SIDE 高町なのは
目覚まし時計が鳴る朝の七時ごろ、毎朝の馴染み深いまどろみを、
どうにか黙らせ、二度寝の誘惑に打ち勝ち少女は意識を覚醒させる。
少女の部屋はあちこちに、少女らしいものがありながらも、
乱雑といった不快な印象は感じさせずに、むしろ部屋はきれいに、
整理整頓されておりそのさまは、落ち着きを感じさせるモノだった。
ベットの上で少女は 「うーーん」と軽くのびをして、
一階の家族が集まるリビングへ動き出す。
「あ なのは おはよう」 ここで声をかけてきたのは、
高町家の母 高町桃子 とても若くて、端からみたのでは、
とてもではないが、三児の母には見えないだろう。
「おはよう お母さん それにお父さんも」
「なのは おはよう 今日もいい天気だ。
早くシャキッとしなさい。 でないと母さんの
美味しいご飯がおいしく食べられないぞ。」
「ふふ まぁ あなたったら」
イスに座りながらコーヒーを飲み、新聞を読むのは
高町士郎 高町家の家長に、あたるその人である。
「なのは お父さん お母さん おはよう」
「おはよう なのは 父さん 母さん」
今やって来たのは、朝の道場での鍛練を終えてきた、
なのはの二人の兄に、姉である。
名前は姉が高町美由希、兄の方が高町恭也でどちらも、
よく鍛えられた肉体を持っている。
そして人に与える第一印象も似ていて
姉は活発な印象が、兄は精悍な印象が見受けられる。
「うん! おはようなの」
「どうしたの? なのは 昨日からずいぶん ご機嫌ね」
「お母さん これからは学校で、多華宮くんに会えるんだよ」
「たかみやくん? それって なのはの昔会った魔法使いの?」
「そうだよ お姉ちゃん」
魔法使いの少年 それは高町家では、特別と言える存在で、
父親が仕事の事故で、入院して家族が混乱。
幼いなのはが、寂しさを抱えているところを
助けたのがその魔法使いの <タカミヤ ホノカ>なのだ。
昔にこの海鳴市でその魔法使いの少年を捜索したのだが、
見つからずに、そのままにしていたのだ。
ちなみに高町士郎は、その事故を期に仕事を、
引退し妻の経営する翠屋でコーヒーを煎れている。
「驚いた 本当にいたんだな」
「お兄ちゃん どういう意味なの」
「あ それはその~ あはははは」
「その辺にしなさい しかし そのタカミヤくん?
一度あって話がしたいな 今度 翠屋に連れてこれないかな
翠屋自慢のシュークリームとコーヒーをごちそうしたいんだが」
「お父さん その子 なのはと同級生でしょ
なのははコーヒー飲めるけど その子は飲めるの?」
「なのはが、連れてきた友達は、皆飲めたじゃないか」
「父さん すずかちゃんは、忍の妹だし
アリサちゃんは社長令嬢で、一般的な子とはちょっと違うだろ」
「じゃあ なのはが今日 多華宮くんにコーヒーが好きか
聞いてくるよ 」
「そうか じゃあ 頼んだよ なのは」
「うん!」
「みんな ご飯早く食べないと、遅刻するわよ」
桃子の声で 一斉にハッとして朝ごはんを急いで食べる。
この一家団欒 どこにでもあるようなものだが、
本来の正史にはないかけがえのないモノだった。
SIDE 多華宮
魔術師の朝は、早い 朝のまどろみを自分の意思で消して、
すばやく これから自身がすべき、行動を頭の中で構築する。
魔術師にとって自身の精神、欲望のコントロールなど、
初歩中の初歩で、別段誇るモノでもない。
とても広い洋館 しかしただ大きいわけではなく、
中には一目見ただけで値の張るものとわかるものが数多く存在する。
そしてそれに紛れていくつかの魔術的なトラップが仕掛けてある。
さて、この館を手にいれた経緯について
さわりの部分だけ、語ることにしよう。
数年前 日本の最上位の霊地である海鳴の魔術師が、
多華宮くんに攻撃をしてきた。
彼は自分を攻撃している魔術師が海鳴にいることをつきとめ、
海鳴の魔術師をたおして、この霊地の所有権を手にいれたのだ。
まぁ そのあとすぐにゼルレッチに連れられて、
世界中を、旅することになるのだが、それはまた別の話し。
とにかく 放置していた霊脈は昨日のうちに調整がすみ、
この館の魔術トラップ、海鳴にはってある侵入者発見の結界も
正常に起動していた、学校の準備はすでに完了している。
となると今からする事は、朝食を食べることである。
キッチン立って、フライパンに油をひいて、ベーコンを焼く、
他には、シリアルに果物などを、テーブルの上において完成だ。
大きいテーブルで一人食べる食事は、どこかもの寂しさを感じる。
朝食を口に運びながら、考えるのは昨日の少女三人組のことを
といっても色恋ざたではないのだが。
アリサ・バニングスだが 言いたいことは、はっきりと言う少女で、
どこか 師匠の青子と重なるところがあり、好感がもてる。
次に月村すずかについて、彼女は異能に関係しているのだろう。
恐らくは、混血なのかも知れない。しかし たいした力ではないようだし
普通に対応しても問題はないだろう。
問題があるとすれば、それは高町なのはである。
外からみてもわかる、一般人には不釣り合いなほどの高い魔力。
魔術師かと思ったが、そもそもこの海鳴市には、
魔術師を発見する結界がはってある、
それに引っ掛かってないのだから、彼女はシロだろう。
それより彼女は自分にとって、神秘の秘匿について、
深く考えなかった過去の自分の象徴。
それは自分の黒歴史を冷静に見つめるようなものだ。
しかし もし 過去に戻ってひとりぼっちでブランコをこぐ彼女を、
(多華宮 仄は第二魔法を使えば、
本当に過去を、さかのぼることが可能なのだが)
見つけたとしてはたして自分は放置することができるのだろうか。
答えは否である。 何度同じ場面に遭遇しようとも、
多華宮 仄は、何度同じ場面に遭遇しようとも、
同じ行動をとってしまうだろう。
それは師匠にいわれた魔術師としては致命的な弱点。
海鳴市で高校生まで生活していくにあたり彼は、
選ばなければならない。
魔法使いとしての生か、それとも一般人としての生か。
それでもまずは今日の学校だ。
未来の不安に関する気持ちを手早く切り替えて、
彼は学校の送迎バスのくるバス停まで歩きだした。
ちなみに多華宮くんは、海鳴の魔術師を殺しています。
甘すぎるというのは、相手が自分に害を与えようとしても、
殺す気がない、または年下、同年代の子に対して冷酷に、
なりきれないことで、相手が殺す気でくるのなら、
冷静に対処することができます。