スミレには嘔吐等を引き起こす毒がある。   作:へりこにあん

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間開けてしまってすみません。テスト期間中だったからという苦し言い訳でどうか納得してください。

後、クルミに近づけなくてよかった人間→人間【クルミに近づけなくてよかった】

  いろいろと揺らいでしまっている自分→人間【いろいろと揺らいでしまっている】

と変えました。でも中身は変わっていません。


神に仕える聖騎士【終わらせた】

『手酷くやられてしまったな。』

 

冴才がストライクドラモンともども二、三時間呆然としているとオメガモンの声が冴才の脳内に響いた。

 

『・・・オメガモン、詳しい話を聞きたい。あいつを連れて帰らなきゃいけない理由とかとりあえずお前の知っていること全部。』

 

結局あいつの言っていたことは考えてもよくわからない、ただ一つわかるのは自分の知っていることでは足りなかったということだ。

 

冴才ははっきり言って考えるのが苦手だった。否定された段階で何か誤まっていたとはわかったもののそれを知識不足だと決めつけてしまった。

 

『あの少女に言われたことの意味ならば私にはだいたい想像はつく。しかし、それをただ教えても意味は無い。考えてそれでも自分が正しいのだと示せと言っていただろう?』

 

オメガモンが冴才を選んだのはその馬鹿さと勘違いしやすい性格が理由だった。といっても悪い意味ばかりではない。物事を行うことに自信は大きく影響する。自信というのはできる、やれると考えられるかどうかが大きい。勘違いしやすい奴は実力以上の力を発揮できる人間であるとも言えるのだ。

 

まぁそのことをもし純玲に言ったなら実力以上といっても元々の実力が大したことないから何の意味も無いと一蹴するだろう。

 

とにかく冴才はその言葉を受けて一度放棄した考えるという作業を再開した。

 

しかし一分も考えない内にその思考は止まった。冴才はやはり考える力に乏しかった。

 

常識は知識としてあるもののその本質を知らない、基礎問題や何度かやった応用問題は公式やそのままを覚えているから解けるけど初めて見る応用問題は解けない。クイズは解けることもあるけどなぞなぞはわからない。小説のストーリーだけの面白さはわかっても細部の感情の動きが理解できない。

 

オメガモンはだてに頭に語りかけているわけではない。思考を覗くことも同時に行いそれを踏ふまえて語りかえているのだ。

 

『まずどこをあの少女が強調していたかを考えろ。』

 

どこを強調していたかと言われれば冴才でもわかる。【違うなら何とか言ってみなさいよ。他人から聞いたこと全部忘れて、自分が見たものだけ信じて、考えうる限り色々な角度から現象を捉えて、納得いくまで考えて、それで自分のやっていることは正しいんだってさ!!】この言葉を純玲は叫んでいた。協調というとここしかない。

 

『大切なのは色々な角度から、納得いくまで考えての部分だ。これはこの言葉自体に対してももちろん適用される。』

 

オメガモンが懇切丁寧に言ったおかげで冴才はその言いたいことに気づいた。

 

『あの言葉全体に別の意味があるってことか?』

 

もちろん実際は全然違う。純玲の心のキャパシティーをつもりに積もった悲しみや怒りが超え溢れ出た感情が濁流のごとく全てを押しのけて口から出て行っただけ。そんな風に多重で意味を持たせるだけの余裕なんてあったわけがないしそもそも普通の女子中学生に咄嗟にそれだけのことができる冷静さも頭も早々持ち合わせていない。

 

『【自分のことも他のことも人から言われたことでしか判断できないんでしょ。】例えばこの言葉は私の今いる状況の酷さをちゃんと目で見て判断して欲しいと捉えることができる。』

 

オメガモンは最悪純玲も冴才も殺せばいいかと考えている。もともとこの世界にいるべきでない存在なのは言わずもがな、かたや吸血の獣を庇い、かたや理不尽な大量殺害犯。ロイヤルナイツによって粛清されても問題ない悪。

 

『なるほど・・・私の言っていること理解できてる?とかはそのままもう一つの意味を理解できているかどうかという確認だったんだな。』

 

冴才は結局他人の言うことに踊らされているのだということに気づかない。オメガモンの話術がとかではなく単純に冴才は馬鹿だった。

 

普通はどうしたって矛盾点を見つけてしまうしどう考えたってそれに当てはまらないものの方が多いことに気づく。

 

例えば【中学生にして体目当て、女子ならだれでもいい考えの浅い言われたことを全部が全部真実だと思い込むヒーロー気取りのダメ人間が自分のやったことについて何にもわからずに理不尽だって思って怒ってたらもう滑稽で仕方がないでしょ。】の部分もかなり印象に残るがどこをどう取ればいい意味になるというのか。

 

しかしやはり冴才はそんなことにも気づけない奴だった。普段でも怪しいが罵声を浴びせられたことにより余計に訳が分からなくなっていた。

 

『で、オメガモン。次俺は何をすればいい?』

 

『とりあえずそこにいればいい。すぐにデジヴァイスを持ってそこに行く。サングルゥモンが究極体へと進化する可能性が生まれてしまった以上戦争が起きるかもしれないぎりぎりの綱渡りをしてでもその存在を抹殺する必要がある。』

 

冴才の馬鹿さ加減とストライクドラモンの考えの浅さが想像以上であったことをやっと認識しオメガモンは自ら出ることを決めた。

 

『それでもあの人間を止められるのはおそらく君だろう。私はサングルゥモンを倒す、君はストライクドラモンの支援を受けつつあの人間の説得を再度試みてはくれないか。』

 

『わかった。今度こそやって見せる。』

 

上辺で取り繕うだけ、それっぽいだけで本質を理解できない冴才は結局オメガモンに頼り、自分の意思を持たないのではなく持てない。

 

「ストライクドラモン!今オメガモンから連絡が・・・」

 

「サザイ。俺はその話を聞く気は無い。俺の使命はウィルス種の駆除にある。」

 

その言葉の意味が冴才には理解できなかった。

 

「ストライクドラモン?」

 

「お前といたのはそのための力を得られるからに過ぎない。お前といてももう力は得られない。」

 

そこで初めて冴才はストライクドラモンが自分の思っていたような相手ではないと知った。

 

「仮に得られたとしても相手も得られる以上時間を無駄にするだけ。だが、一時的とはいえ力を渡されたこと、感謝している。」

 

ストライクドラモンは純玲によって引き起こされたイレギュラーな進化を見て種族が絶対ではない可能性というものに行き当たっていた。

 

「ストライクドラモン・・・」

 

クルエルがやコドクグモン、挙げ句の果てにストライクドラモンまでもが変わった中で冴才は変われていなかった。

 

「・・・」

 

ストライクドラモンは冴才から何か言葉が来ないかと思ったがすぐにあきらめ、もと来た道を引き返し始めた。

 

 

 

 

 

ストライクドラモンは冴才と別れて数時間歩きながらも純玲の言葉を頭の中で繰り返し反芻し、考えていた。

 

今までストライクドラモンは自分の行動に疑問を感じはしなかった。しかし純玲に決められたレールを外れることができると証明された。種族が絶対でない可能性を提示された。それは過去のストライクドラモンの生き方の否定だったがストライクドラモンはそれを不愉快とは思わなかった。

 

ストライクドラモンが種族主義だった一因はファイル島の環境にある。

 

ファイル島にいるワクチン種はレオモンやガルダモンのように正義感にあふれ、データ種は自分達の領分に生き、ウィルス種はオーガモンやワルシードラモンのように自らの考えに則っているので一線は守るが横暴が目立つ。

 

ファイル島はデジモンが非常に種族に忠実な場所だったのだ。

 

ストライクドラモンはファイル島から離れてクルエルを追う中で純玲に言われる前から無意識下にそういう考えがあったのだ。純玲がきっかけでそれが意識下に出てきた。ただそれだけのことだからストライクドラモンは受け入れられたのだ。

 

かといってストライクドラモンの思考が劇的に変わったかというとそうではない。ストライクドラモンは例外があるとは知ったしワクチン種が正義とは限らないことも知ったもののウィルス種は基本的に凶暴な種族だという認識は変わらない。

 

けれど今まで殺してきたデジモンの中に例外がいなかったとはストライクドラモンは思えなかった。

 

だからこそストライクドラモンの思考は正義とは何か、償い、赦されるためににはどうすればいいのかに向いていた。

 

ある程度その方向で考えていた時、ストライクドラモンは気づいた。

 

もし俺が罪を償えて、赦されることがあるのならあの人間・・・スミレとサングルゥモン・・・いや、クルエルがレオモンを殺したことが赦されない道理は無いのではないか?

 

気づいてしまった以上これから同じ過ちは犯せない。ストライクドラモンはぎゅぅっと爪を握りしめた。

 

もう過ちを犯さないための罪を償うための最良の選択肢は一体何なのか、ストライクドラモンは一つの答えに行きついて足を止めた。

 

スミレを守ろう。

 

本来こんな世界にいるべきでないスミレの幸せがオーガモンのワルシードラモンのアルケニモン達の望みで自分にできる贖罪。

 

そのためには何をするべきか。最終目標はストライクドラモン自身のように追うデジモン達を説き伏せることだ。しかしストライクドラモンはそれができるだけの頭脳が自分に無いことを把握していた。

 

だからとりあえず冴才を説き伏せて元の世界に帰そう。冴才の手元にまたデジヴァイスが現れ別のデジモンを進化させないとも限らない。最低でも行動を起こさせないようにしよう。そう考えた。

 

「戻るか・・・」

 

ストライクドラモンはさっき言ってしまった台詞を思い出して少しやってしまったと思い苦笑した。

 

しかしそれもすぐに終わった。

 

目の前の空間がぐにゃりと歪んで姿も技も役割も知っているけども顔も声も知らないデジモンが現れた。

 

「・・・オメガモン。」

 

ストライクドラモンがその名を呼ぶと終わりを冠する聖騎士オメガモンの目がゆっくりとストライクドラモンを捉えた。

 

――ボオッ

 

たったそれだけだったのにストライクドラモンが意識したわけでもないのにストライクドラモンの橙の髪は戦闘態勢を意味する青い炎と化し、電脳核はクルエルと戦って生じた疲れと傷の痛みを麻痺させる麻薬物質を大量に分泌、エネルギーを体中に送り出そうと早鐘を打ち出す。

 

「それは・・・私に対しての挑戦と受け取っていいのか?」

 

オメガモンの小さな声はストライクドラモンの心の内に眠っていた果てしなく暗く底知れなく寒い根源的な恐怖を呼び起こした。

 

どう考えたとしても無謀な戦い、避けることもおそらく可能、しかしストライクドラモンはここでオメガモンに挑むことに何か大きな意味があるような気がした。

 

「ストライクファングッ!!」

 

ストライクドラモンのメタルプレートから炎が立ち上り、その灼熱の体をもってしてオメガモンに襲いかかる筈だった。

 

「グレイソード。」

 

しかしオメガモンのつぶやきと共に焔の力が凝縮された一閃が数十メートル離れてポツンと立っていた木やまばらに生えていた草を巻き込んでストライクドラモンの上半身と下半身を別れさせその断面から炭化させていった。

 

「お前はそれなりに働いてくれた・・・だが感謝はしない。」

 

オメガモンは空気に溶けていったストライクドラモンにそれだけ話しかけて身を翻し冴才の元へとゆっくり歩き出した。

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