何を以て善と為し、何を以て悪と為すのか   作:Noah/Deal

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深淵の狭間/夢幻の抱擁

 

 

――ヒトの夢とは、得てして儚きものである。

 

――故にヒトは、それを追い求めるのだ。

 

――その先に待つモノを知らぬまま。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

「デュアル―――バーストッ!」

 

 

 

路地裏に響き渡る、その場に相応しくない程の音響。

金属同士が弾けるその音を以て、闘争の幕は開かれた。

魔力光によって照らされたその場に相対する、二人の人間。

 

 

――その瞳を欲望に曇らせ、双つの剣を構える少年。

 

――対しては、焦点を失った双眸に、本能のまま紅き長槍を掴んだ青年。

 

 

赤い魔力光を撒き散らしながら放たれた初撃は、しかし容易く紅槍に阻まれた。

それに小さく舌打ちをした少年は、逆手に持つ得物を地に叩き付け、バックステップにてその場から退避する。

その『一瞬』後、少年が居た空間には――紅き、閃光が。

 

 

 

「――ハッ、雑魚の割にはやるじゃねぇか…っ!」

 

 

――"念のため"。その思考の元に退避を選択していた少年は、しかし相手の技量を見誤っていた事を理解する。

眼前の存在は獲物ではない、明白な『敵』であると。

ただ喰われる事を選んだ負け犬ではなく――、獰猛な狂犬の類であったと。

 

次の瞬間、周囲を少年の赤い魔力が包み込む。

それは、決して逃走を許さぬ闘争舞台。

少年が作り出した結界は、まさしく現世と幻世の境界と言えよう。

 

"此処で確実に仕留める"。先の一撃は、少年にそう決意させるには十分すぎたのだ。

 

 

 

「コロサ、ないと。ボクが――ケス。邪魔……、なんだ。主人公――そう、僕がそうなんだ。その筈なんだ」

 

 

その一撃を放った存在は、無造作に握った槍を少年に向け、静かに口角を上げる。

響き続けるノイズは、青年にとっては最早雑音にすら感じられない。

ドクン、ドクン――と、鼓動のように感じられる紅い脈動。

両手で握った槍から響くそれを心地よく感じながら、薄笑いを浮かべた青年は再び少年に迫る。

 

 

そして――激突。

 

 

 

「……クソが、雑魚のくせしてっ!」

 

《Shooting Mode》

 

 

当たれば、その瞬間に破滅が訪れるであろう――その紅槍の一撃を、少年は辛うじて受け流す。

同時に、その衝撃を生かし後退。それと同時に、得物を通常の長杖へと戻す。

 

――近接戦闘では不利だ。

 

その一言が、その瞬間の少年の脳裏を埋め尽くしていた。

思いも寄らない苦戦に、一滴の汗が頬を伝う。

だが、それもこの瞬間までだ――と、彼は確信していた。

 

事実、彼は射撃戦を主とした魔導士である。

故に、その思考は実に利に適っていた物だった。通常ならば――

 

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