ここは人の住んでいない絶海の孤島。孤島の片隅で、深海棲艦の一角である空母ヲ級は一人、浜辺に腰を降ろして海を見つめていた。
(・・・また今日も何も来なかったか・・・。)
このヲ級は仲間である深海棲艦たちとはぐれてしまったわけではない。海に潜れば自分の部隊の仲間とまではいかないまでも、深海棲艦同士で連絡を取り合えば、やがては自分の部隊へと戻れるのだから。なのになぜ、このヲ級は浜辺に座ってぼんやりと海を見つめているのか。
(・・・明日もまた、私たちは憎しみを艦娘にぶつけるだけ。艦娘が仲間を沈める度、深海棲艦は他の生命全てを憎んでいくのだろう。)
「私ハ、ドウスレバイイノダロウ・・・」
答えは、出ない。
こうやって浜辺でずっと考えていても、仲間たちの深い怨念を癒す方法は見つからない。だからこそ、このヲ級はその答えを外部に求めようとしているのだ。
覚えたばかりの言葉を拙い文字で綴り、ボトルに詰めて海に流す。この作業を少し前から続けているが、返事らしきものが返ってきたためしは一度としてない。もちろん、最初で成功するとは考えていないし、返事が帰ってくるまで時間がかかるのも承知していたつもりだ。だが、自分が深海棲艦である以上、明日自分が沈められるかもしれないと考えると、なるべく早く返事が欲しかった。
(・・・帰るか。)
今日はもう返事は来ないだろうと見切りをつけ、ヲ級は海へと潜っていった。明日こそは、返事が届いていることを願いながら。
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さて、時を同じくしてここはとある鎮守府。ここの鎮守府で提督を務める神裂幽斗《かんざきゆうと》は、遠征から帰ってきた天龍たちの報告を受け、困惑していた。
「ええと、天龍、もう一度状況説明をしてもらっていいか?」
「だから、こいつが海に浮かんでたんだって!俺が「罠かもしれねえしほっとけ」って言ったのに、暁が拾ってきちまったんだよ!!」
「何よ!誰かが助けを求めているものかもしれないでしょ!?レディーとして、助けを求める者の手を掴むのは当然の義務よ!」
ぎゃいのぎゃいのと騒ぐ天龍と暁を見て、神裂はため息をつく。
「二人とも、ちょっと落ち着けよ・・・」
「はわわわわ、天龍さんも、暁お姉ちゃんも、全く譲る気配がなさそうなのです・・・」
「暁おねえも、天龍さんも、自分の意思が強いしね・・・。仕方ないわ」
同じく遠征に参加していた電が不安そうに、雷が呆れたように二人の言い争いを眺めていた。このままではらちが明かないと考えた神裂は、手を叩いて二人の意識をこちらへ向けさせる。
「二人とも、そのあたりにしておけ。」
「「でも!!」」
「お前らの言い分はどちらも正しい。暁が言うように純粋に助けを求めるものかもしれないし、あるいは天龍が言うように罠であるかもしれない。どちらにせよ、開けてみないことには確かめられないんだ。」
そういうと、神裂は無線を繋ぎ、
「明石。すぐに執務室へ来てくれ。お前に見てもらいたいものがある。」
5分ほどすると、部屋のドアがノックされる。
「どうぞ。」
「失礼します。提督、どうしました?私に何か御用ですか?」
「暁が遠征のときに、このボトルを海で拾ってね。今から開けてみようかと思うんだが危険なものかもしれないし、念のために一応お前の意見を聞いておきたかったんだ。」
「はあ、そういうことでしたか。では、少し失礼して・・・」
明石は神裂からボトルを受け取ると、しげしげと眺めてみたり、あちこちを確認すると、
「うーん、多分大丈夫かと思いますよ。というか、爆弾だとするなら軽すぎますし。」
「お前がそう言うのであれば大丈夫そうか。なら、開けてみるか。」
神裂が栓を引っ張り、ボトルを開けてみると、中には紙が一枚入っていた。
「なんだこれ・・・?紙か?」