「なんだこれ・・・?紙か?」
「紙・・・ですか?」
「ああ。中に入ってたのは紙一枚だけだ。・・・よっと。」
神裂はボトルの中に入っていた紙を取り出すと、机の上で広げてみた。
「やっぱり暁の言う通りじゃない!危険なものではなかったでしょ?」
フフンと誇らしげに胸を張る暁に対し、
「今回はそうだったかもしれねえが、普通は怪しげなボトルなんて手ぇ出さねえよ!」
という天龍。またしても口論が始まりそうなので、神裂は二人の頭にチョップを入れる。
「いったーい!」
「いってぇ!」
「二人ともいい加減にしろ!暁も天龍も、これ以上喧嘩するなら罰として明日は食堂の掃除だ」
渋々引き下がる二人を横目に、神裂はボトルの中に入っていた紙を見る。暁はもちろん、天龍もなんだかんだ興味があるようで、一緒に覗き込んでくる。
「なんて書いてあるんだ?」
「なんだ、結局天龍も興味あるんじゃないか。ええと、なになに・・・」
紙に書いてあった内容を要約すると、おおよそ以下の通りのことが拙い字で書いてあった。
・私の仲間たちは深い怨念や憎しみに囚われ、苦しんでいる。
・私は仲間たちを救ってやりたいが、一人で考えてもいい案が思い浮かばなかった。
・この手紙を読んでくれたなら、憎しみや苦しみを癒す手立てを手紙にし、同じように海に流してほしい。
「ところどころ誤字もあるな・・・。まあ、大体の意味はこんなところか。」
「憎しみを癒す手立てを教えてほしい、ですか・・・」
「・・・憎しみに囚われたままというのは、悲しいことなのです・・・。」
「そうね・・・。でも、難しい問題よね。憎しみはちょっとやそっとじゃ消えてくれないし、方法を間違えたらもっと大きくなるわ。」
それぞれが思い思いの方法で手だてを考える中、天龍がふと思いついたかのようにぼそっと言った。
「しかし、返事を海に流してほしい、ってのは妙じゃねえか?」
「別に妙じゃないでしょ。現にこの手紙だって海を流れてたのよ?」
「返事を求める手紙なら、誰か仲のいい奴にでも聞きゃあいいだろ。返ってくるかも分かんねえ返答をいつまでも待つってのはおかしいだろうが」
その言葉を聞いて、暁はうぐっと口をつぐむ。
「・・・天龍さんの言うことは、正しいのかもしれないのです。ですが、いなづまは、この人を放っておくなんてことはできないのです。」
先ほどから考え込んでいた電が、はっきりとした口調でそう言った。
「本気か?これ、下手すりゃ深海棲艦の罠かもしれねえんだぞ!?」
「罠なら、海に流せ、とは言わないはずなのです。それに、深海棲艦がこの手紙を流したのだとするなら、いなづまは少し嬉しいのです。」
電の言葉を聞き、先ほどからずっと黙っていた神裂が電に問いかけた。
「・・・嬉しい、とはどういうことか、教えてくれるか?電。」
電はにっこりと微笑むと、
「深海棲艦の方の中にも、心の優しい人がいるということがすごくうれしいのです。いなづまは、敵であっても助けたいとずっと思っていました。もしかしたら、その人が戦いを止めることを望んでいるのかもしれないのです。そうしたら、深海棲艦でも助けてあげられるかもしれない。そう考えると、すごく、すごく嬉しいのです。」
神裂は電の言葉を聞いて小さく笑みを浮かべた。
「じゃあ、電は返事を書きたいのか?」
「もちろんなのです!」
他にはいないか、と声をかけると暁や雷も手を挙げた。天龍はぶすっとしているが、
「わかったよ。俺もやればいいんだろ!」
こうして、めいめいが思ったことを書き込み、ボトルに詰めて海へと流した。名前も顔も分からないが、手紙を送ってきた人物が、少しでも救われることを、そしてその人の仲間たちが救われることを祈りながら。