スミレには嘔吐等を引き起こす毒がある。   作:へりこにあん

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駆け足で書いたので雑なところも多いと思います。誤字脱字、遠慮なく言ってください。


騎士達の居城【厨房勤務・毒を吐く少女】

ロードナイトモンの城に来て約二ヶ月。純玲達がここからわざわざ旅に出る意味なんてあるのだろうかと思い出すほどになじみ切った頃、ロードナイトモンが厨房に姿を現した。

 

「マミーモン、スミレはいるだろうか?」

 

「あぁ?いるけどどうした?何かやらかしたのか?」

 

マミーモンがハンバーグに銃弾を混ぜる作業を中断してロードナイトモンの方に向き直る。

 

「いや、スミレ達の件について多少進展があったものでな。」

 

それを聞きつけて純玲がこそこそとやってくる。前回のノワールの一件でシスタモン姉妹が自分達とは明確に違うとわかったのでそれまでと同じように働いていて近くにクルエルはいない。

 

「進展ってなにが?」

 

「それを話すにはクルエルとムシャモンもいた方がいいだろう。それともしかしたらマミーモンもいた方がいいかもしれない。」

 

「どういうことだ?スミレ達はただ不当にいまわされてるだけだろぉが、なんで俺が関係してくる。」

 

純玲の頭を押さえつけてマミーモンがロードナイトモンに応対する。

 

「お前が私に話してくれたクルエルの話が重要な意味を持つ可能性がある。」

 

純玲は一瞬マミーモンを睨んだがロードナイトモンの後について歩いていった。

 

「クルエルは知らないから気を付けてよ。」

 

「いずれは知らなければいけないかもしれないことだが気を付けよう。」

 

純玲は言わないで欲しいという意味で言ったのだがロードナイトモンはショックが少ないようにという意味で取った。純玲も仕方ないからそれでいいかという風に捉えた。

 

「知らなければと言えばよ毒花。お前がこの世界に来る前、クルミとか言う人間と何があった?」

 

マミーモンは断片的に純玲と親友との間に何があったのかを知っている。それが純玲という人間にとって何を意味しているのかはわからないが大きな意味を持っているのも知っている。

 

「・・・なんでそんなこと聞くの?」

 

純玲は当然ながら苦い顔をする。二ヶ月と二週間が経過してはいるもののクルエルが隣にいるからか少し似ているノワールとブランを見ているからか、周囲の変化が親友以外にも起こってしまったからかとにかく頭では死んだと理解しているものの心の中では元の世界に帰ったら普通に笑顔で迎えてくれるんじゃないかという思いが少なからずある。

 

本人に自覚は無いがこの状況で特に帰ろうと思わないのは帰ったら現実を直視しなければいけないかもしれないと思っているからでもある。

 

「デジヴァイスってやつは昔から迷い込んだ人間がただ持ってるもんじゃねぇらしい。もしかしたらそれが関係あるかもしれねぇし関係ないかもしれねが。とりあえず話しとけ。」

 

マミーモンの言い分は確実ではないが正しい。ロードナイトモンはデジヴァイスが感情に呼応するものだと知っているから純玲の人格形成に関わっているとすれば重要かもしれないと首を縦に振った。

 

「・・・どうしても話さなきゃダメ?」

 

純玲は少し自分の鼓動が速く聞こえ、急に喉が渇くようなそんな気がしていた。

 

「話したくないなら話さなくてもいい、俺が直接お前の魂の中に潜って見てくることもできる。」

 

「どういうことだ?」

 

ロードナイトモンがマミーモンに聞く。マミーモンにそんな能力があるという記憶はロードナイトモンには無かった。

 

「これでも死霊術師だからな、自分の肉体から魂出せば潜れないことも無い筈だ。普段は絶対やんねぇしやったこともねぇがな、一歩間違えれば死ぬからよ。」

 

マミーモンはこともなげにそう言った。

 

「私の嫌な記憶なだけなんだから誰かが死にかける程の価値なんてない。」

 

「じゃあ言え。クルエル達を呼びに行くのはそれからだ。」

 

ロードナイトモンも無視してマミーモンが歩みを止める。マミーモンがこだわるのは関係していると思っているからではなく純玲は乗り越えられないとまた倒れるんじゃないかと思ったからである。

 

マミーモンにとって厨房は自分の城。横暴なマミーモンにとって厨房のスタッフは部下であり所有物のようなもの。自分の持ち物が壊れたり欠陥があって喜ぶわけがない。それにしても確かにいかれているが半分はかまをかけて純玲が自分から喋るように狙っただけ。

 

「言っとくけど・・・グランドラクモンの話みたいに壮大でもないし本当に大したことない話だからね。」

 

ロードナイトモンも歩みを止めたのを確認して純玲は本当に嫌そうに話し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

――純玲がデジタルワールドに来る数日前。まだ純玲がリアルワールドにいて、その隣で今は死んだ純玲の親友――クルミがまだ笑っていた頃。

 

その日は何の変哲もない普通の日だった。気温は季節相応で少し肌寒く空は曇りか晴れか微妙な量の雲が空を覆い強い風が吹いているわけでもなくかといってまったく風が無い訳でもなく強いて無理やりに特徴を上げるとするならば全てにおいて際立っていないということが特徴という普通の日だった。

 

その日の純玲の朝はそれまでと同じように目覚まし時計を止めもう一度布団で眠るという怠惰の極みかつ至福の時間を過ごしているところをお母さんにたたき起こされて始まった。

 

「とっとと起きなさいよー。もうすぐクルミちゃん来ちゃうわよ?」

 

「ん~・・・」

 

その日も純玲は怠く伸びをして布団から抜け出て全身真っ黒の冬服のセーラー服に着替え、雑多に髪を束ねて朝食のパンを咥えながらカバンの中身を確認、行儀が悪いとお母さんに怒られながら歯を磨き口をゆすいだ。

 

――ピンポーン

 

その日もやはりちょうどのタイミングでインターホンが鳴りインターホン越しにクルミに名前を呼ばれて純玲は家を出て行った。

 

「おはよー久瑠実(クルミ)。」

 

「おはようなのです純玲ちゃん。」

 

その日、純玲とクルミはいつものように二人で並んで歩いていた。恋人と言われてもおかしくないぐらいの近距離で歩いていた。

 

「そういえばそろそろ受験勉強も本格化しなきゃね。」

 

「まだやってないのです?」

 

「え、久瑠実もうやってるの?」

 

「もう十一月なのです・・・むしろ今までなんでやっていないのです?」

 

ちなみに今は一日七時間頑張って時間を見つけてるのですと胸を張る久瑠実に純玲は苦々しい顔をした。まじめなクルミはよく純玲をいさめていた。

 

「私なんだかんだで偏差値も成績も久瑠実よりいいしいいかなーって。」

 

まぁそうしていても授業だけで理解できてしまうタイプの純玲との間は埋めがたく純玲にクルミが教わることも少なくなかった。まぁ理解はできても勉強しないので特筆した結果は残せず上の中と言った成績をキープしている。

 

まじめだけどドジなクルミと不真面目だけどなんだかんだしっかりしている純玲はお互いに足りないところを補い合えるほとんど完成した関係だった。

 

ゆえに友達は皆無でいつもただ二人でいた。冴才みたいなのが寄って来ていたのも女子が集まっているわけじゃなく純玲さえ出し抜ければまじめで素直でかわいらしくドジっ子属性のクルミと付き合えるかもしれないという浅はかな考えだからこそだった。

 

受験を控えた中学三年生、学校での息抜きができる時間と言えば十分休みか昼休みぐらいのものでその日も二人はあまり人のいない屋上で食べていた。

 

何人か男子生徒や女子生徒も上がって来ていたけれどそこに何人か冴才のような者達がいて大抵一週間に一人ぐらい勇者が何かしらアクションを試みていた。

 

ちょうどその日は冴才が勇者の日だった。

 

「・・・く、久瑠実さん。俺と一緒に食べませんk」

 

「却下。冴えない凡才、略して冴才君は一人さびしく便所飯でもしてなさいよ。あ、久瑠実。口元ご飯粒ついてるよ。」

 

その日も純玲は冴才の決死の突撃をさっくり返し久瑠実の口元に付いたご飯粒を取った。

 

「お、俺は久瑠実さんに話し掛けてるわけでお前に話し掛けてるわけじゃない!!」

 

その日は少しだけ珍しくいつもはすぐに折れる冴才が反論して来た。

 

「久瑠実自身が知らないスリーサイズまで知ってる私は久瑠実のお父さんに変な男が近づかないように見ててくれって頼まれてるの。私が認めないということは久瑠実のお父さんも認めないということ・・・とりあえずいきなりよくも知らない奴と一緒にお昼とか相手がどんなにいい奴でも無いでしょ常識的に考えて。久瑠実、その卵焼きと私の白ご飯好感しない?」

 

純玲は特に驚きもせずに淡々と返し、白ご飯なのです!?と驚くクルミに冗談冗談と笑いかけた。ちなみに久瑠実のお父さんに云々の件は真っ赤な嘘。スリーサイズ云々は本当だったりしていた。

 

「ぐ、ほ、ほんとにスリーサイズまで知ってんだったら言ってみろよ!!」

 

「ふぇっ!?」

 

冴才はわけわからない中で咄嗟に思いついたことを口走りそれを聞いたクルミは驚いて箸を落としそうになっていた。流石に答えられないだろうと冴才はその時思った。

 

「・・・何セクハラしてんの?冴えないだけならまだいいけどセクハラまで・・・良い奴じゃないけど悪い奴でもないと思ってたけどあんた最低ね。」

 

冴才は猛ダッシュで逃げ出しその日ショックから早退した。その日いつもの日常と違っていたのはこのことぐらいだった。

 

午後には体育と美術の授業を終えて自身の色塗りセンスの無さに憤慨しながら純玲とクルミは校門を出て家路についた。

 

朝も通った何の変哲もない普段の道、他愛もない雑談、微妙に吹く風、午後になり少し暖かくなった気温、その日も普通に帰って次の日また学校に行ける筈だった。

 

「あー・・・やっぱりやんなきゃだめかなぁ。過去問やった感じだともう勉強しなくても行けそうなんだけどなー。」

 

「純玲ちゃんはもっといい高校を狙うべきなのです。そうしたらちゃんと勉強もやる気になるのです。」

 

「え?だってそしたら久瑠実と一緒にいれないじゃん。そんなことになったら私ストレスで死んじゃうよ?」

 

「ふぇ?ちょ、ちょっと嬉しいですけど純玲ちゃんのためになるようにするのです!」

 

「いやいや私のために久瑠実と一緒の高校に行きたいんだけど・・・」

 

「で、でも・・・」

 

「だって久瑠実、私がいないとすぐダメになっちゃいそうだし・・・久瑠実大丈夫かなぁってダメかなぁって想像するだけで胃潰瘍になりそうから久瑠実のことを任せられるいい人が見つかるまでは私はそばにいないとね。」

 

「そ、そんなこと言ったら純玲ちゃんだって私がいないと宿題やらないしすぐ二度寝しようとするしクラスでのこともあまりやろうとしないしいないと私の方が心配で病気になっちゃいそうなのです!」

 

「じゃあ私は久瑠実と一緒にいないとダメなのね?」

 

「え、う?うん?あれぇ?」

 

純玲がクルミをやり込めて交差点に差し掛かった時。それが運命の時だった。

 

二人が角を曲がってすぐ、トラックが何故か車線を外れて純玲達の方へと向かって来ているのが目に移った。

 

純玲は咄嗟のことに驚き、体育で疲れていたこともあって全く動けず、一瞬の間ではあったのが本気で死を覚悟した。

 

そんな純玲をクルミが突き飛ばし、咄嗟に純玲が手を伸ばした時にはすでに遅く、トラックがクルミのいた場所を走り壁にぶつかった。

 

壁が壊れるがらがらとか爆発音に似た音の中にトマトとかを潰した時のような音が混ざっているのを純玲は聞いた。

 

壁とトラックの間から地面を伝う真っ赤な液体を見た。

 

純玲は自分でも驚くほど冷静に救急車を呼び、警察を呼んだ。

 

ドライバーだけでなく純玲も状況を聞かれありのまま淡々と答えた。警察の人に突然車が曲がったんだとドライバーが騒いでいる、本当に君達は災難だった、ご愁傷様と言われて、はい、そうですねと無表情で答えていた。

 

純玲を助けなくてもクルミはひかれ、撥ねられるような位置にいたと純玲は聞いた。純玲を助けなくて逃げていてもクルミはひかれていただろう位置にいた。それこそわざと狙ったかのように。

 

でも純玲は罪悪感を憶えた。私を突き飛ばさなければと思った。

 

そしてその日病院で死亡が確認されクルミは肉体的にも法律的にも死んだ。

 

純玲は罪悪感に耐え兼ね現実逃避し、クルミは死んでいないと思いこんだ。

 

 

 

 

 

ちなみにこのエピソードをマミーモンとロードナイトモンに語った時の純玲の言い方はこう。

 

「ちょっとだけ変なことがあった日、クルミは私を庇って死んだ。事故だった、私みたいに弱くてダメダメな人間には避けられない事故だった。ただそれだけ。」

 

純玲は伝わらないぐらいに短くまとめて喋った。

 

「どう?そんな大したことでもないでしょ?グランドラクモンがどうとかイグドラシルが同とかに比べたら全然スケールも小さいしさ、笑ってもいいんだよ?そんな小さいことで悩むなよって、悩むだけ無駄だって。」

 

言い終った純玲は目から涙がぼろぼろ落ちているのに気付いた。警察で話した時より適当であれから二ヶ月以上も経っているのになんだか苦しく、クルミが死んだという事実を突き付けているかのようだった。

 

純玲がぼろぼろ泣きながら自虐している様子と揺れ動く魂を通してその日の情景のほぼ全てを見てマミーモンは黙って純玲の頭に手を置いた。

 

「十分大したことあるに決まってんだろ。もっと悩んで苦しんで忘れたり決別すんじゃなくてちゃんと受け入れろよスミレ。」

 

むしろ悩めとわけのわからないマミーモンの言葉をきっかけに純玲は普通の女子中学生らしくちょうど近場にいたマミーモンに顔を押し付けて声を上げて泣き出した。一部始終を見ていたロードナイトモンは黙って薔薇の刺繍のハンカチを純玲に渡した。

 

「・・・しかし、目も腫らしてしまってあまり美しい姿とは言えないな。いくら親しくてもそんな姿を見せたくはないだろうしまだ成果と言得るかもわからない程度のものであることだしここで言ってしまおうか?」

 

ロードナイトモンは美しいものを尊ぶ、それは内面のことが主ではあるが外見のことにも関係する。目を腫らし涙と鼻水をマミーモンの包帯で拭う純玲の姿は多少耐え難いものがあった。

 

「・・・ぐすっ・・・お願い。」

 

純玲の同意を得てロードナイトモンは頷き純玲が返そうとしたべったべたのハンカチをやんわりと純玲に押し付ける。

 

「私なりに状況を調べ、スミレ達の証言を検証した。結論としてはスミレ達の証言に嘘は無く、与えた影響は小さくないもののその件はスミレ達に責任は少ない。スミレ達に強いるべきことがあるとすればこれ以上影響を与えぬようほとぼりが冷めるまでこの城の中で生活すること。」

 

ロードナイトモンは純玲にそうよどみなく告げた。

 

「・・・噛み砕いて言えばスミレ達は悪くは無かった。だが影響を考えて当分は城から出ないでくれということだ。」

 

若干混乱気味の純玲があまりリアクションが無かったのでロードナイトモンは言い直した。ちゃんと聞こえているのか不安だった。

 

「そう、ずずっ・・・自分達が悪くないってわかっててもちょっと嬉しい。」

 

「だが、確認したことでいろいろと疑問も出てくる。レオモンが来たタイミング、何故すぐに島中に噂が広まったか、オメガモンの関係、イグドラシルを壊すものであるはずなのにイグドラシルが死んでから現れたデジヴァイス・・・もしもスミレ達を何者かが陥れようとしたのであれば私はその者を処罰しなければならない。まだ終わったわけではないことを忘れないように。」

 

ロードナイトモンはそう言い聞かせるように優しく告げてその場から歩いて立ち去った。純玲はきっとクルエルとムシャモンにも伝えに行くのだろうと思い何も言わずに見送った。

 

「・・・毒花。今日は仕事はいいから風呂入って寝てろ。リリモンだったかウィッチモンだったか忘れたがまぁどっちかが言うには寝ると記憶が整理されるんだとよ。」

 

「でもまだ寝るには早いけど・・・」

 

「とっとと寝てろ。」

 

純玲は痺れを切らしたマミーモンの拳で意識を刈り取られた。

 

その日、純玲は柔らかいベッドにマミーモンの手で運ばれほとんど夢を見ることなくまさに泥の様に眠った。

 

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