スミレには嘔吐等を引き起こす毒がある。   作:へりこにあん

16 / 31
騎士が語る事【薔薇輝石・言葉・理由】

「五十五年前。七大魔王が一柱、強欲の名を冠する魔王であるバルバモンは同じ七大魔王の中から色欲の魔王リリスモン、憤怒の魔王デーモンと共に七大魔王屈指の実力者であるルーチェモンフォールダウンモードを襲撃し殺害、さらに怠惰の魔王であるベルフェモンを封印した。

 

七大魔王同士の仲間内での不仲はわりと知られたことだったから私の所属するロイヤルナイツ含め他の勢力もはあまり警戒していなかったのだがそれもすぐに変わった。七大魔王と静かな敵対関係にあった三大天使を襲撃しその内セラフィモンとオファニモンの二体を殺害、さらにケルビモンに深手を負わせ事実上の壊滅状態に追い込んだ。

 

そこからが早かった。バルバモンの率いる少数ながら高水準の魔王型デジモンの軍勢、リリスモンの率いる数は多いが質のあまりよくない堕天使型デジモンの軍勢、デーモンの数も質も中の中の悪魔型デジモンの軍勢、そして新たに加わった七大魔王が一柱、嫉妬のリヴァイアモンの水棲系デジモンの軍勢を組み合わせた軍勢をバルバモンの軍勢を中心にして一つの軍として完成させデジタルワールド各所の重要拠点を瞬く間に占拠した。

 

完全にではないがデジタルワールドを支配したと言い換えてもいいだろう。

 

この事態にイグドラシルはこれ以上は世界の維持、発展に明らかな害を及ぼすと判断し私達ロイヤルナイツに七大魔王強欲のバルバモン、色欲のリリスモン、憤怒のデーモン、嫉妬のリヴァイアモン及びその軍勢の壊滅を指示。

 

しかしロイヤルナイツは重要拠点占拠された際に二名、それまでに三名が寿命の関係で、そして一名が行方不明で欠落していた。ロードナイトモン、つまり私の育てている騎士デジモンの軍勢はあるがその全てがロイヤルナイツ見習いから構成されているゆえにそれ以上の進化が見込めない究極体は各地に散り私の元で学んだ各々の正義を実行していた。彼らを集めることは不可能ではないが先の七大魔王の進攻で死んだ者も多く割合としては一割どころか五分にも満たない。数も七大魔王の軍の三分の一も無く、戦力不足であるのは明らかだった。

 

ロイヤルナイツは常に第三者の目線に立つべき組織である。基本的に部外者だったり他の組織と全面的に協力するということは許されない。だが状況は差し迫りすぎていた。ドゥフトモンの進言にイグドラシルは即座にこの件に限ってではあるが多組織との全面的な協力を許可した。

 

ロイヤルナイツは満身創痍のケルビモンを通じて三大天使の天使型デジモンの軍勢を借り受け、私のの騎士型デジモン軍勢に加え、リヴァイアモンと古くからの敵対関係にあった深海の王ネプトゥーンモンの水棲型デジモン軍勢、個ではあるが邪悪とされるデジモン達に絶対の力をもつヴァロドゥルモンとの間に協定を結び七大魔王側から重要拠点の奪取を開始。

 

海ではネプトゥーンモンの軍勢とロイヤルナイツ、竜帝エグザモンとがリヴァイアモンの軍勢と激突した。

 

ネプトゥーンモンの軍勢に海面に誘い出されたリヴァイアモンと空から襲い掛かったエグザモンの戦闘は二体が他に類を見ないほどの巨躯であったこともあり海溝を生み出し島を消し飛ばし世界の形状を大きく変えた。

 

空では天使の軍勢とヴァロドゥルモンと蒼竜騎士アルフォースブイドラモンがデーモンの軍勢と相対した。

 

対多数に適したヴァロドゥルモンを巡ってのアルフォースブイドラモンとデーモンの戦いは天候すら変え究極体が上限であるという世界の理すら超えた。

 

この空と海での戦いはお互いに潰し合いとなりそれぞれ決定的な勝敗はつかなかった。

 

海の戦い、エグザモンは大槍の先に埋め込まれた銃口から複数種類のウィルス弾を打ち込み不回復の致命傷をリヴァイアモンに与えた。しかし死を覚悟したリヴァイアモンは殺したと確信し隙の出来たエグザモンを最後の力で深海深くへと引き摺りこみ、二体とも水面近くへと上がって来た時にはすでに形すら保ってはおらずただのデータの破片として天へと上っていった。

 

リヴァイアモンの軍勢は逃走、ネプトゥーンモンにもその軍勢にもすでに追撃する余力は無く形としてはロイヤルナイツ側が勝ったが引き分けと言って差し支えない状況だった。

 

空の戦いは永遠と高速回復を続けるアルフォースブイドラモンにデーモンの攻撃速度が付いて行かずデーモンの炎に焼かれながらアルフォースブイドラモンがX字に放った剣はデーモンの顔面を四分割しデータの塵へと返した。

 

しかしヴァロドゥルモンがいても軍勢の差は埋めがたくヴァロドゥルモンは自らの命そのものをエネルギーに還元し戦力差を覆して死んだ。アルフォースブイドラモンが残るだろうからとの事だったのだがアルフォースブイドラモンの超再生は寿命を加速度的に縮める。ましてや相手は七大魔王、通常の究極体なら百は下らない死を迎えただろう戦闘を超え体は限界、デーモンの軍勢が撤退するのを見守ってデータの塵に還った。

 

陸では私の軍勢、飛竜騎士デュナスモン、紅竜騎士デュークモン、終わりを冠する騎士オメガモン、策謀家ドゥフトモンが残ったバルバモンとリリスモン、そしてそれぞれの軍勢と戦った。

 

ここにサングルゥモンが世界中に妬まれ、疎まれ、憎まれるようになったその始まりがある。

 

先に言ったように私の軍勢に究極体はほとんどいない。リリスモンの軍勢と同程度の戦力しか有してはいなかった。バルバモンの軍勢は究極体の魔王型デジモンデスモンによって構成されている。やはり戦力差は大きかった。

 

その解決のためにドゥフトモンは戦場に分配するナイツの数を全ての戦場で公平にするのではなく首犯と思われるバルバモンのいる陸戦にナイツを集中させて敵の勢いを一気に七大魔王を駆逐し掃討戦へと持っていく作戦を立てた。

 

下手な奇襲や奇策はロイヤルナイツと七大魔王の間には意味を成さない。お互いに強すぎて身を隠すことすらできず、雑兵では究極体でもそうそう相手にすらならないのだから魔王やナイツをどの戦場にどの程度配置するのかに戦略の全ては集約される。

 

もちろん究極体の軍勢ともなればロイヤルナイツ二体ぐらいをある程度抑えつけ疲弊させることぐらいはできる。デスモン達を押さえ込んでも残りの軍勢の戦力差は埋めがたく押さえつけるのにナイツ一体を派遣せざるを得ない。バルバモン、リリスモンに一体づつ対応するとそれでもぎりぎりの人数だった。

 

この戦争のこちら側の理想形は兵の戦力差を逆転させ三体でバルバモンとリリスモンを討つこと。あちら側は二体のナイツを殺した後騎士デジモン達と共にいるナイツを討ち、究極体の軍勢達と共に二体のナイツを討ち倒しナイツを駆逐。

 

時間を稼げば究極体のデジモン達も確実に倒せるだろうしこちらの方が圧倒的とは言わないまでも有利なはずだった。今になっては手遅れだがもっと警戒するべきだった。強欲のバルバモンが七大魔王の力をみすみす捨てる筈が無かった。

 

開戦と同時に私はデュナスモンと共にバルバモンとリリスモンを討たんと飛び出した。一対一の戦いが得意なわけではないが対多数戦にはさらに適して無く、泣く泣くドュークモンに騎士デジモン達を預けた。ドゥフトモンとオメガモンもすぐに魔王型デジモン達の元へと飛んだ。

 

「後ろはこのデュークモンに任せ行くがいい!ファイナルエリシオン!!」

 

後ろでデュークモンの雄叫びが聞こえ、白いエネルギーの奔流が敵の軍勢を切り裂き本陣への道を作り出された。私は振り向かず頷いて鎧の背に付いた金色のリボンの刃を使って周囲の兵達を切り裂きデュナスモンにエネルギーを溜める時間を作った。

 

デュナスモンの体から迸る常軌を逸した闘気にオメガモンとドゥフトモンと今まさに激突せんとしていた究極体達の視線が集中しこちらにターゲットを変更してきた。一人だけならどうということは無いがその時のデュナスモンは動けなかった。

 

「・・・ガルルキャノン。」

 

だが特に心配する必要も無かった。一体残らずオメガモンの冷気弾に撃ち落とされた。究極体だけあって死にはしなかったが腕や羽など体の一部は凍りついており立ち直る前に剣を構えて待つドゥフトモンのところへ蹴り飛ばしたり殴り飛ばすぐらいのことはできた。

 

「アウススターベン。」

 

ドゥフトモンが私の飛ばした究極体達を消滅させた頃にデュナスモンのエネルギーの充填が終わり、デュナスモンの背から無数のエネルギーの飛竜が生まれ埋まりつつあるデュークモンの作った道を刹那に通り本陣の周りを包囲した。

 

「ドラゴンコライダーッ!!!」

 

デュナスモンの号令と共に飛竜は本陣に突撃し連鎖的に爆発を起こし数百メートル離れた今いる位置までも焼けるような空気が届くほどに大きな一つの爆発となった。デュナスモンの秘奥義、ドラゴンコライダーはロイヤルナイツでも屈指の威力を誇る一撃、本陣の周りにいた敵はほとんど死滅したがバルバモンとリリスモンが死んでいる筈なかった。あの溜めの時間に効果範囲から逃げるか高度の魔法盾を張る事など七大魔王にはたやすいことだ。

 

わざわざ放ったのは邪魔に入られたくなかったから。たとえ一緒にいたのが雑魚だとしても同時に相手にできる敵ではない。一つの隙が一つの怪我につながり大きな隙につながり大きな怪我につながりさらに大きな隙につながりさらに大きな怪我につながり最終的には致命傷に至る。

 

だがドラゴンコライダーは思ったよりも効果を発揮した。大幅に敵を減らすことに成功し、これで勝利が決まったのだと我々の誰もが思った。少しの間バルバモンとリリスモンを抑えればデュークモンが加勢に来て二体を殺すことができる。そう思った。

 

しかしいざ直に対峙してみるとリリスモンはある程度焦っていたがバルバモンには焦っているどころかどこか余裕すら感じられた。

 

その時初めて地中に何か大きな力が存在しているのに私達は気づいた。いや、正確にはその片鱗と言うべきだろう。その大きな力は封印されていて気づいたのはそこから漏れ出した分に過ぎなかったのだから。

 

「青いなロイヤルナイツ達。わしがベルフェモンを殺さなかった理由を考えはしなかったのかのぅ?」

 

振り返らずともわかった。後ろで怠惰の魔王が目を覚ましてしまった。自ら力を抑えられぬほどの力の塊が暴走を始めた。

 

戦場は混沌とし始めていた。ベルフェモンの力は敵味方を選ばず、ロイヤルナイツであろうが魔王であろうが堕天使であろうが騎士であろうが全て梱包材の様に潰すのを楽しむものと認識しているようだった。

 

だがその時点ではドラゴンコライダーの分デュークモンには余裕があり、辛うじてシナリオは狂わずにいられたしそれに対応するのが防御にも攻撃にも秀でた万能型のデュークモンであったあたり伏兵がいることはドゥフトモンの想像の範疇でもあったようだった。

 

ただそこからはその場にいた誰の想像の中にもなかった。

 

それまで不干渉を貫きマイペースにバイクで一人旅をしていた七大魔王、暴食のベルゼブモンが参戦した。問題はただ参戦したのではなくデュークモンを抑えベルフェモンを援護するように行動し出し事だ。

 

バルバモンの目論みとしてはデュークモンを抑え、焦点をこちらの二対二の戦いに集中させることだと見られた。しかしベルゼブモンの参戦はそれを崩した。さっき言ったようにロイヤルナイツと七大魔王の戦いは些細なことで決着がつく。だがベルフェモンの一挙一動は些細なことではすまされなく、徐々にではなくすぐに決着がつきかねないもの。加えてその力の矛先が誰に向くのかは決まってはいない。

 

混沌は深まりロイヤルナイツ対七大魔王の構図はロイヤルナイツ対七大魔王対ベルフェモン・ベルゼブモンの三つ巴の構図になった。だがその時はまだ構図ではっきりと示せるだけましだった。

 

それから少し経ちその戦場にいた誰もが疲弊しロイヤルナイツと七大魔王が刃を向け合っているままだとすべてが壊れ最後には力を使い果たし自壊するベルフェモンだけが残るのだろうと察した時、

 

「高貴なるぱしりと汚い魔王様方、これだけのメンツが揃って何をなさっているのですかね?」

 

吸血の魔王グランドラクモンはそこに現れた。滅びしか見えない中での乱入者はロイヤルナイツ、七大魔王と同列にみられる程の実力を持ちどちらとも確執深い存在。どちらをより憎んでいるかで戦争が決まるのだと思われた。

 

グランドラクモンは声に聖なる存在を堕天させる強い魅了の力を、瞳に邪な存在を意のままに操る力を持っていた。

 

来たタイミングが絶妙であったこともあり演技がかった台詞に全ての目がグランドラクモンの目を見てすべての耳が彼の声を聴いてしまった。その力は存分に振るわれその場にいたものは七大魔王、ロイヤルナイツを除き魔王であるデスモン、そして意思が無かったためか七大魔王であるはずのベルフェモンですらグランドラクモンの手の内へ落ちた。

 

場は混沌を極めた。グランドラクモン単体の手の内に世界を壊すことも救うことも可能なだけの力が集まっていた。その場にいたロイヤルナイツと七大魔王は疲弊し、とても全員の力を合わせてもグランドラクモンの手数と力には敵いそうになかった。

 

戦争がどうかなんてもう関係なくなっていた。戦争の行方が世界に影響するのではなくグランドラクモンの行動そのものが世界を左右しかねないのだから戦争は些細なことになっていた。

 

バルバモンとリリスモンとしてもそれは歓迎せざる事態ではあったがもう止めるすべは無かった。

 

全員が死を覚悟した時、グランドラクモンは思わぬ行動をとった。

 

「皆様に危害は加えませんよ。無様に肩で息をするさまが見れただけで十分。私は前々からこの世界に不満を持っていましてね。」

 

グランドラクモンは語りかけてきた。

 

「何故ロイヤルナイツや七大魔王、三大天使が代替わりを重ね続くのに十闘士は続かないのか、私が不死である理由はどこにあるのか。おそらく知ることはは叶わないでしょう。ですが諦めることもできないのですよ。」

 

わけわからないことをつらつらと述べるのを聞いた。グランドラクモンが滅ぼされた話は過去に数度あり不死ではないのはわかっていた。

 

「・・・わかりませんか。空白の主なら理解できたのかもしれないのですがね。クリスタルレボリューション・・・」

 

戦場にいた兵が、ベルフェモンも含めて全ての兵が大小さまざまな氷の結晶体となり浮かび上がった。その一つ一つが一体一体のデジモンの内部に含むエネルギーをその破壊力と成す爆弾だった。成熟期のデジモンだったそれの一つ一つがロイヤルナイツにすらダメージを与えられる物へと昇華されていた。

 

グランドラクモンはそれを戦場ではなく私達の陣営の守っていたもの、この世界の神、情報樹イグドラシルへと向けた。私達ロイヤルナイツでも逆らって壊せるかわからない存在であるがその時グランドラクモンの手の内にはベルフェモンがいた。ロイヤルナイツの総力さえ超える威力のそれはイグドラシルを殺せるかもしれない可能性を秘めていた。

 

いや、結果それはイグドラシルを殺した。私達の誰もそれを止めることができなかった。ただその破壊された余波を感じていた。

 

「やっと終わったんですよ。私達を縛る鎖からの解放がね。」

 

訳のわからないことを口走ったグランドラクモンは残りの結晶体を七大魔王達へと降らせることで消費しだした。七大魔王がそれを耐えきっても耐えきれなくても世界に与える影響は大きい。管理システムでもあるイグドラシルの無い状態では世界の修復は簡単なことではない。

 

結晶体を元の姿に戻せはしなくてもグランドラクモンを殺すことで結晶体を不発にさせ解析、分解するだけの時間は稼げる。そう私達は考えた。

 

七大魔王に集中している隙にグランドラクモンを殺す。それしかないと思った。ロイヤルナイツ全員が命を賭してでも殺す。七大魔王は虫の息だし一人生き残れれば対処は可能だ。

 

デュナスモンと私は援護にまわり・・・」

 

「で、今あなたがここにいるってことはグランドラクモンは殺したんでしょ?」

 

眠そうにスクランブルエッグを乗せたトーストを齧る純玲に話の腰を折られたロードナイトモンは少し不機嫌そうに紅茶をすすった。

 

中学生の純玲にとって長い話というものは非常に眠たくなる。話が短いというだけの理由で生徒からの先生の評価はかなり上がるものである。

 

ロードナイトモンは夜明けとともに到着し現在朝食を取りつつ話をしていた。食パンや紅茶、野菜なんかはロードナイトモンが来る途中で買ってきたもので夜に着くと言っていたのに付いたのが夜明け頃だった最も大きな理由である。

 

「あと、サングルゥモンとの関係がわからないのです・・・」

 

クルエルも純玲に便乗しサラダを食べながら控えめに発言した。

 

ムシャモンはロイヤルナイツの一体ロードナイトモンを目の前にしてそんな風にため口をきいたりできる神経が分からずただでさえ血色の悪い顔を青くして見ることしかできなかった。

 

「グランドラクモンは殺された。七大魔王は滅ぼされた。イグドラシルも死んだ。イグドラシルが死んだことでロイヤルナイツの代替わりのシステムも無くなった。この五十五年新たなロイヤルナイツも七大魔王も三大天使も生まれていない。しかしグランドラクモンも生まれてこないとは限らない。」

 

純玲は同じ種でも個体差がある筈なのに特定の種を警戒する意味なんてあるのだろうかとか考えたが魔王という種はそれだけする必要があるのかなという結論に達した。

 

「グランドラクモンには特定のデジモンから進化するという特徴がある。成長期はドラクモン、成熟期はサングルゥモン、完全体はマタドゥルモン。グランドラクモンがまた生まれることを危惧したオメガモンが忌み嫌われるべき存在であるとの情報操作をした。それがサングルゥモンの忌み嫌われる理由だ。」

 

ロードナイトモンはかなり省いて説明したが情報操作はそこまで簡単なことではない。数年かけて世界中を飛び回りながら行われたことである。

 

「私個人としては種には個体差があるのだから種自体を忌み嫌うのはどうかと思ったがグランドラクモンの復活に対し他に有効な術を思いつかなかったゆえに賛成してしまった。このような状態を想定していなかった。本当にすまない。」

 

ロイヤルナイツの一人、薔薇輝石の騎士。ロードナイトモンが女子中学生と忌み嫌われる魔獣に対して下げた頭。何故か下げられた側に一緒にいるムシャモンにはとても耐えがたく今すぐにでも帰省したい気分になっていた。実際はもう帰るところは純玲とクルエルのところしかないのだからここにいるしかない。

 

純玲としては理由にあまり興味は無かった。理由を知っても今漠然とサングルゥモンが吸血の獣と呼ばれている状況は変わらない。周りが理由を知らないのだから知ってもどうしようもない。そう考えてた。

 

クルエルは失望していた。理由はわかったけれどそれが自分の正体を解明する事には一切つながらないことが分かってしまい正体を知る手がかりを失った。

 

「謝られたって何も変わらないし。それよりもあなたが私達をどうしようと思っているかの方が聞きたいな・・・ァツッ」

 

純玲が猫舌なのに無謀にも冷まさずに紅茶を飲み熱さに悶える。実のところムシャモンが思っているよりもかなり緊張していたりする。

 

佇まいが上品だし、鎧ピンクだし、電話の三割増しで声かっこいいし、鎧ピンクだし、あのグレイドモンがさっきからずっと跪いているし、鎧ピンクだし、よくわからないけど食パンも紅茶もかなりいいものっぽいし、鎧ピンクだし、なんかロードナイトモンが動くとバラの香りがふわっと漂うし、鎧ピンクだし、背景にバラ見えるし・・・みたいな感じで混乱していた。

 

「そのことについてはまだ決めかねている。色々と懸念事項が多くもう少し君達を知るための時間が欲しい。」

 

悶えているのをスルーしてくれる紳士なロードナイトモンがまた紅茶をすする。実は自家製のローズヒップティーが飲みたいのを感じさせないぐらい美味しそうである。表情はわからないがとにかく美味しそうなのである。

 

「あの、私いる意味ありますか・・・?スミレは人間でイレギュラーですけど私はただの成熟期ですし・・・」

 

控えめに言ったムシャモンの前にあるトーストもサラダも少しだけしか食べられていない。

 

「君はただの成熟期ではない。スミレの力を経由してはいるがある意味でイグドラシルの力で進化した成熟期だ。イグドラシルの力を与えられただけの究極体である私と何も変わらない。」

 

それは違いますと言いたくても言う勇気はムシャモンには無い。

 

「それに君達三人を見た方がそれぞれの性格がよくわかる。私は仮に憎まれて当然の行為を行っていたのだとしても更生しているのならば罰せられるべきではないと考えている。起こった事象よりも君達の中身で判断する。」

 

また紅茶をすする。実に十二杯目、甲冑にくるまれた状態でどうやって飲んでいるのか気になるところだがデジタルワールドだからで納得するしかない。

 

「一応言っておくと・・・」

 

空気が張りつめる。グレイドモンの時よりもそれは鋭くて、細かい針に皮膚をくまなくつつかれているような感覚に純玲はデジヴァイスを握りしめることしかできずクルエルもムシャモンも全くもって動けなかった。これが究極体の、ロイヤルナイツの力なのだと実感させられた。

 

「私はこれでも百数十年生きてきてあらゆるデジモンを見てきた。演技や何かで誤魔化される気は無いからその点はなめないでもらいたい。」

 

低い声で言われた言葉にはグレイドモンの剣よりも直接的に感じられる程の威力があった。

 

――ずず・・・

 

恐怖からか紅茶をすする音が大きく聞こえる。

 

「まぁ、あまり固くなられても困るから自然体でいて欲しい。我が家だとは思えないだろうがそれなりに快適な居場所は提供できるから。」

 

十三杯目の紅茶を入れるロードナイトモンの雰囲気はまた柔らかくなっていた。

 

朝食の時は流れた。ムシャモンとグレイドモン以外それぞれの立場を忘れてしまったかのようにどこにでもある家庭の様に穏やかに。

 




次回は多分ロードナイトモンの居城からのお話になるかと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。