では君たちを公務執行妨害で捕らえることになるぞ」

 

 

「それが間違いなんだよ、そもそも僕たちは管理局のことなんて知らない。だいたい、ここは君たちの世界じゃない。君に僕たちを捕まえることはできないだろう」

 

 

「……………ここが管理外世界だとしても、君たちは魔法を使っている。…ここが管理外世界である以上、魔法技術は存在しない。つまり君たちは管理世界から来ている。確実に管理局のことを知っているはずだ」

 

 

 

そう、彼はこの地球に魔術というモノがあることを知らない、それが事態をややこしくしている一因でもあった。そこで仄はここである程度話しておかないと解放されないな、と直感で理解する。『ああ、面倒だからって公園に認識阻害の結界を張っておけばよかった』と、仄は読んで字のごとく後悔という苦い経験をするのだった。

 

 

「この世界には君たちに見つからないようにされた魔法、というか魔術っていうのがあるんだ。つまり本当に管理局なんて知らない」

 

 

「なっ!何だと、………………その話が本当だと仮定しても、そっちの二人はどういうことだ!」

 

 

「はぁ、騒がないでよ。二人は散らばったジュエルシードの回収にこの世界に来ているんだ。二人は何の反論もできない、でも二人は捕まえさせない。ここが管理世界だったとしても、ここは僕の管理地だ。この街では僕のルールに従ってもらう」

 

 

「つまり管理局に逆らうと?」

 

 

「そっちこそ、この街で僕に逆らうの?」

 

 

意見を衝突させて結局、お互いの意見は受け入れられなかった。つまりここから先は互いに矛をぶつけ、意見を己の正義を押し通すしかない。クロノは無言で杖を振るった。そこから魔力の弾丸が放たれる、仄はそれを避けるが避けた先でバインドに捕まってしまったのだ。なのは、フェイトたちは仄の援護をしようとするが、仄の目線がそれを止めた。

 

 

「ふん、あっけないな」

 

 

クロノは数秒で戦闘が終わってしまったことに呆れる。

だが、彼の魔法は仄には届いていない、そもそも神秘の欠片もないモノで魔術師に魔法使いに勝負を挑んだこと自体が間違っているのだ。

 

 

「それはどうも」 「なっ!」

 

 

バインドに捕縛されているにも関わらず、それをものともせずに仄は脱出する。クロノは相手が自分の未知の技術を持っていることが真実だと理解し、デバイスを正眼に構え仄との距離を詰めるため、接近しようとする。仄も身体能力を強化してクロノに接近して一撃を入れようと足を前に出す。

 

 

「落ち着きなさい!」

 

 

その瞬間に彼らの激突を止める声が空に出現する。クロノと仄の激突を諫めた空の魔法陣に映る碧の髪の女性はどうやらクロノの上司にあたる人のようだ。

 

 

「クロノ、そちらのあなたも落ち着いて」

 

 

「………あなたではなく、多華宮仄です」

 

 

「ああ、ではこちらもリンディ・ハラオウンです。

では仄くん。一度落ち着いて話し合わない?」

 

 

「………いいですけど、それってどこでですか?」

 

 

「ええ、それならクロノ。彼らをアースラに案内してあげ「ちょっと待った」

 

 

相手のテリトリーに無警戒でノコノコ行くほど、仄は思考が一般化されていない。これでも彼は最年少で根源に至った魔法使いなのだ。だが、それでは話が先にいかない、リンディは仄になんとか納得してもらおうとする。

 

 

「それでは話が進みません。どうか私を信じてもらえませんか?」

 

 

「ふーん、じゃあ僕たちを見ているモノを消してくれません?」

 

 

仄が指をパチンと鳴らすと、周辺からパリーンと綺麗で澄みきった破壊音が鳴り響く。その破壊音の理由が正確にわかったのはアースラにいたメンバーだけだった。

 

 

「艦長、サーチャーが破壊されました!」

 

 

「なんですって!まさか」

 

 

(微少なサーチャーに気づいて、それを全て破壊するなんていったいどんな技術を使って?いえ、こんなことができるのにクロノに直接攻撃を行わなかったということは人体に直接作用するモノではない?………いや、楽観的な考えはダメ…どっちにしろ。彼には直接会わないと………それにしてもクロノがもう少し柔らかな口調で警告してくれれば)

 

 

 

「ここは僕が管理している霊地だからね、多少の無茶が効くんですよ。それでどうします?僕としてはここで帰ってもらえればいいんですけど」

 

 

「…………わかりました………ですがこのまま戻ることは出来ません。そこで私がそちらに行くことで私たちを信じてもらえますか?」

 

 

「艦長、それは危険です!」

 

 

 

クロノが言ったようにこの場所は危険なところだ。

この海鳴は仄が管理している土地。いわば仄のテリトリー。そこで交渉をしようとするなんて胆が据わっているのだろう。それに仄は不機嫌ではあるものの、敵対心は見られない。リンディは彼を説得し、できれば彼の技術を管理局に登録してもらおうと考えていた。

 

 

 

「そもそも僕に無断で街に変なモノを入れたりした時点で、

帰ってもらいたいんですけど、このままじゃ帰ってくれませんよね」

 

 

「はい、私たちにも私たちなりの成すべきことがありますから」

 

 

仄が目を閉じて考えるのを、周りのなのはたちは黙って見ている。クロノも何か言いたそうだが、口を閉じて了承した。すると公園に魔法陣が現れてそこからリンディが登場する。

 

 

「それではお互いに納得できるように話し合いをしましょう。そちらの二人もそれでいいですか?」

 

 

「「え?」」

 

今まで会話に入り込めなかったなのはとフェイトが突然、話しかけられて驚いてしまったようだ。なのはとフェイトはリンディに自己紹介をした。もしやリンディさんは二人に話しかけることで交渉に巻き込んだのだろうか?…………いや、そんなことを考えていても泥沼に嵌まるだけだ。仄はいっそクロノとリンディの二人に暗示をかけて帰ってもらおうかと物騒なことを考えるが、リンディより面倒な人が来たら、それはそれで厄介だとして大人しく交渉を始めた。

 

 

「僕の要望はジュエルシードの件はこちらで解決するので放置してほしいこと、僕の魔法技術?について他言しないでほしいこと、この街にもう来ないでほしいこと、この三つです」

 

 

「なっ!それは要するに僕らに見て見ぬふりをしろということか!」

 

 

声を荒げたクロノとは異なり、リンディは落ち着き払っていた。

 

 

「それでは私側の要望を、まずジュエルシードなどのロストロギアは管理局で管理しています。この街でジュエルシードの封印をさせてもらえませんか、それとそちらの持っているジュエルシードをこちらに譲渡していただきたいのです。もちろんそれなりの謝礼も出ますし、この街に迷惑はおかけしません。そしてあなたの使った魔法技術を正式に管理局に登録してくれませんか、登録すればその技術をこの世界に広めるお手伝いを出来ますし、この世界はさらなる発展が望めるのですよ。それにきちんとした利益も約束いたします」

 

 

(通販の宣伝みたいだな)

 

「まず、最初のジュエルシードの件は僕、なのはちゃんとフェイトちゃんで全て封印するので彼女たち二人のどちらかが全て手にいれたら、全て手にいれた方にお願いしてください。ジュエルシードの封印のために、この街での活動は口出しする気はありません。けど、手にいれたジュエルシードは二人に渡してあげてください。後、二つ目の要求は絶対にのめません」

 

 

「なっ!君は魔法技術を広めようとしないのか!魔法の利益を独占し、この世界の人たちに利益を与えようとしないだと!ふざけるな!」

 

 

「クロノ、落ち着いて。ジュエルシードの件はわかりましたが、何故魔法技術の登録をしないのですか?利益はきちんとあるんですよ」

 

 

「こちらにはこちらのルールがある。それにそちらの言う利益がこちらの利益になっているとは限らない」

 

 

 

「…………誰にも理解されないルールに意味があるのですか?」

 

 

「理解しようとしてないだけでは?」

 

 

「「…………………………………………」」

 

 

「ふぅ、わかりました。今回はジュエルシードの話に不満はありませんので、これで納得することにします。そちらの魔法技術のこともそちらなりの理由があるのなら、強制はいたしません。………ですが私の職務上、あなたの魔術?を他言しないというのはちょっと……」

 

 

「別にいいですよ、大したことはやっていないし、深い話をしなければいいだけですから。後、この世界にいる他の魔術師に勧誘するのは止めません。」

 

 

「…………ということはこの世界にはあなたと同じ技術を持つ人がいると?そういった人はこの街にもいるのでしょうか」

 

 

「自分で探してください」

 

 

仄のそっけない対応に肩をすくませるリンディ。

彼に問いをしても答えは返ってこないと理解すると、リンディは話の相手を変更して問いを投げる。

 

 

「なのはさんにフェイトさんは心当たりはないのかしら」

 

 

「ふにゃ!」 「え?」

 

 

「そーいうのはありなんですか?」

 

 

「だって仄くんが答えてくれないんですもの」

 

 

「一応言っておきますけど、二人には口止めしてますからね」

 

 

「あら、残念」

 

 

そうして仄との話が終わると、リンディは次になのは、フェイトと話を始めた。もっともフェイトはジュエルシードの譲渡を断り、なのはの方はユーノがジュエルシードの譲渡に同意、管理局に協力することを選んだのだ。話は終わり、管理局の二人となのは、ユーノたちはアースラとやらに、仄とフェイトは多華宮邸に戻っていき、ようやく解散したのだった。

 

 

 

 

「あいつら、これから何をしてくるかねぇ」

 

 

「絶対にこの街を調査でもすると思いますよ。アルフさん。

それにしても厄介なことになっちゃったなぁ」

 

 

「……ホノカ、ごめんね」

 

 

「なんでフェイトちゃんが謝るのさ、君は悪くないだろう。だったら胸を張っていいんだよ」

 

 

「あ、………………………うん!」

 

 

「ほら、フェイトちゃん。はやく帰らないと暗くなっちゃうよ」

 

 

「え?…ちょっと待って~」

 

 

「ちょっと待ちなよ~」

 

 

フェイトは三人で笑っている、この時間をただ楽しみながら、仄のあとを追いかける。しかし彼女の心の中には(もし、ジュエルシードが全て封印できたとしても仄に会いに行けるのかな)と微量の不安を抱えながら仄と一緒に家路につくのだった。

 

 

 

 

 

Sideアースラ

 

 

ユーノは管理局に協力する立場を取り、そうするとなのはも一緒についていった。ユーノとしてはなのはは仄たちと同じ立場の方がいいのではと質問をしたが、なのははそうすると事件のあとユーノが苦労するだろうと予測して、アースラに乗ることを決めたのだ。まぁ、そのあとアースラに乗ると、魔法とは関係のなさそうなSFさに仰天したり、ユーノが自分と同い年の少年であることが発覚するなど、様々な驚きに遭遇する事態になったのだが、ここは話を進めるとしよう。

 

 

「それであなたたちはジュエルシードを封印することになったと?」

 

 

クロノの案内した先は、先程までのSF感漂う通路とは一風変わって、なんと日本の和室を模したような部屋。そこでなのは、ユーノはこれまでの事情を詳しく説明したのだった。

 

 

「はい、今回の件は僕ら、スクライアの一族がジュエルシードを発掘したことで起きたこと、なのはは散らばったジュエルシードの封印に協力してくれたんです。仄さんにフェイトさんは封印している最中、なりゆきで協力関係になったんです」

 

 

「……………それはたいへん、立派な行為だわ」

 

 

「だが、同時に無謀なことでもある」

 

 

二つの異なる意見にユーノは自分の行為が間違ってはいないこと、自分が考えなしで動いたことを痛感する。そしてリンディは一息入れて、とある言葉をなのはたちに告げた。

 

 

「これよりロストロギア《ジュエルシード》の回収は私たち管理局が全権を持ちます」

 

 

なのはとユーノは唐突に告げられた言葉に目を見開く。

クロノは追い討ちをするように、

 

 

「君達は今回の事件から身を引き、元通りの生活に戻った方がいい」

 

 

なのはは彼らがこれを善意で言っているのだと信じている。それでも、その言葉に納得するのかどうかは話が別だ。なのはは強い意思を瞳に込めてリンディを見つめる。するとリンディは嬉しそうに笑いながら、なのはを見つめ返す。

 

 

 

「クロノの言うことにも一理あるわ。でも、急に言われては気持ちの整理もできないでしょう。一度家に帰って今晩ゆっくりと話し合ったらどう?」

 

 

「艦長、それは本気ですか?!」

 

 

クロノは自分の母にして上司であるリンディの言動に突っ込みをいれた。それに対してなのははリンディを見つめ、確固たる意思を持って返答する。

 

 

「いいえ、一晩も要りません!仄くんにフェイトちゃんと約束したんです。一緒に封印するって、だから、………だから手伝わせてください!」

 

 

「なっ、何!君は何を言って……」

 

 

「………………クロノ、彼女の意思は硬いわよ。それにまったく力が無いというわけではないわ、フェイトさんもだけど彼女たちはそれなりの実戦経験をしてきている」

 

 

「むっ、ですが実戦経験といってもその数は数えるほどしかない。魔力量の確認、使用できる魔法の数などを調べてみなければ、そうしてやっと判断できるのではないですか?」

 

 

「あら?判断できるかって聞くことは、つまり彼女たちを認めたと、そういうことだと捉えていいのかしら?」

 

 

クロノはしまった、とでもいうように表情を固くするが、やがて諦めたように肩を下げ、やれやれと言いたげな瞳でリンディに頷いた。それを見たリンディは満足げになのはを見て、小さな二人の協力者を歓迎したのだった。

 

 

 

 

 

 

After episode

 

 

「ところでなのはさん、あなたは仄くんの魔法技術について詳しく知らないの?………………できれば彼の技術について情報がほしいのだけど」

 

 

「え~、あ、あの言えません、仄くんとの約束したんです。しゃべらないということで仄くんに魔術のことを教えてもらったの、だから答えられないんです、すいません!」

 

 

「あらあら、ではユーノくんは?」

 

 

「僕もお答え出来ません、彼の信頼に対して裏切りで応えたくないんです。本当に申し訳ありません」

 

 

「いえいえ、気にしないでちょうだい」

 

 

リンディが二人にフォローをし、なのはにアースラで少し生活してほしい旨を伝える、彼女たちは魔力量の測定に別室にいった。和風の艦長室で一人になったリンディは仄が何をしたのか、アースラの職員たちに解析を命じ、仄、なのはのいっていた魔術、そして地球というキーワードをコンピューターに打ちこんだ。結果としては伝説やゲーム、漫画といったものしか見つからず、この世界で魔法文化は発見できなかった。

 

 

「なのはさんみたいな高い実力者が協力してくれるなんて、本当によかったわ。できることなら管理局にこのまま所属してほしいけど、それは彼女が決めることよね。それとなのはさんにフェイトさんもすごい実力だけど、それに比肩する技術を持った仄くん。彼も管理局に来てくれないかしら?そして未知の魔法技術の登録もしてもらいたいけど……………………」

 

 

 

以前、地球に魔法文化があるかどうか調べにいった管理局員は何も発見できなかったとレポートに残している。そういえば仄の自宅までの道をサーチャーで追跡したが(自宅までの道であって、自宅内にサーチャーを入り込ませようとはしていない、その理由はプライバシーの観点、仄がサーチャーに気づける点からだ)仄たちを見失ったという結果。どうやらこの世界の魔法技術は隠蔽に優れたモノであるらしい、リンディはこの世界に魔法があることをレポートにまとめて、ぽつりと願望を呟いた。

 

 

「はぁ、いっそ、仄くんが管理局に入ってくれないかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

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