スミレには嘔吐等を引き起こす毒がある。   作:へりこにあん

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下の部分になります。


蜘蛛の女王と蜂の王+愉快な毒蟲達【行ってきます】

サバイバル訓練からさらに五日経ち、純玲達がアルケニモンと出会ってから二週間目の夜。純玲達は出発の時を迎えていた。

 

理由は二つ。一つはもう教えられそうなことがなくなったから。実際はいくらでもあるのだが時間がかかりすぎる。短期間で教えられることはということだ。

 

一つはストライクドラモンのような積極的に追っているデジモン達がアルケニモンの森に捜索の手を入れてきたからである。今のところは勝手に侵入するなという理由で追い返しているがそろそろ限界だった。

 

夜なのは少しでも逃げやすくするため。二週間の間にアルケニモンの住処から森の出口までの道筋を純玲とクルエルは何度も反復しているので夜でもこの森から出るまでは問題ない。

 

「準備は終わった?」

 

アルケニモンが自分の部屋の中で準備に勤しんでいる筈の純玲とクルエルに話し掛けた。

 

「終わったのです。」

 

そう答えたクルエルは何も持っていない。その隣にいる純玲もあまり元々と変わりない。上下黒のセーラーのまま肩掛けのカバンと水筒を持っているだけ。カバンの中にはナイフと折りたたみできる浅めの鍋、それと地図だけしか入っていない。まぁこの二つを入れたらもうほとんど何も入らないのだ。

 

「うんうん。あの子が熱心に言ってたから作ってみたけどなかなか似合っているんじゃない?」

 

カバンの本来なら革の部分はドクグモン達の糸から作った下手な革よりよっぽど強い布、縫うのに使われたのはさらに強いアルケニモンの糸。まず壊れない。クルエルでも噛み千切れるか怪しい代物に仕上がっている。

 

「それにしてもアルケニモン裁縫できたんだ・・・」

 

「私はテーブルクロスも手作りするからね。女王だし。」

 

女王は関係ないと思うとは言わなかった。カバンを取り上げられたら敵わないからだ。

 

「女王は関係ないだろ。」

 

代わりにそう言いながら入ってきたのはディノビーモン。そしてその腕にはあのコドクグモンが張り付いている。

 

「これを持っていくといい。」

 

ディノビーモンが緑色の封筒を純玲に渡す。

 

「パイルドラモンというどことなく俺に似たデジモンに宛てた紹介状だ。竜デジモン達の中でも一角のデジモンだからきっとかなり力になってくれるだろう。」

 

俺に似たというところに純玲は無表情な竜を想像し顔を顰めた。

 

「どっちかといえばガルダモンとかに近い側だが話を来てくれる奴だから誤解を解いてくれるかもしれない。心配するな。」

 

ディノビーモンはパイルドラモンの人格に不安があると解釈したらしい。

 

「これは私からの紹介状。ブラックウォーグレイモンってやつに宛てたものなんだけど・・・これはもう引くも地獄進むも地獄みたいな状況になるまではやめた方がいいわ。気難しい奴だから。」

 

アルケニモンが渡したのは赤い封筒。きっちりと封蝋までされている。

 

「さてと、あまり引き留めてもお互いデメリット大きいし行きなさい。森出るまでは後ろにドクグモン一匹付けとくから。」

 

「いや、フライモンの方がいいだろう。普段動き回らないドクグモンが動き回っていたら不自然だ。」

 

「でもフライモンは羽音がうるさい。」

 

「まぁまぁやめましょう蜘蛛の女王様、蜂の王様。フライモンとドクグモンがそれぞれ付けばいいじゃないですか。」

 

仲介に入ったのはコドクグモンだ。二人に喧嘩されてたら夜が明けてしまう。二人はおだてられるとけっこういい気になるのをコドクグモンは知っていた。

 

「ま、仕方ないな。」

 

「そうね、女王だし寛大でないと。」

 

「・・・じゃあ、さようならなのです。」

 

クルエルがポツリと言った。

 

「また来なさいよ。歓迎するから。」

 

「今は季節が悪いが夏になれば蜂蜜酒もある。」

 

その言葉に純玲はさようならを言うのはやめた。

 

「じゃあ代わりにお土産話持ってくるから、王様も女王様もまたね。」

 

またいつか来たい。いや来るのだと誓った。

 

「また来てください。」

 

コドクグモンはあの日の言葉と裏腹に行きたい気持ちが膨らんでいるのを隠してそう言った。

 

「あなたも行くのよ?」

 

そう言ったのはアルケニモンだ。

 

「え?」

 

「スミレとなかなか面白い話をしたらしいじゃない。自分は数札だけどーとかなんとか。でも私はトランプよりチェスの方が好きなの。」

 

コドクグモンが純玲の方を見るとゴメン言っちゃった☆みたいな顔をしている。コドクグモンはこういうことも吐いてしまうのかと思ったが実際彼に被害が出るわけじゃない。

 

「あなたはポーン。一緒に行ってキングでもクイーンでもナイトでもビショップでもルークでも好きなものに進化して帰ってきなさい。」

 

「でも・・・」

 

「本当は行きたいんでしょ。」

 

「しかし・・・」

 

「素直にしていいの。」

 

「ですけど・・・」

 

「・・・拒否権無いからとっとと行け。」

 

いくら背中を押すためでもこれは酷いとディノビーモンは思った。

 

見た目渋々心爛々でコドクグモンは純玲の肩に張り付く。

 

「じゃあ改めて、行ってらっしゃい。純玲、クルエル、コドクグモン。」

 

「ちゃんと帰ってこいよ。」

 

王と女王はまるで夫婦のようだった。

 

「じゃあ、行ってきます。」

 

純玲にはアルケニモンとディノビーモンが一瞬両親に重なって見えた。

 

「必ず帰ってくるのです。」

 

クルエルは何か既視感を覚えた。

 

「・・・ありがとうございます。」

 

コドクグモンは別れたくないという気持ちが急に込み上げてきて、でも行きたくてぐっちゃぐちゃでそれだけ言うのがやっとだった。

 

ちなみにその時裏でこの五人の空気を壊さないようにフライモンとドクグモンが部屋の外で厳戒態勢を敷いていたのは五人の内の誰も知らない。そして五人が部屋を出た時もすぐに散開してそれを匂わせはしなかった。無駄によくできた毒蟲達である。

 

純玲クルエル、コドクグモンはそんな毒蟲達に別れを言って夜が明ける二、三時間前に森を抜けた。




【】の中は適当なんで不評なら上中下に直すことにします。
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